小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1141回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

AVコントロールも可能!?「Pixel Watch 3」を試す

9月10日発売の「Pixel Watch 3」

1年未満で登場した新作

8月末にAI機能を大きくフィーチャーしたPixel 9 Proおよび9をレビューしたばかりだが、9月10日にはPixel Patchの新モデル、「Pixel Watch 3」が発売される。

前作Pixel Watch 2は2023年11月21日発売。筆者も買おうと思って公式サイトでバンドの色との組み合わせをあれこれ悩んでいたらあっという間に在庫切れになってしまい、悔しい思いをした。Pixel Watch 3は果たしてどうなるだろうか。

「Pixel Watch 3」はバリエーションが拡大され、従来と同サイズの41mmモデル、ちょっと大きめの45mmモデルの2ラインナップとなった。それぞれに対して、Wi-FiモデルとLTEモデルがあり、価格バリエーションは以下のようになっている。

Wi-FiモデルLTEモデル
41mm5万2,800円6万9,800円
45mm5万9,800円7万6,800円

今回は41mm LTEモデルをお借りしている。昨今のスマートウォッチはすっかりフィットネス機器という方向性になってきたが、今回はAV Watchらしく、それ以外の魅力を深掘りしてみたい。

見た目の印象はほぼ変わらず

製品ラインナップとしては上記表組の通りだが、ボディとベルトのカラーの組み合わせを選択できるようになっている。41mmモデルで4タイプ、45mmモデルで3タイプだ。組み合わせとしては以下のようになっている。

ボディバンド
41mmモデルPolished SilverPorcelain(白系)
Rose Quartz(ピンク系)
Champagne GoldHazel(グレー系)
Matte BlackObsidian(黒系)
45mmモデルPolished SilverPorcelain(白系)
Matte BlackObsidian(黒系)
Matte HazelHazel(グレー系)

今回お借りしているのは、Polished SilverボディにPorcelainバンドの組み合わせだ。製品には、SサイズとMサイズのバンドが2本同梱されている。

Polished SilverボディにPorcelainバンドモデル

筆者は普段、AmazfitのCheetahというゴツめのスポーツモデルを使用しているが、41mmモデルはずっと小型でベゼル部が狭く、スポーツ用というよりは日常使いの腕時計として違和感のないサイズ感だ。バンドがシリコンなので、フォーマルな場所には向かないが、その場合は別途フォーマルデザインのバンドに付け替えればいいだろう。

Amazfit Cheetahと比べるとだいぶ小ぶりな印象

バンドの着脱は、バンドの付け根脇にあるボタンを押し込んで、ベルトを横にずらすだけで簡単に外せる。装着時はベルトの付け根自体でボタンを押しながら、横に滑らせるだけだ。

バンド交換は横のボタンを押し込んでスライドさせる

ウォッチ本体としては、CPU Qualcomm SW5100、メモリ 2GB、ストレージ 32GB、Wi-Fi 6とBluetooth 5.3というスペック。ディスプレイは前作より表示面積が10%拡大し、輝度は2倍の2,000cd/m2に拡大。リフレッシュレートは1~60Hzの可変となっている。

前作以前では、バッテリーが1日保たないとして不評を買ったが、今回もバッテリー容量は同じ。ただ今回はディスプレイのリフレッシュレートを自動で下げたり、睡眠を検知すると自動でおやすみモードに以降するなど、賢さで節電できるようになっている。またバッテリー残量が15%を切ると自動でバッテリーセーバーモードへ移行する。

充電クレードルはUSB-Cタイプ

実際使用した体感としては、1日半ぐらいは保つかなという印象。今回お借りしたのはLTEモデルだが、eSIMは設定しておらず、Wi-Fiモデルと同じ条件下でテストしている。LTEによる通信を行なうと、もう少しバッテリーは食うだろう。基本的には毎日充電するというルーチンは必要のようだ。

常用しているAmazfitのCheetahは10日間ぐらいバッテリーが保つので、それと比べると「電池保たないなー」という印象は否めない。ただそれを充電スピードの早さでカバーしてきた。約24分で50%、約35分で80%、約60分で100%という早さだ。

充電端子は電磁誘導ではなく金属接点

毎日決まった時間に充電するなら100%充電する必要はないので、例えば脱衣所にクレードルを置いておき、ゆっくりお風呂に入っている間に充電するなどのルーチーンを作れば、ほとんど充電行為を意識することなくずっと使えるはずだ。

AVコントローラとしての使い勝手は?

Pixel WatchでAVに関係する機能としては、音楽サービスとの接続がまずは考えられるところだ。Googleには自社サービスとしてYouTube Musicがあり、Pixel Watch 3にもデフォルトでインストールされている。

アプリはアイコン型とリスト型に切り換え可能

Pixel Watchを設定する段階で、既にGoogleアカウントとの紐付けは終わっているので、WatchでYouTube Musicを立ち上げると、すでに自分のライブラリにアクセスできるようになっている。

YouTube Musicで自分のライブラリにアクセスできる

聴きたいアーティストをライブラリから選択すると、再生デバイス選択画面になる。WatchとリンクしているスマホでペアリングしているBluetoothヘッドフォンやイヤフォンが表示されるようだ。

スマホにペアリング済みのデバイスが出てくる

ここでデバイス選択を行なうと、WatchとBluetooth機器とのペアリングになる。つまりイヤフォンやヘッドフォン側をペアリングモードにして、新たにWatchと接続するわけだ。あとは再生ボタンを押せば、イヤフォンから音楽が再生される。

再生中のコントロール画面

ストリームとしては、スマホ → Watch → イヤフォンという流れになっている。再生コントロール画面では、左右のスキップボタンを1回タップすると楽曲のスキップになるが、押しつづけると早送り・早戻しとなる。音調ボタンをタップすると、リューズの回転でボリュームが変更できる。

楽曲をWatchにダウンロードすれば、ローカルでWatch → Bluetoothという接続だけで音楽が再生できる。ランニングしながら音楽を聴きたいという場合には、スマホ無しで実現できるのは便利だろう。ただしWatchへのダウンロードは、YouTube Music Premiumの契約が必要になる。

それ以外の音楽サービスとしては、Amazon Musicにも対応している。こちらは再生オプションとして、スマホで再生するか、Watch側で再生するかを選択することができる。スマホ側での再生では、Watchは単に再生コントローラになるというだけなので、ストリームの流れとしては、スマホ → イヤフォンというだけである。

Amazon Musicでは再生デバイスをスマホ側かWatch側か選択できる
スマホ再生ではジャケット画面も表示されてカラフル

YouTube Music同様、スマホ → Watch → イヤフォンという流れで設定してみたが、サポートしていない旨のエラーが表示されて、利用できなかった。Amazon Musicの初期設定時にデバイス認証の手続きがあり、認証は通っているはずだが、このエラーに対する追加の認証手続きの案内なども出てこないので、現時点では認証に問題があるのか、そもそもの仕様なのかが判然としない。

Watch側の再生ができなかった

他にコンロールできるものとしては、Google Homeに登録されているGoogle TV対応機器がある。今年7月末にレビューした「Dangbei Mars Pro 2」が手元にあったので、これをコントロールしてみた。

サービスやコンテンツ選択などはGoogle TV側でやらなければ仕方がないが、コンテンツの中に入ってしまえば、再生がコントロールできる。操作画面としては音楽系サービスと同じだが、映像では再生ボタン両わきのスキップボタン長押しで早送り・早戻しはできなかった。単に次のコンテンツにスキップできるのみである。戻るボタンでは、前のコンテンツに移動することができず、単に現在再生中のコンテンツの先頭に戻る動作になってしまうのは残念だ。

Google Homeに登録されているデバイスがコントロールできる
再生中の画面は音楽アプリと同じ

それでも、映画の視聴中にトイレに行きたい場合など、いちいちリモコンを探してポーズボタンを押す必要もなく、Watchで簡単に停止できるのはメリットがある。またボリューム操作も、急に戦闘シーンになって音量が上がり、慌てて下げるみたいなときにもリモコンを探してあたふたすることが多いのだが、Watchのリューズで制御できるのはメリットが大きい。

情報端末としての使い勝手は?

Pixel Watch 3のメリットは、Google系のサービスとの親和性が高いところが魅力である。例えばGmailひとつとってみても、メールマガジンのような長いコンテンツでもWatch上で全文が読めるのは、他のサードパーティ製Watchではあまり見かけない機能だ。

メールマガジンなどの長文も表示できる

一方LINEのような外部のコミュニケーションサービスに対しては、平文の文章は読めるのだが、画像などが貼ってある場合はそこが表示されないのが惜しいところである。

LINEの画像は表示できない

ただ返信機能も備えており、簡単な返答ならタップ1つで返信できるほか、音声による返信もできる。これは音声入力してテキスト変換するのではなく、音声そのものをファイル化して相手に返信する機能だ。こうした返信方法は、漢字変換が面倒な中国ではよく使われる方法である。

返信はアイコンか音声、テキスト入力に対応

Watch画面を使った文字入力にも対応している。スマホのフリック入力のように10キータイプではなく、横2行になったひらがなを長押しして、あかさたな行を選択するという方式だ。画面はそれほど大きくない41mmモデルでも、予測変換も備えており、入力はそれほど苦ではない。

文字入力もそれほど難しくない

Google Mapによるルート案内にも対応している。Watch上で目的地を設定し、スタートすると、スマホ上でもGoogle Mapが開いてルート案内が開始される。Watch上では、シンプルに方向が示されるが、マップ表示にも切り替えできる。リューズを回して地図を拡大・縮小できるのはなかなか気が利いている。これならスマホを取り出すまでもなく、目的地に行けるだろう。

Watch上のルート案内画面
地図も表示できる

ただ自動車の運転では、スマホなどの情報端末を手で持って利用することは違法になるので、おそらくWatchを見ながらの運転もそれと同等とみなされる可能性がある。また自転車でもながらスマホ同様の危険性があることから、Watchのルート案内は基本的に徒歩での移動で使う事が前提だろう。

Pixel Watch 3を使った最も大きな情報操作は、音声による問い合わせだ。この機能は従来からあり、いわゆる「OK Google」で問い合わせれば、Googleアシスタントがある程度のことは処理できていた。例えば今日の天気とかタイマーのセットとかライトを点けるとか、単純なコマンド処理である。

だが昨今のAndroid OSのアップデートで、このボイスコマンドの対応先が、Google開発のAI、Geminiに変更できるようになった。スマホ側で設定変更しておけば、Watchに対する音声コマンドの対応も、Geminiが担当する。

これの効果は、デカい。例えば今週宮崎市では、日向坂46を迎えたイベントを開催しているが、これを音声で問い合わせると公式サイトのリンクを表示するほか、サマリーも表示してくれる。このレベルの問い合わせは、従来のGoogleアシスタントでは不可能だった。

URLをタップするとスマホ側でリンクが開く
直近の情報もサマリーで表示してくれるのは強い

また四則計算も音声だけで可能で、計算結果も音声で返してくれる。例えば調理中に、3人分のレシピで4人前の調理を行なう際、材料の差分計算などは音声だけでできる。例えば3人前50mlの醤油は4人前だといくつなのか、暗算するのはめんどくさいが、50÷3×4を口頭で計算させれば解決だ。

ただし、分数計算は音声認識がちゃんとできないようだ。50×4/3を口頭で問い合わせても、必ず50×2/3を計算してしまう。そこは人間がカバーするしかないところだが、手が汚れて他のものが触れないときに、Watchだけで簡単な計算ができるのはありがたい。

総論

今回はあえてフィットネス以外の部分を掘り下げてご紹介したが、Googleは2021年にデジタルフィットネス大手のFitbitを買収完了しており、Pixel Watchで大きなフィーチャーとなっている。

一方で昨今のスマートウォッチの役割として、身体の安全を見守る役割も強くなっている。Pixel Watch 3では、身の安全に不安を感じた際の安全確認機能や、緊急事態の共有機能がセットアップできる。

「安全確認」のセットアップ画面
緊急事態の共有のセットアップ画面

また新たに脈拍損失を検出し、自動的に緊急サービスに電話をかける機能を搭載するそうだが、この9月から開始されるサービス国にはまだ日本は含まれていない。

先日発表されたApple Watch Series 10では、睡眠時無呼吸症候群の検出に対応した。すでにアプリベースでは、サプリムの「Sleep Doc」で実現していた機能を、本家でも対応したという流れである。こうした機能も、次第に強化されていくだろう。

AIでは、Googleに一日の長があるのも事実だ。画面操作で色々できるというのも1つの方向性だが、音声コマンドのAI処理はまだApple Watchが適わない部分である。スマートウォッチ競合他社もAI対応は全体的に遅れており、Googleがここをどれぐらい伸ばせるのかが、大きな差別化ポイントになってくるのではないだろうか。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。