レビュー

賃貸でペット飼えないので、イヤフォンで犬と猫をお迎えしてみた

イヤフォンで“犬と猫”をお迎えしてみた

突然だが、皆さんは犬派だろうか? 猫派だろうか? 古来より、我々人類の間で幾度となく繰り返されてきたこの議論。犬派には犬派の、猫派には猫派の想いがあることだろう。なお筆者は、いまだに「どちらも可愛い。好き」以外の答えが見つからない。

しかし筆者、現在ペットNGの賃貸マンションに住んでおり、そもそも生まれつきアレルギー体質なので、自分で犬や猫を飼うのは遠い夢と諦めてきた。でも、心の中ではずっとモフモフしたい。ワンちゃんと猫ちゃんを撫で撫でして、癒されながら一日を過ごしたい。

……いや待て。いるじゃないか。ワンちゃんも猫ちゃんも、イヤフォンの世界に! オーディオ業界の片隅に身を置くひとりとして、きっとこれがモフモフ欲を満たす最適解だ。

というわけで今回は、アレルギー体質だったり賃貸住まいだったりしてペットが飼えない筆者が、イヤフォンで犬と猫をお迎えしてみた。ラインナップは“猫のイヤフォン”ラディウス「NEKO true wireless earphones(HP-C28BT)」と、“犬のイヤフォン”ビクター(JVC)「HA-A20T」。果たして無事にモフモフできるのか……?

なお今回メーカーさんにお貸出をお願いしたら、全部で7匹(犬2匹+猫5匹)来た

もはや猫のASMR! 噂には聞いていたがマジ可愛いぞ猫イヤフォン

まずは、ラディウスが展開する“猫のイヤフォン”「NEKO true wireless earphones」からご紹介しよう。こちら、簡単に言うと“充電ケースが猫の形になった完全ワイヤレスイヤフォン”なのだが、2024年6月にプレスリリースが発表された途端、ネット上で大バズり。8月の発売を前に、初回ロットが予約分で完売したという大ヒット作だ。価格は8,822円(税込)。

寝床で丸くなる猫ちゃんだね……!

人気の理由は、ひとえに開発者の“猫愛”が感じられるデザイン性にある。お気に入りの寝床で小さく丸くなって眠る猫をモチーフにしたという充電ケースは、寝床からもっちり溢れるようなフォルムが、ただただ可愛い。あえて猫の顔は描かないデザインとすることで、二次元キャラクター的なデフォルメ感を排除し、誰もが心の中にある好きな猫の姿を投影できるのも大きなポイントだと思う。

そばにいると愛でたくなる
猫ちゃんを持ち上げると、下に隠していたお気に入りのおもちゃのようにイヤフォンが収納されている

猫ちゃんの種類(カラバリ)は、ミステリアスな「クロ」、お茶目な「ミックス」、気品溢れる「シロ」の3匹をラインナップ。なお、3つしか種類がないのに、今回モックを含めて5匹送られてきて、「どうせならNEKOの可愛さを存分に満喫せよ」というラディウスさんからの愛と圧を感じて幸せだった。

イヤフォンには、多色成形によるマーブル模様を採用しており、どの模様も世界に一つしかない。世界中を探しても同じ猫が一匹もいないように……
充電ケースのバッテリー残量は「おさかなLED」で確認できる

シンプルにイヤフォンとしてのスペックを見ておくと、本機は内部に6.1mm径のドライバーを1基搭載。BluetoothコーデックはSBC/AACに対応する。バッテリーはイヤフォン本体で約3.5時間、充電ケースからの充電も合わせると最大17.5時間の連続再生が可能。IPX4の防滴仕様にも準拠している。

そのほか、ノイズキャンセリング等の機能は非対応だが、そんな仕様は二の次だ。本機は、猫の可愛さに対する妥協なき振り切り具合が全てだからだ。

そう、本機はただ充電ケースが猫型なだけで終わらない。イヤフォン本体に内蔵されている音声ガイダンスも猫の声なのだ。とりあえず、以下の音声ガイダンス一覧を見てほしい。

うん、これ、ほぼ“猫のASMR”。ペアリングモード時は、デバイスと接続されるまで「ゴロゴロ……」と猫が喉を鳴らす音が聴こえてきて、接続に成功すると元気に「にゃー!!」と鳴いてくれる。可愛い……。しかもデフォルメされた猫の声ではなく、結構リアルであることにびっくりした。

公開されている情報を見たら、開発陣が実際に飼っている猫(本物)の鳴き声を収録したのだとか。ヒットの裏にはこういうリアルさがあるんだなあ……。個人的には、Bluetooth接続を解除した時に「みょんぉんぉん……」と、なんとも言えない鳴き声でフェイドアウトしていくのにツボってしまった。

あと、バッテリー切れの際は「ごはぁぁあん」と鳴くというのが、最初は「どういうことだろう?」と思ったのだが、確認してみたら本当に「ごはぁぁあん」だった。これはマジでそうだったとしか言いようがない。

しかも、イヤフォンのタッチセンサーを5回タップすることで、ペアリングモード時の喉ゴロゴロ音が3分間流れる機能まで付いている。通称「ごろごろモード」だ。驚くほど音楽再生に関係なくて、完全に猫の可愛さに振り切った機能である。これを搭載することが開発陣の本懐だったであろうことが、これでもかと伝わってきた。可愛い……。

装着すると、イヤフォン本体はとにかくコンパクトで、スッポリ耳に収まる

そんなわけで、もはやイヤフォンである前に強力な癒しアイテムの本機だが、音楽を再生してみたら、意外と低音がよく鳴っていてびっくり。なかなか骨太な猫ちゃんだ。

今回はせっかくなので、Official髭男dismの楽曲「犬かキャットかで死ぬまで喧嘩しよう!」で音質をレポート。ええ、本企画には絶対にこの曲しかないと思いました。

犬かキャットかで死ぬまで喧嘩しよう!

本曲はボーカル・藤原聡のハイトーンボイスが冴え渡る、ポップみ爆発のプロポーズソングだが、猫ちゃんはイントロからベースラインをふくよかにブイブイ鳴らしてくる。

ピアノの音もリズミカルに弾み、中~低域のコーラスパートも一体感があって好印象。全体的に見通しが良い方向でバランスも良いので、様々なジャンルの楽曲に合うと思う。上述の通り、製品コンセプト第一のイヤフォンではあるが、その立ち位置の中でも“ラディウスらしい良質感”をちゃんと継承している印象だ。

なお、本機はイヤーピースの付け替えによってかなり音が変わることも申し添えておく。おそらくハウジングがコンパクトで、イヤフォン単体によるパッシブのノイズキャンセリング効果が少ないので、耳へのフィット性が特に音に影響するのだろう。

筆者の耳も、デフォルトで付けられていたMサイズのイヤーピースがいまいちフィットせず、最初は「なんか低音が抜けているような……」と思ったのだが、Lサイズに付け替えたらばっちりハマって、上述のような低域ブイブイの再生を楽しめるようになった。

エントリー機でも音質に手抜きなし! ニッパーくんさすがです

さて、ラディウスの猫ちゃんに癒されたところで、続いてはワンちゃんに癒されていきたい。改めて、“犬のイヤフォン”として今回借りたのは、ビクター(JVC)の「HA-A20T」。充電ケースとイヤフォン本体のハウジングに、ビクターのトレードマークとして有名な“音を聴くフォックス・テリア”、通称:ニッパーくんの絵があしらわれている。

首を傾げて蓄音機の音を聴いている姿、何度見ても可愛い……

ラディウスの「NEKO」は、猫型の充電ケースそのものに愛着が湧くパターンだったが、こちらは製品に、ニッパーくんの全身イラストが引きで描かれているスタイル。本企画の“お迎え目線”で見ると、ワンちゃんと自分の間には少し距離感がある。

しかし、これはこれでとても可愛い。そもそもニッパーくんは、実在したフォックス・テリアを画家が描いた絵が世の中に伝わって、その絵に感化された円盤式蓄音器の発明者ベルリナーが商標登録したという経緯がある。だから、ひとつの絵としてそこにいてくれるのが一番しっくり来るのだ。

やっぱりこちらも愛でたくなる
製品にはニッパーくんのステッカーも入ってる

このニッパーくんは、“すでに亡くなった飼い主の声を再生する蓄音機に聴き入っている姿”(を、画家が絵に描いたもの)と伝わっていて、その忠犬らしいエピソードも含めて愛らしい。イヤフォン本体も充電ケースも、コロンとした丸みのあるデザインで、どことなくそんなワンちゃんのモフモフした可愛らしさを彷彿とさせる。

優しい質感のホワイトモデルも、白いワンちゃん感があって可愛い。そのほか、パープルとブラックも含めて全4種のカラバリをラインナップする

なお本機以外にも、ニッパーくんが描かれたビクターのイヤフォンはいくつか存在する。その中でも今回は、上述のラディウス「NEKO」の8,822円という価格帯に合わせ、1万円以下で購入できるエントリーモデルの本機をチョイスした形だ。公式オンラインストア価格は5,940円と、超お手頃。

こちらもイヤフォンとしてのスペックをざっと確認しておくと、内部に6mm径のドライバーを1基搭載。BluetoothコーデックはSBCに対応する。バッテリーはイヤフォン本体で約7時間、充電ケースからの充電も合わせると最大24時間の連続再生が可能。IPX4の防滴仕様にも準拠する。

本機もノイズキャンセリング等の機能は非対応だが、5,000円台という価格的にはまあ妥当だろう。なお「NEKO」とは異なり、本機の音声ガイダンスは普通に人間の声なので注意されたい。

コンパクトなショートスティック型を採用したイヤフォン本体は、質量約4.2gと軽量でフィット性も良好

こちらも引き続き、ヒゲダンの「犬かキャットかで死ぬまで喧嘩しよう!」で音質レポートしていこう。先に言うと、このニッパーくん、5,000円台という価格帯にしては普通に音が良くてビビる。今回は筆者のモフモフ欲最優先で、“犬のイヤフォン”という切り口で取り上げているが、スタンダードに5,000円前後で音の良いイヤフォンとして推せる製品だった。

まず、全体的にニュートラルなサウンドで、バランスが良く軽快。ボーカルなどの中域がクリアでちゃんと伸びがありつつ、コンパクトで可愛らしい印象とは裏腹にイントロのベースラインもちゃんと引き締まってバランス良く鳴っている。

ピアノ音にも弾力があるし、イントロで左から聴こえるエレキギターのチュクチューンという音も鮮明。幅広い音楽ジャンルと合うだろうが、今回のヒゲダンのような、バンドサウンドのポップソングとはかなり相性が良く感じた。

上述の通り、本機はBluetoothコーデックがSBCにしか対応していないが、価格を考えればスペック的にはそれでも普通。それを踏まえた上で、「この価格帯でこの音質なら全然アリ」と思えるバランスになっているのが強い。

また、本機は3種類のサウンドモードを備えていることにも注目。通常の「NORMALモード」のほか、低域が濃厚になる「BASSモード」、逆に低域の量感が抑えめで中高域が鮮明になる「CLEARモード」を搭載している。今回の楽曲では、ボーカル・藤原聡のハイトーンボイスが聴きやすい上、低音に程よい量感もあるので「NORMALモード」が最適だと感じたが、人によって聴く楽曲も聴き方も違うだろうから、好みに合わせてサウンドモードを切り替えられるのは嬉しい仕様だ。

イヤフォンレビューでかつてない多幸感に包まれた日々

さて、ワンちゃんと猫ちゃんをモフモフしたい欲だけでイヤフォンのレビューをするのは初めてだったが、本企画の取材期間中、筆者はかつてない多幸感に包まれていた。もちろん、最終的にはモフモフの物理的な手触りが欲しい(それはそう)。

でも「NEKO」と「HA-A20T」がそばにあるだけで、脳内でワンちゃんと猫ちゃんへの想いを巡らせて、癒されたので良しとする。筆者のようにモフモフ欲をこじらせている方、ぜひ“イヤフォンでお迎え”してみてください。

杉浦みな子

オーディオビジュアルや家電にまつわる情報サイトの編集・記者・ライター職を経て、現在はフリーランスで活動中。音楽&映画鑑賞と読書が好きで、自称:事件ルポ評論家、日課は麻雀……と、なかなか趣味が定まらないオタク系ミーハーです。