レビュー
PCもBluetoothもマルチ対応のSound Blasterヘッドフォン
しっかりした音質と豊富な機能「Sound Blaster EVO Zx」
(2013/9/19 09:45)
PC向けサウンドカード「Sound Blaster」などでお馴染みのクリエイティブメディアから、Sound Blasterブランドのヘッドフォン製品「Sound Blaster EVO」シリーズが登場した。
Sound Blasterのブランドを持つだけに、全4モデルがUSBヘッドフォン/ヘッドセットとして動作。ラインナップは、ベーシックモデル「Sound Blaster EVO」、Bluetooth対応の「Sound Blaster EVO Wireless」、これにオーディオプロセッサSB-Axx1を搭載した「Sound Blaster EVO Zx」、さらにノイズキャンセリング機構までを加えた最上位モデル「Sound Blaster EVO ZxR」の4製品だ。
今回は、アッパーミドルモデルに相当する「Sound Blaster EVO Zx」を紹介する。直販価格は22,800円だ。
装着感良好。一度覚えれば直観的に操作可能
黒とメタリックレッドの2トーンカラーからなる本体デザインは見栄えがいい。ハウジング部は回転するだけでなく折れ曲がる構造になっており、コンパクトにカバンに忍ばせることが可能。
装着してみたときのフィット感も悪くはない。ドライバーユニットサイズは直径4cm。アラウンドイヤータイプの構造だが、パッド部分は筆者の耳の上下には若干当たる。完全に耳を覆うタイプを臨むならばユニット径が直径5cmと大型の上位機「Sound Blaster EVO ZxR」の方がいいかもしれない。ヘッドバンド部のパッドは、堅すぎず柔らかすぎず丁度良い感触だ。
そして、右側ユニット側が本機のメインユニットに相当し、幾つかのスイッチや接続端子が付いている。上部に付いているのは音量調整ダイヤル。ダイヤルは歯車状の形をしているので装着時も指で「あ、ここにある」と当たりを付けやすい。
装着状態で右後部中央にあるのが1曲戻し、1曲送りの操作ボタンだ。右側ユニット下段にあるのは電源スイッチ。こちらは、本機に内蔵されているサウンドプロセッサの効果の有効/無効化のスイッチも兼ねている。なお、オン時には緑のLEDランプが点灯する。
左右にはSoundBlasterロゴがプリントされたプレートがあしらわれており、稼働時にここの外周が赤く点灯するが、右側ユニット側の方はそれ自体がスイッチになっており、長押しすることでBluetooth機器とペアリングさせることができる。ペアリング済みのBluetooth機器との再接続は、これを短く押せばOK。また、楽曲再生中に短く押すと、楽曲の再生停止/再開の操作も行なえる。
USB、Bluetooth、アナログ。3つの接続方式
本機を使って音を聞くためには、3つの方法がある。
1つ目はUSBを用いてのデジタル接続だ。PCと本機をUSBで接続すると、本機がUSB DACとして機能することになり、PCに対して新しいサウンドデバイスが追加されることになる。USB DACのドライバーは、自動的にWindowsの標準ドライバがインストールされ、すぐにEVO Zxをアンプ付きヘッドセットとして利用することはできる。
OSの標準ドライバでも動作するが、EVO Zxには、クリエイティブの「SBX Pro Studio」テクノロジーが詰め込まれており、この機能を利用するには、別途専用ドライバを組み込む必要がある。
USB接続時は、本機の電源が入り、SBXボタンによるSBX機能のオン/オフが可能となる。オン時(LED点灯時)は、独自の音響技術「SBX Pro Studio」が有効となる。SBX機能オン時は、後述する専用コントロールパネルで設定した音響プログラムを適用したサウンドを聞くことができるようになる。オフ時(LED消灯時)は、SBX効果はオフになるが、ちゃんとサウンドを聴くことができるし、本体内蔵のアンプ機能も働き、右ユニット上部のダイヤル操作による音量操作も行なえる。
2つ目は、Bluetoothを用いたワイヤレス接続だ。PCはもちろんのこと、スマートフォンやポータブルオーディオプレーヤーとの接続時には便利だ。
Sound Blaster EVO Zxを、一般的なBluetoothヘッドセットと同様にペアリングさせて接続させればOKだ。また、EVO Zxは、NFC(Near Field Communication)も搭載しているので、NFC対応スマートフォンなどとは自動接続が可能だ。
実際に、筆者自前のGalaxy NoteでBluetoothとNFCの両方を有効化させた上でZxをタッピングさせてみたところ、見事認識して接続が行なえた。BluetoothのプロファイルはA2DP、AVRCP、HFP、HSP、コーデックはSBC、aptX、AACに対応する。Bluetooth利用時のバッテリ持続時間は約8時間だ。
Bluetooth接続時には、Sound Blaster EVO Zxの機能の全てが利用できる。USB接続時と同様に、電源スイッチオン(LED点灯時)には、ちゃんとSBX効果を適用したサウンドを聴くことができた。
また、USB接続した状態で、Bluetooth接続も同時に行ない、両方のデバイスから楽曲を再生してみたところ、両接続からの音声がミックスされて再生された。ゲーム効果音をUSB接続で、BGMをBluetoothで流す…といったことも、できなくはない。
3つ目は、有線ケーブルによるアナログ接続方式。本体側からケーブルは出ていないものの、音楽再生とマイク入力に対応した4極タイプのステレオミニ音声入力を装備しており、接続用のケーブルも付属する。
やや意外だったのは、アナログ接続時は、電源をオンにすることはできず、普通のパッシブ型のヘッドフォンとなること。なので本体の音量調整ダイヤルを上下させても音量は変化しない。
そのため、EVO Zxのフル機能を楽しむのであれば、USBもしくはBluetooth接続が必要といえる。ただし、Bluetoothヘッドフォンとして使ってバッテリが無くなった後でも、アナログ接続すれば使えるので、こうしたマルチな入力対応はありがたい。
専用ドライバ/アプリでフル機能を発揮
システム周りの設定やドライバソフトウェアについても触れておく。
PC接続用のドライバソフトウェアはクリエイティブメディアのサポートサイトから最新版をダウンロードしてインストールすることになる。
ドライバソフトウェアのインストールが完了すると「Sound Blaster EVOコントロールパネル」というソフトウェアが利用できるようになり、以降、設定の変更はこれを利用して行なう。
メニューは「SBXプロファイル」「CrystalVoice」「ヘッドフォン」「ミキサー」の4項目からなっている。
「SBXプロファイル」はサウンドエフェクトプログラムの切換に相当し、「ミュージック」「ムービー」「ゲーム」の3つが選べるようになっている。実際に音を聞いてのインプレッションは後述するが、基本的には、楽しむサウンドのジャンルに合わせて選択すれば良い。また、SBX Pro Studioの各パラメータ選択もここから行なえる。
「CrystalVoice」はマイク関連の設定を行なうところ。口元にニョキっと伸びたインカムマイクのようなものが無いので、ただのヘッドフォンと思われるかもしれないが、実は右側ユニットの上部手前側にマイクが搭載されており、ボイスチャットにも対応しているのだ。ノイズ低減やハウリング(エコー)低減などマイク関連の調整は、このCrystalVoiceで行なう。
「ヘッドフォン」は、サラウンドサウンドのモード設定や、音像の再生テストを行なうメニューだ。Sound BlasterEVO Zxは7.1chのバーチャルサラウンドに対応しているため、7.1chモードに設定されている。
「ミキサー」は音像の左右バランスの調整やマイクの録音レベルの設定を行なうところだ。ここの項目は、基本的にはOS側のコントロールパネルでできることと変わらない。
インストールも成功して、設定も終わっているのに音が鳴らないというときは、タスクバー右にあるスピーカーアイコンを右クリックして出てくる「再生デバイス」メニューを選択し、システムで優先的に活用されるサウンドデバイスがEVO Zxとなっているかどうかを確認するといい。
また、バーチャルサラウンドサウンドがいまひとつステレオサウンドにしか聞こえないようなことがあれば、「再生デバイス」の「構成」を選択してちゃんと7.1chサウンドシステムが選択されているかを確認するといいだろう。
コントロールアプリは、スマートフォン版も用意されている。iOSとAndroid用に「Sound Blaster Central」というアプリが提供されており、対応OSは、iOS 5.0以上とAndroid 2.2以上。
Bluetoothで音を出したり、簡単な選曲を行なうのであれば、アプリを入れずにも使えるが、スマートフォンと組み合わせてアグレッシブに使い込む場合には、Sound Blaster Centralをインストールしておきたい。メニューの構成や使い方などはWindows PCとほぼ同じだ。
音質はかなり優秀
音質は良好だ。USBでもBluetoothでも、低音から高音まで尖ったところがなくとてもフラットな周波数特性が実現できている。高音のレスポンスがよく、低音はパワフルだが強調されすぎず、バランスが良い。
そして、Sound Blaster EVO Zxはノイズキャンセリングヘッドフォンではないのだが、密閉性がそれなりに高いのか、環境音の遮音性もいい。音楽を聴くのにも、基本性能は申し分ない。
ドライバ/アプリで選択できる、3つのSBXプロファイルも試してみた。これは、「ユーザーからどのくらい音源が離れて聞こえるか」、そして「音像の広がり具合」の違いとして現れる。
「ミュージック」は、音像が比較的ユーザーから近めの位置に定位する。残響効果は控えめで音の輪郭がクリアな傾向だ。
「ムービー」は音像が比較的ユーザーから遠くなりワイドな音響空間になる。残響効果は「ミュージック」よりも強め。アンビエント感重視な音響プログラムだ。
「ゲーム」は指向性の強いスピーカーで聞いているような定位感がはっきりした音像表現となる。また、低音が「ミュージック」「ムービー」と比較してパワフルになる。
ドルビーやDTSのデモディスクを7.1chモードで再生し、サラウンドサウンドの評価視聴も行なった。音像がユーザーから離れた定位感で再生される「ムービー」が一番、バーチャルサラウンド感が分かりやすい。左右メインスピーカーは前方斜め左右の前あたりに定位する。サラウンドスピーカーは左右の肩口の先当たりから聞こえる。サラウンドバックはさすがに後方からは聞こえないが、それでも、頭部のうなじあたりから聞こえる。
音像がユーザーを中心にしてグルグルと回るテストサウンドでは、音像は真円の軌道ではなく、左右にやや膨らんだ楕円軌道で聞こえる。また、その際、ユーザーは楕円の重心(中心)位置ではなく、やや後方よりの印象。これは、前述したようにサラウンドバックが比較的近場で聞こえるため、そう感じるのだと思う。
なお、上記の3つのプロファイルだけでなく、SBX Pro Studio機能の詳細な設定やイコライザの調整をユーザー自身が行なうことも可能だ。プロファイル画面の「編集」ボタンを押すか、選択したプロファイルを再度タップすることで、SBX Pro Studioの5つの機能のパラメーターやON、OFFを個別に設定できる。
SBX Pro Studioの機能は、圧縮音源を高音質化する「SBX Crystalizer」、バーチャルサラウンドの「SBX Surround」、音量差を自動補正する「SBX Smart Volume」、映画音声の会話をクリアにする「SBX Dialog Plus」、低域強調技術「SBX Bass」の5項目。たとえば、音楽再生時にサラウンドを抑えたり、ダンス系では少し低域を強調する、といった細かな調整はここで行なえる。
ユーザーが設定した値は保存可能で、EVO Zx本体に設定が記憶されるため、パソコンで設定したパラメーターをそのままスマートフォンでも利用できる。
素の音とマルチな対応力が魅力
価格は約2万円とやや高価ではあるが、USB、Bluetoothヘッドセット、アナログヘッドフォンとして動作し、さらにバーチャル7.1chサラウンドヘッドフォンとしても利用出来るマルチパフォーマンスヘッドセットであることを考えれば「このぐらいの値段になるか」と納得させられる。素の音質が良いため、PCもしくはスマートフォンを軸に、音楽や映画を楽しんでいるデジタルサウンド愛好家にとって、満足度は高いはずだ。
また、家庭の環境事情などで、マルチチャンネルスピーカーを設置しづらいが、サラウンドサウンドを楽しみたい人にとっては、リーズナブルな選択肢といえるかも知れない。映画はもちろんだが、SoundBlasterブランドだけあって、ゲームサウンドの相性もいい。特にノートPCでゲームを楽しんでいる人にはオススメしたい。大人気のMMORPG「ファイナルファンタジー XIV: 新生エオルゼア」のPC版はサラウンドサウンド対応なので、ゲーミングノートPCで、この作品を楽しんでいる人などには、おあつらえ向きだろう。
Sound Blaster EVO Zx |
---|