鳥居一豊の「良作×良品」

第76回

オーディオ沼にようこそ! 本格派エントリー、デノン800NE×GODZILLA 星を喰う者

最近はコンパクトなサイズのオーディオ機器や、スピーカーまで一体型とした新しいスタイルのものが数多く登場してきている。横幅43cmのフルサイズのコンポーネントは、“大きなサイズ”と感じる人も少なくないだろう。

デノン800NEシリーズ。上からネットワークプレーヤー「DNP-800NE」、プリメインアンプ「PMA-800NE」

一方で、超高級オーディオの多くがフルサイズに近いサイズ感ということもあり、“本格的な単品オーディオコンポ”という印象を持つ人は多いはず。実際のところ、サイズにゆとりのある大きさなので、オーディオ基板や電源部のためのトランスといった部品を余裕を持って配置でき、各部の干渉や影響が抑えられ、音質的にも有利だ。

とはいえ、気軽に音楽を楽しみたい人が多いエントリークラスではやはり少々大げさだ。そのため、こうしたフルサイズのモデルをラインアップするメーカーはずいぶんと減ってしまった。そんななかでデノンはフルサイズのHiFiオーディオ機器をエントリークラスから揃えている数少ないメーカーだ。

今回紹介するのは、デノンの800NEシリーズ。2500NEシリーズや1600NEシリーズに続く新時代のシリーズのエントリークラスとなる。今回の試聴で使ったのは、ネットワークプレーヤーの「DNP-800NE」(定価6万円/実売49,000円前後)、プリメインアンプ「PMA-800NE」(同7万円/53,000円前後)の2台。800NEシリーズにはこの他に、CDプレーヤーの「DCD-800NE」(同6万円/49,000円)がある。

DNP-800NE(左)、DCD-800NE(右上)、PMA-800NE(右下)。いずれも薄型のデザインでスマートな印象だ

実売約5万円のお手頃価格ながら、上級機の技術と音質をしっかりと継承

それぞれの概要を紹介しよう。まずDNP-800NEは、独自のネットワーク機能である「HEOS」に対応。DLNA準拠のネットワークオーディオ再生機能をはじめ、Spotifyをはじめとする各種の定額制音楽配信サービスやインターネットラジオ機能なども備える。さらに前面にUSB端子を持ち、USBメモリーに保存したハイレゾ音源などをそのまま再生可能。ネットワークプレーヤーとしての機能は十分以上のものを備えている。

D/Aコンバーターは、上位モデルと同じ「PCM1795」を搭載。これはデノンのエントリークラスのネットワークプレーヤーとしては初のこと。さらに独自のアナログ波形再現技術である「Advanced AL32 Processing Plus」を採用。PCM 44.1kHz/16bitの場合は最大705.6kHz/32bitのアップサンプリング/ビット拡張を行なう。これらにより、ハイレゾ音源の対応フォーマットは、WAVやFLAC、ALACなどのPCM系は最大192kHz/24bit対応。DSDは最大5.6MHz対応となる。

また、HEOS対応ということで、対応機器とネットワーク接続し、手軽に室内の機器へ音楽を配信できる。Amazon Alexaとの連携も可能と、なかなか多機能だ。

なにより肝心なのは高音質のための設計や高音質パーツの投入だ。同じNEシリーズの上位モデルでも使用されているデノンのカスタムパーツが贅沢に採用されている。また、回路構成も1600NEを受け継ぎ「シンプル&ストレート化」を徹底。最短経路での信号配線を行ない、各部の干渉や悪影響を最小限に抑えている。

デノンのカスタムパーツが贅沢に採用されている

続いては、PMA-800NEだ。DNP-800NEよりもほんのわずか背が高いが、十分に薄型のサイズに収まっている。パワーアンプ部は「Advanced HCシングルプッシュプル回路」で、1組のHCトランジスタを用いるシンプルな構成だ。そして、上級機と同様にプリアンプ部での増幅を行なわない1段構成のハイゲインアンプ構成を採用。音質への影響の大きい入力カップリングコンデンサーを用いない設計など、シンプル&ストレートの思想を追求している。さらに、回路構成がシンプルなアナログ式ボリュームを採用するなど、デノンのオーディオへのこだわりがしっかりと受け継がれている。

PMA-800NEには、PCM 192KHz/24bit対応のデジタル入力も備える。デジタル入力は同軸デジタル×1、光デジタル×3を装備。このデジタル入力部はシールドケースに封入されており、回路からの輻射ノイズの影響を低減。また、アナログ入力使用時には、デジタル入力回路への電源をカットして回路を停止させる「アナログモード」も備える。使い勝手の良いデジタル入力を備えながらも、しっかりとアナログアンプとしてのクオリティーを保つ設計になっている。

入力部はシールドケースに封入されており、回路からの輻射ノイズの影響を低減している

もちろん、大型EIコアトランスの搭載や専用に開発されたカスタム仕様の大容量ブロック電解コンデンサー、大容量整流ダイオードなどを使用し、強力な電源部を構成している。このほかにも、デノンのカスタムパーツなどをはじめとする上級機譲りの高音質パーツをぜいたくに使用している。

足元までしっかりとした作り。PMA-800NEはボディ剛性も高い

試聴するため、機材をセッティングした。フルサイズのコンポと言っても薄型で重量もさほど重くはないので作業は容易だ。感心したのが、脚部のパーツ。この価格帯のものになると、インシュレーターというよりも簡易的なゴムシートが貼ってあるだけということも少なくないが、DNP-800NE、PMA-800NEのどちらも口径の大きな脚部パーツをきちんと4つ備えている。樹脂製ではあるが内部は剛性を高めるためのリブ入りの構造となっており、防振効果を高めている。

また、PMA-800NEはトップカバーの厚みを従来よりも14%高めたものを採用して、剛性がアップしている。放熱口の空いた天板部分も十分な強度があり、ひ弱な感じがしない。内部にも振動源となる大型のトランスを備えることもあり、より剛性の高い作りになっていることがわかる。

PMA-800NEの脚部。このクラスとしてはかなり立派な脚部となっている。この脚部パーツはDNP-800NEも同様だ

信号の接続は、アナログ接続に加えて、光デジタルケーブルも接続して行なった。試聴時にアナログ接続とデジタル接続の音質の違いをチェックしてみるため。あえて両方とも接続しているのは、PMA-800NEのデジタル回路をオフにする「アナログモード」の効果を検証するためでもある。

スピーカーは我が家の試聴室にあるB&Wの「マトリクス801 S3」を使用。スピーカー出力がA/Bの2系統あるので、ふだんと同じくバイワイヤ接続としている。

DNP-800NEの背面。アナログ音声出力は固定/可変の2系統。デジタル出力は光デジタルだ
PMA-800NEの入力端子部。上段にデジタル入力部があり、下段に4系統の入力と1系統の出力がある。MM/MC対応のフォノ入力はショートピンが備わっている

ちなみにDNP-800NEは、有線または無線のネットワーク接続で、HEOS対応のアクティブスピーカーなどと接続することも可能だ。アナログ音声出力を市販のアクティブスピーカーと接続して最小単位の構成で使用することもできる。さらに言えば、前面にヘッドフォン出力があるのでヘッドフォンアンプ的に使うことも可能。ヘッドフォンアンプ回路も3段階のゲイン切り替えを持ち、ハイインピーダンスのヘッドフォンにも対応可能となっており、なかなかに活用の幅が広い。

試聴では、スマホ用のHEOSアプリを使って楽曲の再生操作を行なっている。DNP-800NEの前面ディスプレイは日本語表示も可能なので、本体やリモコンの十字キー操作で楽曲の検索なども容易に行なえるが、聴取位置から手元で操作できるスマホアプリの方が手軽でいい。

DNP-800NEの前面ディスプレイ。日本語表示も可能なディスプレイで、楽曲を表示できる。楽曲の検索もしやすく、操作も快適だ
HEOSアプリを起動したところ。同じネットワーク上にあるHEOS対応機器を一覧表示する。複数の機器をグループ化して連動させることも可能だ
HEOSアプリのメニュー。DLNAのネットワーク再生やUSBメモリ再生のほか、各種の音楽配信サービスやインターネットラジオも楽しめる
ミュージックサーバーの選択画面。BDレコーダーも表示されているが、再生できるのは音楽ファイルだけだ
「GODZILLA 星を喰う者」のサントラを一覧表示したところ
再生画面。リピート/シャッフル再生やプレイリスト再生も可能だ

実写とは異なる手法で「ゴジラ」を描いた「GODZILLA 星を喰う者」を聴く

今回の良作として選んだのは「GODZILLA 星を喰う者」のオリジナルサウンドトラック(48kHz/24bit FLAC)。アニメ版のゴジラ3部作の完結編だ。ついに完結した3作品を通して見ると、ゴジラという生物に対するさまざまな考察が興味深いし、最近は実写版でもあまり登場する機会が減っている宇宙人が2種族も登場し、人類と共にゴジラに立ち向かった意味がよくわかる。ゴジラに対する考えが、ビルサルド、エクシフのそれぞれで人類とは異なっており、それらの相克が実に面白い。

「GODZILLA 星を喰う者」
(C)2018 TOHO CO., LTD.

あえてゴジラと怪獣が激突するような展開を避けたのもユニークなアプローチで、それだけに物足りない部分もなくはないが、今までにないゴジラを描いたのは間違いなく、アニメ版という以上に異色のものとなっている。

(C)2018 TOHO CO., LTD.

現在も第3部が公開中なので本編にはまったく触れないが、本編を見た筆者の感想は「凄まじいレベルの良い低音だった」ということ。サブウーファーが喜ぶ極上の低音がたっぷり詰まっており、Blu-rayの発売が待ち遠しい。

さておき、「GODZILLA 星を喰う者」の劇伴の話に戻ろう。音楽を担当するのは、シリーズを通じて、服部隆之。ゴジラ作品としては「ゴジラVSスペースゴジラ」、「ゴジラ2000 ミレニアム」などでも音楽を担当している。

さっそく音を出してみると、マトリックス801 S3がなかなかパワフルに鳴る。エントリークラスということで非力さを心配したが、それはまったく無用だった。低音はやや細身になるが、最低域への伸びも十分だし、ベースの音階もしっかりと描く情報量の豊かな音だ。中高域も含めて解像感の高い再現で、細かな音までつぶさに描き、しかも解放的に音が広がる。

実際のところ、かなり上等な音に仕上がっていて驚いた。2500NE、1600NEの開発経験やパーツの共有なども効いていると思うが、エントリークラスとは思えない音だ。もちろん、上級機になってくるほどに低音域の量感を伴った音の厚みや音の実体感、ステレオ空間の再現では音場の奥行きが加わり、さらに質の高い再現になるが、そこまで踏み込んだマニアックなオーディオの世界ではない。

しかし、コンパクトなシステムで音楽を聴いていた人にとっては、「自分は今まで何を聴いていたのだろう?」と軽くショックを受ける程度には本格的なオーディオの音がする。スケールの大きなサウンドステージ、そこに定位する個々の音のくっきりとした再現、楽器の音色をリアルに描くニュートラルな音質と勢いやパワーだけでない繊細さ、特にS/Nの良さに起因する音の響きの余韻がきれいに描かれるなど、本格的なオーディオに期待したい重要な要素をしっかりと備えている。

詳しく聴いていこう。まずは2曲目の「星を喰う者」。サブタイトルでもあり、オープニングにも使われている曲だ。基本的にどの楽曲もオーケストラ編成だが、電子楽器やコーラスに電気的な加工を加えていることも多く、空間感の広い演奏が多い。この曲では、本編だとファンならばキングギドラとすぐにわかる特徴的な声が含まれるのだが、残念ながら劇伴ではそれはない。深い闇の彼方から何かがやってくるというイメージのシリアスな曲調で、中盤に緊迫感を盛り上げる低音楽器の力強い音が重なってくる。序盤の空間の広がりや弦楽器によるギドラのテーマと思える主旋律も粒立ちよく再現。もちろん、低音楽器のドーンと響く音も十分に力強い。要塞化したメカゴジラシティでさえ倒せなかったゴジラ・アースに対して、生き残った者はどう立ち向かうのか。そんな不安と恐怖を感じさせる雰囲気もよく出ている。

(C)2018 TOHO CO., LTD.

5曲目の「メトフィエス-優しさ-」から、9曲目「メトフィエス-思惑-」の5曲は、弦楽器を主体とした落ち着いたメロディーの曲で、信仰を説くエクシフの一人、メトフィエスのゴジラに対する立ち位置や思想が描かれる。極端に言えば、第1部は人類の戦い、第2部はビルサルドの戦いが描かれており、第3部はエクシフの思想が主軸になる。自らもギドラという最強の怪獣に母星を滅ぼされたとはずのエクシフはギドラやゴジラをどう見ているのか。人類とは異なるその思想を、優しげだが不気味さを感じさせるメロディーで表現している。

こうした曲は音圧レベルも小さめで、S/Nが良くないシステムだと、微妙な響きの広がりがノイズに埋もれてしまい、空間感が損なわれがちだ。しかし、800NEシリーズはなかなかに聴感上のS/Nが良く、不気味に部屋に響き渡る調べをきめ細かく描いた。パワフルさばかりでなく、こうした弱音主体の音楽を鮮明に描くのは立派だ。

10曲目の「ビルサルドの反逆」は、うって変わって力強い低音主体の曲だ。ディストーションを効かせたエレキギターがメインのメロディーをテンション高く演奏し、打楽器主体の重厚なリズムが重なっていく。当然のように音楽も、エクシフやビルサルド、そして人類とそれぞれにテーマとなる旋律があり、それぞれのキャラクターを際立たせている。それだけに、雄壮かつ重厚なビルサルド、優しく柔らかなエクシフといった音楽の感触もきちんと描き分けることが重要だ。重厚でしかも柔らかな表現も可能という、さまざまな表情をもった音楽の表現力も十分なものがある。

アナログ入力とデジタル入力の音質の違いを聴き比べる

16曲目の「生贄」、17曲目「悪夢」になると、ゴジラさえも凌駕する新たな脅威の訪れが描かれる。曲自体は悲しげなムードなのだが、低音の弦楽器によるメロディーが不気味だ。しかも、「悪夢」では終盤に管楽器の低音がずっしりと響き、ドラマチックな音楽を締めくくる。本編を観ればわかるのだが、第3部はクライマックスではあるが壮大なバトルが描かれるのではなく、どちらかというと人の内面的な戦いとゴジラを交互に描いていく。そのため、音楽もあまり荒々しい曲は少なく、むしろ瞑想するかのような落ち着いた曲が多いのはそのためだ。だが、そんなムードを打ち破るように流れる重々しいメロディーが対比するように重なることでドラマチックなものとなる。ここが聴きどころのひとつ。

オーディオ機器で求められる瞬間的な大音量への対応力というやつだ。静かなメロディーから一転して力強い演奏になるような場合、特にアンプが非力だと力強さが追いつかず、腰砕けになりがちだ。ここで、今まで聴いていたアナログ入力(アナログモード:ON)から、デジタル入力に切り替えて違いを比べてみた。

ちなみにアナログ入力のまま「アナログモード」をOFFにしてみると、その差はわずかだが、やや雑味が増えるというか、音の余韻がやや不鮮明になる。デジタル入力にも信号は入力されているので、その影響がやや現れているようだ。アナログ入力時は、「アナログモード」をONにして聴くようにしたい。

「アナログモード:OFF」でデジタル入力に切り替えると、基本的な音質傾向は変わらないのだが、より鮮明でしなやかな感触になったとわかる。静かなムードのところではなかなか良いのだが、後半のドラマチックな部分がやや和らいでしまう。アナログ入力の方が特に中低音の力感やアタックの勢いの良さがでる。個人的にはやはりアナログ入力の方がエネルギー感のある鳴り方になって好ましいと感じた。

実際のところ、デジタル入力は利便性優先の装備かと思っていたくらいだが、音質差は思ったよりも小さかった。基本的にはアナログ入力主体で使った方がおすすめだが、小型プレーヤーなど、デジタル接続しかできない機器と組み合わせしやすいのは、やはり便利だ。

いよいよゴジラとギドラの戦いが始まる

ついにクライマックスだ。20曲目「目覚め」では、再び打楽器の力強いリズムと、弦楽器の合奏による重厚なメロディーが展開する。しかも、後半からは打楽器がまるで太鼓の連打のようにスピーディーなものとなり、スリリングに展開していく。このあたりのダイナミックな音は、もう少し音に厚みが欲しいとも感じるが、大太鼓の連打もドロつくことがなくキレのよい音になるし、管楽器によるメロディーも力強さは十分。音数が多い演奏でも音が混濁してしまうようなことはなく、実に鮮やか。最後の戦いのテンションの高まりを感じるには十分だ。

そして、22曲目「熱線攻撃」は、打楽器の連打と管楽器のエネルギーたっぷりの音が一気に鳴り響く19秒の曲。このハイテンションの演奏も実に鮮やかに鳴らしてくれた。

DNP-800NEとPMA-800NEの音は、情報量が豊かで音数も多く、きめ細かな音までニュアンス豊かに描くという点が大きな特徴だと感じた。それゆえに空間の広がりも豊かで、広々としたステージを感じられることも魅力だ。鳴らしにくいマトリックス801 S3で聴いていることもあり、ついついアンプのPMA-800NEの方を注目してしまいがちだが、DNP-800NEの分解能の高い再生音も優秀だ。機能としては高級機となんら変わらないものを備えているし、音質についても十分な実力があるとわかる。

こうしたネットワークオーディオ再生機能は、今ではAVアンプにも内蔵されるし、アクティブスピーカーが同等の機能を内蔵することもある。むしろ単体のネットッワークプレーヤーが一部のハイエンド機器を別にすればほとんどないと言えるほどだ。それらもそれなりの実力はあるのだが、やはり筐体を別にして他の干渉を抑え、電源部から独立した単体プレーヤーの音は別格のものがある。S/Nの向上やそれにともなう情報量の増大、そして音質的なまとまりの良さがある。

最後は戦いのクライマックスを彩る29曲目「破滅と救い」を聴こう。タイトルにある通り、2つの主題が交互に現れ、戦いの決着を壮大に描いていく。ゴジラ映画にハッピーエンドはないと言っても言い過ぎではないと思うが、悲痛な戦いの行方をドラマチックに描き切ったのは、デノンらしい情感豊かな表現力ならではだと思う。

(C)2018 TOHO CO., LTD.

800NEシリーズは、2500NE、1600NEシリーズの音をより安価で実現することを目指したというが、下手に情報量の多さやS/Nといった数値的な性能を追いかけてしまうと情感に乏しい面白みのない音になってしまう危険性もある。そうした失敗に陥らず、なによりも音楽としてのダイナミズムや豊かな情感の表現ができていることを高く評価したい。そこがしっかり伝わらないと、「GODZILLA 星を喰う者」の本質にも触れることができないからだ。

身近なオーディオ装置として、おすすめしたい良品

800NEシリーズは、それぞれが実売で約5万円ほどで、改めてそのコストパフォーマンスの良さに感心する。スピーカーも小型で優秀なものは多く、同価格帯ならばDALIの「OBERON1」(ペア57,000円)、少し価格は高いがB&W「607/MB」(実売ペア約9万円)などならば、合計15~20万円ほどで優れたシステムが手に入る。スマホをはじめ、身の回りにある機器で手軽に楽しめる音楽ではあるが、こうした本格的なシステムで聴くと音楽そのものの良さがさらにわかるようになる。

また、普段はヘッドフォン主体で、それなりに高価な機器を使っている人が、サブシステムとして使うスピーカー用のアンプ・プレーヤーとしてもおすすめだ。ヘッドフォンではなかなか味わえないサウンドステージの広がりは魅力だと思うし、情報量の豊かさでもヘッドフォン再生と比べて不足を感じることはないだろう。

決して先進的なシステムとは言えないし、古臭いスタイルかもしれないが、長く続いてきたスタイルだからこその良さもある。なによりも熟成された豊かな音、時代に左右されにくく長く付き合えるのはこういうオーソドックスなスタイルならではのものとも言える。楽しさいっぱいのオーディオ沼にようこそ。

鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40~60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。