小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第752回
UI一新、わかりやすさがアップしたソニー新BDレコ「BDZ-ZT2000」。2TBで8万円台
(2016/4/13 10:00)
今年はレコーダの年?
今回は久々にBDレコーダを取り上げる。今年に入って初めて、昨年も最後にレビューしたのは11月のパナソニック「DMR-BRG2010」以来なので、実に5カ月ぶりということになる。
BDレコーダの国内出荷台数は、アナログ放送停波が行なわれた2011年をピークに、年々減少を続けている。
そもそもレコーダの歴史はビデオテープ時代にまでさかのぼるため、ほとんどが買い替えか買い足し需要である。レコーダの買い替えサイクルをおよそ5年と見積もれば、今年は2011年に地上アナログ放送の停波で大量に購入されたレコーダの買い替えの年にあたる。さらに今年はオリンピックイヤーでもあることから、夏に向けてそこそこの需要があるのではないかと予想される。
今回取り上げるソニー「BDZ-ZT2000」は、4月30日発売予定の春の新ラインナップのうち、3チューナー+2TB HDDを搭載する、最上位モデルだ。最上位機の割には価格はリーズナブルで、店頭予想価格8万3,000円前後のところ、通販サイトではさらに5,000円ほど安く予約を受け付けているところもあるようだ。ただし発売がまだ先ということで、今回お借りしている実機は最終ファームではないため、量産機とは若干違うところもあるかもしれない点をお断りしておく。
今回の目玉はなんといっても、長年搭載し続けてきたクロスメディアバー(XMB)を辞めたところである。XMBは元々、プレイステーションとレコーダのハイブリッド機であったPSXに搭載され、それ以降レコーダやテレビ、PS3などに採用されてきた。十字キーとの相性はいいが、大量コンテンツのブラウズには向かないUIである。2003年に登場して10余年、さすがに数TBのHDDを扱うレコーダのUIとしては厳しい。というか、ユーザー的にはもう新鮮味が無くなってしまっている。
内部アーキテクチャも大きく変わった今年のシリーズを、早速チェックしてみよう。
意外に手の込んだデザイン
まずボディだが、上部が黒、下部がシルバーの2トーンとなっている。ここ2〜3年、レコーダのトレンドは真っ黒だったので、上下分離型のデザインは久しぶりで、どことなく懐かしい雰囲気だ。従来この手のデザインは、フロントパネルのみでサイドはただの一枚板だったりするものだが、本機はちゃんと側面まで2層デザインを引っ張っている。意外に手の込んだ造りだ。
天面にはボタン類は一切ない。電源及びイジェクトボタンは、フロントパネルの左肩にある。押すとクリック感のあるスイッチだが、パネルと一体化しているため、スマートな印象を受ける。
フロントパネルの下部は手動で開くようになっており、B-CASカード、デジカメなどを接続するためのUSBポートがある。電源が入っていると、中央下部に下向きのLEDライトが光るようになっており、接地面からの反射光でボディに浮遊感をもたせている。
内蔵HDDは2TBで、外付けHDDはUSB 3.0対応、最大6TBのものが10台まで登録できる。なお、外付けHDDにも3番組同時録画可能だ。昨今は大容量HDDも安いので、あまり内蔵HDD容量にこだわらなくてもいい時代になってきた。
背面を見てみよう。RFは地デジ、BS/CS110デジの2入力、アナログAVも1系統ある。出力はHDMI1系統で、デジタルオーディオ出力は無し。外付けHDD用USB 3.0端子のほか、Ethernet端子も備えている。無線LANにも対応する。最上位機種ではあるが、出力はHDMIのみに割り切ってコストダウンしたということだろう。
リモコンはバー型のオーソドックスなタイプが付属。UIは変更されたが、十字キー周りのボタンの配置はだいたい同じである。なお赤外線LEDは先端に3つ付けられており、広角で発光するするため、快適に操作できるという。本体側の受光部も感度を向上させている。
使い勝手が良くなった予約システム
ではまず注目のUI、ホーム画面から見てみよう。XMBがダークブルーを基調としたスペイシーなトーンだったのに対し、新UIではクリーム色を基調とした明るくフラットなデザインとなっている。
上部には「録画する」「視聴する」などの項目が並び、そこがタブのような機能を果たす。タブを切り替えると、下部の項目が連動して変わるわけだ。
番組表も刷新された。画面上部に広告が出ないのがソニーのいいところだが、有効面積をフルに使って最大9チャンネル表示を実現する。9チャンネルでは文字が小さすぎると感じた場合は、オプションメニューから文字サイズが変更できる。ただ9チャンネルのままで文字を大きくすれば、番組情報は減る。
番組情報は、番組表のままでもかなり細かく表示される。新聞のテレビ欄とほぼ変わらない情報量だ。放送時間の短い番組は、表の中では情報が表示できないが、選択状態にすれば表の下部に詳細情報が表示される。
番組表からの予約も、工夫が見られる。録画したい番組を選ぶと番組説明画面が表示され、デフォルトでは「予約する」が選択される。そのまま決定ボタンを押すと、この番組の単体予約なのか、それとも番組名で予約するのか、単純な毎週録画なのかが選択できる。番組名予約であれば、今週はスペシャル編成であっても、次週からのレギュラー枠も自動録画となるわけだ。逆に急にスペシャル枠になっても、きちんと録画される。
予約ランキングも、番組表からアクセスできるほか、ホーム画面からも行きやすくなった。以前は3階層ぐらい入っていかないとアクセスできなかった機能だ。
ランキングは、ソニーの予約ランキング搭載モデル利用者と、スマホ向け番組視聴アプリ「Video & TV SideView」の録画予約情報を元に集計されている。全番組のランキング以外に、ジャンルごとのランキングも表示される。やはり誰しも「みんな何見てんの?」というのは知りたいし、ここの動線が太くなったのは歓迎できる。
おまかせ・まる録も引き続き搭載している。録画条件としてジャンル指定だけでなく、人名や番組名も選択肢が出てくる。好きな番組を幾つか予約すれば、その番組出演者が候補として出てくるため、自力で入力する手間はあまりないだろう。
番組検索は、検索条件を保存できる。シーズン物のスポーツなどを保存しておくと便利に使えるだろう。
一方でこれだけ自動録画機能を使うと、大量の番組が録画されることになる。そこで番組の管理数も、以前は999タイトルであったところ、1万タイトルと大幅に増加している。
再生モードもリニューアル
再生機能も快適操作にこだわったポイントが多い。録画された番組は、「録画リスト」に集められる。ここでも左側にジャンルが表示され、各ジャンルでの録画数がわかる。ここで左ボタンを押すと、絞込み検索画面が出てくる。ここでも条件保存ができるが、番組予約時への条件とは別となっている。ただし入力したキーワード履歴は共通なので、予約時のキーワードを視聴時にも使用することはできる。
リスト内の番組を選び、右ボタンを押すとオプションメニューが表示される。番組情報もEPGから取得したものが表示される。
本機での再生機能からは、以前搭載されていた「もくじでジャンプ」機能が削除された。これは、番組内のコーナーごとに目次が表示され、そこにジャンプできる機能で、番組データベースと連動している。他社では有料によるオプションサービスとなっているが、ソニーでは無料で使えるというところがウリであっただけに、この機能の削除は残念だ。ただしスマホアプリの「Video & TV SideView」で見る場合は、もくじでジャンプ機能が使える。
番組配信機能も強化されている。昨今は本体での再生だけではなく、録画番組のリモート視聴が増えていると思われるが、本機からは2系統同時に番組配信が使えるようになった。ただしリアルタイム変換による配信は1系統で、もう1系統は録画時に自動生成された配信用のファイルを使用する必要がある。また宅外への配信は、1系統のみとなる。しかし本体での再生も含めれば、3系統を同時再生できることになり、家族で利用するにも十分だろう。
一方番組を端末へコピーするおでかけ転送は、USBによる転送機能が削除された。これまで同社ウォークマンにUSB経由で転送していた人もいたと思うが、本機ではワイヤレス転送しかできなくなっている。スマートフォンへの転送は、元からワイヤレス転送だったのでその点は変わりない。
4Kテレビへの対応もポイントの一つである。昨今は4Kアップコン機能を搭載しているレコーダも多いが、本機では2種類の画質モードを搭載した。1つは「4Kアップコンバート」だ。本機内部で超解像処理やシャープネス、コントラストなどの調整を行ない、HDMI出力から4K映像を出力する。以前はBDのみアップコンバート対応だったが、本機からは録画番組も、放送中の番組もアップコンバートする。4Kテレビのアップコンバード機能もそこそこ優秀だが、レコーダ側でのアップコンと画質を比較してみるのも面白いだろう。
もう一つは「4Kブラビアモード」だ。これは同社BRAVIAと組み合わせた場合のみ機能するモードで、4KアップコンはBRAVIA側に任せ、レコーダ側は2Kの状態でNRなどのアップコン対応最適化処理を行なう。
あいにく手元にBRAVIAがないので、「4Kアップコンバート」しか動作確認できないが、4Kにアップコンすることを前提で考えれば、画質モードはLR(3Mbps)ぐらいまでが限界だろう。今回は新たに16倍圧縮となる「EER」モード(1.5Mbps)が搭載されたが、4Kテレビで見るには厳しい画質である。
ただ、テレビ視聴用の録画と同時録画される、ストリーミング/おでかけ用の録画ファイルは別物なので、最初からストリーミングでしか見ないと決めている番組なら、HDDの節約のためにEERモードで録画するという考え方もありうる。
総論
相変わらずソニーは全録機を投入せず、自動録画を伸ばしていく方向で今年もレコーダを出してきた。XMBを辞め、全体的に操作体系が分かりやすくなっている。以前もXMBについていけないユーザー向けに「らくらくスタートメニュー」を搭載していたが、それを継承したわけではなく、1から新しい操作体系を作った。
新しいUIは淡い色使いで落ち着いた印象だが、ソニー的には新しくても、広い目で見ればようやく他社並みになったということでもある。しかも試用機では動作レスポンスがもっさりしており、プロセッサとグラフィックスの最適化はもう一つといったところだ。ただし、製品版では動作速度は改善されているかもしれない。
機能整理ということで削除された機能もいくつかあり、それを目当てにしていたユーザーにはがっかりの部分もあるが、価格的にもリーズナブルでモバイル視聴も2系統出せるという点は、今の世相を反映したレコーダと言えるだろう。
ソニー BDレコーダ BDZ-ZT2000 |
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