藤本健のDigital Audio Laboratory
第836回
USB-Cで約1.5万円のPreSonus「Studio 24c」は、トータルで高い性能が魅力
2020年1月27日 12:48
各メーカーのオーディオインターフェイスの主力製品が、USB Type-C接続のものへ次々と切り替わっている。このDigital Audio LaboratoryにおいてもSteinbergの「UR-C」シリーズ、Focusriteの「Scarlett 3Gen」シリーズなどを取り上げてきたが、PreSonusもそうしたメーカーの一つ。現在「Studio USB-C」シリーズを発売している。
発売されたのはちょうど1年前で、オーディオインターフェイスメーカーの中では比較的早いUSB Type-C対応でもあった。ただ、この連載ではこれまで取り上げていなかったので、オーディオ特性やレイテンシーなどをチェックしていこう。実際に使うのはStudio USB-Cシリーズの最も下位に相当するモデルでメーカー直販価格が15,556円である2in/2out仕様のStudio 24cだ。
バスパワー駆動の2chモデルなど5機種
ご存知の通り、PreSonusはアメリカのレコーディング機器メーカーで、古くは業務用のマイクプリアンプなどで知られていた老舗でもある。10年前にドイツのソフトメーカーを買収し、DAWであるStudio Oneをリリースして以降は、DTMユーザーなどクリエイター向けの手ごろなオーディオインターフェイスやミキサー、コントロールサーフェイスなどを次々とリリースし、幅広いユーザー層に浸透していった。特にPreSonusのオーディオインターフェイスはほぼ全製品にStudio One ArtistというDAWを標準でバンドルしていたこともあって、多くのユーザーに支持されてきたという背景もある。
国内でPreSonus製品を扱っているのはエムアイセブンジャパン。同社では、用途に応じてPreSonusの複数のオーディオインターフェイスのシリーズを用意しているが、現在主力となっているのが、昨年1月にリリースされたStudio USB-Cシリーズだ。このStudio USB-Cシリーズはその名前の通り、USB Type-Cのオーディオインターフェイス。入出力が異なる5種類をラインナップしており、いずれも192kHz/24bitに対応したブルーとブラックのボディーの機材で、MIDIインターフェイス機能も搭載している。5モデルのうち、24cと26cはUSBバスパワーで駆動する形となっている。
【Studio USB-Cシリーズ】
・Studio 24c(2in/2out)
・Studio 26c(2in/4out)
・Studio 68c(6in/6out)
・Studio 1810c(18in/8out)
・Studio 1824c(18in/18out)
USBの規格は、最近USB 3.2 Gen 1、Gen 2、Gen 2x2のように名称も変わるなど、何かと分かりにくい部分もあるが、USB Type-Cというのはあくまでも端子の形状であり、PreSonusのStudio USB-Cシリーズもその端子がUSB Type-Cであるということだけであり、USBの規格自体はUSB 2.0となっている。
そのため、付属するケーブルもUSB Type-C同士のケーブルと、USB Type-CとUSB TypeAのケーブルの両方がバンドルされており、WindowsでもMacでもパソコン自体の端子はUSB Type-Cでないと使えないというわけではない。
今回チェックしてみたのは、Studio 24cという一番下のエントリーモデルで、USBバスパワーで駆動する機材。手元にあるPreSonusのAudioBox iTwoと並べてみると、大きさ的にはほとんど変わらないが、デザイン的には洗練されているようだ。それはフロントパネルのセンターにLEDのレベルメーターがあるから感じるのかもしれない。
ちなみにAudioBox iTwoも現行製品で、Studio 24cと同様2in/2outだが、PCとの接続端子がUSB Type Bの端子であること、iPhoneやiPadとも直接接続できるMFi認証製品であること、最高で96kHz/24bitであること……などの違いがある。AudioBox iTwoのヘッドフォン端子がフロントにあるのに対し、Studio 24cはリアにあるため、個人的にはAudioBox iTwoのほうが取り回しがしやすいように思ったが、この辺は人によって印象は異なるところだろう。
改めて入出力端子をチェックするとフロントにはマイク、インストゥルメント(ギターなど)、ラインに対応したコンボジャックが2つある。そして、それぞれのマイク入力に対応するゲインを調整ノブがあるほか、+48Vのファンタム電源供給のスイッチ、メイン出力のノブ、ヘッドフォン出力用のノブがある。
もう一つあるMixerというノブは入ってきた信号をそのままダイレクトモニタリング出力するか、USB側から来たオーディオ信号を出力するかのバランス調整をするためのものだ。ただし、これを見るとラインとインストゥルメントの切り替えスイッチはない。つまり入力は兼用となっていて、ライン信号もハイインピーダンス入力となっているようだ。
一方リアにはUSB Type-Cのコネクタがあり、MIDI入出力、TRSフォンのメイン出力、そしてヘッドフォン出力と並んでおり、何か特殊な機能があるわけではなく、シンプルな構造となっている。
ループバック用の端子も装備
このStudio 24cはUSBクラスコンプライアントなデバイスであるため、基本的にはWindowsでもMacでもドライバ不要で動作させることが可能。ただし、各種設定を行なう機能を備えたUniversal Controlというソフトがダウンロード可能となっているので、これをインストールして使うのが基本だ。
Windowsの場合は、これを使うことでASIOドライバが利用可能になると同時に、ループバック機能にも対応するというメリットもある。ここでは最新のWindows 10 1909 EditionにUniversal Controlをインストールして使ってみた。ちなみにMacにおいてはmacOS 10.15 Catalinaにも正式対応している。別売の電源供給可能なLighting-USB 3カメラアダプタが必須とはなるものの、iOSでも利用することも可能だ。
接続すると、特に問題なくオーディオの入出力が可能で、MME/DirectX対応のデバイスとして利用できる。ここで少し面白いのが、2in/2outのデバイスではあるものの、「Virtual 1/2(Studio 24c)」というものがあり、4in/2outの構成になっていること。
このVirtual 1/2というのがループバック用の端子であり、他社のオーディオインターフェイスとはちょっと違うところだ。前述のUniversal Controlを起動すると、画面の一番下にループバックという項目があり、デフォルトではオフになっているため、Virtula 1/2を選択しても何も信号は入ってこない。
ここで「ミックス1/2」を選択すると一般的なオーディオインターフェイスでのループバックと同様に、出力した音がループバックし、これがフロントの端子から入力された音とミックスする形で「Mic/Inst/Line In 1/2(Studio 24c)」に入ってくる。
そのため、この状態でも「Virtual 1/2(Studio 24c)」の方には何も信号は入ってこない。しかし「バーチャル1/2」を選択するとミックスされるのではなく、それとは独立した形で信号が戻ってきて、これが「Virtual 1/2(Studio 24c)」として入ってくるのだ。これによりマルチポート入力をサポートした機材であれば、リアル入力とループバック入力のバランスをとることが容易にできるなどのメリットがある。
低価格モデルながらオーディオ品質も高い
ここからは、いつものようにRMAA Proを使ったオーディオ性能のテストを行なっていく。ここではリアのメイン出力をTRSケーブルを用いてバランス信号としてフロントのライン入力へとループバックさせている。44.1kHz~192kHzまで各サンプリングレートでテストした。
これを見ると、THD+Noiseの結果がやや落ちるものの、トータル的なパフォーマンスは全サンプリングレートでExcellent評価になっており、低価格製品ではあるが、優れたオーディオ性能を持っていることがわかる。
一方、同じ接続の状態で入出力のレイテンシーを測定した結果がこちらだ。これもいつものように44.1kHzのみはバッファサイズ128サンプルでのテストを行なっているほかは、最小のバッファサイズでテストしている。これを見てもわかる通り、44.1kHzおよび48kHzでは最小のバッファサイズが16サンプル、96kHzでは32サンプル、192kHzでは64サンプルとなっており、どのサンプリングレートでも基本的には同じパフォーマンスを実現する構造。実際、最小で4msec程度なので、悪くない結果といえそうだ。
以上、今回は2in/2outのStudio 24cをピックアップしてみたが、より多くのポート数が必要であれば最大26in/32outのStudio 192までの選択肢があるので、用途に応じて選ぶことが可能だ。また、今回試したStudio 24c以外の機材は、アナログシンセサイザのコントロールなどを可能とする直流出力が出せるDCカップリング機能にも対応しているので、そうした目的で使うことも可能となっている。