【レビュー】60m防水/フルHD/Wi-Fi対応のソニー“アクションカム”

手ブレ補正、スーパースロー検証。GoPro対抗


アクションカム「HDR-AS15」

 スポーツ、アウトドア、車載など、あらゆるシーンを動画に残して楽しめるウェアラブルカメラ。「GoPro」がいち早く開拓したこの市場に切り込むべく、各社から同種の製品が続々と登場しているが、ついにソニーからも新たな製品が発表された。

 “アクションカム”と銘打たれたソニーの「HDR-AS15」は、どこにでも持ち込んで、動きの激しい場面もつぶさに映像化可能な、文字通りあらゆる“アクション”に対応するウェアラブルカメラとなっている。10月12日発売で、店頭予想価格は3万円前後。ハウジング利用が前提で、同等の価格帯、同様のスタイルで使用する「GoPro」に対して真っ向から勝負を挑んだ形だ。

 ハイアマチュアからプロの現場まで、放送機器分野ではソニー製が大きなシェアを獲得しているにもかかわらず、今やテレビ番組の中で芸能人らが身につける“手元”や“一人称視点”用のカメラについては、ほとんど「GoPro」の独壇場となっているのが実情だ。

 果たしてこの状況を挽回する一手となるのか。今回は発売前の「HDR-AS15」をお借りすることができたので、登山、スキューバダイビング、スローモーションなど、いくつかのサンプル映像とともにその性能と使い勝手などをレビューしたい。


■ 本体は驚くほどの小型・軽量さ。ハウジングで水深60m防水も

パッケージ内容

 まず初めに断っておきたいのは、「HDR-AS15」は基本的にハウジングに格納した状態で使用する製品ということ。しかし、それでもあえて取り上げたいのはカメラ本体の小ささと軽さ。外形寸法は、24.5×82×47mm(幅×奥行き×高さ)で、特に幅の薄さと、丸みを帯びたフォルムからくる全体のコンパクト感が印象的。重量も付属バッテリ搭載時で約90gと、「GoProHD HERO2」と比べ7gほど軽量だ。

 外装はほぼ全面がプラスチック素材のため堅牢さはあまり感じられないが、ハウジングに入れて使うことが前提なので心配する部分ではない。本体側面にある液晶ディスプレイでは、カメラ本体の各種設定を行なったり、録画時の時間表示の確認などが可能。この液晶では、映像のプレビューや再生はできない。。


カメラ正面背面上から
液晶ディスプレイはモノクロ。設定の切り替え/確認等を行なえる

 ハウジング(ウォータープルーフケース)は、35.5×105.5×71mm(幅×奥行き×高さ)、重量約85gの透明なケースで、前方を開閉してカメラ本体を格納する。バッテリ込みの本体と合わせるとおよそ175gとなり、「GoProHD HERO2(ハウジングとの合計で約169g)」よりも若干重くなる。

 ハウジング底面にはカメラ用三脚穴が設けられており、ここにさまざまなマウント類をネジ止めして、目的の取り付け場所にハウジングごと固定する。ハウジングを使用することで水深60mまでの耐圧・耐水を実現するという性能もGoProHD HERO2と全く同じ。等級は取得していないが、もちろん防塵性能も有している。


ハウジング正面横から底面には三脚穴がある
他にはバックルタイプの接着式マウントも付属する。平面用と曲面用の2種類が用意別売のウォータープルーフヘッドマウントキット「VCT-GM1」別売のヘッドバンドマウント「BLT-HB1」。このマウントのみハウジングを使わないタイプだ
自転車などに取り付けるための別売のハンドルバーマウント「VCT-HM1」。固定には工具が必要。付けっぱなしにして使うのがよいだろうハンドルバーマウント用として、さまざまな太さのパイプに対応できるゴム素材のスペーサーも同梱もちろんカメラ用の三脚にも問題なく固定できる

 本体に用意されている操作ボタンは、後部にある大きめの録画(静止画撮影)開始・停止ボタンと、側面の小さなボタン2つのみというシンプルな構成。これらを使って単体で撮影操作とカメラ本体の設定を行なえる。ハウジングに格納した状態では、録画操作と、誤操作防止のためのホールド(ボタンを動かなくする)のみが可能で、設定などはできない。解像度や画角の変更、後述するWi-Fi機能のオン・オフといった操作をする際は、いったんハウジングから取り出すことになる。

 素手でのボタン操作は苦にならないが、録画開始・停止ボタンはクリック感がかなり浅く、側面のボタンは爪で操作しなければならないほど小さいため、分厚いグローブ越しでの操作は難しいだろう。ハウジングに格納した状態では、録画開始・停止ボタンの操作にやや力を込める必要があるなど、クリック感の浅さとあいまってやや不安を覚えるかもしれない。

ハウジングの背面。録画操作とホールドのみ行なえる本体側面にある2つの選択ボタンはかなり小さく、爪先で押し込む感じ

 本体底面のカバーを開けると、充電・データ転送用のmicro USBポート、映像出力用のHDMIマイクロポート、外部マイク入力にアクセスできる。さらに、将来的な機能拡張を見据えたコネクタも用意されている。発売予定のアクセサリーの中に、グリップスタイルLCDユニット「AKA-LU1」というものがあるが、これが拡張コネクタを利用するもののようだ。他のアクセサリーも予定されているのかどうかは不明だが、本体を2つ連結した3D撮影というのも考えられるかもしれない。

本体底面のカバーを開けたところ

 注意しておきたいのは、これらのポートを利用するには当然ながらカバーを開けたままにしなければならず、開けた状態でハウジングには格納できない点だ。撮影と同時には使わない(使えない)micro USBやHDMIマイクロはともかく、外部マイク入力はどのように扱えばいいのか不明である。専用ハウジングが用意されない限り、外部マイクの実用性は薄いと言わざるを得ない。

 一方、本体後部もスライドさせて開閉できるようになっており、ここに最大32GBのmicroSD/SDHCカードとバッテリーをセットする。バッテリーは専用のトレイに乗せてから本体に挿入する形で、付属バッテリーである「NP-BX1」用のトレイと、別売のバッテリー「NP-BG1/FG1」用のトレイの2種類が同梱されている。「NP-BG1/FG1」は付属バッテリーより容量が小さいが、デジタルカメラのサイバーショット シリーズなどで採用されていることから、これらのデジカメユーザーであれば、流用可能。既存資産を有効活用できるのはありがたい。

ハウジングの背面。録画操作とホールドのみ行なえる本体側面にある2つの選択ボタンはかなり小さく、爪先で押し込む感じ液晶モニターユニット「AKA-LU1」

GoPro HD Hero2(左)、JVC GC-XA1(中央)、ソニー HDR-AS15(右)

■Exmor Rセンサー、手ブレ補正、スロー撮影など、高性能・高機能を凝縮

 カメラ部には、暗所撮影に有利な1/2.3インチのExmor R CMOSセンサーを搭載。これにF2.8のカールツァイス テッサー レンズが組み合わされる。ズーム機能は備えない。有効画素数は約1,190万画素で、露出、ホワイトバランス、明るさの調整はすべてオートとなっている。電子式手ブレ補正機能を利用でき、手持ち撮影時だけでなく、車載時のブレに対しても有効に機能するという。画角は170度と120度の2種類から選択可能だが、手ブレ補正機能使用時は画角が120度に制限される。

Exmor R CMOSセンサーとカールツァイス テッサー レンズを搭載

 記録される動画はMPEG-4 AVC/H.264のMP4形式。撮影モードは1080pの「HQ」(29.97fps/1,920×1,080ドット/約16Mbps)、720pの「STD」(29.97fps/1,280×720ドット/約6Mbps)、「VGA」(29.97fps/640×480ドット/約3Mbps)の大きく3つに分けられる。

 さらに「STD」においては、記録時のフレームレートが60fpsの「SLOW」モードと、120fpsの「SSLOW」モードも利用できる。この2つはあくまでもスローモーション撮影用であり、音声は記録されず、再生時は30fpsとなる点に注意したい。つまり、120fpsの場合は4倍のハイスピード撮影になるわけだが、開発担当者によると、再生時60fpsや120fpsへの対応も検討しているとのことだった。対応が決まっているわけではないが、激しい動きをきめ細かい映像で見られるかどうか、というのも重要なファクターなので、ぜひ実現してほしいと思う。

 動画音声は、標準では本体前面にある内蔵ステレオマイクで録音され、いずれの撮影モードでも音声フォーマットはAAC/48kHz/128kbps CBR/ステレオ。“風音低減”の機能も自動で働くようになっており、屋外撮影時でも耳障りなノイズを減らす効果が見込めそうだ。

本体正面にステレオマイクを内蔵

 静止画撮影機能は常にインターバル撮影となる。撮影開始ボタンを押すと、あらかじめ設定した間隔(5/10/30/60秒)で連続的にシャッターが切られ、もう一度ボタンを押せば撮影を停止する。画像フォーマットはJPEG形式、サイズは1,920×1,080ドット。他社製品よりも解像度が低いとはいえ、ビデオカメラであることを考えれば重視されない部分であるし、むしろタイムラプス映像を作るという用途であれば、最初からフルHD解像度になっていた方が何かと都合が良さそうではある。

 稼働時間は、付属バッテリーの「NP-BX1」を使用した場合、「HQ」モードでの連続撮影時で140分としている。「GoProHD HERO2」がスペック上は“720p 60fpsで2.5時間稼働”、となっていることから、それと同等か、やや長寿命と言えるだろう。なお、32GBのmicroSDHCカードを使用した場合は「HQ」モードで250分相当の動画を記録できる。



■ Wi-Fi接続、スマートフォンでのプレビュー表示は快適

iPhone、Android、タブレットなどからコントロールできるようになるWi-Fi機能を標準搭載

 標準でWi-Fi(無線LAN)機能を備えている点は、やはり多くのユーザーにとって最も気になる部分の一つだろう。スマートフォンやタブレットから本製品にWi-Fi接続し、ソニーの既存アプリ「PlayMemories Mobile」を用いることで、映像のプレビュー、設定変更、記録した映像の確認・ダウンロードなどが可能になる。iOS版、Android版ともに本製品に対応したバージョンがすでに公開済みだ。

 本製品とスマートフォン(タブレット)とをWi-Fi接続する手順は、一般的なWi-Fi接続と変わりはない。カメラ本体側でWi-Fi機能を起動してから、その後現れる所定のWi-Fiアクセスポイントにスマートフォンで接続し、決められたパスワードを入力するだけだ。


PlayMemories Mobile(iOS版)「DIRECT-***」から始まるアクセスポイントに接続する

 ただし、記録映像の確認を行なう時と、映像プレビュー・カメラ操作を行なう時とでは、カメラ本体側で最初に起動する機能が異なる。前者の場合はカメラ本体側で“SEND”の項目を選ぶだけでよいが、後者の場合はカメラ本体側の“SETUP”内にある“RMOTE"を“ON”にする必要がある。マニュアルにも記載されているとはいえ、混乱しがちなところなので気をつけておこう。

iPhone、Android、タブレットなどからコントロールできるようになるWi-Fi機能を標準搭載映像プレビューもしくはカメラの設定変更を行なうときは“SETUP”から“RMOTE”を選び、“ON”にするWi-Fi機能をオンにするとディスプレイ左上にWi-Fiのマークが表示され、わかりやすい

 カメラ本体側でいずれかの機能を起動したら、スマートフォンでWi-Fi設定をした後、「PlayMemories Mobile」アプリを起動する。この時の本製品の認識速度はかなり高速だ。スマートフォンの機種にもよるが、iPhone 5で試したところでは、Wi-Fi接続処理と、その後実際にカメラ映像のプレビューや記録映像を一覧するまでが、それぞれ数秒程度で完了する。

カメラ映像のプレビューは高画質で、動きも滑らか

 Android端末ではやや時間がかかったが、それでも映像をプレビューできるようになるまで15秒程度。記録映像の一覧は、Wi-Fi接続処理が完了してファイル一覧を表示するまでが45秒くらいかかるが、待たされる感じはない。他のウェアラブルカメラではWi-Fi接続の完了までで1分以上かかる場合があったことも考えると、この速さは驚異的である。しかも、プレビュー映像の品質は高く、驚くほど滑らかに動くのだ。

 「PlayMemories Mobile」上では、カメラ映像のリアルタイムプレビューのほか、録画開始・停止の操作、動画・静止画撮影モードの切り替え、撮影解像度の設定、画角の変更、手ブレ補正のオン・オフができ、撮影済みデータの一覧・個別表示、スマートフォンへのダウンロードも可能。Androidアプリでは他のアプリとの連携機能も備え、撮影済みデータのアップロードやSNS投稿なども行なえる。撮影中であっても映像プレビューが表示され続けるところも、細かい部分ではあるが使い勝手の良さに結びついている。

動画撮影とインターバル(静止画)撮影の切り替えが可能動画撮影の設定では、撮影モード変更、手ブレ補正のオン・オフ、画角切り替えもOK
iOS版アプリでは、撮影済みデータの端末へのダウンロードを行なえるAndroid版アプリの方は、端末へのダウンロードだけでなく、インテント連携によるアップロード等も可能

■手ブレ補正機能は効果的だが、撮影合図の通知音は用途によっては不十分

 今回撮影した動画サンプルは4種類。画角・手ブレ補正機能の違いを確認できる登山道の歩行シーンと、水中での見え方の参考となるであろうスキューバダイビングと浅瀬でのシュノーケリング、スローモーション映像の比較が可能な滝のシーンとなっている。

 最初の歩行シーンでは、別売のウォータープルーフヘッドマウントキット「VCT-GM1」を使用し、頭部の右側にカメラ本体が位置するようにセット。170度の画角では、ほとんどレンズの真横にある筆者の額とサングラスが映り込んでいるのがわかる。背の高い木々で日光を遮られた山道であっても、暗さを全く感じさせず、くっきりとしたコントラストで細部まで描写しているところにも注目したい。手ブレ補正機能も有効に機能しているようで、補正なしでは見ているだけで酔ってしまいそうになる揺れがあるものの、補正ありでは明らかに揺れが軽減されたスムーズな映像になっている。ただ、170度の画角では、強い逆光にさらされるとハウジングのレンズ部周縁に円弧状の光が入り込むことがあるようだ。

 

【屋久島 荒川登山道歩行】


1080p 29.97fps/画角170度/手ブレ補正オフ(ダウンロード/122MB)


1080p 29.97fps/画角120度/手ブレ補正オン(ダウンロード/96.4MB)



720p 29.97fps/画角170度/手ブレ補正オフ(ダウンロード/55.2MB)



720p 29.97fps/画角120度/手ブレ補正オン(ダウンロード/35.9MB)



VGA 29.97fps/画角170度/手ブレ補正オフ(ダウンロード/18.5MB)



VGA 29.97fps/画角120度/手ブレ補正オン(ダウンロード/17.5MB)

 

 水中シーンでも、歩行時と同様のヘッドマウントキットを使用。さほど透明度が高くなかったせいか、少しピントが合っていないような見え方になった。潜水深度は最大でも5mほどと浅く、水深60m防水性能から考えればほんの序の口に過ぎないが、浸水を気にすることなくカメラを使えるのはやはりうれしい。

 しかし、スキューバダイビングでは自分の吐く空気の泡の音がかなり大きく、録画開始・停止の際にカメラ本体から鳴る音が聞こえにくい。ハウジングに格納することによって遮音されてしまうこともあり、息を潜めていないとボタンを押せたのかどうか判然としないのだ。音だけでなく、バイブレーションによる通知機能も搭載してほしかった。

 また、シュノーケリングの際の映像サンプルも用意したが、この時は水上で頻繁にハウジングから出し入れして設定を変えながら撮影を行なったこともあり、湿気や水滴が内部に入り込んだためか、レンズ部が曇るという現象が発生した。本来、使用中に何度も設定を変えることはあまりないだろうが、水辺で使用する際はハウジングの開閉は可能な限り控えたい。設定変更が必要なときは本体側ではなく、スマートフォンからリモートで行なうべきである。

 

【屋久島 元浦 スキューバダイビング】


1080p 29.97fps/画角120度/手ブレ補正オン(ダウンロード/126MB)

【屋久島 長田浜 シュノーケリング】


1080p 29.97fps/画角170度/手ブレ補正オフ(ダウンロード/176MB)

 

 さらに、落差約88mという巨大な滝のすぐ近くからスローモーション映像を撮影。通常速度のものと、SLOW、SSLOWの3種類を用意した。静止画像では、画角の違いがわかりやすいであろう花壇を時間帯を変えて撮影。夜間は、被写体周辺を直接照らす街灯がなく、肉眼でも見にくい暗闇の中での撮影だったものの、視認できる程度には写すことができている。

 

【屋久島 大川の滝】



720p 29.97fps/画角120度/手ブレ補正オン(ダウンロード/30.8MB)



720p SLOW(60fps)/画角120度/手ブレ補正オン(ダウンロード/23.7MB)



720p SSLOW(120fps)/画角120度/手ブレ補正オン(ダウンロード/46MB)

 

 

【花壇】

昼間/画角170度昼間/画角120度
夜間/画角170度夜間/画角120度

■ 快適なWi-Fiプレビュー、高画質でライバルを一歩リードか

 GoProHD HERO2はすでに発売からかなりの期間が経過していることから、このタイミングで単純に比較するのはフェアではないかもしれないが、カメラ性能においては「HDR-AS15」が競合製品の中では今のところピカイチと言っていいだろう。

 機能面についても、Wi-Fiや手ブレ補正など注目度の高い要素を余すところなく、しかも実用性に優れた形で盛り込んでいる点が素晴らしい。とはいえ、やはりハウジングの使用がどうしても気になるというユーザーもいるかもしれない。個人的にも、できればカメラ本体のみでの使用をもう少し考慮してほしかった、という気持ちが少なからずある。

 とは思いつつも、中途半端な防水・防塵でびくびくしながら使うより、あらゆる場面で堂々と、荒々しく使えるほうがありがたいのも事実。60fps/120fps再生対応も望みたいが、これが実現されれば、遠からず「GoPro」の牙城を切り崩すことになるかもしれない。



(2012年 10月 5日)

[ Reported by 日沼諭史 ]