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ポータブルに飽き足らない人へ、1台6~7万円でも次世代デノン"NE"サウンド「800NE」

 ハイレゾのハイビット/ハイサンプリング化も一段落。このあたりで「いっちょ本格的なオーディオ機器が欲しい」と考えている人も多いだろう。「ヘッドフォンなどのポータブル環境はある程度揃えたのでスピーカー再生もそろそろ……」なんて人もいるかもしれない。でも、「1台10万、20万円もするような単品コンポには手が出ない」という悩みも。そんな人に要注目な製品が8月中旬から登場する。デノンの新ライン「800NE」シリーズだ。注目の理由は型番の末尾“NE”にある。

デノンの新ライン「800NE」シリーズ

 ラインナップと価格は、ネットワークプレーヤー「DNP-800NE」、ハイレゾファイルのUSB再生もできるCDプレーヤー「DCD-800NE」が各6万円、DACも搭載したプリメインアンプ「PMA-800NE」が7万円。フルサイズの本格的なコンポだが、かなりリーズナブルだ。発売時期はネットワークプレーヤーのみ9月中旬、その他のモデルは8月中旬。

 結論から言うとこの800NEシリーズ、コストパフォーマンスが非常に優れた製品であると同時に、“オーディオの面白さ”を濃厚に楽しめる3機種になっている。

下段がプリメインアンプ「PMA-800NE」、上段がCDプレーヤーの「DCD-800NE」
ネットワークプレーヤー「DNP-800NE」

NEとは何か?

 800NEシリーズは新たに誕生したシリーズなのだが、実は末尾に「NE」とついたシリーズは800NEの前に2つ登場している。2016年に発売された「2500NE」と「1600NE」だ。2500NEは1台10万円台後半~20万円台、1600NEは1台10万円台。つまり今回登場した800NEは、2500NEや1600NEの下位シリーズになる。

 「NE」は「New Era」の略で、“新時代”を意味する。つまり「デノンの新時代コンポ」というわけだ。このNEには、デジタルソースとの親和性の高さなど、いろいろな意味が込められているが、大きな要素として“新たなサウンドマネージャーが監修した製品”というメッセージが込められている。そのサウンドマネージャーとは、2500NEや1600NEの紹介記事も含め、AV Watchに度々登場していただいている山内慎一氏だ。

デノンのサウンドマネージャー、山内慎一氏

 サウンドマネージャーとは、デノンが製品開発をする際に、 “デノンの音”の方向性を決める担当者の事。その人が首を縦に振らなければ製品は世に出ない“デノンの音の門番”のような存在だ。もちろん、音を聴いて「いい」「悪い」を判断しているだけではない。開発の初期段階、回路図レベルから参加し、パーツの選択、試作機に様々な改良を加え、音をチューニングし、最終的な製品へとまとめていく。映画における“監督”のような存在と言っても過言ではないだろう。

 上位機の2500NEは、新たにサウンドマネージャーに就任した山内氏がフルに手掛けた最初のシリーズとして、市場でも業界内でも話題となった。これまでのデノンサウンドの伝統を継承しつつも、大きな音の変化があったからだ。私も、2500NEを初めて試聴した時には進化具合に驚いた。山内氏自身も「最初はお店さんなどから戸惑いの声もありましたが、2500NE、1600NEを経て、ジワジワと受け入れていただけるようになりました」と振り返る。

 もちろん山内氏は、NEシリーズの単品コンポだけでなく、よりコンパクトな「デザインシリーズ」やヘッドフォンなどに至るまで、デノン製品の大半を監修しているのだが、NEシリーズはその中でも特に“山内氏によるデノンのハイエンドオーディオサウンド”を具現化した製品群を指している。

 デノンのエントリーコンポとしては、プリメインアンプの「PMA-390RE」(52,000円)や、CDプレーヤー「DCD-755RE」(52,000円)が既に存在する。800NEは、それよりも少し高価なシリーズではある。だが、「NEシリーズでは最もエントリー」であり、「NEシリーズの世界が1台6~7万円の価格帯で楽しめる」という意味で、注目度が高い製品というわけだ。

デノンのエントリーコンポ、プリメインアンプ「PMA-390RE」
CDプレーヤー「DCD-755RE」

Advanced HC、Advanced AL32 Processing Plus、PCM1795に注目

 各モデルの特徴をおさらいしよう。シリーズの核となるプリメインアンプ「PMA-800NE」は、定格出力50W×2ch(8Ω)、100W×2ch(4Ω)。電源回路には、大型のEIコアトランスと、専用に新たに開発されたカスタム仕様の大容量8,200μFブロック電解コンデンサ、大容量整流ダイオードを採用している。

プリメインアンプ「PMA-800NE」

 PCM 192kHz/24bitまで対応するDACも搭載。光デジタル入力と同軸デジタル入力を備えており、ディスクプレーヤーだけでなく、ポータブルプレーヤーなどと光デジタルで接続も可能だ。なお、USB DAC機能は備えていない。

 一般的なトランジスタの3倍のピーク電流供給能力を持つ、HC(ハイカレント)トランジスタをシングルプッシュプルで使っている。多数の素子を並列駆動して大電流を得るアンプも存在するが、PMA-800NEは比較的シンプルな回路を採用している。これは、多数の素子を使う際に生じる、素子の性能のバラツキによる音の濁りを避けるためのもの。この手法は「Advanced HC(シングルプッシュプル回路」と名付けられている。音質への影響が多い入力カップリングコンデンサも使わないなど、繊細な描写にこだわった構成だ。

 上位モデルのPMA-2500NE、PMA-1600NEと同じように、プリアンプで増幅はせず、一段構成のハイゲインパワーアンプのみで増幅するハイゲインアンプ構成を採用。音声信号が通過する回路と素子を減らし、信号経路を限りなく短くしている。

 デジタル基板はシールドケースに封入し、オーディオ回路からの輻射ノイズの影響を防止。フォノイコライザも搭載し、MM/MCカートリッジに対応。レコードプレーヤーとも接続しやすいアンプになっている。

デジタル基板はシールドケースに封入されている
ネットワークプレーヤー「DNP-800NE」

 ネットワークプレーヤーの「DNP-800NE」は、DSD 5.6MHzまで、PCM 192kHz/24bitまでの再生が可能。DACには、エントリーのネットワークプレーヤーとしては初めて、上位モデルと同じバーブラウンの「PCM1795」を採用している。

 DACの使い方にもこだわりがある。デノン独自のアナログ波形再現技術の最新バージョン、「Advanced AL32 Processing Plus」を搭載しており、デジタル録音時に失われたデータを復元。独自のデータ補間アルゴリズムを使い、PCM 44.1kHz/16bitの場合、705.6kHz/32bitまでアップサンプリングとビット拡張処理をする。この際、DAC内蔵のデジタル・フィルタは使わず、Advanced AL32 Processing Plusでデジタルフィルタ処理をかけることで、「原音をありのままに再現できる」という。

 ワイヤレスオーディオシステム「HEOS」のテクノロジーも内蔵。スマートフォン/タブレットで利用できる「HEOSアプリ」を使い、セットアップやNAS内の音楽ファイル選択、ストリーミング音楽サービスの操作、インターネットラジオの選局などの操作が行なえる

 音楽ストリーミングサービスは、Amazon Music、AWA、Spotify、SoundCloud等に対応。インターネットラジオの受信も可能だ。AirPlayやBluetoothにも対応。AirPlay2もサポートする。ハイレゾファイルを保存したUSBメモリからの再生も可能だ。

 細かいポイントとして、へッドフォンアンプにもこだわっている。3段階のゲイン切り替え機能を装備。300Ωや600Ωなどのハイインピーダンスなヘッドフォンでもドライブ可能な仕様だ。

CDプレーヤー「DCD-800NE」

 前述の「Advanced AL32 Processing Plus」は、CDプレーヤー「DCD-800NE」にも搭載。CDのPCM 44.1kHz/16bitの場合、705.6kHz/32bitまでアップサンプリングとビット拡張処理を行なう。

 DACもネットワークプレーヤーと同じバーブラウンの「PCM1795」を採用。エントリーのCDプレーヤーとしては初採用だという。DAC内蔵のデジタル・フィルタは使わず、Advanced AL32 Processing Plusでデジタルフィルタ処理をかけている。

 DACをマスター、FPGAやDSPなどのデバイスをスレーブとして動作させ、DACの正確な動作とデジタル回路全体の高精度な同期を実現するDACマスター・クロック・デザインや、デジタルオーディオ回路の性能を最大限に発揮させるために、位相雑音を大幅に低減したクロック発振器も搭載。44.1kHz、48kHzで個別のクロックを搭載するなど、音に重要な部分にはコストが割かれている。

 なお、このCDプレーヤーもハイレゾファイルのUSBメモリ再生が可能だ。

NEシリーズの“開放的な音”はどうやって出すのか

 山内氏によれば、2500NEや1600NEの開発を経て、「エントリーモデルと1600NEの間には価格の開きがあるため、800NEシリーズにあたる製品を開発しようという構想は以前からあった」という。

 しかし、1台6~7万円という価格帯となると、当然かけられるコストにも限りがある。「製品の企画から、試作機を作って実際に音のチューニングを始めるまでには半年や1年などの時間がかかるのですが、その期間はあれこれと想像して“どうなるかな”と期待半分、不安半分でした。私としては、NEシリーズのエントリーのつもりで作りはじめましたが、“別の形でまとめなければいけないかもしれない”とも考えていました。例えそうなったとしても、“NEのエッセンス”は多少なりとも入れようとは考えていました」。

 しかし、実際に試作機の第一号を1日いじった段階で「これならいけるな」とわかったという。「基本設計のポテンシャルと言いますか、伸びる可能性というのは、3週間とか時間をかけなくても、すぐにわかります。NEシリーズは、“ハイエンドの世界”をそのまま実現したものですが、それを800NEのクラスで出来るかどうかという不安はありました。例え、形だけ見せかけたとしても、中途半端なものになってしまいます」。

 こうしてNEシリーズの一員としてチューニングがスタートした800NE。2500NE、1600NEにも使われている高音質パーツも多数投入されていく。その象徴とも言えるのが、山内氏がスリーブの印刷や色までこだわり、音質を磨き上げたスペシャルコンデンサだ。

PMA-800NEの内部。鮮やかな緑色が、山内氏が手がけたコンデンサだ
ネットワークプレーヤー「DNP-800NE」の内部にも同じコンデンサが

 「カスタムパーツは、音質の良さだけでなく、製品を作りやすいようにパーツ自体を作っているという利点もあります。コスト的には上がってしまいますが、10倍になるとかではありませんので。こうした、これまでのNEシリーズで培ってきた“自分なりの音作りのプロセス”を使わなければ、良い製品は作れないと、今回つくづく思いました」。

 NEシリーズとして妥協しない音作り。だが、エントリーとしてコストを抑えなければならない部分も当然ある。その“削り方”にもノウハウがあるという。「音に影響しないところのコストを引いていくわけですが、考え方としては、“必要なさそうな部分は取ってしまう”という方針です。それは電気的な機構に限らずです。これまでの経験から、よりシンプルにしていく方が、上手くいくとわかっていますので」。

 チューニングでは、ワイヤリングや経路、機構部品の置き方などを変えていき、それによって音は大きく変化する。「例えば余計な部品が多いと、振動系は複雑になってしまいます。オーディオ機器の開発テクニックとしては、そうした部分に“蓋をする”やり方もあります。しかし、私は問題の発生源を“取って”しまう。NEシリーズのサウンドを“開放的な音”と評価していただく事も多いのですが、蓋をするような作り方では、(開放的なサウンドは)出ないのです」。

 かといって、削ぎ落としていけばいいというものでもない。“素の音”が魅力的でないとNEサウンドにはならないという。「シンプルにし過ぎると、スカスカな音になってしまいます(笑)。他の設計者と話す時に感じるのですが、問題点に対して“引き算するように対策していってフラットにしていく”ような手法もあると思います。ですが、そうすると、何かつまらない音になってしまう事が多い。情報量やディテールといった要素は同時にスポイルされやすいものだからです。一見安心感のある、無難な音にはなるので、“それで良し”とする人もいるのですが、私としては“それはちょっと違うのではないか”と言いたいですね。欠点を隠すのではなく、“良い部分を掘り起こす”ようなイメージです」。

 同時に山内氏は、“コストを抑えつつ、2500NE/1600NEの音に近づける”だけでもダメだという。「もちろん上位機種と比べれば、投入している物量やパワー感ではかなわない部分があります。しかし、800NEは最新の製品ですので、新しい技術やノウハウが活用でき、(上位機種と比べても)新しい価値を感じていただけると思います。例えば“全体のスムーズさ”が800NEではうまくいったと感じています」。

音を聴いてみる

 800NEシリーズの前に、その下位モデルと言えるプリメインアンプの「PMA-390RE」(52,000円)と、CDプレーヤー「DCD-755RE」(52,000円)の組み合わせを聴いてみた。スピーカーはBowers & Wilkinsの「800 Series Diamond」の「802 D3」だ。

まず、下位モデルの「PMA-390RE」、「DCD-755RE」を聴いてみる

 ドミニク・ミラーのアルバム「Fourth Wall」から1曲目の「Iguazu」を再生。5万円台のアンプながら駆動力は高く、フロア型の高級機である802 D3がしっかり鳴っている。バランス的には低域がやや盛り上がり気味で、パワフルだ。ただ、ちょっと音と音がくっついた「モコッ」とした低域で、もう少し分解能が欲しいと感じる。しかし、全体として重心が低いため、ドッシリと安心感のある音で、決して“エントリーモデルで安っぽい音”という感じはしない。

802 D3

 800NEシリーズに切り替えて、このあたりがどう変わるかを聴こう……と思っていたのだが、音が出た瞬間に思わず「は!?」と声が出てしまう。低音がどうこう以前に、音の“出方”がまるで違う。1つ1つの音が、解き放たれたように力強く前へと出てくる。音場の広さが桁違いであるのと同時に、そのステージに展開する音の“勢い”が違う。肺やお腹にグッと迫ってくるような音で、とても魅力的だ。

800NEシリーズ

 簡単に表現するなら“躍動的で気持ちのいい音”だ。山内氏は「スピーカーに音がまとわりつかないのがNEシリーズの特徴」と言うが、その通りだと感じる。オーディオファンでなくても、恐らく誰にでも、音が出た瞬間に「まったく違う」とわかるハズだ。

 “躍動的な音”と書くと、「野太い音がズドンと派手に出るだけなのか」と誤解されるかもしれないが、実際はその逆だ。音の1つ1つは細かく、繊細に描写されており、その1つ1つがしっかりと耳に届くので、躍動的だと感じる。スーパーで売れ残ったパックの魚と、釣り上げた船の上で捌いた魚の違いにも似ている。1つ1つの音の“活きが良い”。音が生々しいので、ヴォーカルの艶やかさにもドキッとする。フローティング・ポインツの名盤「エレーニア」の打ち込み系楽曲のキレの良さも凄まじい。音に撃ち抜かれるようだ。

 こうした音の傾向は、同じNEシリーズである2500NE、1600NEを聴いた時の印象とソックリだ。1台6~7万円の800NEシリーズでも“山内サウンド”が十分に堪能できるのは驚きだ。

 ビーチ・ボーイズのメンバーであるブライアン・ウィルソンも参加したジャネール・モネイのアルバム「Dirty Computer」の「Make Me Feel」や、ユジャ・ワンのピアノ「リゲティ:エチュード第10番 魔法使いの弟子」でも、開放的に広がるサウンドは三次元的で、奥に向かって展開するステージの深さも印象的だ。前に強く張り出す音があると同時に、その背後に細かな音がある事や、音の余韻が波紋のように広がっていく繊細な表現もよく見える。

 NEシリーズが特に優れていると感じるのは、この開放感、躍動感がありながら、音が暴れないところだ。好き勝手に音が飛び出すと、悪く言えば“うるさい音”、“ゴチャゴチャした音”になってしまう事だろう。しかし、NEシリーズはハイエンドオーディオらしい落ち着き、見通しの良さ、丁寧さがありながら、1つ1つの音が死んでおらず、生き生きとしている。まとまるところはキチッとまとまり、元気の良さはそのまま活かす。相反する要素が同居しているところが最大の魅力と言えるだろう。

 チューニングによる音作りでここまで追い込むためには、非常に地道な積み重ね作業が必要になる。そのため、のめりこんで長時間作業をやりすぎると、山内氏でも予定とは違う方向に音を追い込んでしまう事があると言う。「例えば12時間連続で作業するよりも、6時間チューニングし、次の日6時間チューニングする方がうまくいきます。正しく音を判断するためにも、頭や気持ちをフレッシュにする必要があります。体調が悪い時には、ぜんぜんうまくいかない事もありますね」。

 気になるのは、上位のNEシリーズ、特に1600NEと800NEで、どのくらい音に違いがあるのかという点。ぶっちゃけ800NEはかなりよく出来ているので、「800NEでも十分なんじゃないか?」という気もしてくる。

1600NEシリーズ

 だが、1600NEに切り替えると、音の方向性は同じなのだが明確な違いがある。開放感や躍動感はよく似ているのだが、低域のドッシリした安定感や、中高域の質感描写などで、1600NEの方が一枚上手であり、“大人っぽい余裕”を感じる。打ち込み系の楽曲で違いがよくわかり、強く張り出す音が、800NEは若くてやんちゃな感じがするが、1600NEは音により立体感があり、キツくなり過ぎない。クリアで音が美しい800NEに対して、1600NEは落ち着きもあって味わいが深い。それにしても、800NEのコストパフォーマンスの高さは特筆に値する。800NEで「NEシリーズの世界」を体験し、2500NEや1600NEシリーズに興味を持つ……なんて人も増えるかもしれない。

ポータブルオーディオから据え置きオーディオへの入門にも

 800NEというか、NEシリーズのサウンドを聴いていると、ヘッドフォンやカスタムイヤフォンで聴いている時に近い感覚を持つ事がある。頭内定位するヘッドフォンと、目の前に音場が広がるスピーカーでは、サウンドステージはまったく違うのだが、1つ1つの音にフォーカスがビシッと合い、トランジェントが良く、低域のキレが良好、細かい音が良く聴き取れる……といった部分が、高価な開放型ヘッドフォンや、バランスド・アーマチュアユニットを多数投入したイヤフォンを聴いている時に感じる分解能を連想させるのだ。

 それでいて、スピーカー再生ならではの音場の自然さが、800NEでは十分に楽しめる。耳や頭の中ではなく、全身が音に包まれ、貫かれるような熱気は、ポータブルオーディオではなかなか味わえないものだ。山内氏も「ヘッドフォンでいつも音楽を聴いている若い社員と話しをすると、据え置きのオーディオは分解能が高くないと“すごくヌルく感じる”と言いますね」と頷く。“ポータブルオーディオはだいぶ楽しんだので、次はスピーカーで良い音を聴きたい”というユーザーが800NEを選ぶと、期待に十分応えてくれそうだ。

 もう1つ、800NEには“オーディオ入門”に適した部分がある。それは、NEシリーズで多くの人に驚きを与えた山内氏の手がけるサウンドが、NEシリーズのエントリーでもしっかり味わえるところ。つまり“同じメーカーでも、手がける人によって音が違う”という、オーディオの1つの醍醐味を体験できる点だ。

 山内氏も「例えばファッションブランドも、デザイナーが変わるとガラッと変わりますし、“オーディオは人”という面はありますね」と笑う。「800NEはNEシリーズのエントリーではありますが、“エントリーだから買う”のではなく、上位機種のグレードも持った製品として作りました。とにかく“音楽を重視して聴きたい”という方に、ぜひ選んでいただきたいですね」。

(協力:デノン)

山崎健太郎