小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第915回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

別物に生まれ変わった「GoPro HERO8 Black」、HyperSmooth 2.0や静止画もスゴイ

1年ぶりに返ってきたHERO

カメラ製品は、ほぼ毎年リニューアル商品が出てくるわけだが、ボディの金型から全部一新しているととてもコストが合わない。したがってボディは同じで中身だけ進化、といった製品も多い。とは言え消費者心理としては、せっかく新しいモデルを買うんだから、ボディも新しくなっていて欲しいという願望があるのは当然だ。

GoPro HERO8 Black

もっともGoProの場合、ケースやアクセサリなどに互換性を持たせないといけないので、ボディデザインがそうそう変えられないという、逆の縛りがあった。そんなことから、HERO5から7まで、同一ボディで作られてきた。

しかし今回のHERO8からは、ボディが完全新設計となっている。そして当然ボディまで変わるからには、新しい「仕掛け」も搭載されている。直販サイトの価格は55,880円(税込)だ。

アクションカム市場がシュリンクに向かっていると言われて久しいが、新しいユーザー獲得へ向けての仕掛けは、成功するだろうか。早速試してみよう。

新設計ボディの秘密

ではまず注目のボディだが、HERO7と比べるとレンズ部まで含めたトータルの厚みは減っているが、高さ、横幅ともに少し増えた。

ボディは高さ、横幅ともに少し大きい(左からHERO7 Black、HERO8 Black)
ボディ部の厚みは同じぐらいだが、レンズ部の出っ張りが少ない

厚み方向に関しては、ちょうどレンズを保護していたプロテクターぶんだけ厚みがなくなった感じだ。ただしHERO7まではプロテクターを外して交換できたが、HERO8はプロテクターガラスがボディ一体となっており、ユーザーが交換できない構造になっているようだ。なお、画角は狭角、リニア、広角、SuperViewから選択できる。

電源ボタンや端子の位置も逆だ。HERO7がカメラ正面から見て左に電源ボタン、右が端子カバーだったのに対し、HERO8では右に電源ボタン、左が端子カバーとなっている。

HERO8では本体左側のカバーを開けて、バッテリーとメディア、USB-C端子にアクセスする

これには理由がある。追って発売される予定の「モジュール」と呼ばれるアクセサリが、ボディ左側にくっつくからだ。現在発売が予定されているモジュールは、「メディア モジュラー」、「ディスプレイ モジュラー」、「ライト モジュラー」の3種。あいにくこれらはまだ12月より受注開始ということで、現物はお借りできなかった。

「メディア モジュラー」を取り付けたところ
「ディスプレイ モジュラー」を取り付けたところ

モジュールで拡張できることもあってか、HERO8では本体からのHDMI出力が省略されている。HDMI出力は「メディア モジュラー」側に付いているので、出力端子が必要な場合は、モジュラーも同時に購入しなければならない。

もう一つボディで変わったのは、底部にGoProマウントが内蔵されたところだ。普段は両側に開く格好でボディ内に貼り付いており、必要な際には起こしてマウンドアダプタ等にネジ留めする。

底部にGoProマウントが隠れている
ツメを起こすとマウントに
固定する際にフレームが不要になった(左からHERO7、HERO8)

これまでは、ちょこっと三脚に固定したいというだけで専用フレームに入れなければならなかった。いったんフレームに入れると端子カバーが開けられなくなるので、そのままで充電したり、メディア交換ができなくなる。だがHERO8はフレームがいらないので、いつでも端子カバーが開けられる。こうした「ちょこっと」の面倒がなくなったのは大きい。

とは言うものの、先の「メディア モジュラー」を取り付けると、これが一種のフレームになっているので、やっぱりメディア交換の際にはモジュールを取り外さないといけないようにも見える。このあたりは、モジュールの現物がお借りできた際に確認したい。

底部がこうした構造になったため、これまで底部にあったバッテリーとメディア格納部は左側カバー内にまとめられた。ボディの開閉部が1箇所になったことで、初めてGoProを使うユーザーにもわかりやすくなった。

バッテリーは、容量や形状に違いはないが、端子部分の色が変わった。試しにHERO7のバッテリーをHERO8に装着してみたが、一応使えるものの、HERO8専用品ではないという警告画面が出る。おそらく格安互換バッテリー対策が施されたものと思われる。

バッテリー容量には変化はないが、専用品となった

新HERO8は、ボディが新しくなっただけではない。機能の見せ方も大幅な変更が加えられた。HERO7まで、動画解像度やフレームレートは、動画モードの設定画面から個別に選び、組み合わせていくスタイルだった。一方HERO8は、動画撮影に関しては4つのプリセットを持ち、撮影目的に応じて切り換えられるようになった

プリセットは上から、「標準」、「アクティビティ」、「スローモーション」、「シネマチック」となっている。各プリセットは、フレームレートや画角などを編集する事もできる。編集しても、元のプリセットに戻すのは簡単だ。

撮影モードはプリセットで素早く切り換えられるようになった

本物のスポーツ撮影では、競技の進行を邪魔しないタイミングで選手にカメラを仕込まないといけないので、とにかく時間がない。取り付けるだけで精一杯で、細かい設定を見ている時間がないケースも結構ある。このときにプリセット切り換えだけで済み、またデフォルトにもワンタッチで戻せるというのは非常にありがたい。前の撮影現場の設定のままで撮ってしまった、といった大惨事が防げるわけだ。

画面上のショートカットボタンも便利な変更点だ。画角モード変更やスローモーションへの変更も簡単に、しかも現在のステータスがわかりやすくなった。

4つのショートカットも便利だ

他社の追従をぶっちぎる補正力

では早速撮影してみよう。HERO7 Blackのウリは、大きく進化した手ブレ補正「HyperSmooth」だったが、HERO8 Blackではそれをさらに進化させた「HyperSmooth 2.0」になっている。

HyperSmooth 2.0では、「オフ」、「オン」、「高」、「ブースト」と4段階がある。通常の撮影時は「高」に設定されているが、120fps以上の撮影時は「オン」に落ちるようだ。HERO7では120fps以上でHyperSmoothがオフになっていたので、その点では進化している。

今回は比較のために、HERO7 Blackもお借りして同時に撮影してみた。HERO7 Blackは、初代HyperSmoothである。初代と2.0を比較すると、単純な歩きでは、多少2.0のほうが補正力は高いように思えるが、それほどの差はないように見える。ただ、走りでは上下の揺れがより少なくなっているのがわかる。

HyperSmooth2.0の違いをテスト
Stab.mov(89.98MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

加えて「ブースト」も比較してみたが、「高」と「ブースト」の違いは歩いたり走ったりした程度では確認できなかった。そこで敢えてカメラを8の時にローリングさせて撮影してみたところ、「ブースト」ではここまでローリングしているのを、かなり補正しているのがわかった。おそらく船やサーフィンなど、基準となる水平線がしっかり写っていてバンクが激しいといった条件では、効果が高いものと思われる。

ただし「ブースト」を使うと、画角が一段階狭くなる。元々レンズが広角なので、通常のカメラよりはまだ広い絵で撮影できるが、補正の強さと画角の広さはトレードオフの関係にあることを覚えておいた方がいいだろう。

HyperSmooth2.0 「オン」の画角
HyperSmooth2.0 「Boost」の画角

これに加えて、GoProアプリ側でも「水平ロック」補正を追加できる。先ほどのシーンもこの水平ロックを使うと、横への動きはそのままだが、水平方向の傾きはゼロに近くなる。

フレーム編集の中に「水平ロック」がある
「水平ロック」を追加
001.m4v(20.58MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

動画編集に関しては、新しくなったGoProアプリが便利だ。編集機能は、以前「Quik」という別アプリだった物が、GoProアプリに統合されたものである。

使いたいクリップを選択して、次へ次へと進んでいくだけで、音楽付きのクリップが完成する。もちろん、部分的にマニュアルで修正することも可能だ。編集のプロセスとしては、クリップ選択 → 各クリップの調整 → テーマ選択 → 音楽選択 → 全体尺調整 → 共有先選択 という流れになる。Instagramを意識しているのか、デフォルトは正方形フレームとなっている。もちろん16:9や4:3といったフレームにも変更可能だ。

「音楽」の選択で動画の印象が大きく変わる
GoProアプリで自動編集した動画
sample.m4v(67.90MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

機能向上した静止画

GoProは動画カメラだが、4K解像度に到達してからは静止画にも力を入れるようになった。HERO8 Blackに搭載された新機能の一つが、Live Burstだ。これは撮影の瞬間の前後1.5秒を12MP(4K 4:3)で撮影。そこからベストな瞬間を静止画として切り出す事ができる。PanasonicのLUMIXでやってる「4K・6Kフォト」のような機能だと考えれば分かりやすいだろう。

静止画モードには、標準、HDR、スーパーフォト、RAWの4モードがある。HDRはHERO7 Blackにも搭載されていたが、それを高性能化したという。しかし実際に撮り比べてみると、HDRでは多少発色レンジは拡がるが、白飛びする部分までダイナミックレンジが拡がるという感じもない。やはりちゃんとダイナミックレンジを稼いだ絵を撮るなら、RAWで撮影して自分で現像した方が、良好のようだ。

「標準」で撮影
「HDR」で撮影
「スーパーフォト」で撮影

これまでGoProの写真は、暗部に弱かった。光量の足りない場所では、ノイジーな写真しか撮影できなかったが、HERO8 Blackでは夜間撮影のプリセットを備えている。シャッターを押して3秒後に長時間露光で撮影するモードだが、これがなかなか綺麗に撮れる。

月明かりと街灯だけでこれだけ写る
色味もしっかり出ている

強力な手ブレ補正があるものの、1秒程度の長時間露出では、手持ちではブレが出る。三脚等に固定した方がいいと思うが、同社では小型の延長ポール+三脚の「Shorty」を4,900円(税込)で販売している。こういうものを一つ持っておくといいだろう。

既発売のShortyと組み合わせたところ

総論

今回のHERO8 Blackの目玉は、様々なモジュールを取り付けて別のカメラに生まれ変わるところかと思う。1080pのライブストリーミング対応や、自撮り用モニターやライト、マイクの強化からすると、YouTuberやライブ中継向けに訴求したいということなのだろう。

あいにく今回はアクセサリー類がまだないということでそのあたりの能力がテストできなかったが、本体もかなりの進化がある。

使い勝手の面では、プリセットの導入は大きい。スローモーション一つとっても、一般ユーザーがこのフレームレートで撮影すれば何倍速になるかなどいちいち計算しないだろうし、細かいことはいいからとにかく結果だけ欲しいといったワガママに対応した点では、よりユーザーフレンドリーになった。

もちろん、わかりやすさはプロユーザーにも歓迎されるだろう。カスタマイズしたプリセットが4つ持てることになり、現場に合わせてプリセットしておけるのは便利だ。

予想外に静止画をかなり頑張ってきたのは、嬉しい誤算だ。長時間露光にはなるが、まさかGoProで星が撮れる日が来るとは思わなかった。見晴らしのいい場所で、広角のナイトタイムラプス撮影に挑戦するのは楽しそうだ。

発表のタイミングでHERO7 Blackが従来の53,460円(税込)から44,880円(税込)に値下げされたこともあり、「これぐらいの進化なら7で十分」という意見もあるようだが、筆者は全然そうは思わない。モジュールの登場以外にも、本体はかなり進化している。約1万円の差はあるが、これから買うなら絶対HERO8のほうが楽しい。

小寺信良