西田宗千佳のRandomTracking

第416回

すべてが変わったiPad Proと、ついにリニューアルしたMacBook Air&Mac mini実機をチェック

新しいiPad ProとMacが発表になった。発表会の詳細はのちほどお送りするが、まずは取り急ぎ、製品ハンズオンの様子をお伝えしよう。なお、スペックの詳細については別掲の記事もご参照いただきたい。

発表会場であるBrooklyn Academy of Music。
ハンズオンは発表会場近くの建物に移動して行われた。
アップルのティム・クックCEOも、発表会の最後にゲストとして登場したシンガーソングライターのラナ・デル・レイを伴ってハンズオン会場に表れ、彼女に新製品を紹介していた

すべての点で変わった「iPad Pro」

まずは注目度も高いであろう、iPad Proから見ていこう。

今回のiPad Proは、アップルも言う通り、2015年に発表されて以来の大きなリニューアルといえる。まず、iPhoneと同じように顔認証機能である「Face ID」が導入されたため、2010年の初代iPad以来搭載されてきたホームボタンがなくなり、ベゼルが四辺とも細くなった。その関係で、10.5インチモデルは11インチにディスプレイが大型化したのにサイズが維持され、12.9インチモデルは同じディスプレイサイズでありながらボディが小型化した。厚みはともに5.9mmになった。コネクターはLightningからUSB-Cになり、ヘッドホンジャックはなくなっている。

iPad Pro 12.9インチモデル(スペースグレー)。ベゼルが均一になったのでかなりコンパクトになった印象を受ける。
iPad Pro 11インチモデル(スペースグレー)。従来の10.5インチモデルにかなり近いサイズだが、ディスプレイは一回り大きくなった。
iPad Pro 12.9インチ(シルバーモデル)
iPad Pro 11インチ(シルバーモデル)
左が12.9インチ、右が11インチ。並べてみると、やはりサイズはけっこう違う。
カメラ部。12メガピクセルのカメラが搭載されているという。
コネクタはUSB-Cになり、ヘッドホン端子は姿を消した。5.9mmという薄さは、持ってみるとかなりインパクトがある

やはり薄さのインパクトは大きいのか、持ってみると既存モデルよりも数字以上に軽く感じる。カラーはスペースグレイとシルバーの2機種。従来、ベゼルの色は、「スペースグレイは黒、シルバーなどはホワイト」と別れていたのだが、今回からどちらのモデルも黒に統一されている。おそらくは、Face IDを組み込む関係だろう。

ベゼル部。「極細」「ベゼルレス」といってしまうには存在感があるが、それでも、かなり存在感はなくなってきた。色は全モデル「黒」に統一された

長時間使うことはできなかったのでスペック的な部分は判断しづらいが、Face IDによるスムーズな起動は、iPhoneでもそうであったように快適だ。iPhoneと違うのは、iPad Proが縦向きであろうが横向きであろうが、Face IDがきちんと働くことだ。これは、横向きで使うことが多いiPadには必須の機能といえる。

そして、やはり大きな進化だと感じたのは、Apple Pencilが第2世代になり、大幅に改良されたことだ。本体の一辺にあるマグネットが内蔵された部分は充電コネクタを兼ねており、そこにApple Pencilを「くっつける」ことで、充電とペアリングが行われる。そのため、第2世代Apple Pencilは一辺だけが平らで、転がらないようになっている。充電コネクターはないので、キャップもない。

第二世代Apple Pencil。新iPad Pro専用で、大幅にリニューアルした。本体につける関係もある、一辺だけが平らになっている。
12.9インチモデルにApple Pencilをつけてみた様子。意外とマグネットでしっかりついており、振った程度では外れない。
Apple Pencilをつける場所にはマグネットがある。都合、ここが「上」の扱いだ。左側にはnanoSIMのスロットも。
本体にApple Pencilをつけるとすぐ充電が始まる。充電時間は明かされなかったが、「従来のApple Pencil同様、短時間でいい」(アップル説明員)という

内部にはセンサーが組み込まれ、ペンをもった時の人差し指の「ダブルタップ」を認識する。iOSの側では、「メモ」アプリでの「ペンと消しゴムの切替」「前に使ったツールへ戻る」などに使えて、設定の切替によって選べる。この機能の使い方は、アプリデベロッパー側で自由に設定が可能で、ペイントアプリ「Procreate」の新iPad Pro対応版では、ダブルタップを「機能呼び出し」に使えるようになっていた。

反射で見づらいが、ご勘弁を。新Apple Pencilの「ダブルタップ」機能は、OSの設定から切り換えられるようになっている。
ペイントアプリ「Procreate」では、ペンのダブルタップから機能呼び出しのショートカットが現れるようになっている。

Smart Keyboardは、背面のカバーを兼ねる「Smart Keyboard Folio」になった。専用の「Smart Connector」で本体と接続され、バッテリー充電やペアリングが不要なことは、旧iPad Pro用のSmart Keyboardと変わりない。短時間タイプした印象では、タッチも若干良い方に改善されたようだ。ハンズオンでテストできたのはUSキーボードだったが、日本向けにはJISキーボードも出荷される。

iPad Pro 12.9インチ用のSmart Keyboard Folio。
iPad Pro 11インチ用のSmart Keyboard Folio。エンターキーなどのサイズは、12.9インチより小さくなる。

Smart Keyboardは傾きを変えられないのが欠点だったが、Smart Keyboard Folioは2段階だけだが、傾きの調整が可能になっている。

Smart Keyboard Folioはキーの傾きを2段階で調節可能に

一方、コネクタの位置が変わったこと、背面をカバーするために本体のサイズに合わせて作られていることから、「10.5インチや9.7インチのiPad Proに、12.9インチ用のキーの大きなSmart Keyboardを合わせて使う」という裏技は使えなくなっている。

USB-Cになったことで、4Kディスプレイやカメラなどと直接接続が可能になった他、iPhoneの充電までできるようになっている。従来のLightingでは、データ転送速度や給電能力にも限界があり、「カメラをつないでデータをやりとりする」だけで、別途電源供給が必要になったりした。だが今回は、そういうことはない、という。どれだけの周辺機器がつながるかは、その場では確認できなかったので、レビューなどの機会に色々試してみたい、と思っている。

iPad Proを4Kディスプレイに、USB-Cを介して直接接続して絵を描くデモ。iPad Proの上では拡大して書いているが、ディスプレイの方には全体で9K×9Kの絵が表示され、次第に出来上がっていくのがわかった

待望の「MacBook Air」と「Mac mini」がリニューアル

Macの方は、発表会では主に2つの製品がフィーチャーされた。

一つ目は「MacBook Air」。MacBookやMacBook Proはリニューアルされてきたが、MacBook「Air」としては久々の新モデルだ。

MacBook Air・ゴールドモデル。このカラーだと、13.3インチになったMacBook、という印象も

一番の特徴は「Retinaディスプレイになったこと」。これは待ち望んだ人も多いのではないだろうか。ディスプレイ変更に伴いベゼルも細くなり、結果的に、ボディも小柄になった。だが、少し丸みを帯びたクサビのような形状に変わりはなく、「ああ、MacBook Airだな」と誰もがすぐにわかる形状である。パフォーマンスなどをチェックしないとなんとも言えない部分があるが、MacBook Airの最新版を待ち望んでいた人には待望の製品であろう。

本体底面。この丸みを帯びた形はまさに「MacBook Air」だ。

2番目の特徴は「カラーが増えた」こと。スペースグレイ・シルバー・ゴールドという、MacBookと同じ配色になっている。この点からも、新MacBook Airが「13.3インチでリニューアルしたMacBook」である、という印象も強く感じる。

MacBook Airはスペースグレー・シルバー・ゴールドの三色に
MacBook Air(スペースグレー)。
MacBook Air(シルバー)。

そして、3つ目の特徴が「指紋認証機能であるTouch IDの搭載」。MacBook Proに続いての搭載だが、MacBook ProがOLEDのディスプレイ兼用UIである「Touch Bar」とのセットでの導入であったのに対し、MacBook Airは右上端の部分にTouch IDのみが搭載されている。

キーボード面左上に搭載された「Touch ID」。MacBook Proのそれと同じく、電源キーを兼ねている

インターフェイスは、本体左側にThunderbolt 3が2つ。これは電源を兼ねている。そして、反対側にはヘッドホン端子が存在する。

本体左。インターフェイスとして、Thunderbolt 3が2つがある。
本体右側にはヘッドホン端子だけがある。

もう一つの目玉、Mac miniも展示されていた。こちらは4年も更新されていなかったので、パワーは相当上がった。グラフィックや音楽など、「色々な機器との連携」で使うことがアピールされている印象が強かった。スペースグレイのボディもなかなか精悍だ。小さいデスクトップとしてのMacを待ち望んでいた人には、これも待望の製品といえるだろう。

新しいMac mini
音楽制作のやめに、キーボードやミキサーとセットで使うことを想定した展示も
積み重ねて多数のプロセスのために使う、というパターンが想定されているのがMac miniらしいところだ

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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