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デジタル放送の“リモート視聴“規格が決定。NexTV-F

家の地デジを外出先で視聴可能に。ペアリング6台まで

 次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)は13日、自宅のスマートテレビなどで受信している映像を外出先からインターネットを介してモバイル視聴可能にする「リモート視聴」のための技術要件「デジタル放送受信機におけるリモート視聴要件 Ver1.0」を公開した。

 リモート視聴は、自宅のテレビの受信番組や録画された放送番組を、外出先かのモバイル端末から視聴可能にするもの。視聴者は、スマートテレビに紐付けられた特定のモバイル端末から、専用アプリケーションを使って、地上波のリアルタイム視聴や録画番組視聴が可能になる。

リモート視聴の利用イメージ

 リモート視聴の利用のためには、「リモート視聴要件」を満たしたテレビ/受信機(親機:リモート視聴対応受信機)と、対応アプリを搭載したモバイル端末(子機:リモート端末)、インターネット接続環境が必要。

 リモート視聴のため、親機と子機は、あらかじめ宅内でペアリングを行なっておく必要がある(外出先からのペアリングはできない)。ペアリングの有効期間は最長で3カ月。同時にペアリングを有効化できる子機の台数は6台までで、同時にリモート視聴できる子機は1台までとなる。

 親機から子機へのデジタル放送伝送については、AES(鍵長128bit)程度の強度を持つ暗号化方式による保護が必要。また、子機のリモート視聴アプリから映像出力を行なう場合は、著作権保護規格のHDCPに則った技術的保護が必要。Bluetoothで音声出力する場合はA2DPおよび、SCMS-Tによる保護が必要でコピー禁止として出力する必要がある。

 親機に蓄積したデジタル放送コンテンツのリモート経由での子機へのコピー/ムーブは禁止。また、子機に搭載されるリモート視聴機能には視聴中のコンテンツのキャプチャ機能の搭載は不可とされるほか、「明らかにCMスキップを目的とした機能は設けられないことが望ましい」と規定している。

 また、子機のリモート視聴アプリには、リモート視聴以外のバナーやアイコンなどの同時表示などを行なわないよう定めている。ただし、放送事業者の許諾があれば、この限りではない。

 なお、親機を開発/製造/販売するメーカーは「リモート視聴要件」の遵守を次世代放送推進フォーラムに届け出る必要がある。また、アプリケーション開発/流通のための許諾スキームについては今後検討を行なうが、スキームの決定時期は未定。ただし、親機を開発/製造/販売するメーカーが、親機とペアリングされるリモート視聴アプリについて視聴要件の遵守を担保する場合には許諾される。

リモート視聴要件の狙いや対応製品登場までの流れ

 今回のリモート視聴に関する技術要件策定は、2013年6月11日に公表された総務省「放送サービスの高度化に関する検討会検討結果取りまとめ」の提言を受けたもので、日本におけるスマートテレビ促進を狙いとする。

 今後、このリモート視聴技術要件を、ARIBから発行されているデジタル放送運用規定(TR-B14/15)に反映する。TR-B14/15では、現時点では、受信機からのIPインターフェース出力を同一サブネット内に制限(ルータを越えてはいけない)としているが、デジタル放送推進協会(Dpa)において、NexTV-Fから公表したリモート視聴要件を前提に、ARIB TR-B14/B15の改定が検討されている。この改定作業の完了と、Dpa/ARIBでの承認を経て、機器メーカーは対応製品を販売できるようになる予定だ。

 これまでも、家庭内で録画したデジタル放送番組を外出先で視聴可能とするリモートアクセス技術としては「DTCP+」があり、対応製品も登場しているが、DTCP+の運用においては、デジタル放送の「録画番組」に限定され、ライブ放送の外出先へのストリーミング配信はできなかった。また、ARIB(電波産業会)の規定で、受信機の機能としてDTCP+サーバーを搭載してはいけないと定められているため、(1)レコーダで録画-(2)録画番組をDTCP+サーバー(NAS)にダビング、(3)DTCP+サーバーからクライアントに配信、という手間が生じていた。

 今後、NexTV-Fのリモート視聴要件が実装された製品が登場すれば、外出先からのリモート番組視聴が大幅に簡単になると予想される。

【更新】
今後の対応製品販売までの流れを追記(2月16日)

(臼田勤哉)