小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第926回
アクションカムの常識をぶっ壊す! 驚きのモジュール方式「Insta360 One R」
2020年1月15日 08:00
下剋上を狙うInsta360
現地時間の1月7日〜10日にかけて、米国ラスベガスでは毎年恒例のCESが開催された。すでに多くのニュースが掲載されており、いよいよ2020年が始まったなと感じさせる昨今だ。かく言う筆者はCESには行かず、日本で発表予定製品の実機レビューに集中するつもりである。
まずその第1弾として、1月7日に発表された「Insta360 One R」の実機レビューをお届けしたい。また発売前の製品でソフトウェアが最終ではないため、最終仕様とは違う部分もいくつかあるが、普通の動作には問題ないレベルまで来ているようだ。
Insta360といえばiPhoneに付けられる360度カメラで事業をスタートさせ、その後スタンドアロン機へと進化させてきたが、昨年末の「Insta360 GO」でアクションカメラ系にも進出を果たした。
一方アクションカメラの元祖GoProは、逆に360度カメラへの進出を「GoPro MAX」で果たしている。加えてDJIはドローンだけでなくスタンドアロン型のジンバルカメラや、GoPro型のアクションカメラへ参入するなど、この分野は次第にボーダレスになってきている。
Insta360 One Rの登場で業界地図がどのように変わるのか、早速その手応えをチェックしてみよう。
分離・拡張するシステム
筆者の手元にレビュー機として届いてたのは「Insta360 One R Twin Edition」という製品パッケージである。レンズユニットの構成によっていくつかのパッケージが販売され、価格は360度+4K広角カメラモジュールをセットにした「ツイン版」が59,400円(税込)、1インチ広角モジュールセットの「1インチ版」が68,200円(税込)、4K広角モジュールセット「4K版」の39,600円(税込)だ。
Twin Editionの構成としては、コアと呼ばれる液晶モニターとプロセッサなどのエンジン部分、それに4K撮影可能なワイドアングルモジュールと、360度撮影が可能なツインレンズモジュールだ。加えてバッテリーベースも付属する。
まずは目的に応じてレンズ部を選び、それをコアと合体させる。その後、バッテリーベースを底部に取り付ければ、まるでGoProのようなボディができあがる。今回はお借りできていないが、カメラユニットとしては1インチセンサーを搭載したワイドアングルモジュールも発売が予定されている。
まず4K対応ワイドアングルモジュールが一番オーソドックスなスタイルだと思うので、これを組み立ててみる。昨今GoProはHero8からまた一回り小さくなってしまったが、ボディのサイズ感やパーツ構成から受けるイメージとしては、まさにGoProである。底部のバッテリーユニットの赤が印象的だ。
異なる点としては、液晶ディスプレイ部分がコアユニットぶんしかないので、ほぼ正方形の小さいディスプレイで我慢せざるを得ないところである。
パッケージにはこの形状で三脚等に取り付けるためのフレームも付属している。アクセサリを付ける脚部はGoProシステム互換となっており、ちゃっかりアクセサリ類はそのまま使えそうだ。カメラとしてはフレームに入れなくても撮影できるが、強い衝撃が加わるとバッテリーユニットが外れてしまう可能性もあるので、フレームに入れて全体を固定するという事だろう。
4Kワイドアングルモジュールのカメラスペックは、35mm換算で16.4mm/F2.8の単焦点、静止画解像度は最大4,000×3,000(4:3)、動画解像度は最大4,000×3,000(4:3)/30fpsとなる。16:9の場合は3,840×2,160/60fpsが最高となる。一方ハイスピード撮影は1,920×1,080で200fpsまで可能だ。動画コーデックはH.264もしくはH.265で、最大100Mbps。LOG撮影およびHDR撮影にも対応する。
合体できることのメリットの一つは、カメラを逆向きに付けても動作することだろう。つまりカメラと液晶モニターが同じ面を向くことで、セルフィーやネット中継カメラとしても使える。このサイズで本体モニターで自分撮りのモニターができるのは、筆者が知る限りソニー「RX0 II」以来ではないか。
もう一つのカメラ部、ツインレンズモジュールも見ておこう。こちらは前後対称位置にレンズがあり、GoProのような形をした360度カメラという事になる。こちらのスペックは、35mm換算で7.2mm/F2.0、静止画最大解像度は6,080×3,040となる。動画撮影時の最大解像度は5,760×2,880/30fpsで、ハイスピード撮影では3,008×1,504/100fpsだ。こちらの動画コーデックはH.265のみで、ビットレートは同じ100Mbps。LOG撮影およびHDR撮影にも対応する。
なお本機はドッキング型ながらも、ハウジングなしで水深5mまでの防水機能を持つという。確かに端子の周りはゴムパーツで覆われており、ぴったりと密着させることで端子部分への水の浸入を防ぐようだ。
ボタン類としては、コアユニット部に電源とシャッターしかなく、撮影の基本的な設定はタッチ液晶で操作する。操作面積は小さいが、UIのボタンがそこそこ大きいので、操作に不便はない。
では早速撮影……と行きたいところだが、あいにくアプリ側が最終ではないため、撮影サンプルをお見せすることができない。この点もまたInsta360のユニークなところで、画像の仕上げはカメラ本体ではなく、スマホに転送した上で、スマホアプリ上での処理となる。そちらの処理がまだ最終ではなかった。(※週末に公開可能なレベルのアップデートが到着したので、いくつかサンプルを掲載しておく)
これまでInsta360製のカメラで可能だったバレットタイムなどにも対応しているというから、なかなか使い出のあるカメラであることは間違いない。多くの機能をハードウェア処理でやるGoProに対し、ソフトウェア処理でやるInsta360、という対立構造が見えてきた。
ただ、この合体分離システムが今の世代にどう見えるのか、そこはわからない。過去合体分離するカメラはいくつかあったが、どれも記憶に残るほどのヒットは記録していないのも事実なのだ。カメラモジュール交換により3倍使えると見るのか、あるいはカメラは3つあるのに同時に1つしか使えないと見るのか。そのあたりの見え方は、結局コスト的にどうつじつまが合うのか、ということになるだろう。