小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1091回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

“小さなフルサイズ”第2世代へ、ソニー「α7C II」

3年ぶりのリニューアル、α7C II

小型フルサイズが3年ぶりのリニューアル

フルサイズをどこまで小型化できるかというチャレンジから始まった「α7C」は、2020年10月に発売が開始された。多分、今ソニーのフルサイズで一番小さいのは「ZV-E1」だと思われるが、あれはビューファインダがない動画カメラである。ストレートなデジタルカメラとしては、やはりα7Cのボディは未だ魅力があるところだ。

そんなα7Cがシリーズを拡大する。高解像度センサーを搭載した「α7C R」、画素数や手ブレ補正を強化した「α7C II」の2モデルが今年10月13日に発売される。店頭予想価格はα7C Rがボディ単体のみの販売で約45万円前後。α7C IIはボディが約30万円前後、レンズキットが約33万円前後。

今回は動画カメラとしての進化を見るということで、α7C IIのほうをお借りした。すでに前作から3年、αシリーズのUIも変わっており、当時はまだS-Cinetone搭載のカメラもなかった。

リニューアルされたα7C IIを、早速テストしてみよう。

細かく手が入ったボディ

α7C IIはシルバーとブラックの2色がある。今回はシルバーをお借りしている。

まずカメラボディだが、サイズ感としてはほぼ同じながら、細かいところがかなり変わっている。軍艦部から見ていくと、電源レバーの向きが外側に変更されている。これはグリップ前面にも新しくダイヤルが追加されたため、ダイヤル操作に干渉しないよう向きを変えたという事だろう。

軍艦部のみがシルバー

モードダイヤルは同じだが、その脇に静止画・動画・S&Qの切り替えスイッチが付けられた。こうした切り替えはVLOGCAMのZVシリーズでお馴染みの機構だが、その後α7シリーズのカメラにも付けられるようになった。

露出補正ダイヤルが汎用ダイヤルに変更された

露出補正専用ダイヤルは、無印の汎用ダイヤルに変更された。また背面のダイヤルも、少し大型化されている。汎用ダイヤルは上部に3、背面に1と、合計4ダイヤルとなった。ボタンとしては背面上部にC1ボタンが新設され、Cボタンは合計2となった。

メニューダイヤルが大型化、Cボタンも1つ増えた

グリップの形状も変更され、やや深く握れるようになっている。だんだんノーマルα7に近づいている感じだ。重量は5g増えたが、514gと十分軽い。

グリップも深く握れるようになった

スペックとしては、イメージセンサーが約2,420万画素から約3,300万画素へと進化しており、ボディ内手ブレ補正は5段から7段にパワーアップ。これは動作撮影時にも有効だ。画像処理エンジンもBIONZ XからBIONZ XRに変更されている。また新たにAIプロセッシングユニットも搭載された。

センサーとエンジンの進化が見所

動画撮影機能としては、30pまでの7Kオーバサンプリング4K撮影と、Super35mmサイズになるが4K/60p撮影にも対応した。上位モデル同様、S-Log 3やS-Cinetone、ユーザーLUT撮影にも対応している。

有機ELファインダーは、画素数は変わらないが、倍率が0.59から0.7に拡大された。液晶モニターも92万ドットから103万ドットに強化されている。

ボディ左側の端子位置も変更されている。USB-C端子が最上部に移動し、MicroHDMI端子は下部のままだが、縦向きになり前方へ移動した。これは外部給電しながらHDMI端子にケーブル接続した際、バリアングル液晶の回転に干渉するのを避けるため、場所を散らしたということだろう。

端子類の配置もバリアングル液晶に干渉しないよう変更された

キットレンズのFE4-5.6/28-60は、レンズ繰り出し式の軽量167gズームレンズ。レンズ内手ブレ補正機能はない。フィルター径はφ40.5で、ZV-E10のキットレンズE3.5-5.6/16-50 OSSと同径なので、フィルター類は共用できる。

バリエーションが増えた動画撮影

初代α7Cは2020年発売だが、その翌年にはZV-E10が大ヒットし、αシリーズも影響を与え始めている。特に動画機能の向上やシネマ寄りの方向性は、以前よりもより顕著になりつつある。

α7C IIも動画機能が強化され、記録方式が拡大された。XAVC HS 4KはH.265コーデックで10bit記録に対応する。またXAVC S-I 4K/XAVC S-I HDはH.264コーデックながら4:2:2 10bitでイントラフレームのみの撮影が可能になっている。以下に本機で使用できる記録方式とフォーマットをまとめた。

4Kの記録方式だけで3つある
記録方式コーデックビット数フレームレート
XAVC HS 4KH.2654:2:2/4:2:0 10bit24/60
XAVC S 4KH.2644:2:2 10bit/4:2:0 8bit24/30/60
XAVC S-I 4KH.2644:2:2 10bit24/30/60
XAVC S HDH.2644:2:2 10bit/4:2:0 8bit24/30/60/120
XAVC S-I HDH.2644:2:2 10bit24/30/60

H.265を用いたXAVC HS 4Kが最新記録方式ということになるが、なぜかフレームレートで30pが使えない。他の記録方式では使えるので、ここは合わせてくれないと使いづらい。

また4K撮影では、30p以下での撮影ではフル画素読み出しによる7Kオーバサンプリングとなるが、60p撮影ではSuper35mmサイズでの切り出しとなる。実際画角もかなり詰まるので、4K60p撮影が可能になったことは進歩だが、少しハンデがあると考えた方がいいだろう。

28mmワイド端静止画
28mmワイド端4K30p動画
28mmワイド端4K60p動画(Super35mm)

とはいえ60p撮影だけで考えるなら、APS-C用のEマウントレンズを使っても画角は変わらないので、電動ズームレンズでの撮影もリーズナブルに行なえるというメリットもある。

手ブレ補正については、ボディ内手ブレ補正が強化され、静止画では7段の手ブレ補正を実現した。一方動画撮影ではアクティブモードも利用できるようになり、こちらも進化している。

いつものように補正なし、スタンダード、アクティブと切り替えてみたが、電子補正と組み合わせるアクティブモードのすんなりさは、これまでとはレベルが違うのを感じる。歩行感もほぼなく、めちゃくちゃ安定している。画角は多少詰まるものの、フルサイズのカメラでここまで補正できるのは驚きだ。

手ブレ補正比較

美肌効果もアルゴリズムがかなり洗練されてきた。“切”から順に試してみたが、髪のディテールには影響を与えず、肌だけを抽出して補正をかけているのがわかる。ここにAIプロセッシングユニットの処理が入っているのかは資料がないが、かなり上手い処理になっている。

美肌OFF
美肌低
美肌中
美肌高

ただこのモード、従来のようにFnメニューからはアクセスできず、メニュー内の「露出/色」- 「カラー/トーン」の中に追いやられている。ここまで賢ければ基本的にずっとONでも問題ないと思うが、きちんと切り替えたい人は、カスタムキーに割り付けるといいだろう。

美肌効果はFnメニューからアクセスできなくなった

S-CinetoneとS-Log3両対応の強み

過去ソニーのカメラでは、色をいじる機能はすべて「ピクチャープロファイル(PP)」に集約してきた。S-Log対応や、カメラ内にLUTをロードするPPLUT、S-Cinetoneなどは、すべてPPを切り替えることで使用してきた。

ところが2021年のα1では、PPとは併用できない、独立した「クリエイティブルック」という機能を搭載した。詳しくはα1のレビューを再読していただければと思うが、要するにフィルターである。

さらに2023年発売のZV-E1では、さらに独立した「シネマティックVlog設定」を搭載した。従来PPの中にあったS-Cinetoneもここに移動し、Moodというバリエーションが加えられるようになった。PPの解体が徐々に始まったという事である。

クリエイティブルックもシネマティックVlog設定もLog撮影ではないので、撮影後のカラーグレーディングは不要だ。ただ、あまりにも多くのカラー設定がありすぎると、ユーザーはどれを使っていいのかわからなくなってしまう。

本機α7C IIでは同じαの系譜ということで、クリエイティブルックが搭載されている。一方で「シネマティックVlog設定」は搭載されなかった。これは今のところ、ZVシリーズだけの機能ということになるだろうか。したがってS-Cinetoneは従来通り、PPの中に配置されている。

S-CinetoneはPP11番に配置

S-CinetoneはLUTを当てずにそのままでシネマっぽいトーンが撮影できるということで、CineAltaのトーンを参考にFXシリーズから搭載が始まった。FX6以降のカメラには搭載が進んでいるが、すべてに搭載されるわけではなく、S-Cinetoneが表現できるパフォーマンスがあるかどうかで搭載の可否が決められている。フルサイズにはまず搭載されるが、APS-CのZV-E10には搭載されず、α6700には搭載されるなど、センサーや画像処理エンジンの組み合わせで決まるようだ。

一方でS-Log3に関してはPPの中ではなく、メニュー内の「Log撮影設定」の中に独立している。これは新UI搭載による変更だが、従来PPの中から選択してきたαユーザーは迷うところだろう。さらにZV-E1と併用するユーザーは、S-Cinetoneの位置が違うので、混乱があるかもしれない。

S-Log3はメニュー内に組み込まれた
このためPPでは、7番から9番が欠番となっている

今回の撮影サンプルは、前半の海岸のシーンはS-Cinetoneの4K30Pで、後半の庭園のシーンは「S-gamut3.Cine/S-log3」の4K60Pで撮影後、カラーグレーディングしている。

4K撮影のサンプル

S-Cinetoneは簡単にシネマ風の撮影ができる一方で、全体的に淡泊な印象を受ける。一方Log撮影では高ダイナミックレンジを生かしたバリッとしたトーンが作れるため、カメラとしての潜在能力を引き出すには最適だ。映像的には非常に振り幅の広いカメラとなっている。

スロー撮影は、HDであれば120pで撮影できるので、24p記録すれば5倍スローが得られる。ディテールもはっきりしており、SNも悪くない。このあたりはさすが最新の「Exmor R」である。

120p撮影の5倍速スロー

音声収録では、風量低減機能としてOFF、ON、Autoの3パターンがある。ONではかなりローカットしてしまうので、音声はかなり硬い。またAutoでは風切り音が低減されるだけでなく、音声までカットされてしまうという現象が見られる。

風音低減は3モード
音声収録のテスト

イヤフォンなどではもはや人の声もAIプロセッサで処理するようになってきており、本機もやろうと思えばAIエンジンは搭載されているわけだが、こうした音声処理は上位モデルやVLOGCAMシリーズから搭載という事になるのかもしれない。カメラ本体にはウインドスクリーンも付けられないため、音声収録をする場合は別途マイクは必須だろう。

総論

発売当初α7シリーズでは最も小型・軽量だったα7Cは、フルサイズとしては価格も安かったため、エントリー機として見られていた。「いつかはフルサイズ」から「誰でも買える」へ転換するきっかけになったカメラであった。

一方で、「C」じゃないα7に比べれば機能が少ない、スペックが犠牲になるというのは、そのサイズゆえにある意味仕方がないと見られていた。だが2世代目になって、かなりの部分で「C」じゃないモデルに追いついて来た。

α7C IIのポイントは、このカメラならではの機能があるというよりは、コンパクトフルサイズながら「C」じゃないモデルとそんなに変わらなくなってきたというところだろう。Log収録やS-Cinetoneなど、色関係の機能が上位モデルと同じになった事で、上位カメラと合わせてマルチカメラ収録する際にも、色があわせやすい。

もちろん、ビューファインダの充実や外部レコーダとの組み合わせなどの面で上位モデルはまだまだアドバンテージがあるものの、α7C IIが機能アップしたことで、αシリーズ全体が底上げされた格好になった。

ソニーのコンパクトフルサイズを検討している方にとっては、α7C IIかZV-E1か、だいぶ悩ましいことになってきたようだ。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。