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パナソニック有機ELテレビの画質進化、HDR10+には立体感。動画&高感度に強いGH5S

 パナソニックは、「CES 2018」に合わせて、4K有機ELテレビ「FZ950シリーズ」や、テクニクスのターンテーブル「SP-1000R」、ミラーレス一眼カメラの「LUMIX DC-GH5S」など、欧州や米国で今後発売する製品を披露。テレビの画質など、従来モデルとの比較デモを体験した。なお、いずれも日本での発売については未定としている。

有機ELテレビやLUMIX DC-GH5Sなどを発表

4K有機ELテレビは中間階調がより精細に

 有機ELテレビのFZ950/FZ800シリーズは、映像エンジンの「HCX」を改良、「ダイナミックLUT」システムを導入した。従来のLUT(ルックアップテーブル)は、ソースで使われている色空間に固定されていたが、新しいHCXではシーンの平均輝度レベルを検出・分析することで、そのシーンに適したLUTを動的に適用。より自然な表示ができ、暗部の色表現なども向上しているという。

有機ELテレビFZ950シリーズ

 '17年モデルの「EZ1000」は、16bit相当のリニアリティ補正により暗部を滑らかに再生する「暗部階調スムーサー」などを大きな特徴としており、コンテンツ制作者が映像をチェックする大型のモニターとしても評価が高いという。新モデルのFZ950などは、それに加えて中間輝度のコントラストを改善し、明るいシーンの画質も向上したのがポイント。

 EZ1000と見比べると、砂浜のシーンでは細かい砂粒1つ1つの細かさや、波打ち際に置かれたガラスの器の透明感、立体感などに大きな違いがあり、石造りの古い建物では、積み重ねられた1つ1つの石の境目と、それぞれの質感がはっきり描き分けられ、進化したことがよく分かる。

左がFZ950、右がEZ1000の映像

 有機ELパネルは、世代的には'17年モデルと共通だが、'18年仕様の新パネルを採用。今回の画質向上は主に映像処理の部分によるもので、処理能力を向上したSoC(System On Chip)を備え、3D LUTを暗い側と明るい側の2つに持たせている。これらを明暗それぞれの部分で使い分け、中間部分は加重平均することで、暗い部分から明るい部分まで常に正しい色を実現したという。シャープネスを上げずに、コントラスト感や色だけを調整したことで、破たんを抑えた表現力向上を可能にしている。

 FZ950の特徴であるTuned by Technicsのスピーカーも強化。ボーカルの再現を重視したという現行モデルEZ1000のスピーカーは、モニターライクでフラットな特性なのに対し、FZ950のスピーカーはウーファのユニットや容積拡大などにより低域を向上。膨らみすぎず適度な締まりを持ちながらも、低域が豊かになったことも実感できた。

スピーカーの音も聴き比べた。左がEZ1000、右がFZ950

HDR10+の画質をHDR10と比較

 20世紀フォックス、パナソニック、サムスンらが推進する「HDR10+」は、画像特徴情報をメタデータで送り、そのシーンに合わせてテレビ側で(メーカー各社が最適と考える)動的なトーンマップを作って適用。制作者の意図に合った映像を表現できるという点を特徴としている。

 パナソニックのブースには最大輝度550nitsのテレビが2台用意され、従来のHDR10と、新しいHDR10+の映像を比較した。

 デモに使用されたコンテンツは300~500nits。従来のHDR10では、高輝度部分を想定してコントラストを下げたトーンマップを作っていたようなシーンでも、テレビとコンテンツがHDR10+に対応していれば、そのテレビが表示できる輝度と、コンテンツのメタデータを元に判断し、トーンマップをかけずにPQカーブそのままを利用することを選択。元のコントラストを活かして表現できる。例えば砂浜についた足跡が、HDR10+ではより立体的に描かれるなど、明確な違いが確認できた。

左がHDR10+、右がHDR10の映像

 テレビなどのメーカーがライセンスを受ける場合、制作者の意図が正しく反映されたトーンマップが作られているかどうかを、20世紀フォックスらが判断して認証。なお、ライセンスを受けると年会費は必要だが、ライセンス料は不要なため、より低価格なテレビでもHDR10+を採用しやすいという。

UHD BDプレーヤーはHDR10+コンテンツ以外も高画質化

 DP-UB820、DP-UB420、DP-UB330、DP-UB320の4モデルを用意。上位機のDP-UB820とDP-UB420は、HDR10+のダイナミックメタデータ技術に対応。より高性能なSoCを持つUB820は、Dolby Visitonにも対応する。

HDR10+とDolby Visiton対応のDP-UB820

 HDR10+ではないコンテンツの再生や、低輝度なテレビを使う場合にも、最適な画質で再生できるという「HDRオプティマイザー」も搭載。HDR10の静的なメタデータを読みこみ、プレーヤー側でトーンマップを作って再生するという機能。HDR10+再生時にはこの機能は適用されない。

テクニクスのアナログレコードプレーヤーは約1万ドル

 ターンテーブル「SP-10R」は、1975年に発売したSP-10MK2などの台座部にそのまま装着できるモデルで、SL-1000Rは、台座やトーンアームなどもセットにした一体型システム(ヘッドシェルやカートリッジは別売)。世界初のダイレクトドライブ採用ターンテーブルである1970年代の「SP-10」の思想を受け継ぎつつ、現代のデジタル制御を活用して新たなリファレンスクラスの製品として生まれ変わった。欧米で今春から発売され、米国での価格は、SP-10Rが1万ドル前後、SL-1000Rが2万ドル前後。

一体型モデルの「SL-1000R」が展示

 新開発のコアレスダイレクトドライブモーターで駆動。約7.9kgの重量級プラッタは、タングステン製のウエイトを埋め込むことで慣性重量約1トン・cmまで向上。電源部は別体としたことでノイズの混入を防いでいる。

 電源部は操作部も兼ねており、実際の回転数をインジケータで表示。33 1/3と45、78回転にそれぞれ対応し、例えば実際の回転数が33を下回った場合もその回転数がインジケータですぐ分かるため、本当に33回転で再生しているのかが確認できる。重量は、台座など一体型のSL-1000Rの本体が40.2kg、電源/コントロール部は2.1kg。

プラッタ部
回転数が下がると表示も追従

動画を大幅強化、あえてボディ内手ブレ補正を省いた「DC-GH5S」

 ミラーレス一眼の「DC-GH5S」は、4,096×2,160ドットで60p撮影が可能なCinema4K/60p動画記録や、4:2:2 10bitでのCinema4K/30p動画記録にも対応したのが大きな特徴。HDMIレコーダなどで記録する場合は4:2:2で4K/60p出力もできるという。GH5の後継ではなく、派生モデルとして併売され、米国では2,499ドルで2月に発売予定。

DC-GH5S

 暗部の表現を改善するため、画素数はGH5の約半分となる10.2Mとし、受光面積を1.96倍まで拡大した。マイクロフォーサーズの弱点とされる高感度ノイズを抑える「デュアルネイティブISOテクノロジー」も搭載。2系統の専用回路を各画素に備え、ゲインアンプの前段で感度設定して高感度ノイズを低減。常用ISO感度を6400や12800まで向上させた。型番の「S」は特別モデルである“Special”と、高感度に強い“Sensitivity”を指す。

 本格的な動画撮影に対応するため、あえてボディ内手ブレ補正を省いたのもGH5との違い。これは、GH5のユーザーからの要望を反映したもので、加速度がかかる車での撮影で不要なパンニングが起きたり、音楽ライブなどの大きな音が鳴る場所でブレを誤認識するといったことがあったためだという。

天面の操作部
4Kビデオカメラも。左がビューファインダ付き「HC-WXF1」、右がビューファインダ無しの「HC-VXF1」