スマホLIFE
iOS用DTCP-IPアプリの伏兵「Media Link Player for DTV」
シンプルでわかりやすいUI。ムーブにも対応
(2013/8/27 10:50)
アルファシステムズの「Media Link Player for DTV」(MLPlayer)は、iOS向けのDLNA/DTCP-IPクライアント。対応端末はiOS 6.0以降のiPhone 4/4S/5、iPad 2、第3/4世代iPad、iPad mini、第4/5世代iPod touchで、8月15日よりApps Storeでの配信を開始した。価格は850円。
iOS向けのDTCP-IPクライアントは、すでにパケットビデオの「Twonky Beam」(Twonky)、デジオンの「DiXiM Digital TV for iOS」(DiXiM)がリリースされており、MLPlayerはこれらアプリに続く第3のiOS向けDTCP-IPクライアントという位置付けになる。
先行する2アプリは、クセのある独特の画面インターフェイスながら機能が充実したTwonky、レスポンスもよく画面もわかりやすいが番組持ち出しに対応しないなど機能で劣る部分のあるDiXiMとそれぞれ異なる特徴を持っている。これに対して後発となるMLPlayerは番組持ち出しや放送中番組のライブ視聴や、リジューム再生など充実した機能に加え、持ち出し番組をiTunes経由でPCに一時保存できるというユニークな機能も備えている点が特長だ。価格面ではTwonkyのDTCP-IP対応が700円、DiXiM Digital TV for iOSが1,000円のため、ちょうどその中間という価格設定になっている。
なお、iOS版だけでなくAndroid版の「Media Link Player for DTV」も開発中とのことだ。
シンプルでわかりやすい画面インターフェイス
MLPalyerを利用して録画番組を視聴するには、DTCP-IP対応のレコーダが必要。対象機器はアルファシステムズのWebサイトに掲載されているが、パナソニック「DIGA」やソニーBDレコーダの一部機種と、SCEのnasne、薄型テレビ「VIERA」や「BRAVIA」の一部機種などが対応。なお、多くの機種はストリーミング再生のみ対応し、ムーブによる番組持ち出しはnasneやDIGA、ソニーBDレコーダの一部機種に限られる。
利用の際はアプリをインストールしたのち、インターネット経由でのアクティベーションによるDTCP-IP機能の有効化や、著作権保護された番組を再生するために暗号化した通信を行なうためのCA証明書インストールが必要。これら設定の手順はアプリの説明に従って操作するだけなのでさほど難しいことはない。なお、iPhoneとiPadなど異なるiOS搭載端末同士でも、アクティベーションやCA証明書インストール作業を行なえば複数端末でも利用できる。
設定完了後にアプリを起動すると、同一ネットワークにあるDLNAサーバーやレコーダが一覧表示される。MLPlayerの画面インターフェイスは1画面をすべて使う仕組みになっており、サーバーを選択するとフォルダや動画一覧がアプリ全体に表示される。独特のインターフェイスであるTwonkyや、サーバー一覧を左上のメニューから呼び出すDiXiMに比べると、画面構成が一般的なiOSアプリに近く操作はわかりやすい。
ムーブによる番組持ち出しや放送中番組のライブ視聴など機能は充実
動画一覧から動画をタップすると動画をストリーミングで再生し、左から右へフリックすると端末へのムーブが可能。ムーブはダビング10に準じており、MLPlayerへムーブするとダビング回数を1消費する。ストリーミング再生とムーブ動画の再生は右上のアイコンから切り替えが可能だ。
また、レコーダ側がライブチューナ機能(放送転送)に対応していれば、放送中の番組をMLPlayerでリアルタイムに視聴することも可能。ライブ放送中は画面を右からフリックすることで、右側に放送局一覧を表示できる。録画番組もチャプターが設定されている場合、同様の操作でチャプター表示が可能だ。
フレッツ光向けルータ「RV-A340NE」を介し、DRモードで録画した55分の番組をnasneからiPad 2へムーブしたところ、6分30秒程度でムーブが完了した。nasneでは録画時に持ち出し用の番組を同時生成するため、その番組データを変換なしにダビングしていると思われる。複数番組をまとめてムーブすることもできるので、次の日に見たい番組を就寝中にムーブしておく、という使い方も可能だ。
なおムーブ対応のレコーダは、パナソニックのDIGA「DMR-BXT3000」や「DMR-BZT830/BZT730/BZT920/BZT720/BZT710/BZT900/BZT700/HRT300」とnasne、ソニーのレコーダ「BDZ-EX3000/ET2000/ET1000、BDZ-EW2000/EW1000/EW500」。DTCP-IPのストリーミング配信に対応していても、ムーブには対応していない機種もあるので、アルファシステムズの動作確認済み機器リストを参考にしてほしい。
ムーブした番組をiTunes経由で取り込む場合は、MLPlayerがインストールされたiOS端末とPCをUSBケーブルで接続し、iTunesに表示されたiOS端末の「App」から「MLPlayer for DTV」を選択すると本体にムーブ済みの動画が一覧表示され、PCに一時保存したい番組を個別に保存できる。この状態ではPCに保存した場合もファイル自体はiOS端末側に残っているため、容量を空けたい場合はiOS側で該当の番組ファイルを削除する必要がある。また、再度PCからiOS端末に番組ファイルを戻す場合も同様の操作で戻すことが可能だ。
操作レスポンスは快適。トリックプレイにも対応
動画視聴中はタイムシークバーを使った再生開始位置の指定、一時停止/再生に加え、30秒単位の早送り/早戻しが可能。レジューム機能は1番組のみで、アプリを再起動した場合も直前まで視聴していた番組であれば再生位置を保持。他の番組を再生した場合は最新の番組のレジュームが保持され、前の番組の再生位置はリセットされる。
ストリーミング視聴時のレスポンスは非常に良好。iPad 2でnasneの番組をストリーミング再生した場合、再生開始まで2~3秒程度、早送り/早戻しが1~2秒程度で完了する。ムーブした番組であれば再生は1秒程度、早送りなどのトリックプレイは1秒かからずに完了する。Twonkyと比べると倍近い早さで、使用感としてはDiXiMと同等と感じた。
なお、対応レコーダについては前述の通りWebサイトで公開されているが、他のDTCP-IPアプリと比較すると動作確認済み機種はTwonkyと同程度で、DiXiMに比べると少ない。実際にDTCP+対応のNAS「HVL-AT2.0」にnasneからムーブした動画はエラーとなりストリーミングで再生できなかった。アプリ購入の際はサイトを見て動作確認済み機種を事前にチェックしておくことをお勧めする。
Media Link Player for DTVのDTCP+への対応について、アルファシステムズでは「未定」としている。DTCP+対応を重視するのであれば、今夏の対応を予告している「DiXiM Digital TV for iOS」が選択肢となるだろう。
機能充実で使いやすいUI。対応機器のユーザーであれば買い
DTLAのDTCP-IPに関するルールの緩和により、iOS向けのDTCP-IP環境も非常に充実してきた。iOS向けとしては第3のDTCP-IPアプリとなるMLPlayerだが、機能面ではDiXiMが現状非対応である番組の持ち出しにも対応し(DiXiMも今後対応予定)、画面インターフェイスはTwonkyよりもシンプルで使いやすくレスポンスもいい。さらにiTunesを使った番組ファイルの一時保管機能など、独自の機能も備えている。
課題としては対応機器がDiXiMに比べると少ないこと。そのため、アルファシステムズが公開している接続確認した機器のリストは導入前にきちんとチェックしてほしい。
ただし、対応機器であればDiXiM同等のレスポンスで快適に番組を視聴できるし、ムーブに対応している点はDiXiMに対するアドバンテージだ。価格もTwonkyとDiXiMの間という絶妙な設定で、非常に魅力的なiOS用DTCP-IPアプリと言える。