藤本健のDigital Audio Laboratory
第916回
小型で性能も満足! 仏ArturiaのエントリーUSBオーディオ「MiniFuse」
2021年11月1日 11:47
フランスのメーカー・Arturia(アートリア)が、コンパクトなUSB Type-C接続のオーディオインターフェイス「MiniFuse」シリーズを11月より順次発売する。1in/2outの「MiniFuse 1」、2in/2outの「MiniFuse 2」、そして4in/4outの「MiniFuse 4」の3モデルだ。
いずれもシンプルな見た目ではあるが、各ツマミが光るなど、さまざまなく工夫も施されている。またアルミボディの軽量さと合わせ、かなり堅牢にできているのもポイント。
11月中旬から下旬に発売される予定のMiniFuse 1(メーカー希望:15,950円)とMiniFuse 2(同23,100円)を実際に使ってみるとともに、音質チェックやレイテンシーチェックなども行なってみたので、どんなオーディオインターフェイスなのか紹介していこう。
フランスのメーカー・Arturiaとは
Arturiaはフランス・グルノーブルにあるメーカーで、もともとソフトウェア・シンセサイザで発展してきた1999年創業のメーカーだ。
最初にオリジナルの「STORM」という音源を出した後、TAE(=True Analog Emulation)というアナログ回路のエミュレーション技術を生み出すとともに、このエンジンを搭載した「MOOG MODULAR V」「PROPHET V」「OBERHEIM SEM V」など、往年の名機と呼ばれるシンセサイザをソフトウェアとして復刻し大きくなったメーカーである。
近年はソフトウェア・シンセサイザでは物足りなくなり、自らオリジナルのアナログシンセサイザを開発。「MiniBrute」や「MicroBrute」は世界的に大ヒットし、ソフト・ハード問わず開発するメーカーとして成長してきている。
そのArturiaがオーディオインターフェイスに参入したのは、7年前のこと。創業15周年のタイミングで「AudioFuse」という高性能オーディオインターフェイスを発表し、大きな話題になった。
ただ、発表から発売まで2年近くかかってしまい、その間にRMEやUniversal Audioなど、他社に先を越されてしまった。その後、AudioFuseシリーズとして、AudioFuseのバージョン2、さらには8つのマイクプリを搭載した「AudioFuse 8PRE」、そしてフラグシップモデルの「AudioFuse Studio」など、高級路線で攻めてきたArturiaだったが、今回エントリーモデルとしてMiniFuseシリーズを発表したのだ。
MiniFuseの特徴は、コンパクト&スタイリッシュ
新たに投入されるMiniFuseシリーズは、MiniFuse 1、MiniFuse 2、MiniFuse 4の3モデルをラインナップしており、それぞれホワイトとブラックを用意する。MiniFuse 4はまだ生産がスタートしていないようで、筆者も実物を見ていないのだが、すべてにおいて共通する最大の特徴は、とにかくコンパクトでスタイリッシュであるという点だろう。
例えば、同じ2in/2outでUSB Type-C接続のUSBオーディオインターフェイスであるSteinbergの「UR22c」や、SSLの「SSL2+」と並べてみると、MiniFuseがかなり小さいことが分かる。また他社製品にも軽量なものはいくつかあるが、その多くが樹脂製のボディとなっているのに対し、MiniFuseシリーズはフロントやリアも含め、アルミボディとなっているため、軽いのにかなり頑丈なのだ。
もう少し具体的に見ていこう。
おそらくもっとも売れると思われる2in/2out仕様のMiniFuse 2の場合、フロントの左側にコンボジャックが2つ搭載されている。コンボジャックであるため、XLR接続のキャノンケーブルはもちろん、TRSの標準プラグのバランスケーブル、さらにギター入力もできるオールマイティーな仕様。コンデンサマイクを接続した場合はその右にある48Vというボタンをオンにすればファンタム電源供給が可能。また、ギターのアイコンがついたINSTボタンを押せばハイインピーダンス入力モードへと切り替わるようになっている。
ユニークなのは、この2つの入力端子の横にある入力ゲイン調整ノブだ。
このノブ、見ると分かるとおり、LEDが内蔵されていて入力状態が把握できるようになっている。まったく入力がないときは消灯し、入力が入ると水色に点灯する。しかし、その入力ゲインがレベルオーバーするところまで行くと赤い点灯に切り替わる。したがって、このノブを見ていれば適正なレベルで入力されているかどうかが確認できるわけだ。
さらに、ここでの操作は、ドライバと一緒にインストールされる「MiniFuse Control Center」というソフトと連動するようになっているのもポイント。INSTボタンのオン/オフ、+48Vのファンタム電源のオン/オフができるほか、入力レベルがリアルタイムにレベルメーター表示されるので、これを見ながら調整した方がより詳細にチェックできるようになっている。
一方、MiniFuse 1のほうは、この入力部分が1つのみになっているのが最大の違い。入力はこの1つのみなので、ステレオのライン入力にも対応していない。この点はMiniFuse 1にすべきかMiniFuse 2を選ぶかにおいて、重要なチェックポイントとなる。
続いて出力側を見てみよう。
MiniFuse 2の右側には大きなノブがあり、これでリアにあるメインアウトの出力レベルを調整するようになっている。この大きいノブには、先ほどのようなLEDは搭載されていないが、その隣にはLRの出力レベルメーターがあるので、ここでチェックすることができるようになっている。
隣のMIXノブは入力された音をそのままダイレクトモニタリングするか、PCからの音を出力するかの調整ノブが用意されている。左に回し切れば、ダイレクトモニタリングのみでPCからの音は出ない。
またその際、通常はINPUT 1から入った音はLチャンネル、INPUT 2から入った音はRチャンネルとしてモニタリングされるようになっているが、下にあるDIRECT MONOをオンにするとそれぞれモノラル扱いとなり、センターから音が聴こえる形となる。ギター1本を接続する場合や、マイク1本を接続する場合にはこれをオンにすることで、扱いやすくなるわけだ。そして、一番右はヘッドフォン出力用となっている。
なお、MiniFuse 1のほうではMIXノブはなく、DIRECT MONOのボタンもない代わりに、DIRECT MONITORというボタンが1つ用意されている。これをオンにするとダイレクトモニタリングでき、オフだとPCからの音が聴こえるモードに切り替わる。MiniFuse 2のようにバランス調整はできず、最初からモノラルなのでセンター定位で聴こえるが、その分わかりやすいともいえる。
MiniFuse 1とMiniFuse 2のリアを並べてみると分かるが、双方ともに一番右側にUSB Type-Cの端子があり、これをPCと接続して使う。付属ケーブルはUSB Type-CとUSB Type Aを接続するものとなっているが、もちろんUSB Type-C同士を接続するケーブルでも利用可能。いずれの場合も電源はUSBバスパワーで動作する。
出力はいずれもTRSフォンのバランス出力となっているが、MiniFuse 2のみにMIDIの入出力端子が搭載されている。外部シンセサイザなど、MIDI接続が必要であればMiniFuse 2が必要だろう。
少しユニークなのは、どちらにもUSB Type Aの端子が搭載されているという点。これはUSBハブとなっていて、MiniFuseをスルーしてここに何でも接続できるようになっている。たとえば、USB-MIDIキーボードを接続するのもいいし、USBメモリを接続したり、USBドングルを接続するなど、意外と便利に使えそうだ。
入出力の音質とレイテンシーを検証
そんなMiniFuse 1とMiniFuse 2、実際、音質的にはどうなのだろうか? いつものように「RMAA Pro」を用いてテストした結果がこちらだ。
これを見ても分かるとおり、かなり高音質なオーディオインターフェイスといえそうだ。コンパクトな機材なので、最初に見たとき、音質面ではそれほど期待していなかったのだが、後発製品だけあって、アナログ入出力にもかなり力をいれているようだ。
続いてレイテンシーはどうだろうか? こちらもいつものようにCEntrancenの「ASIO Latency Test Utility」を使ってテストしてみた。44.1kHzのときのみバッファサイズ最初と128Sampleに設定して計測し、ほかの48kHz、96kHz、192kHzはいずれも最初バッファサイズで測定した結果だ。
こちらもまずまずの結果となっており、一般的な使い方であれば十分すぎる性能となっている。
以上、MiniFuse 1とMiniFuse 2について見てきたが、いかがだっただろうか? コンパクトで手頃なオーディオインターフェイスを選びたい、という場合、とてもいい選択肢が登場したといえそうだ。