西田宗千佳のRandomTracking
第574回
国内中心のTVS REGZAが「あえて技術だけCESで展示する」理由をきいてきた
2024年1月18日 07:00
TVS REGZAは2023年から、Hisenseブースを間借りするような形で、CESに出展している。今年も、2024年モデルに搭載予定のテクノロジーを引っ提げて、CESにブースを構えた。
だがTVS REGZAは、まだアメリカ市場には復帰していない。CES会場でアピールしているのも、あくまでテクノロジーであって製品ではない。
なぜこのような形で出展を行なっているのだろうか?
TVS REGZA 取締役副社長の石橋泰博氏にCES会場で聞いた。
来るべき「海外再挑戦」のためにクラフトマンシップをアピール
REGZAが今回展示したのは、同社のハイエンド製品向けの技術。
中でも、ハイエンド製品向けプロセッサーである「レグザエンジンZRα」を生かした新しい高画質化技術である「AI光景再現テクノロジー」や、新開発のオーディオポストプロセッサを活用した「レグザイマーシブサウンド 5.1.2」を軸にデモが行なわれていた。
画質についても良い評価を得られたというが、「レグザイマーシブサウンド 5.1.2」については、「サウンドバーを隠して展示しているんじゃないか」と来場者が疑うほど、良い効果が得られていたという。
機能の詳細については、以下の記事で紹介している。
だが、これらの技術が使われた製品は、まずは日本で発売され、アメリカ市場をはじめとした海外では、直接的な展開予定がない。
ではなぜ展示するのか?
石橋副社長は次のように語る。
「我々がこうした技術を常に開発しているということは、日本では一定の認知を得ています。しかし、海外ではそうではありません。我々はこういう思いで製品を作っているのだ、ということ。そして、この技術にはこういう意味がありますよ、ということを広く伝えたいのです。ハイエンドのテレビを作るメーカーは減ってきましたが、こういうパッション・コンセプトで売っているメーカーがまだあってもいいじゃないですか。そういう価値をきちんと世界に認めていただくことは大事かな、と思います」
展示ブースには「Craftsmanship of Toshiba TV」と題したパネルとビデオも公開されていた。これは、REGZAが長年に渡ってテレビ開発で技術開発を積み上げてきたことを、改めて海外に対して示すという狙いがあってのものだ。
REGZAは東芝のテレビブランドとして展開していたが、ご存じのように、一度国内のみの事業に戻し、さらにHisense傘下となって「TVS REGZA」としてビジネスをしている。
では、今回のような技術認知を経て「ハイエンドテレビ・ブランド」として世界市場に復帰するのか?
石橋副社長は、「もう一度参入してくれるなら歓迎する、という声はけっこういただく。日本ブランドのものを買いたい、という方はいる」とはしつつも、それが短期的に難しく、まだ時間がかかるとも説明する。
一方で「ある意味、再参入は別の形で始まっている」とも話す。
「REGZAはHisenseの中のブランドではあるのですが、そのHisenseの中に『TOSHIBA』『REGZA』の技術を入れて、『これは日本の魂が入っていますよ』という形で再参入していきたいな、と思っています。すでに昨年のHisense・グローバルモデルには、レグザエンジンで培った技術が入っています。もちろん、信号処理や放送などの処理は違いますが。近いうちに、レグザエンジンZRαも導入したいと考えています」
その上で、「技術を磨く上でも、CESでの展示には意味がある」という。
「こういうブースに来ていただける方は、かなりの知見をお持ちの方が多いんです。そうした方々からは、日本での反応とはまたちょっと異なる、日本人感覚ではないフィードバックをいただけます。そうした反響を取り込むことで、我々の考え方もブラッシュアップしていけると思うんです。もう一度外(海外)に打って出るにも、外に技術を伝え、外でも通用するようにしていくことは、やっぱり重要だろうと思います」