大河原克行のデジタル家電 -最前線-

CESで家電やテレビを“展示しなかった”パナソニックの変化。津賀社長インタビュー

 パナソニックの津賀一宏社長が、米ラスベガスで開催されたCES 2018の会場において、共同インタビューに応じ、「今後は、チャンピオン事業と、挑戦者事業をバランスよく展開していくことが大切である」などとした。また、2018年3月に創業100周年を迎えるパナソニックの姿を、「クロスバリューでシナジーを作り出し、新たなお役立ちを生み続ける会社。イノベーションが得意だと言われる会社である」と定義する一方で、「事業の再スタートを切るという気持ちで望まないと、次の100年どころか、10年、20年先すら生き残れないという危機感を持っている」とも語った。

パナソニックの津賀一宏社長

--CES 2018のパナソニックブースには、家電やテレビの展示がありませんでした。その理由はなんでしょうか。

津賀氏(以下敬称略):他社のブースをみると、まだ家電を中心に展示をしており、パナソニックだけが家電の展示がなかったことには驚いた。他社のブースにもっとBtoBが並んでいるのかと思ったがそうでもなかった。パナソニックは、ユニークな存在になったともいえる。昨年、「パナソニックは、コンシューマの展示には先祖帰りしない」と発言して、それを記事にしてもらったが、他社に迷惑をかけることになるので、今年は、これ以上は言わない(笑)。

 米国におけるかつてのパナソニックのイメージは、テレビの会社であり、しかもプラズマテレビの会社であったが、2013年1月のCESの基調講演において、私は、テレビだけの会社ではなく、BtoBに全面的にシフトし、様々なパートナーとともに、顧客の生活するスペースでお役立ちする道を広げていくことを話した。また、その中核になる技術やモノづくり力は、長年に渡り、家電で培ってきたものを利用することになることも説明した。同時に、それを体現するために、パナソニックブースから、できるだけ家電製品を減らしていくことに取り組んだ。今回のCES 2018では、メインブースには、BtoBやオートモーティブを展示するといったポリシーでやっている。だが、家電については、ホテルに別会場を設けて、限定した人を対象に見られるようにした。

メインブースでは車載関連の展示が相次いだ

 今回、CESの主催者であるCTAのゲーリー・シャピロCEOに、パナソニックの100周年を祝ってもらい、しかも、参加企業のなかで最長の参加回数であることも知らされた。家電見本市であった過去のCESに対して、パナソニックは一定の貢献をするとともに、我々にとっても家電事業をアピールするいい機会を得てきた。シャピロCEOによると、CESの内容は、ここにきて、だいぶ変わってきているという。自動車メーカーの出展がそのひとつであり、様々な業種の企業が参加し、さらにスタートアップ企業も数多く出展している。業界の変化が起きており、CESもそれに対応しているという。中国に対する訴求を強化しているという話も聞いた。

 パナソニックは、米国市場向けという切り口では、家電を展示しないが、家電は日本、中国、アジア、インドで力を入れている。日本の家電のシェアは圧倒的であり、日本で実績がある製品をアジアに適した形に変えていく作業を行ったり、商品企画から開発、生産も、中国およびASEANに移して、ローカルフィットするような取り組みを開始したりしている。世界へのアピールというよりも、地域におけるアピールをしっかりしていくことが、結果として、世界へのアピールにつながると考えている。

 仮に、グローバルに通用する製品だけをやっていたとすると、その柱が転けた場合の影響が大きく、経営的にも脆弱なものとなる。地域性を見ながらやっていくことが大切で、北米では、BtoB、オートモーティブのほか、電池などのエネルギー関連を事業の柱にしていく。CES 2018のパナソニックブースではそれらにフォーカスして展示した。

 必ずしも、技術の競争力によって事業の成否が決まるわけではないが、技術がグローバレベルで通用することは大切である。そして、技術力があっても、市場環境が我々にとって健全と思えないときには撤退する。技術力はしっかりとグローバルレベルの競争力を確保する。

別会場ではCES 2018で発表した有機ELテレビを展示

--パナソニックの強みである家電も、将来をみれば、安泰といえないのではないでしょうか。

津賀:パナソニックは、ネットワーク家電やAI家電においても、これが、どの地域で、どのように求められるのかといった地域性を重視しながら事業を進めている。そのなかで、ネットワーク家電やAI家電に対する関心が一番高いのが中国である。中国では、できるだけローカルの声を聞きながら、開発も中国で行ない、軽い形で動き、スピードアップできるようにしている。この分野については、過去に日本でいろいろなトライアルをしたことがあったが、そのときには、技術が足りなかったわけではなく、お客様が必要としていなかった。いまは、日本での取り組みはトーンダウンしている。だが、中国で受け入れられれば、それをベースに、日本が求められるクオリティにあわせて製品化し、日本に持ち帰ってくることができるだろう。

--家電においては、未来の住空間に向けたサービスを創出する「HomeX」プロジェクトを開始していますが、この動きはどうなっていますか。

津賀:CESの会場で、HomeXを推進しているビジネスイノベーション本部の馬場(馬場渉副本部長)と話をしたが、彼は中途半端な形では表に出したくないと言っている。いまはベールに包んでいるが、HomeXでなにをやるのか、なにがHomeXなのか、そして、単品の家電になにを付加すれば、HomeXたる家電になるのか、といったことは明確になっている。それははっきりしている。だが、目指す効果が顕著に表れるようなものから始めないと、この取り組みが埋没してしまうのではないかという話もした。今年は、このあたりの議論を深めて、どこにフォーカスして、どの順番でやるのかということを明確にしていきたい。

--CES 2018では、車載分野において、GoogleやAmazonの技術を利用することを発表しました。こうした企業との連携におけるメリットとデメリットはどう考えていますか。

津賀:エンドユーザーの利便性を考えると、この領域のサービスにおいては、GoogleやAmazonと組まざるを得ないと考えている。これは我々だけでなく、どのメーカーも同じで、GoogleやAmazonといったサービスプロバイダーと手を組み、その上で差別化を図っていくことになる。パナソニックは、GoogleとAmazonとの協業においては、クルマの領域でいち早くサービスを提供することになる。これもひとつの差別化になる。各社ごとに得意領域はあると思うが、GoogleやAmazonの技術は、ユーザーのベネフィットを考えれば、有効活用すべきである。だが、中国であれば、組むべき相手は別になる可能性もある。それは中国市場を見て、決めていきたい。

--こうした市場で、パナソニックの存在感はどこで発揮できますか。

津賀:たとえば、マイクロソフトは、一度、クルマの領域に入ってこようとしたが難しかった。これは、アプリケーションまでを含めて、ソリューションとして仕上げることが難しいからだ。しっかりとすり合わせをして、ソリューションに仕上げることは、誰かがやらなくてはいけない。パナソニックは、それを仕上げる役割を果たすことができる。そして、先端のハードウェアやソフトウェアのことを理解しているというポジションにある。

 一般的なクルマは、コックピットがそのクルマの顔になっており、そこに先進的なディスプレイ技術やセンシング技術を活用しながら、ソリューションを埋め込んでいる。パナソニックは、こうした部分については過去から経験があり、デバイスの開発からソリューションレベルまで対応できる力を持っている。これは、PCやスマホから、クルマへと、コアとなるハードウェアのプラットフォームが変わっても生かしうる領域である。

 メカが主体となるクルマメーカーが、ソリューションの部分までは手が回らない。我々とのパートナーシップの上で、クルマが成り立っている現状を考えれば、ここは差別化領域になりうる。ただ、テスラのようなクルマメーカーばかりになると仕事がなくなる。そのときには、パナソニックは新たな仕事を考えなくてはならないだろう。

--パナソニックは、2018年3月に創業100周年を迎えます。その節目をどんな気持ちで迎えていますか。

津賀:確かに100年という記念すべき年ではあるが、これから先のことを考えると、事業の再スタートを切るという気持ちで望まないと、次の100年どころから、10年、20年先すら生き残れないという危機感を持っている。これだけの規模が大きな会社が、全社規模で同時に大きな変革を起こすことは難しい。

 そこで、4つのカンパニーごとに事業変革を行ってきた。車載関連事業はオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(AIS社)に、家電事業はアプライアンス社(AP社)に集約し、それぞれのカンパニーでは事業の方向づけができ、成長戦略を描くことができている。

メインブースにおいては創業100周年にあわせた展示も行なった

 一方で、古い体質で、日本での安定事業を主体とてきたエコソリューションズ社(ES社)は、将来に向けてどのような形にしていくのかを考えなくてはいけない。そして、コネクティッドソリューションズ社(CNS社)は、これまでは、BtoBとBtoCが混在しており、BtoBといっても箱売りが中心だったものを、サービスやソリューションを主体にして、リカーリングによって利益を得る体質に変えることに向けてスタートを切ったところだ。CNS社に明確な方向付けができるかどうかが、これからの課題という認識を持っている。

--100周年を迎えたいまのパナソニックは、なんの会社だといえますか。

津賀:それは、正直言って、私も自問自答をしている。創業者がはじめた家電事業の存在感が大きいために、家電が中核ではないと言った途端に喪失感が広がり、それが拭い去れていないというのも事実である。

 一方で、世の中の変化をみると、なにかひとつの事業だけで、次の100年を生き残れるのかというと、決してそんなことはない。それどころか、10年、20年すらも生き残れない。中国市場でEVをやっていれば、次の10年、20年はやっていけるという言い方もできるが、30年後まで生き残れることは誰も断言できない。これがいまの世の中である。つまり、パナソニックがなにかひとつの会社というよりも、様々な強みを持ち、それを事業部制という形で磨き上げながら、それらを有効活用し、「A Better Life,A Better World」という意味において、柔軟に、社会に対するお役立ちを、いつも提供できる会社が、パナソニックが目指す会社の姿になる。

 いま、EVに注力するのも、世の中の大きな変化がそこに起きているからだ。普通にしていたら、バナソニックがEV関連の事業はできていない。だが、形を変えたり、やり方を変えれば、EVの主要な部分を担うことができる可能性がある。これはEVだけでなく、家電に大きな変化が起きても同様であり、工場に大きな変化が起きても同様である。変化に対して、いち早く、柔軟に対応することができる会社というのは、世の中にそれほど多くない。我々は、事業を入れ替えるのではなく、持っているものを生かしながら、クロスバリューでシナジーを作り出し、新たなお役立ちを生み続ける会社でありたいと考えている。イノベーションが得意な会社とだと言われるようになりたい。

--巨大な組織で、クロスバリューを実現するのは難しいのではないでしょうか。

津賀:その通りである。しかし、これだけの巨大企業がクロスバリューを取ることができれば、その競争力は極めてユニークなものになる。これについては引き続き努力をしていく。事業部制は、もともとシナジーが取りにくい体制である。しかし、その上にカンパニー制を敷いており、カンパニー制の運用次第で、クロスバリューが実現しやすくなる。さらに、事業がどの方向に向かうのかをコーポレートレベルで明確にすれば、そこにクロスバリューが取れる組織づくりや、人事体制も敷くことができる。たとえば、AIS社は、私が社長になった時点では存在しない組織であったし、AP社もいまのような製販一体で、白物とAVが一体という形にもなっていなかった。巨大組織を動かすための組織、人事をやっていくことが大切である。

--津賀社長は、最近、「チャンピオン」事業と、「挑戦者」事業という表現を始めました。これはどういう意味でしょうか。

津賀:巨大な企業は、収益を稼ぐ「チャンピオン」の事業と、いまは投資をしているが、将来は、他社がチャンピオンとなっている事業、あるいは自分たちがチャンピオンになっている事業を潰していくマインドを持った「挑戦者」としての事業を、うまくバランスしながらやっていかなくてはならない。そうでなければ、これだけの大きな所帯をまわしていくことができない。

 そこで、私は、最近、「チャンピオン」や「挑戦者」という言葉を使って、社内に対して、「あなた方はどちらですか」と言っている。チャンピオンの例として、トヨタ自動車がある。トヨタ自動車は大きな成功を納めている会社だが、電動化の大きな波、自動運転の大きな波に対して、いままでの成功以上にチャレンジをしないとチャンピオンであり続けられないと考えている。あのトヨタ自動車でもそういう状況にある。パナソニックもチャンピオン事業といえるものがあるが、トヨタから見ればチャンピオンとはいえないレベルのものであり、チャンピオンであり続けるならば、もっとチャレンジしなくてはならない。

 つまり、チャンピオンであっても、もっとがんばらなくてはならないということであり、ましてや挑戦者は、誰かを倒していかないと駄目である。他社の大きな既存事業をイノベーションによって倒していくことといった挑戦を、ある一定の事業比率のなかでやっていく必要がある。もし、チャンピオン事業ばかりを持った企業になったら、ある日、突然、恐竜が転けてしまうのと同じようなことが起こるだろう。大きな会社ほど、チャンピオン事業と挑戦者事業のバランスをうまく取らなくてはいけない。

 では、すべての事業がこのどちらかの事業に分類できるのだろうか。理想系はすべてを分類したいが、なかには、チャンピオンでもなく、挑戦者でもないという事業もあり、そうした事業に対しては、「一体どちらなんだ」ということを問い続けていかなくてはいけない。それをやるのは今年からである。2018年の事業計画のなかでは、そんな会話がはじまることになる。いまの時点で、どれがいいバランスなのかということを定量的には言えないが、チャンピオンと挑戦者という2つのマインドを持たないと、パナソニックが生き続けることが難しくなるという認識を持っている。社内には、自分の事業をチャンピオン事業と思っている人が多いかもしれないが、実際にはチャンピオンといえる事業は少数だと考えている。

--パナソニックのブランド認知に関しては、どう捉えていますか。

津賀:パナソニックというブランドは、米国で生まれたブランドであり、米国内での認知度は高いと理解している。だが、依然としてテレビのブランドとしてのイメージが強く、この紐付けを変えていく必要がある。そこで、「テスラが使用している電池は、パナソニックの電池である」というような露出を米国で開始している。もっと米国で受けるようなブランドプロモーションをやっていく必要がある。

 たとえば、タフブックは、米国市場に受ける製品であり、出荷台数少なくても、パナソニックを象徴する製品だといえる。BtoBではあるが、パナソニラックブランドのプレゼンスをキープするためにも活用したいと考えている。一方で、日本ではパナソニックのブランドを拡大するために、パナホームの社名を、パナソニックホームズに変えることを発表した。ブランドをさらに強めていきたい。また、中国やアジアでは、日本における強いブランド力を生かし、そのブランドイメージをベースにした展開を行っていく考えだ。

--パナソニックは、車載事業を成長戦略の柱のひとつに位置づけています。そして戦略的パートナーシップとして、テスラに加えて、トヨタ自動車とも手を組みました。この狙いはなんでしょうか。

津賀:トヨタとの協業については、2017年末の会見で話したように、今後、協業の検討を本格化することになる。具体的な内容は一切決まっていない。生産を一緒にやるのか、ジョイントベンチャーを組むのかということも決まっていない。決まった段階で公表することになる。パナソニックとトヨタは、まずは、車載用角型電池にフォーカスした協業を行うが、リチウムイオン電池だけでなく、全固体電池による将来の技術も含めて、様々な可能性を追っていくことになる。なお、車載用の角型電池は日本から生産を立ち上げていくことになる。

 また、テスラについては、CES 2018のあとに、キガファクトリーを直接訪問する予定である。電池パックにする工程の自動化が遅れているので、その現状をみて、テスラと打ち合わせをすることになる。2017年度上半期業績発表の際に、テスラの進捗状況を説明したが、そのときに比べると、少し遅れが生じているのが事実である。テスラが発表したように、2019年3月末までに、週5,000台の生産を目標に掲げていたが、それを2,500台に下方修正した。そこに向けた体制づくりを進める。

 業績への影響も見込まれるが、2017年度については、影響をカバーし、公表値を達成する見通しである。テスラ向けの円筒形電池は、日本で生産を立ち上げたが、それをいまギガファクトリーで生産し、将来は中国に展開する可能性もある。ただ、そのスケジュールが決まっているわけではない。車載用電池は、日本で技術を確立したあとに、米国、中国といった大きな消費地で展開していくことになる。さらにその先には、大きなポテンシャルがあるインドや欧州についても考えたい。ロジスティクスの問題や、関税の問題を考えると、現地生産が求められてくる。だが、いまは詳細が決まっているわけではない。

--中国においては、BYDやCATLなどの電池メーカーの投資が活発化しています。日本ではパナソニック以外に電池への積極的な投資がなく、一人勝ちの状況が続いています。これはパナソニックにとっていいのことなのでしょうか。

津賀:中国企業の動きは国策でもあり、それによって投資が加速していると理解している。だが、車載電池市場の広がりは、まだ序章にすぎないと考えている。本当の意味でEVが、クルマのマジョリティになってくれば、この程度の電池への投資では済まない。いまは、「スタートをどう切るか」という点での投資である。パナソニックは電池ビジネスを長年やっているが、これまでの経験では、結果として生産キャパシティを埋めきれないことが起こりやすいと認識している。

 従って、パナソニックは徐々にキャパシティを広げ、しかも、どの自動車メーカーに売るのかを明確にするといったやり方をしている。すべてのメーカーに平等に電池を供給するのは難しい。過去、そうした形でやろうとしたが、結果として企画倒れに終わっている。稼働率があがらずに、車載電池が収益の足を引っ張るということもあった。そのあたりは慎重にやる必要がある。これまで失敗したやり方はしない。どういう自動車メーカーと組めばいいのかということは常々意識している。トヨタ自動車との協業に関していえば、先方も過去に同じような経験をしている。そのあたりをうまくマネージしながら、一緒にやっていきたい。

 ただ、繰り返しになるが、車載電池の市場は始まったばかりの状況であり、中国企業のように一度に大きな投資をした方が功を奏するのか、我々のようなやり方がいいのかはまだわからない。一方で、国内一強体制という指摘については、この事業はグローバルで展開する事業であり、国内一強だとは思ってない。日本市場が主たる対象でもない。むしろ、海外市場でどう戦えるのかがすべてである。たまたま国内メーカーではナンバーワンであるというだけである。

--次の100年に向けては、車載以外の柱をどこに持つのでしょうか。

津賀:これに関しては、引き続き悩んでいるところである。地域ごとに柱となる事業は作っていくが、グローバルにどの領域に柱を作っていくかについては検討中である。グローバル市場を見たときに、欧米中は外せない市場である。また、CNS社においては、モノづくり力を生かしながら、マスカスタマイゼーションするといったように、顧客一人一人のオーダーに迅速に応えるモノづくりシステムやデリバリーシステムを作り、これを新たなサービスとして提供することは、我々にとって、今後の大きな柱になりうる領域だと思っている。そのためには、これからいろいろな投資が必要になる。車載以外では、まだグローバルの大きな柱は見えていないが、柱のネタはつくっていく考えだ。

--今後、売上げ、利益の海外比率はどうなりますか。

津賀:海外比率という数値はあまり意識はしていないが、自然な形で、毎年毎年、売上高と利益の海外比率が上昇している。バッテリーは、米国においてギガファクトリーが本格的に稼働すれば、売上げも、利益もあがる。国内では、住宅分野において、パナホームを100%子会社化したり、松村組を買収したりしながら、現在、住宅メーカーとして低位にあるポジションを高めていくことになるが、米国などの動きに比べると、国内への投資やM&Aによって国内構成比を向上させることは限定的だ。一方で、インド、アジア、中国では、家電市場の成長が見込まれ、EV関連市場も、中国とインドでの成長が期待できる。これらは、今後の成長戦略を支える代表的な製品や部品になる。国内で伸ばせる領域は伸ばしていくが、現在、約6割の海外比率は毎年あがっていくことになる。

--家電事業の海外展開はどう考えていますか。

津賀:パナソニックは、家電においては、白物家電に大きく舵を切っている。白物家電は、中国メーカーや韓国メーカーも強いが、パナソニックは、それらの企業と十分に戦えるだけの製品や技術を持っている。たとえば、省エネ技術はそのひとつである。きめ細やかな家電の機能や性能、品質を持っており、それらを活用して、ローカルフィットをしっかりとやっていけば対抗できる。欧州や北米では、家電といっても、パナニックビューティーやLUMIXのハイエンドモデルといった限られた領域の製品を展開している。欧州においては、エアコンのシェア拡大に挑みたい。

--国内における消費を喚起するために、どんなことを考えていますか。

津賀:ひとつは、シニア世代に向けた事業拡大。一方で、若い世代に対しては弱い部分があるため、Home Xなどを通じて、20代から30代のマーケットを、より活性化する活動をしていきたいと考えている。

大河原 克行

'65年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、20年以上に渡り、IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。 現在、ビジネス誌、パソコン誌、ウェブ媒体などで活躍中。PC Watchの「パソコン業界東奔西走」をはじめ、クラウドWatch、家電Watch(以上、ImpressWatch)、日経トレンディネット(日経BP社)、ASCII.jp (アスキー・メディアワークス)、ZDNet(朝日インタラクティブ)などで定期的に記事を執筆。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「松下からパナソニックへ」(アスキー・メディアワークス)など