レビュー

“リモート視聴”で体験する新しいテレビの可能性

ソニーBDレコーダ+TV SideViewが実現するどこでもTV

BDZ-ET2100とTV SideView

 3月25日、国内で初となるデジタル放送の「リモート視聴」対応機器が登場した。ソニーが2013年11月に発売したBlu-rayレコーダ「BDZ-ET2100」など5モデルが、ソフトウェア・アップデートを開始し、あわせてAndroidアプリ「TV SideView」も更新。リモート視聴可能となった。

 リモート視聴は、家庭内のテレビやレコーダで受信している番組や録画番組を外出先のスマートフォンやタブレットから、インターネット経由で視聴可能にするもの。これにより、海外旅行中でもインターネット接続環境さえ整っていれば、日本のテレビ番組の“生放送”もチェックできるようになるなど、テレビ番組をより積極的に活用する環境が整ったといえる。

 ソニーのBDレコーダ「BDZ-ET2100」とタブレット「Nexus 7(2012)」+「TV SideView」の組み合わせを中心に、新しいリモート視聴の世界を体験した。

リモート視聴が生まれた経緯

 まず、このリモート視聴が生まれた経緯を簡単におさらいしておこう。

 アナログ放送時代にも、放送や録画番組を外出先で視聴可能にする技術は存在していた。有名なのは、ソニーの「ロケーションフリー」だろう。しかし、デジタル放送時代となり、放送がスクランブル化されたこと、また放送の再配信を事業として行なう会社と放送局による係争(いわゆるまねきTV裁判)などもあり、「デジタル放送は外には配信できない」という状況が固まっていた。

 一方、2013年からは、著作権保護技術として「DTCP+」を利用し、家庭内で録画したデジタル放送番組を外出先で視聴可能とするソリューションが生まれた。しかし、外部へ配信可能できるのはデジタル放送の「録画番組」に限定され、放送をそのまま外出先へのストリーミング配信はできなかった。また、受信機に直接配信機能を搭載してはいけない、という決まりになっていたため、別途配信用のサーバー(NASなど)を用意し、(1)レコーダで録画、(2)録画番組をDTCP+サーバー(NAS)にダビング、(3)DTCP+サーバーからクライアントに配信、という何段にも及ぶ設定や連携の手間が生じていた。

アイ・オー・データのDTCP+対応NAS「HVL-ATシリーズ」

 しかし'14年2月に、外出先からのテレビ放送/録画番組視聴を容易にするため、次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)が「デジタル放送受信機におけるリモート視聴要件 Ver1.0」を策定。テレビやレコーダから直接外部に配信可能になるなど、リモート視聴のための制約が大幅に緩和された。

 新しいリモート視聴は、自宅のテレビ/レコーダなどの受信番組や録画された放送番組を、外出先のモバイル端末から専用アプリを使って視聴可能にする仕組み。一度家庭内でモバイル機器とテレビ/レコーダを紐付け(ペアリング)しておけば、外出先から家庭内のテレビ/レコーダにアクセスして、放送のリアルタイム視聴や録画番組視聴が可能になる。

 そして、このリモート視聴要件に対応した第1弾製品となるのが、ソニーのレコーダ5機種とアプリ「TV SideView」となる。ソニーではこのリモート視聴機能を「外からどこでも視聴」と命名し、レコーダの新機能として訴求している。なお、著作権保護技術としては、今回のソニーのソリューションでもDTCP+を採用している。

リモート視聴の利用イメージ
BDZ-ET2100

 リモート視聴のために必要となるのは、対応のテレビ/レコーダと、クライアント機器、そしてインターネット接続環境。ソニーBDレコーダの、リモート視聴対象機種は、'13年11月発売のBDレコーダ「BDZ-ET2100」、「BDZ-ET1100」、「BDZ-EW1100」、「BDZ-EW510」、「BDZ-E510」の5機種(BDZ-E510は録画番組の視聴のみ対応)。

 リモート視聴クライアントは、スマートフォンやタブレットで、ソニーのテレビ/レコーダ連携アプリ「TV SideView」と500円の有料プラグインが必要となる。3月25日時点では、Android版のVer.2.3.2を提供開始しており、対応OSはAndroid 4.0.3以降。

 また、4月下旬以降には、リモート視聴に加え、ワイヤレスおでかけ転送などの機能を追加したフルバージョンのVer.2.4.0をAndroidとiOSで公開予定。対応OSはiOS 6.0以降(iPhone 4S、iPad 2以降)となる。

リモート視聴の接続例

設定はとにかくシンプル

[設定]で、[ホームサーバー設定]を[入]に、[外出先視聴]を[許可する]を選ぶだけ

 今回はテストのために、レコーダに「BDZ-ET2100」を、タブレットとしてAndroid 4.4.2搭載の「Nexus 7(2012)」を用意した。

 早速使ってみたが、とにかく設定はシンプル。リモート視聴(外からどこでも視聴)を使うための設定は、ホームネットワーク環境にレコーダを接続し、[設定]内の、[ホームサーバー設定]を[入]にして、[外出先視聴]を[許可する]にするだけだ。

 TV SideViewはGoogle Playからアプリをダウンロードし、セットアップ画面で[機器登録]から[BDZ-ET2100]を登録。登録完了後、プレーヤープラグイン購入を促す表示がでるので、Google Playにアクセスして、500円でプラグインを購入する。あとは、[機器設定]-[BDZ-ET2100]の[外出先視聴]をオンにしておくだけで、準備完了となる。

TV SideViewの初期設定画面
BDZ-ET2100を登録
プレーヤープラグインを500円で購入
外出先視聴オプションをオンに
チャンネル設定

 従来の、DTCP+リモートアクセスでは、レコーダだけでなく対応NASを準備し、レコーダで録画した番組をNASにムーブするための設定を行なうなど、開始までの準備が煩雑だった。NexTV-Fによりリモート視聴の技術要件が整備されたことで、「ここまで設定が簡単になったのか!」と感動してしまった。

リモート視聴の醍醐味。放送番組をライブ視聴

TV SideViewのメイン画面

 TV SideViewを立ち上げると、[見どころピックアップ]というメイン画面が立ち上がる。ここでは現在放送中の番組や録画番組、人気のYouTube番組などがサムネイル付きで表示される。

 ここで、見たい放送中の番組を選んで、タップするだけでレコーダで受信した放送中番組をTV SideViewで視聴可能になる。番組を選択し、アプリ下部の[モバイル機器]のタブをタップすると再生を開始する。[現在放送中の番組]の一覧表示や、[番組表]からのチャンネル選択/再生が行なえる。

現在放送中の番組リスト
下の[モバイル機器]をタップして再生開始
番組表
LAN内で放送番組のライブ配信を行なうと、遅延は約5~6秒

 まずは、ホームネットワーク(LAN)内で放送番組を視聴(ソニーの名称は「家じゅうどこでも視聴」)したところ、10~12秒程度でタブレット上で再生を開始。画質は720p/360p/180pが選択できるが、LAN内であれば基本的に720pで再生される。なお、テレビの受信映像と比較すると、TV SideViewのライブ視聴では約5~6秒の遅れて表示される。

外出先で放送をライブ視聴

 本題となる外出先からのリモート視聴「外からどこでも視聴」を試してみよう。まずは、NTTドコモのLTE対応の無線LANルータ「L-03E」を利用して、屋外からTV SideView上で放送番組を選択すると、約18~20秒でタブレット上で視聴可能になった。

 ネットワーク帯域が足りないためか、360pでの再生となったが、字幕や時刻表示もしっかり見えて、7型/ドット液晶のNexus 7(2012)で見る限り、画質にもさほど不満を感じない。若干文字周りのモスキートノイズが見えるほか、大きなシーンチェンジの切り替えでノイズが出るぐらいで、十分満足できる画質といえる。

 自宅で別の固定回線からアクセスした場合は、720pで全く途切れること無く再生できた。なお、720pで受信できる環境では、720p/360p/180pの3段階で画質選択できるが、360pでしか受信できない環境では、720pは選択項目として出てこない。

 720p再生時になるとHDらしい精細感があり、ノイズも皆無。360pと比較にならないくらい高画質だ。通信環境に余裕があれば基本的には720pで使いたい。ただし、後述する「データ通信容量の制限」といった課題もあるので、どの設定が良いとは一概には言えないかもしれない。

 ソニーでは外からどこでも視聴の場合、ネットワーク帯域として、画質720pの場合4Mbps、360pで1.5Mbps、180pで700kbpsが必要としている。なお、地下鉄の南北線で見てみたところ、画質360pで、20分程度の乗車で数回1~2秒程度途切れたものの、しっかり番組を楽しめた。また、市ヶ谷駅の構内では720pでも視聴できた。

公園でテレビ視聴
駅のホームでも問題なく利用できた

 なお、外からどこでも視聴における放送のライブ配信については、対応局と非対応局が存在する。地デジは全局がライブ視聴に対応しているが、WOWOWなどの一部BSチャンネルは非対応となる。有料放送チャンネルの一部では、放送番組のネット配信の権利を有していないものがあるための措置とのこと。

 また、110度CSデジタル放送については、TV SideViewの番組表が対応していないため、現時点では非対応となっている。BSやCSについては、サッカーや野球、F1などモータースポーツなど、“生放送”の価値が高い番組も多いため、今後の対応に期待したい。なお、録画番組については、地デジ、BS/110度CSデジタルのいずれも配信チャンネルの制限はない。

録画番組も宅内/宅外をシームレスに。少し気になる“スキップ問題”

 続いて録画番組を見てみよう。録画番組は、左上のTV SideViewのアイコンをタップすると、テレビや録画、コンテンツ、ソーシャルなどの選択メニューが現れ、ここで[録画番組リスト]を選ぶと番組をリスト表示。番組を選ぶだけで再生が行なわれる。外から/家じゅうどこでも録画のどちらも共通のインターフェイスなので、家の中/外を意識せずに使えるようになっている。

録画番組リストは左上のTV SideViewアイコンから
録画番組リスト
外出先などでリストに直接アクセス出来ていない時は、グレーアウト

 録画番組を、外からどこでも視聴した場合は再生開始まで約17~19秒、家じゅうどこでも視聴の場合は約10~11秒。放送のライブ視聴時と体感上の大きな差は無い。

 ただし、録画番組の場合、外からの視聴時と、家庭内の視聴時で大きく変わる部分がある。録画番組の外から再生時には、チャプタのスキップ/バックや、15/30秒スキップ/バックといった「CMスキップ目的」の機能が利用できないのだ。

 家庭内での再生時にTV SideViewに表示されていた、チャプタスキップや、30秒スキップの[→]などのボタンが、外から再生時にはグレーアウト(不活性化)されており、選択できないのだ。NHK朝ドラのような短い番組であればいいのだが、バラエティ番組などを「サクッと消化したい」といった気持ちの時はやはりCMをスキップしたいと感じる。

家庭内からの再生では、チャプタスキップや15秒スキップが可能
外出先からの再生では、チャプタスキップ、15秒スキップのボタンがグレーアウトしており、選択できない

 一応、タイムシークバーを使った早送り/戻しや、画面上に表示される早送り/戻しボタンによる操作には対応している。ただし、シークバーではざっくりとしか時間調節できないし、そもそもレコーダ側で常時トランスコードを行なうため、バーを操作に伴い10秒ほど待つことになる。うまく再生時間を操作できないので、そのまま再生を続けたほうがストレスは少ないようにも感じた。

 少々残念な部分だが、こういう仕様になっているのは、NexTV-Fのリモート視聴技術要件において「子機に搭載されるリモート視聴機能には、明らかにCMスキップを目的とした機能は設けられないことが望ましい(例えば、タイムラインバー、早送り、巻き戻し等は可)」と定められているためだ。要するに、民放のビジネスモデルはテレビCMを前提にしているため、「そのビジネスを崩さないように配慮して、機能を実装するように」と規定されているのだ。

 という理由は理解できる。ただ、TV SideViewが、可能な限り「宅外でも宅内でも同じ」という操作体験を実現しているため、この部分で「あ、いま外から見ているのか」と感じさせられるのが残念だ。なにかいい解決方法があればいいと思うのだが……。

 この点以外では、放送のライブ視聴/録画番組、宅内/宅外、といった違いをほとんど意識せずに使え、リモート視聴対応の第1弾のソリューションとして完成度は高い。

 そのため、これまでもレコーダやテレビのDLNA/DTCP-IP連携機能を使い、タブレットやスマートフォンで放送や録画番組を見ていた、という人にとっては、当初はあまり新鮮味のない体験と感じるかもしれない。ただ、公園のベンチや地下街の喫茶店でも、ネット環境さえ整っていれば自宅のレコーダの番組が見られる、という状況を改めて確認すると、じわじわとその魅力が感じられてくる。

リモート視聴のいくつかの注意点。レコーダの進化に期待

 ソニーBDレコーダとTV SideViewの組み合わせにより、かんたんな設定で使いやすいリモート視聴環境が構築可能になった。しかし、NexTV-Fのリモート視聴規格でもいくつかの制限があるので注意したい。

 まず、「外からどこでも視聴」利用のためには、利用前にホームネットワーク内でレコーダとTV SideViewをペアリング(紐付け)しておく必要がある。また、90日に1回はホームネットワーク内でペアリング状況を更新する必要がある。また、同時にペアリングを有効化できる子機の台数は6台まで、同時にリモート視聴できる子機は1台までとなる。

 こうした制限は、このリモート視聴環境を「私的利用」の範囲に留めたい、という狙いがある。要するに放送を再配信するようなビジネスを禁じて、ユーザーが個人でテレビ番組をリモートで楽しむための環境整備として、この規格が決められたためだ。詳しくは、NexTV-Fへのインタビュー記事で解説している。

 また、レコーダ側にも制限がある。リモート視聴は常に番組の再変換(トランスコード)を伴うため、配信時にチューナの1系統を必ず専有する。そのため、今回利用したトリプルチューナ搭載「BZT-ET2100」でも、2番組以上を録画していると配信できないことがある。

 具体的には、レコーダの電源が[切]の状態で2番組以上の録画実行中の時と、レコーダの電源が[入]の状態で1番組以上の録画実行中の時は、ライブ視聴ができない。また、録画番組についても、2番組以上の録画が実行されている場合は、「外からどこでも視聴」が行なえない。さらに、他のスマートフォンやタブレットがレコーダにアクセスしている場合も、外から/家じゅうどこでも視聴は利用できない。詳細については、同社ホームページでまとめられている。

・「外出先から視聴」に関する制限事項
http://qa.support.sony.jp/solution/S1402210060506/?bdmk

 レコーダの機能面の制限で、使っていて一番気になったのは、“レコーダ切で2番組録画実行時”に外からどこでも視聴できないというもの。何度か接続に失敗して気づいたのだが、3番組同時録画でなく、2番組の同時録画時でも配信できないというのは少々意外であった。

 例えばソニーのレコーダでは自動録画機能の「x-おまかせ・まる録」があるが、この機能を使っている場合、かなりの頻度で、外から視聴できない問題に出くわす(のでテストではOFFにした)。今回は従来機種のファームウェアアップデートによる対応のため、レコーダの商品企画段階では、このリモート視聴対応が考慮されていなかったのかもしれない。リモート視聴を最大限に活用するためにも、次世代のレコーダでは、より柔軟な配信ができるようにしてほしい。逆に言えば、リモート視聴の対応を強化することで、レコーダの価値は大いに高まると感じた。

 また、もう一点の大きな注意点が、LTEや3Gなどの通信回線を使う場合のデータ通信容量の制限だ。国内各キャリアのLTE回線では、プランによって違いはあるものの、1カ月に利用できるデータ通信容量は「7GB」が1つの基準となっており、この上限を超えると通信速度が制限されるものがほとんどだ。

 参考までに、7GBを各画質モードの再生時間に換算すると、720pで約4時間30分(1時間で1.47GB)、360pで12時間(同567MB)、180pで25時間(同279MB)だ。利用頻度は使い方や利用月など、人それぞれだろうが、720pの4.5時間はさすがに厳しい。そもそもスマートフォンの場合、WebブラウズやFacebookなどのソーシャルメディア、YouTubeなど、日常的に多くのデータ通信容量を使っている人もいるだろう。リモート視聴の使いこなしについては、データ通信容量と画質の選択や、回線選び、さらには後日対応予定の番組持ち出しなどとの組み合わせの工夫も、満足度を左右するポイントになりそうだ。

 ストレスのないリモート視聴環境を考えると、データ通信容量が現時点では無制限のWiMAX系サービスを使ったり、公衆無線LANを積極的に活用するなどの対応も検討したい。リモート視聴の人気が高まれば、これを前提とした、大容量や無制限通信プランなどの登場もあるかもしれない。

TV SideViewは4月にワイヤレスおでかけ転送や番組録画予約に対応

 TV SideViewでは、音声検索機能も搭載。番組表やYouTube、録画番組などからキーワードで検索できる。ただし、現時点ではTV SideViewからの録画予約は行なえず、4月下旬のTV SideViewアップデートで「外から録画予約」が追加される予定。

番組情報を確認できる。4月のアップデートでは、TV SideViewからの遠隔録画予約にも対応予定
音声検索にも対応
[浅田真央]の検索結果。番組表から1番組、YouTubeでは50以上ヒット

 また、4月のアップデートでは、録画番組リストから番組を選んで、無線LAN経由でタブレットなどに番組転送する「ワイヤレスおでかけ転送」にも対応予定。これにより番組リストから、[転送]アイコンを押すだけで、番組を“持ち出し”可能になる。タブレット/スマートフォンのメモリ容量が必要になる一方で、外から/家じゅうどこでも視聴のようなデータ通信容量が不要になる。モバイルの視聴環境構築という点では、持ち出しとストリーミングの使いこなし、使い分けも重要になりそうだ。

 4月のアップデートにより、TV SideViewで「外からどこでも視聴」、「家じゅうどこでも視聴」、「ワイヤレスおでかけ転送」、「外から録画予約」の4機能に対応予定だ。外から録画予約以外の3つの機能の利用には500円のプラグインが購入が必要となる。

TV SideViewの機能拡張スケジュール

 なお、外からどこでも視聴(リモート視聴)以外の機能については、従来もDLNA/DTCP-IPアプリ「Twonky Beam」や「RECOPLA」、Webサービス「CHAN-TORU」などで実現されていたが、今後はTV SideViewに一本化される。ただし、Twonky BeamやRECOPLAも継続して利用できる。

 TV SideViewにおける、パソコンなどAndroid/iOS以外の製品での対応については「検討中」とのこと。また、SCEのレコーダ「nasne」もリモート視聴に対応予定としている。

テレビのあり方を変える? リモート視聴への期待

 外からどこでも視聴(リモート視聴)により、通信環境があれば、どこでもテレビ番組を見られるようになったというのは、「日本のテレビ」のありかたを考える上でも非常に大きな進歩と感じる。「アナログ時代に実現され、デジタル放送時代にできなくなってしまったこと」ではあるが、規制緩和により、「いつでもどこでもテレビを楽しめる」ようになったことは、より多くの放送コンテンツに触れるきっかけを増やしてくれるだろう。

 録画番組については、これまでもNASを使ったDTCP+の仕組みでリモート視聴と同等の環境は実現できた。しかし、レコーダとDTCP+対応NASの組わせによるリモート視聴における、[レコーダで録画]→[NASにムーブ]→[クライアントから視聴]といった面倒な環境構築/設定を経験した者としては、感動的なくらい簡単なソリューションが生まれた、ということを歓迎したい。

 もう一つのポイントは、「海外でも、自宅の日本のテレビ番組を自由に見られる」という点だ。今回は日本国内でテストしているが、例えば海外旅行や出張時に、どうしても見たい日本の番組がある場合、回線さえ用意できればそれらが視聴できる。最近はWOWOWやスカパーなどの放送サービスもVODを強化しており、一部の番組は放送と同時(放送前も)にストリーミング提供しているものもあるが、これらのサービスの多くが国内向けに限定されている。リモート視聴は、自宅のチューナやレコーダに私的利用の範囲でアクセスするため、海外からも視聴できる。この点は、海外出張や旅行が多い人にとってはかなり魅力的なものになると言えそうだ。

 通信環境をどうするかという課題はあるが、リモート視聴のスタートは、テレビ視聴や、テレビ/レコーダという製品のあり方も変えていくだろう。スマートフォン/タブレットだけでなく、パソコンなど対応機器の拡大とともに、他のレコーダ/テレビメーカーによる新たな提案にも期待したい。

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臼田勤哉