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第593回

iPhone 16からAirPods 4まで、アップル秋の新製品ハンズオン。AirPods 4は落ちにくくなった!?

アップル秋の新製品ハンズオンをお届けする。

筆者は今年も、米クパティーノにあるアップル本社へと取材に来ている。主軸である「iPhone 16シリーズ」はもちろん、新しくなったAirPodsシリーズやApple Watchについても、写真を中心にしつつ、現地取材で得られた情報を加味してお伝えしていこう。

なお、iPhoneやAirPodsシリーズについては別途詳報も掲載を予定している。そちらはもうちょっとお待ちいただきたい。

アップル本社内にあるスティーブ・ジョブズシアター

デザイン路線は踏襲も「Apple Intelligence」シフトへ

まずはiPhone 16シリーズからいこう。

モデルの考え方としては、iPhone 15シリーズを踏襲したものといっていい。要は「性能×サイズ」のマトリックスだ。

カラーリングに変化はあったものの、デザインテイストとしては昨年を踏襲。ポップな16系にメタルな16 Pro系、というところだろうか。

iPhone 16のカラーバリエーション
iPhone 16 PlusとAirPods 4
iPhone 16 Proのカラーバリエーション
iPhone 16 ProとPro Max

16 Proの新色である「デザートチタニウム」は、映像だと少し地味に見えるものの、実物は意外と派手で見栄えの色合いだ。

iPhone 16 Proの「デザートチタニウム」

ただ、昨年はiPhone 15系と15 Pro系で機能がけっこう異なっていた。それに対し今年は、昨年と価格を据え置いた上で「プロセッサーのピーク性能」「バッテリー動作時間」「カメラ性能」以外の部分を近いものにしてきた印象が強い。

昨年はiPhone 15 Pro系でのみ「空間ビデオ」撮影に対応していたが、今年はiPhone 16系もカメラ配置が変わり、全モデルで空間ビデオ撮影が可能になっている。視聴にはApple Vision Proや各種XR機器などが必要になるためまだハードルは高いが、「思い出を残す」という意味では重要な機能だと感じる。

iPhone 16のカメラは配列が変わって空間ビデオ対応に

各モデルの共通性を特に感じさせるのが「プロセッサー」と「ユーザーインターフェース」だ。

プロセッサーの方は別途詳報を予定しているが、要は「A18」世代にそろえ、全機種でApple Intelligenceを利用可能にしてきた。iPhone 15シリーズ以前のスマホだと、iPhone 15 Pro系のみがApple Intelligenceに対応していたので、今年の製品で「全機種対応」になるのは必然でもある。

「アクションボタン」と「カメラコントロール」搭載

それ以上に意外だったのは「ユーザーインターフェース」だ。

昨年アップルはiPhone 15 Pro系で「アクションボタン」を追加した。カメラや翻訳などの機能を呼び出す専用ボタンだったわけだが、今年はさらに「カメラコントロール」というボタンを追加している。

iPhone 16 Pro Maxのカメラコントロール
iPhone 16 Plusのカメラコントロール

これは単なるシャッターボタンではなく、指をスワイプすることで機能選択やズームの変更が行えるもの。要は「iPhoneの画面を細かくタッチするのではなく、カメラコントロールを触ることで撮影を完結する」新しいUI、といっていい。

以下に操作の動画を掲載するが、なかなか面白い操作体系だった。iPhone 16 Pro系では、フォトグラフスタイル(撮影時に色味などをカスタマイズする機能)やスローモーション撮影など、16系よりも細かな撮影設定がある。それらもスワイプ+半押し+タブルタップの組み合わせで呼び出せるようになっており、いままでのスマホになかった感触である。

カメラコントロールの操作動画

この操作、OSの準備が整っていないため会場では試せなかったが、Apple Intelligenceとの連携も重要な要素になっている。

iPhoneを縦持ちした上でカメラコントロールを軽く押すと、カメラから周囲にあるものの映像をApple Intelligenceへ取り込む。そしてそこから、予定表への登録や内容の質問などの「AI連携」が可能になる。

基調講演映像より。後日公開されるApple Intelligenceとも連携

似た機能は、Googleも電源ボタン連動などで実装しているが、カメラのための専用ボタンを使ってAI連携、というUIの方が確かにわかりやすい。

ただ、Apple Intelligenceは「まず年内にアメリカ英語で」提供される段階。日本語対応は2025年になる。

これを「いますぐ使えないからまだいい」と考えるか、「いま買うと今後使える新機能」と考えるかは微妙なラインかもしれない。

AirPods 4は落ちにくくなった!?

今回はAirPodsもラインナップが一新された。

といっても、AirPods Pro 2については「ソフトウエアアップデートによる新機能追加」で、Air Pods Maxについては「新色へのリニューアル」と「USB Type-C端子による充電対応」が中心だ。

AirPodsの新ラインナップ。カラー変更されたAirPods Maxが目立つが、やはりAirPods 4に注目
AirPods Max。LightningからUSB-Cに変更に

そうなると話題の中心は、完全な新機種となった「AirPods 4」ということになる。

AirPods 4(ノイズキャンセル対応モデル)。端子はもちろんUSB-C

AirPods 4は2つのモデルに分かれる。

どちらもオープンエア型だが、上位モデル(2万9,800円)はアクティブノイズキャンセルに対応、「Find My(探す)」機能にも、ワイヤレス充電にも対応する。それに対して下位モデル(2万1,800円)は、それら3つの機能を搭載していない。

会場で試せたのは、2つのAirPods 4のうち、アクティブノイズキャンセル機能を搭載したものだ。

耳につけてみると、いままでよりも「しっくり」くるのがわかる。つけた感じがまったく異なるのか、というとそうではないのだが、耳介に引っかかる部分が増えていて、以前よりも落ちにくくなっているという印象を受けた。手元に旧モデルのAirPodsがなかったので比較も難しかったが、丸い耳に当たる部分の形状は変わっている。

AirPods 4のイヤフォン部。デザインは2モデルともほぼ同じだという

ノイズキャンセルもかなり良い印象だ。

ハンズオン会場はかなり騒音が多い環境だが、つけた瞬間に音がスッキリと消えた。首を振った時に聞こえ方が少し変わるなど、AirPods Proとは方向性が異なる部分もあったが、オープン型のイヤフォンとしてはかなり好ましい感じではあった。

聞こえ方や耳への当たり、落ちづらさなどは属人性のある部分なので、後日もう少し詳しくチェックしたいと考えている。

Apple Watchは「Series 10」に注目

Apple Watchは新機種「Series 10」が登場した。

Apple Watch Series 10。斜めから見ると特に薄さがわかりやすい

こちらはディスプレイサイズが46mmと42mmになり、さらに大きくなった。46mmはApple Watch Ultraよりも大きいくらいだ。初代のApple Watch(2015年発売)は大きい方が42mmだったが、いまやそのサイズと「小さい方」が並んでしまった。

厚さはスペック上1mm小さいだけなのだが、特に46mmについては、画面サイズが大きくなった分、より薄くなったように感じる。

Series 10ではアルミニウムとチタンの二系統が用意され、価格も異なる。この辺りは好みと予算に応じてチョイスするところだろう。

Series 10のアルミニウムモデルのジェットブラック。けっこう高級感がある
同じくアルミニウムモデルのシルバー

新たに「睡眠時無呼吸の通知」に対応するが、これは、厚生労働省の定めに基づく「管理医療機器販売業者」認定を受けた上で提供されるもの。寝て起きたら1度でわかる、という性質のものではなく、何日間かつけ続けて「傾向を把握する」機能に近い。

「睡眠時無呼吸の通知」はSeries 10の他、Apple Watch Series 9およびApple Watch Ultra 2でも利用できる。要は使っているプロセッサーが「S9」もしくは「S10」の機種で対応する、とのことだ。

今回、Apple Watch Ultra 2がデザイン・バンドの追加という形で併売されるのだが、これも「睡眠時無呼吸の通知」などの機能が使えること、アウトドア向けの製品としての価値が変わっていないことなどが理由と考えられる。

なお、新しい急速充電機能(30分で80%まで充電)は、Apple Watch Series 10にのみ搭載されている。同じハイエンドモデルでも、機能(Series 10)かアウトドア向けの堅牢性(Ultra 2)かは、特にチタニウムモデルを選ぶ人にとっては、けっこう悩ましいところかもしれない。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、AERA、週刊東洋経済、週刊現代、GetNavi、モノマガジンなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。 近著に、「生成AIの核心」 (NHK出版新書)、「メタバース×ビジネス革命」( SBクリエイティブ)、「デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか」(講談社)などがある。
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