レビュー

4年前のスマートウォッチから「Pixel Watch 2」にしたら感動した3ポイント

Pixel Watch 2

人生初のスマートウォッチとして、2019年にFitbit「Versa 2」を入手。時計としてだけでなく、運動の記録などに活用していたが、ちょっとボロくなり、動作速度にも不満が出てきた。そんな筆者が、Googleの最新スマートウォッチ「Pixel Watch 2」を1週間ほど使ってみた。

「初代Pixel WatchからPixel Watch 2の進化点」というレビューは既にネット上に多くあるので、少し視点を変え、「ちょっと前のスマートウォッチからPixel Watch 2に乗り換えた時に感動した3つのポイント」をお届けしたい。

Pixel Watch 2

なぜ買い替えなかったか

感動したポイントの前に、約4年Versa 2を使い続けてきた理由について。

と言っても、何かVersa 2に特別な思い入れがあったわけではない。「これにしよう!」と強く惹かれる製品がなかったので、使い続けてきた……というのが理由だ。

正直に言えば、Apple Watchの新製品が登場するたび「いいなぁ」と思っていたのだが、ここ何年もスマホはPixelシリーズを使っていたので、「Apple WatchはiPhoneと組み合わせて真価を発揮するだろうから選びにくいなぁ」と候補には入らなかった。

となると、初代「Pixel Watch」が気になるところで、実際にお店で何度も触って「どうしようかなぁ」と悩み続けてきた。丸いフォルムは可愛らしくて、かなり欲しかったのだが、「バッテリーの持ちがイマイチ」という話をよく耳にしていたのでレジに持っていく決心がつかなかったのだ。

左からVersa 2、Pixel Watch 2

そんなところに登場した「Pixel Watch 2」(Wi-Fiモデル 51,800円/LTEモデル 59,800円)。最も気になったのが「常時表示状態でも24時間使えるロングバッテリーになった」という点。そこでPixel Watch 2を借りてみたというわけだ。

セットアップは、AndroidスマホでWatchアプリを起動し、ウィザードに沿って進めていけば簡単だ
バンドの装着方法や基本的な使い方までアプリで教えてくれる。Fitbitアプリと連携すれば、ワークアウトの成果をFitbitでまとめられる
緊急時に自分の位置を共有したり、目的地に無事に到着しなかった時に家族や友人に通知を送る機能もある
Suicaに加え、QUICPayやiDにも対応する

実物を手にしてみると、竜頭の形状など、細部は異なるものの、デザイン的には初代Pixel Watchとほぼ同じで、表から見ているかぎり、ぶっちゃけ違いがわからない。

なお、真っ黒い部分が全部ディスプレイだと思ってしまうが、実際はそうではなく「黒縁」が存在する。白いの文字盤に変更すると、どこまでがディスプレイなのかがわかりやすくなる。逆に、デフォルトで用意されている黒を基調とした文字盤にすると、全体がディスプレイに見えるのでちょっと得した気分になる。

白い文字盤にすると「何処までがディスプレイなのか」がわかりやすいが、黒い文字盤では全体がディスプレイに見える

ドーム型ガラスや再生アルミを使ったケースは質感が高く、腕に装着してみるとテンションが上がる。スマートウォッチというと、どうしても「機能いろいろ」で「SFチックな雰囲気」というイメージがあるが、フォルムもバンドも全体的に丸みを帯びているPixel Watch 2は、とにかくシンプルで洗練されており、ゴチャついた感じは一切ないので様々な服と合わせやすい。

ただ、カジュアル寄りな印象なので、ビジネスで使う場合は、文字盤やバンドを少しフォーマルなものに変更すると、よりマッチするかもしれない。

シンプルかつカジュアルだが、質感は高く、満足感はある

ポイント1:ワークアウトの開始を検出してくれる

Pixel Watch 2の特徴として、心拍センサーが進化した。初代は「シングルパス」方式だったが、Pixel Watch 2ではマルチパスになり、アクティビティの強度に応じて、シングルパスモードとマルチパスモードが自動的に切り替わるようになっている。

時計の裏側を見ると複数のLEDとフォトダイオードが配置されているのがわかるのだが、これを用いて、さまざまな角度と位置から脈拍信号を測定。AI心拍数アルゴリズムも組み合わせ、初代機よりも40%正確な測定ができ、さらに激しい運動の最中でも正確に心拍が計測できるというのがウリだ。

複数のLEDとフォトダイオードが配置されている

実際に心拍を表示させながらジョギングやウォーキングをしてみたが、例えば同じ数値のままずっと表示が変わらない事などは無かった。また、バンドの締め付けが気になり、少しバンドを緩め、時計の裏側と肌が離れ気味になっていても心拍は継続して表示されており、かなり測定能力は高そうだ。

心拍数表示

この心拍測定も使いながら運動をして、その情報を記録。「どのくらいカロリーを消費したかな?」とチェックして、ニヤリとするのがスマートウォッチの醍醐味だ。

ただ、以前のVersa 2では「うっかりしてワークアウト記録開始ボタンをタップしていなかった」という事が頻繁にあった。サイクリングやジョギングをスタートして、しばらく経過してから「あ! 記録していなかった!」と思い出して、慌ててタップ。運動を終えた後で、「前半の30分は記録していなかったから、消費カロリーはこのくらいかなぁ」と想像で補うことになる、なんとも微妙な気分になったものだ。

しかし、Pixel Watch 2の場合はそんな不幸が起きにくい。

というのも、対応しているワークアウトであれば、自動的にその開始を検知してくれるのだ。例えば、ウォーキングをはじめてしばらくすると、それを検知して、バイブレーションで注意を喚起しつつ「記録を開始しますか?」とディスプレイに表示。提示されたワークアウトの種類の中から「ウォーキング」を選ぶと、記録がスタートするという流れ。記録ボタンの押し忘れが防げるわけだ。

しばらく歩いているとそれを検知し、ワークアウトの記録開始を提案してくれる

また、例えば「近いと思っていた目的地が意外と遠くて、ちょっとしたウォーキングになってしまった」なんて事がある。つまり「今から運動するぞ」と意気込んでいない時でも、実際は運動になっていた……というシーンでも、「いまウォーキングしてますよね? 記録を開始しますか?」と表示してくれる。仕事の合間の移動も運動として把握してくれると、なんだか気分が良い。

さらにワークアウトの終了も検知してくれる。例えば、長い時間歩いてようやく駅に到着し、階段を登り、電車の席に座って一息ついていると「ワークアウトは終了しましたか?」というメッセージと共に「ウォーキングを終了」ボタンが現れる。停止し忘れて、家に帰って充電しようとしたら記録しっぱなしだった……なんてことも防げるわけだ。

ワークアウトの終了も検知してくれる

ポイント2:ナビ機能が便利

2つ目がナビ機能だ。これはPixel Watch 2の新機能ではないのだが、Versa 2ではできなかった事なので、使ってみて便利さに感動した。

使い方は簡単で、Pixel Watch 2と連携したスマホのGoogle Mapで、行きたい場所を選び、ナビ機能を開始。スマホでは地図が表示され、車のナビのように「◯◯m先、左折」のような表示も出るのだが、自動的に、Pixel Watch 2でもその簡易版のような表示が画面に現れる。

Pixel Watch 2のナビ画面

Pixel Watch 2のディスプレイに地図や自分の位置を表示してくれ、竜頭を回すとなめらかに縮尺が変化する。地図を動かして先を見たり、また自分の位置に戻ったりする動作もサクサクだ。

仕事がら、取材で毎日のように行ったことがない場所に出掛けるのだが、今まではスマホのナビを見て「なるほどこっちの方か」と大まかに歩き方を把握。しばらく進んで「こっちで間違ってないよな?」とか「次の角を曲がるんだっけ? その先だっけ?」とか、不安になるとポケットからスマホを取り出していちいち確認していた。

音声ナビを使っても良いのだが、歩きながら、スピーカーから「30m先を右折です」などのナビ音声を流すのもちょっと恥ずかしいので今まであまり使っていなかった。

しかし、Pixel Watch 2があればスマホを取り出さなくても地図で現在位置と目的地が常に確認できる。さらに、「30m先を右折」といった表示もしてくれる。スマホを取り出さずにナビをしてもらえる事が、こんなにも便利なのかと痛感した。

曲がり角もしっかり教えてくれる
スマホを取り出さなくても目的地に到着できた

ポイント3:ロングバッテリー

これも新機能ではないのだが、AV Watch的に便利なのが「メディアコントロール」だ。

その名の通りの機能で、例えばスマホ + イヤフォンで、Amazon Musicアプリを使って音楽配信を楽しんでいる時に、このメディアコントロールを立ち上げると、Pixel Watch 2がAmazon Musicアプリのリモコンになる。

画面にアーティスト名、曲名が表示され、再生、曲送り/戻しが可能。ボリューム調整も可能で、タップで調整できるほか、竜頭を回して増減も可能だ。

「メディアコントロール」でスマホのAmazon Musicアプリを操作しているところ

イヤフォンのハウジングをタップしても可能な操作ではあるのだが、イヤフォンに手を伸ばさなくても、腕の時計で操作できるというのは非常に便利。個人的に、いい感じに耳に挿入しているイヤフォンを、触ったり、押したりしたくないという気持ちがあるのだが、Pixel Watch 2があれば、イヤフォンに一切に触れずに快適に使えて便利だった。

このように、アクティビティの記録や地図の確認、音楽再生と便利に使えているPixel Watch 2だが、気になるのがバッテリーの持ち時間がどうかが気になるところ。

そこで、ある休日に、どのくらいバッテリーが減るかを試してみた。朝の9時に家を出る際に、Pixel Watch 2を充電台から外して装着。常時表示にした状態で、時折時刻を確認しつつ、駅へと移動。

なお、常時表示状態というのは常に画面が明るく表示された状態ではなく、黒バックの文字盤に、手首を回転させてディスプレイを見た時だけ、時刻や針が白く表示され、見ていない時は黒っぽく表示されるという「省エネ」仕様な表示だ。

このデザインの文字盤の場合、常時表示では上のように白い枠線だけを表示し、バッテリー消費を抑える。腕をひねって文字盤を見た時だけ、下のように文字や針が太く白く表示される

行きたいイベント会場の場所がわからなかったので、ナビをPixel Watch 2に表示させながら、10分ほど徒歩で移動。イベント参加後、2~3時間ほど買い物で街をウロウロしたので、その間の運動をウォーキングとして記録。

休憩の喫茶店や、晩ごはんの飲み屋ではあまり触らず……というような、一日を過ごしてみた。

帰宅したのはちょうど12時間後の夜9時だったが、バッテリー残量は54%という結果。

おそらく、もっとナビやワークアウト記録をガンガン使っていたら、50%を切っていただろう。特に長時間ウォーキングをしたり、登山をしたり、ロードバイクなどで遠くまで走るという人は、文字盤の常時表示をOFFにしたり、画面の輝度を落とすなど、バッテリーの節約をした方がよさそうだ。

一方で、平日に普通に使い、ちょっとだけワークアウトを記録するくらいの用途であれば、常時表示でも日中にバッテリー切れを心配しなくても良いと感じた。

試しに、そのまま充電せずに装着して就寝し、翌朝8時に起床したところ、バッテリー残量は24%となった。このまま出掛けると日中にバッテリー切れしそう。充電せずに2日使うというのはちょっと厳しいだろう。

ただ、Pixel Watch 2には30分の充電で12時間使えるようになる急速充電機能もある。そこで、8時に起床してすぐに充電ケーブルと接続。顔を洗ったり、朝食を食べたり、着替えている1時間ほど充電してみたところ、バッテリー残量87%まで回復した。就寝中のデータも取得したい場合は、朝に充電というサイクルにすると良さそうだ。

付属の充電ケーブル
充電しているところ

上記のように便利な機能が多く、「一度使うと手放せない」というのが一週間ほど使った感想。機能だけでなく、操作時の動作もサクサクで、スマホを新しい機種に変更した時のような気持ちよさだ。

竜頭を回した時に画面もスクロールするのだが、その追従性もバツグン。スマホよりも画面が小さく、竜頭のようなアナログな入力デバイスも備えたスマートウォッチは、むしろスマホよりも最新機種に買い替えた時の感動が大きいかもしれないと感じた。

山崎健太郎