“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語” |
■ 初日の人出は通勤ラッシュ並み
本日もラスベガスは快晴である。CES 2010初日ということで、ラスベガス・コンベンションセンターに向かうモノレールは午前9時半の埼京線クラスの混雑で、普段通勤ラッシュなど経験のない米国人が目を丸くする状況であった。
昨日のプレスカンファレンスでは、ソニーのカムコーダが圧倒的なスペックとラインナップで「やめて、もう○○のHPは0よ!」ぐらいの勢いで追い詰めたかに思えたわけだが、他社とて負けているわけではない。コンベンション初日となる今日は、CES会場にブースを出すのが約10年ぶりというJVCと、米国の3Dブームの立役者となる、映像制作サイドから見たPanasonicの新製品の情報をお届けする。
■ HDの裾野を広げるJVC Everio
セントラルホールに出展したJVCブース |
日本では今年、ビデオカメラの販売シェアはHDモデルがほぼ100%に近くなるだろうと予想されているが、米国ではFlip VideoタイプのMPEG-4カメラを除くと、HDのカムコーダはまだ2割程度しかない。しかも年々低価格化が進み、500ドル以上は高級モデル扱いとなるなど、日本とはかなり違った事情がある。しかし米国人は基本的に動画を撮るのが大好きなので、マーケットとしては大きいわけである。
JVCのEverio新モデルは、高級機から低価格モデルまで幅広く攻めて来た感じである。まず今回発表のモデルとしては最上位となるGZ-HM1は、マニュアル撮影機能強化で評判が良かった「GZ-HM400」を踏襲した後継機。
ボディデザインは一部のカラーが異なる以外はほとんど同じで、撮像素子のサイズも1/2.3インチと変わらないが、HM1では10.62Mピクセルの裏面照射型CMOSを採用した。HM400搭載のコニカ・ミノルタレンズは解像感が高く、なかなか上質だったが、解放がF2.8と若干暗かった。その部分を裏面照射CMOSで稼ぐことで、カメラ全体として明るく撮れるようになった。この裏面照射は、ソニーのようにクリアビッド配列ではなく、一般的なベイヤー配列だ。
裏面照射CMOSの採用でHM400からリニューアル、GZ-HM1 | メニューなどは前作と同様 |
内蔵メモリは64GBと、前作の2倍となっている。また撮影可能静止画も最大10Mピクセルと、撮像素子面積をフルに使うようになった。手ぶれ補正はHM400同様、前面にシフトレンズがあるスタイルだが、広域手ぶれ補正である「アクティブモード」対応と、細かいチューニングが行なわれている。ただ残念ながら、虹彩絞りは搭載していない。米国では3月発売で、価格は1,199ドル。
上位モデルと同じ光学系を搭載、GZ-HM550 |
ミドルレンジのGZ-HM550は、レンズ、撮像素子など光学系は上位モデルのHM1と同スペックのままに小型化したモデル。サイズの差からすると、とても同じ光学系が入っているとは思えないが、これだけ小さくできた要因は昨今のJVCの特徴である、手ぶれ補正を前面シフトレンズで行なうという方式が効いている。
HM550はこの光学手ぶれ補正部分を省略し、電子手ぶれ補正としたのである。つまり一度の光学設計で、2バリエーションのカメラを作ったというわけだ。もし手ぶれ補正用シフトレンズがレンズ群内にあったら、このようにただとっぱらっただけ、とはいかない。手ぶれ補正は電子式ながら、「アクティブモード」相当の補正が可能。
コンシューマのカムコーダでBluetooth 2.0はおそらく初搭載 |
さらに今回初めて、カメラ本体にBluetooth 2.0を搭載した。これを利用して、米国で普及しているスマートフォンやBlack Berryとリンクし、GPS情報などを取得する。Bluetooth通信は、録画を開始した時のみ行なわれるようにして、節電するという。リンク用のソフトウェアは、JVCが配布するという。
さらに携帯電話用のBluetoothヘッドセットとリンクして、ヘッドセットからの音声を収録することができるほか、音声を収録せずカメラのイヤホン端子のみ、つまりモニター信号ラインに音声を送ることもできる。どういうことかというと、カメラマンへ他の人が指示を出す「インカム」代わりに使えるわけである。まだいろいろな活用はこれからだが、なんだかものすごいことになってきた。これはぜひ業務用クラスのカムコーダにも搭載して欲しい機能だ。こちらは2月発売で、799ドル。
HDD記録の廉価モデルGZ-HD500 |
HDではおそらく最高倍率となる30倍ズームレンズを搭載したGZ-HD620はすでに日本で発売中だが、廉価モデルのGZ-HD500は初お目見えである。80GB HDD内蔵、SD/SDHCカードスロット装備で、撮像素子は裏面照射ではない普通のCMOS。ズーム倍率は20倍となっている。これも2月発売で、549ドル。
メモリ記録型としては、8GB内蔵メモリのGZ-HM320、内蔵メモリなしでSD/SDHCデュアルスロットのGZ-HM300がある。両機とも1/5.8インチ 1.37メガピクセルのCMOS搭載で、コニカ・ミノルタの光学20倍ズームレンズを採用。これらも2月発売で、価格は順に449ドルと399ドル。
メモリー内蔵モデルGZ-HM320 | コンパクトモデルはグリップベルトを外してリストストラップにできる | メモリー記録のデュアルスロット機GZ-HM300 |
■ ついにあのカメラの正体が明らかに
3DずくしのPanasonicブース |
昨年のNABでコンセプトモデルが展示されて話題になっていた、Panasonicのツインレンズ3Dカメラレコーダが、現地時間の6日に正式に発表された。
従来HDの3D撮影は、2D用のカメラを2つリグで繋いで無理矢理同期させるという方法だったが、1ボディにレンズを2つ載せたカムコーダの製品化は、世界初となる。カメラボディ部を見ると、ベースになっているのはAVCCAMの「AG-HMC155」ではないかと思われるが、レンズ部分が外せるわけではない。完全一体型カムコーダである。
昨年のNABで展示されていたコンセプトモデル | 製品化される実モデルを展示 | ボディ側から予想すると、ベースになったのはおそらくAG-HMC155 |
記録部分が未完成ということで、前後距離感のある被写体を撮影してデモ |
ブースでは、まだ記録部分が未完成ということで、このカメラで撮影したライブ映像を3Dで見るというデモンストレーションが行なわれていた。
レンズ2つの動きを完全に一致させるのは、機械式ではどうしても「遊び」が出てしまうために、撮影していくうちにズレが生じる。しかし逆にモーター制御ならば細かい部分まで完全に管理できるため、3Dには有利である。多くのカメラマンは、ズームやフォーカスなどは機械式を好むが、3Dでは逆にデメリットになるわけだ。
また光軸、ズーム値、フォーカスなどの微妙なズレをカメラ内部で補正する機構も入っており、ツインレンズ特有の問題をカメラ本体内で解決できるとしている。
撮像素子も内部に2つ、画像処理エンジンも2つある。ラインナップとしてはAVCCAMの一員なので、記録メディアはP2カードではなく、SDHCカードになる。ただしL、Rそれぞれのチャンネルを2枚のSDHCカードに別々に記録する。音声はステレオ収録だが、L、Rそれぞれに分配され、それぞれで独立したAVCHDストリームとなる。
既にFinalCutProを使った編集環境まで揃っている |
記録タイミングは、レコーディング開始時に左右のストリームが1フレームの誤差もなく同時スタートするので、編集時に改めて同期の必要がないというのもメリットだ。デモンストレーションでは、Apple FinalCutProにDashwood Cinema Solutions社のStereo3D Toolboxプラグインという組み合わせで編集を行なっていた。
このプラグインを使うと、マスターとなる左目(L)トラックを編集していくだけで自動的に右目(R)チャンネルが追従して、最終アウトプットとしては3D映像が得られる。
カメラ本体からはモニター出力用として、HD-SDIを2系統を装備。ハンズオンできる実機は今年4月のNABでお目見えする予定で、発売時期は今年秋を予定している。価格は日本円で210万円程度。また同時期に、小型の3D用モニタも発売するという。
従来はかなり大げさなシステムが必要だった3D撮影も、ハンディタイプでしかも調整不要のカムコーダの登場で、コンテンツの幅が大きく広がることだろう。今年のNABでも引き続き追いかけていきたい。