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第574回

国内中心のTVS REGZAが「あえて技術だけCESで展示する」理由をきいてきた

CES2024・Hisenseブースに作られた「REGZA」のテクノロジー展示

TVS REGZAは2023年から、Hisenseブースを間借りするような形で、CESに出展している。今年も、2024年モデルに搭載予定のテクノロジーを引っ提げて、CESにブースを構えた。

だがTVS REGZAは、まだアメリカ市場には復帰していない。CES会場でアピールしているのも、あくまでテクノロジーであって製品ではない。

なぜこのような形で出展を行なっているのだろうか?

TVS REGZA 取締役副社長の石橋泰博氏にCES会場で聞いた。

TVS REGZA 取締役副社長の石橋泰博氏

来るべき「海外再挑戦」のためにクラフトマンシップをアピール

REGZAが今回展示したのは、同社のハイエンド製品向けの技術。

中でも、ハイエンド製品向けプロセッサーである「レグザエンジンZRα」を生かした新しい高画質化技術である「AI光景再現テクノロジー」や、新開発のオーディオポストプロセッサを活用した「レグザイマーシブサウンド 5.1.2」を軸にデモが行なわれていた。

2024年ハイエンドモデルに採用される「レグザエンジンZRα」を使った「AI光景再現テクノロジー」をアメリカでもデモ
テレビに内蔵されたスピーカーを使って空間オーディオを再生する「レグザイマーシブサウンド 5.1.2」も展示

画質についても良い評価を得られたというが、「レグザイマーシブサウンド 5.1.2」については、「サウンドバーを隠して展示しているんじゃないか」と来場者が疑うほど、良い効果が得られていたという。

機能の詳細については、以下の記事で紹介している。

だが、これらの技術が使われた製品は、まずは日本で発売され、アメリカ市場をはじめとした海外では、直接的な展開予定がない。

ではなぜ展示するのか?

石橋副社長は次のように語る。

「我々がこうした技術を常に開発しているということは、日本では一定の認知を得ています。しかし、海外ではそうではありません。我々はこういう思いで製品を作っているのだ、ということ。そして、この技術にはこういう意味がありますよ、ということを広く伝えたいのです。ハイエンドのテレビを作るメーカーは減ってきましたが、こういうパッション・コンセプトで売っているメーカーがまだあってもいいじゃないですか。そういう価値をきちんと世界に認めていただくことは大事かな、と思います」

展示ブースには「Craftsmanship of Toshiba TV」と題したパネルとビデオも公開されていた。これは、REGZAが長年に渡ってテレビ開発で技術開発を積み上げてきたことを、改めて海外に対して示すという狙いがあってのものだ。

REGZA・TOSHIBAとしての「Craftsmanship of Toshiba TV」もアピール

REGZAは東芝のテレビブランドとして展開していたが、ご存じのように、一度国内のみの事業に戻し、さらにHisense傘下となって「TVS REGZA」としてビジネスをしている。

では、今回のような技術認知を経て「ハイエンドテレビ・ブランド」として世界市場に復帰するのか?

石橋副社長は、「もう一度参入してくれるなら歓迎する、という声はけっこういただく。日本ブランドのものを買いたい、という方はいる」とはしつつも、それが短期的に難しく、まだ時間がかかるとも説明する。

一方で「ある意味、再参入は別の形で始まっている」とも話す。

「REGZAはHisenseの中のブランドではあるのですが、そのHisenseの中に『TOSHIBA』『REGZA』の技術を入れて、『これは日本の魂が入っていますよ』という形で再参入していきたいな、と思っています。すでに昨年のHisense・グローバルモデルには、レグザエンジンで培った技術が入っています。もちろん、信号処理や放送などの処理は違いますが。近いうちに、レグザエンジンZRαも導入したいと考えています」

その上で、「技術を磨く上でも、CESでの展示には意味がある」という。

「こういうブースに来ていただける方は、かなりの知見をお持ちの方が多いんです。そうした方々からは、日本での反応とはまたちょっと異なる、日本人感覚ではないフィードバックをいただけます。そうした反響を取り込むことで、我々の考え方もブラッシュアップしていけると思うんです。もう一度外(海外)に打って出るにも、外に技術を伝え、外でも通用するようにしていくことは、やっぱり重要だろうと思います」

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、AERA、週刊東洋経済、週刊現代、GetNavi、モノマガジンなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。 近著に、「生成AIの核心」 (NHK出版新書)、「メタバース×ビジネス革命」( SBクリエイティブ)、「デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか」(講談社)などがある。
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