小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1161回
ついに4Kに到達したAladdin Xの超短焦点プロジェクタ、「Marca Max」
2025年2月5日 08:00
「4K+明るい」のトレンド
シーリングライト型プロジェクタという新機軸で業界に参入した「PopIn Aladdin」だが、現在は中国のXGIMIの傘下となり、社名もAladdin Xとなっている。2023年には社名変更後初の商品となる「Aladdin Marca」をリリース。従来のシーリング型ではなく、超短焦点型として登場した。
ただし解像度はフルHD止まりであった。現在のプロジェクタ市場は、フルHDなら小型で10万円以下、4Kは中型で20万円以上で「昼間でも使える輝度」がポイントになりつつある。Aladdin Marcaの場合は、10万円越えの中型機である。超短焦点という特徴はあるが、フルHD解像度止まりなのが惜しかった。
そんなAladdin Marcaシリーズの新作「Aladdin Marca Max」が、今年1月27日に発売された。超短焦点という特徴はそのままに、Aladdin Xとしては初の4Kプロジェクタである。直販価格は379,800円。
XGIMIにも超短焦点の4Kプロジェクタ「AURA」があるが、これは2021年のモデルで、PopIn Aladdin買収前の製品だ。よってAladdin Xを傘下に収めたXGIMIグループとしては、超短焦点プロジェクタはAladdin Xに任せる格好になるのかもしれない。
Aladdin Marca Maxの威力を、さっそく試してみよう。
XGIMIに寄せたデザインと機能
まずサイズ感だが、横510mm、奥行き270mm、高さ144mmで、フットプリントは「まくら」ぐらいの大きさなのは前作Aladdin Marcaとそれほど差がない。横が9cmぐらい長いぐらいで、あとは少しの差である。
カラーも前作と同じアイボリーホワイトだが、今回は光学部が露出しておらず、電源OFF時にはカバーで保護されるようになっている。放熱のため左右がパンチング仕上げになっている点も同じだが、今回はこうした金属部分がゴールドに近いカラーとなっている。XGIMIの長焦点ハイエンド「HORIZON Ultra」も、アイボリーホワイトを基調にゴールドのエッジというデザインだったので、デザインテイストとしての共通性を感じさせる。
方式としてはDLPで、レーザー光源により輝度2,500 ANSIルーメンを確保する。XGIMIには赤色レーザーとLEDを組み合わせた独自技術である「Dual Light」があり、前作Aladdin Marcaでも前出HORIZON Ultraもこの方式だった。今回完全レーザーになったのは、レーザー光源がウリだった「AURA」の後継機という側面もあるのだろう。色域カバー率はDCI-P3 99%で、サポートフォーマットはIMAX Enhanced、 Dolby Vision、HDR 10、HLG。
超短焦点は投影面のすぐ前に設置するプロジェクタだが、本機は投射比0.177:1で、スクリーン前17.8cmの距離でおよそ100インチが投影できる。スクリーンに近ければそれだけ光量が稼げるわけで、長焦点よりも輝度の面では有利になる。推奨投影サイズは、90インチから150インチとなっている。
入力ポートとしては、HDMI×3で、うち一つがeARC対応。USB2.0 ×3、LAN ×1となっている。出力は3.5mmアナログオーディオと、光デジタル出力が1系統ずつ。Wi-Fi 5、Bluetooth 5.2/BLE対応となっている。電源はAC直結で、ACアダプタは不要。消費電力は180Wとなっている。
スピーカーはHarman/Kardon製で、中低音20W×2、ツイーター20W×2の合計80W。スピーカーは前面向きに付けられている。前作は8W中高域スピーカー×2、15Wサブウーファ×1だったので、構成が大きく変更されている。
OSはAndroidベースのAladdin OSで、UIも従来のAladdinスタイルだ。Aladdin OSで提供されているアプリケーションはプロジェクタ独特のものが多く、風景や照明効果が得られるもの、子供の知育学習に使えるものなどがそろっている。またオリジナルのスイカゲームも楽しめる。
一方で調整機能は他のXGIMI製品と同じ機能が実装されている。XGIMIではメニューが右側、Aladdin OSはメニューが左側に出るという違いはあるが、自動台形補正やマニュアル補正、壁面色補正など、調整機能は共通化されている。
またリモコン形状も、従来型のAladdinスタイルではなく、HORIZON Ultraと同形のものになった。XGIMIとAladdin Xの融合が進んでいるのがわかる。
XGIMIの弱点は、搭載OS上ではNetflixに対応しない点だ。そこで公式サイトでは、 「XGIMI Streaming Dongle ストリーミングデバイス」が販売されている。Aladdin Marca Maxを購入した人には、これが無償で付いて来るという。
今回これも同時にお借りしたが、現物はHOMATICSというメーカーのGoogle TV対応デバイスである。HDMIに直結するタイプのスティック型端末だが、日本国内ではこれまで発売されていないようだ。
Google TVのフル機能が使えるので、NetflixだけでなくAmazon Prime Videoなど他のサービスにもアクセスできる。Aladdin OS提供の機能とダブる部分も多いが、逆に考えれば、フルのGoogle TVが使える超短焦点プロジェクタとして使ってもいいという事でもある。機器が2つあるようなものであり、ある意味お得感がある。
鮮烈な発色と輝度表現
では早速視聴していこう。前回も同様、筆者宅には100インチの面積の壁がないので、撮影用の白幕を天井から吊り下げて投影する。
台形補正は自動のほか、手動では4点だけでなく、「その他の機能」から8点に変更できる。超短焦点では台形補正がキーになるわけだが、8点だと辺の真ん中も調整できるので、より正確に補正することができる。
輝度は設定から10段階で設定できるが、10段階のさらに上、10+としてブーストモードがある。このモードだと「カラー調整」や「プロレベル色精度」といった機能が使えなくなるが、昼間にカーテンで遮光した状態で使う場合には、元々それほど色味の正確性は求めないと思うので、高輝度で投影できるほうがメリットがある。逆に夜しか使わないという人は、10でも十分明るいので、色調補正ができたほうがメリットがあるだろう。
まだベータ版の機能ではあるが、120Hz駆動できる設定もある。スポーツ観戦などは、フレーム補完のMEMCと組み合わせてよりリアリティのある映像が楽しめる。
動画配信サービスに関しては、Amazon Prime Video、YouTube、TVer、ABEMAなど、Netflix以外のものは大抵使える。ただ試用したバージョンではABEMAだけ、アップデートの不具合があるようで、視聴できなかった。 エラーはAladdin Xに自動で報告されるようになっているので、そのうちフィックスされるだろう。
今回はAmazon Prime Videoにて2023年公開の「ザ・クリエイター/創造者」を視聴した。およそ95インチで投影しているが、それほど奥行きのない部屋にも関わらず100インチ弱の投影ができるのは、超短焦点以外にない。2m程度の距離のところで視聴しているが、画面に包まれるような体験は、映画館とほぼ変わらない。
逆に言えば、小さく表示するということが難しい。長焦点プロジェクタであれば、スクリーンとの距離を縮めることで小さく明るく表示させられるが、単焦点ではスクリーンに近づけてもそれほど小さくできない。部屋は広くなくても構わないが、投影面が広くとれることが条件だ。昨今は100インチぐらいのスクリーンでもスタンドで設置できて1万円以下で買えるものがでてきているので、壁が空いてないという場合はそうしたスクリーンを検討した方がいいだろう。
デフォルトではフレーム補間がONになっているので、より映画らしい映像表現にこだわりたい方は、OFFにしたほうがいいだろう。映像モードにはシネマやスポーツなど6タイプがあるが、フレーム補間はモード共通設定になっている。フレーム補間は、映画・アニメを見る時とスポーツを見る時では当然切り替えるべきで、モードごとに設定できるとさらに良かっただろう。
特筆すべきは、音の良さだ。前作とスピーカーシステムを変えたことで、ステレオ感を超えた広がりが得られるようになった。音質強化としては、オリジナルの「ハーマン・カードン」、「DTS Virtual:X」、「ドルビーアトモス」の3パターンが使える。それぞれ効果がかなり違うが、もっともスピーカーの特性が活かせるのは「ハーマン・カードン」である。
本機にはBluetoothモードがあり、スマホを音源にしてBluetoothスピーカーとしても利用できる。サウンドモードとしては「ミュージック」、「シネマ」、「カラオケ」、「スポーツ」の4パターンがある。この中では「シネマ」がもっとも広がり感が強く、低音の安定感がある。「ミュージック」はバランスを均等にしようという意図があるのだろうが、やや低音が不足する感があり、音楽再生時でも「シネマ」のほうが聴きやすい。
こうした設定変更は、いちいちホームへ戻って「設定」に行く必要はなく、リモコンの上から2番目、歯車状のボタンを押せばいつでも呼び出せる。コンテンツ再生中に切り替えて比較できるのはありがたい。
総論
本機は製品ラインナップとしては前作Aladdin Marcaの上位モデルという事になるのだろうが、本体デザインやリモコンなどからしても、XGIMIとの融合が進んできたことが伺える。Aladdin OSのポイントは、従来のスマートプロジェクタとは一線を画すオリジナルアプリの充実度が上げられるところだが、利用するには別途料金がかかるものもある。
こうしたオリジナルアプリは、ハマる人・家庭もあるかもしれないが、単にプロジェクタを大画面動画視聴に使いたいだけという人にとっては、無駄なコストのように見えるのではないだろうか。さらに同OS上ではNetflixに対応しないので、別のサービス端末を使う必要があるというところも、スマートな解決方法とは言えない。
ハードウェア的には、フルレーザー光源による2,500 ANSIルーメンはかなり強力で、昼間でもカーテンで遮光した部屋であればまずまず楽しめる。休日にYouTubeで音楽ライブ動画を流しっぱなしでゴロゴロするみたいな使い方では、不思議とテレビで同じ事しているより罪悪感がない。画面がデカい割には動作している機器が小さいというところはあるのかもしれない。
個人的には、本体だけで音楽再生に耐えられるプロジェクタがようやくでてきたというのがポイントである。