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有機ELと液晶、UHD BDプレーヤー本命は? 山之内正×本田雅一【'18年末映像編】

今年もすでに始まっている年末商戦。秋口から投入が始まっている年末向け製品だが、ここに来て新製品はほぼ出そろってきた。今年春に発売された製品も含め、各種ジャンルについて、オーディオ&ビジュアル評論家の山之内正氏、同じくオーディオ&ビジュアル評論家でテクノロジジャーナリストでもある本田雅一氏のコンビで、2018年末においてのAV製品トレンド、推薦製品について語り合う。

山之内正氏(左)、本田雅一氏(右)

薄型テレビのディスプレイ方式は、液晶が現在も主流であることに変わりはない。しかし、高画質・高付加価値の製品ラインではLGディスプレイ製のパネルを用いた有機EL(OLED)テレビが数量シェアではまだ少ないものの、存在感を示すようになってきている。

同一パネルメーカーがパネルを供給しており、そのコントローラー(タイミングコントローラー)もセットで供給されるため、パネルの使いこなしや映像エンジンの差、画質の追い込みなどに差はあるものの、スペック面では基本的に同じ中での勝負となっているのが特徴だ。一方で液晶テレビはハイエンドからローエンドまで、方式だけでは捕らえきれない画質差がある。最大輝度、バックライトの方式、分割バックライト制御の分割数や制御精度、分割バックライト制御に連動する映像処理の質、広視野角、広色域技術など、メーカーによって様々。単純に「液晶だから」あるいは「IPSとVAなど液晶方式の違い」だけではとらえきれない。そうした中で、今年のテレビ製品のトレンドについて、2人はどう考えているのだろうか?

有機EL vs 液晶、2人が選んだモデルは?

――(編集部) 有機ELテレビは春に一通り出そろいましたが、各社製品をどのようにみていますか?

本田:パネルメーカーが同一のため、ほぼ発売時期も似通ってくるのが現在のOLEDテレビです。メーカー間の品質差も液晶に比べればずっと小さく、主な違いは映像処理と画質に対する考え方、HDRの高輝度部の処理、それに暗部階調の表現力などが主ですね。どの製品を買っても、局所コントラストが高く、結果、ディテールが明瞭な映像を楽しめます。

本田雅一氏

山之内:液晶のモデル同士の差が大きすぎるのに比べるとたしかにOLEDの製品間の差は小さくて、放送波だと余計に気付きにくいですね。店頭よりも暗い環境で暗部が多い映像を見比べるとそれなりの違いがあることがわかります。

――今年のOLEDは暗部階調の再現性が良くなったという話ですよね。

本田:その通りですが、画素ごとに個別に光るため、発光が止まる間際の部分は制御がかなり難しいんですよ。そこでの階調は、実は液晶の方がいい。液晶は黒浮きはありますが、そこからの立ち上がりのリニアリティは、OLEDよりも遙かにいいですから。

山之内:画質調整で多少は追い込めるけど、見えるか潰れるかぎりぎりの部分の明暗差を出す限界域はOLEDの方が狭いのはたしかですね。OLEDも低価格を売りにした製品が出てきましたが、そこの信号制御をパネルに最適化していないと階調再現は悲惨なことになります。

――直近の新製品は、秋に発売されたBRAVIA Master SeriesのA9Fシリーズが注目でしょうか。

本田:このテレビに搭載されているX1 Ultimateは、OLEDでの階調制御にも優れているのですが、いちばんはノイズ処理の的確さと、それを基礎にした超解像とHDRリマスターの良さですね。映像作品を監督が意図するままに再現するという意味では、A8Fでも現状のOLEDパネルの性能を考えればいい線を行ってます。配信系は4K/HDRへの移行が進んでいますが、放送やレンタル、パッケージなどはフルHD/SDRが主流でしょう。そうした映像を楽しむ際に、大きな差を出せるチップですよ。

BRAVIA A9Fシリーズ「KJ-65A9F」

山之内:僕は実は55インチのA9Fを自分の視聴室に導入しました。HDRリマスターの良さは本田さんの言う通りで、少し前の映画をブルーレイで見直すと「こんなに力のある映像だったかな? 」と嬉しい発見がありますよ。チューナーも手に入れたので4K放送も楽しみだけど、むしろ手持ちのディスクを見直したり、ネット配信で映画やドラマを見る時間が増えそうです。

山之内正氏

本田:BRAVIA Masterシリーズと言えば、液晶のZ9Fで採用された広視野角技術のX-WideAngleが凄いですよね。実際に見た時には、本当に驚きました。確かに局所コントラストではOLEDに劣りますが、ソニーはバックライトの部分制御が巧みですし、ピーク輝度の高さ、それに暗部階調の滑らかさなども考えると、OLEDとどちらを選ぶか迷うところでしょう。

山之内:65インチを超えるサイズでは頭を動かさなくても画面の中央と両端で色味もコントラストも変わるという嫌な思いを経験してきたけど、今回のX-Wide Angleはその不満をほぼ解消しています。もっと早く実用化して欲しかった(笑)。

BRAVIA Z9Fシリーズ「KJ-75Z9F」

本田:Z9Fのバックライト分割数はサイズによって異なりますが、75になるとハロー(暗い部分の周囲がぼんやりと光ってしまう現象)も気にならないレベルになってきますよね。山之内さんは”液晶は全員が違う肌色を見ていると思うと許容できない”なんて話していましたが、視野角問題が解決したZ9Fを基準にしたとき、液晶の黒浮き/局所コントラストの低さといった弱点と、OLEDの階調表現や輝度ピークでの色再現域の縮退を比べたとき、どっちの方を選択しますか?

山之内:それは暗部階調の良さですよ。その点でZ9Fは極めてバランスが良い製品です。色々な意味で液晶は成熟した技術になった。ただし、今回のMasterシリーズのラインナップではサイズが理由でZ9Fは候補から外しました。シアタールームではなくてオーディオ試聴室に入れるので55型が上限、65型も75型もスピーカーの間には置きたくなかった(笑)。リビングやシアタールームならサイズが大きい方が良いからZ9Fの75型も候補に加えたでしょうね。

本田:僕が今年、もし自宅のリビングルームにあるテレビを買い替えるのであれば、Z9Fを選んだと思います。65インチと75インチでは75インチでしょうね。欧州での発表では65インチのA9Fと75インチのZ9Fが同水準の価格だったので、期待していたんですが、日本では75インチモデルが高くて(笑)。でも方式の壁を越えて、液晶テレビの可能性を感じさせてくれるモデルです。

――秋発売の他のテレビはどうですか?

本田:液晶にフォーカスしているシャープは、12月1日開始の4K/8K放送に照準を合わせてきましたね。まだ高価ですが8Kネイティブで次世代の映像を愉しもうと思えば、シャープAQUOS 8K一択となりますし、今後も8K対応という意味では液晶の優位が続くでしょう。また、東芝はREGZA Z720Xで明確な意思を表明したと思います。暗所で映画やコンサート映像を愉しむような用途はOLEDにまかせつつ、液晶はファミリーで愉しめる広視野角、高輝度、積極的な映像処理へのアプローチ。それにこれまで通り地デジは全チャンネル録画。ディスプレイとしてのテレビと、エンタメ端末としてのテレビ。こうしたことができるのは、彼らが日本市場だけを見ていればいいからというのはありますね。4Kチューナー内蔵という離れ業をやってきたのも、そういった部分があるからと言えます。

山之内:パナソニックも含め各社が4Kチューナー内蔵モデルを2019年前半から導入してくるでしょうから、もう少し待つという判断もありだと思います。ただし、個人的にはデジタルコンサートホールなどネット配信のプログラムがメインだったりするので、あまりそこにはこだわりませんが。ちなみにこのベルリンフィルのコンテンツも4K化されて見違えるほど良くなりました。特にOLEDだと没入感が格別ですね。

シャープAQUOS 8K「8T-C80AX1」

東芝REGZA Z720Xシリーズ

ピックアップ製品(本田)

ソニーBRAVIA Z9Fシリーズ(自分が買うなら。サイズが大きいならなおさら)
X-Wide Angleと名付けられた技術は、独自バックライト構造と前面フィルタの組み合わせによるもの”らしい”が、詳しいことは解っていない。ソニーは液晶基板を購入し、バックライトの組み立てと前面処理は自社で行っているため、こういうことができるのだろう。今年発売されたテレビの中で、ひとつだけ”自分のために選ぶ”ならこの製品を選択する。ただし65インチ版はバックライト分割数の少なさがやや気になる。となれば75インチしかないが、こちらは置く場所と搬入で悩むことになるだろう。価格ももちろん上昇する。来年、もし改良を施せるのであれば、65インチのバックライト分割数をもう少し増やして欲しいところ。
ソニーBRAVIA A9Fシリーズ(OLEDなら)
OLEDに関してはどのメーカーも、輝度が極めて低いところでのリニアリティやムラに問題を抱えている。その中で本機を選んだのは、やはりX1 Ultimateの存在。SDRコンテンツがまだ主流を占める中、OLEDならではの局所コントラストの高さを活かした、ディテールの深い立体感あふれる映像を愉しむならば、HDRリマスター機能が極めて優秀であることが望ましい。ソニーのOLEDは昨年に比べ、大幅にSN感も上がっている。ひとつ注意したいのは斜め配置のためスタンドの奥行きが意外に大きいこと。奥行きが狭いテレビ台を使っている場合は要注意。
東芝REGZA Z720X(ファミリー向け、安心チューナ内蔵なら)
地デジチューナーの全録+IPS液晶による広視野角+4Kチューナー内蔵。IPSの中ではコントラストが高めのパネルは、配線の外光反射を抑えたもの。暗所コントラストに大きな向上はないが、明所でのコントラストは高まる。そうした意味でもモニターとして使うのではなく、ファミリーで愉しむエンターテインメント指向のテレビとして、価格、機能のバランスが取れた製品だ。このジャンル、映像エンジンに関してはソニーが頭ひとつ抜け、東芝が異なるアプローチで仕掛ける展開。映画などの作品を”作品らしく”表現する部分は、どのメーカーも上位モデルではできてきている。何が差かと言えば、それはフルHD/SDRをまるで4K/HDRのようなリアリティで見せる映像処理技術にあり、そこで差が付いている印象だ。12月1日からのBS4K放送でも、SDRコンテンツは多いだけに、各社ともダイナミックレンジ復元機能で画質の印象が大きく変化するはず。HDRに対応するシステムを活かすためにも、そこは今後も引き続き注目点となっていく部分だ。

ピックアップ製品(山之内)

ソニーBRAVIA A9Fシリーズ
Masterを冠したシリーズ名には作り手の意図に近い映像を表現するという意味を込めたという。それを支えるために処理能力を高めた映像エンジン「X1 Ultimate」を積み、Netflixモードなどコンテンツを限定した画質最適化にも対応。最暗部の正確な階調表現や高輝度部の立体感などに信号処理技術の優位性が感じられ、OLED特有の課題を事実上感じさせない程度までの画質改善を果たしている。左右をラックなどでふさがないように設置すれば広がりとレスポンスを改善した低音のメリットが活かせる。

4K8K放送開始で期待のコンテンツ。チューナーは内蔵or外付け?

――12月1日開始の新4K8K衛星放送に関してはどう見ていますか?

本田:NHKの編成に関してはフランス・カンヌで取材してきたのですが、得意のNHK特番は素晴らしい仕上がりでしたし、海外・国内を問わずに積極的にアナログフィルム時代のレストア作品を買い付けていました。「奥さまは魔女」なんかは16ミリフィルムなんですが、ビックリするほどきれいですし、35ミリフィルムの「刑事コロンボ」も素晴らしい出来です。「ウルトラQ」の4K版も実は35ミリ。さらにはNHKに残るアーカイブの4Kスキャン/レストアも進められていて、スポーツ中継や特番などに加えてコンテンツに厚みを持たせています。4K制作の映画を放送する枠もありますし、NHKの4K放送にはなかなか期待ができますよ。

ただ、8Kは確かに4Kよりも確実に良いことが見てわかるだけのパワーを持っていると確認できたのですが、当面は撮影時に大きな意味は持つものの、放送はNHKのBS4Kでダウンコンバート放送される「8Kベストウインドウ」でいいかなぁ、というのが率直な感想です。まずは4Kを美しく楽しめること。時間が経過すれば時代は変わるでしょうが、まだ本当の意味で8Kネイティブの良さが活きてくるまでには時間がかかると思います。

山之内:映画の4K/8Kマスターが多数オンエアされるなら興味津々です。邦画のレストアも興味はありますが、1960年頃のハリウッド黄金期の作品も観てみたい。「クレオパトラ」なんか8Kで観たら凄いでしょうね。

新4K8K衛星放送が12月1日より開始

本田:今後、8K放送がより充実してくると読むならば、シャープAQUOS 8Kシリーズに投資するのもアリでしょう。8Kとなれば液晶しか当面の間は回答がないため、ここに勝負をかけるシャープの努力も実るかも知れません。ただ、高画質を標榜するのであれば、すでに解決策を提示しているメーカーもあるだけに、視野角の問題に関しては何らかの回答が必要でしょう。視野角問題は画面サイズが大きくなるほど、顕在化しやすいためです。

山之内:同感です。そこは譲れないポイントです。

シャープのAQUOS 8Kは、単体チューナーやサラウンドシステムなども展開

本田:あとはBSデジタル放送が始まった時には、後付けチューナの操作性に四苦八苦した記憶がありましたが、今やHDMIを通じて連動するのがあたりまえの時代。外付けチューナの不利はあまり感じませんでしたが、そのあたり山之内さんはどうでしょう?

山之内:外付けチューナーや録画用HDDを追加しても基本はテレビのリモコンだけで操作できるので、以前のような不便はないですよ。それよりもアンテナなどの受信設備の対応ができるかどうか、環境によって大きく変わることが導入時の不安要素として浮上してくると思います。

レコーダーは4Kチューナー内蔵に注目。UHD BD時代のプレーヤー覇権は?

本田:ところで、パナソニックが強すぎることもあって、あまり話題に上がらなくなってきたレコーダーですが、実は4K衛星放送チューナー内蔵の「DMR-SUZ2060」が想定以上の売れ行きで流通の在庫が枯渇しているようですね。パナソニックとしても、需要を読み違えたようです。

DMR-SUZ2060

山之内:4Kテレビ用にチューナーを追加で買うと3~5万円、外付けHDDも同時に買うとそれなりの価格になる。それなら4Kチューナー内蔵で録画もできるし、UHD BDも見られるレコーダーにしようと考えた人が多いのでしょうね。その手があったか、ということ(笑)。

本田:シャープも同様に4Kチューナー内蔵モデルがあるのですが、NetflixやAmazonの4K/HDR再生に対応しない(アクトビラのみ)ほか、スマホでのリモート視聴機能が有料サービスだったり、外付けHDDでの増設が不可能な点など、かなり急いで作ったのかな? という印象を持ちました。

山之内:配信系コンテンツはまだまだ広がるので対応は必須でしょう。DIGAは「おうちクラウド」がまたまた進化して、まさに向かうところ敵なしの独壇場ですね。レギュラーモデルのデザインが一変したのは賛否両論かもしれないけど……。

本田:画質面では従来からのクロマ処理の優秀さなどはそのまま。地デジ移行時に購入したレコーダーが旧く4Kテレビとセットで購入するのなら、本機の実売価格はなかなかお買い得じゃないでしょうか。もっとも、だから売り切れてしまっているのでしょうけど(笑)。

山之内:テレビとのセット購入はキャッシュバックのキャンペーン中で、SUZ2060もその対象になっていますね。つまり、もっと安くなるということ。

本田:レコーダーといえばパナソニックのDIGAというぐらいに定着しているのはメーカー自身の努力としていいですが、数年前から力を入れている「全自動DIGA」。これはレガシーの“レコーダー”と、全チャンネル録画を背景にネット動画や自作動画、音楽や写真なども含めて一括管理する“万能メディアサーバー”としてのシステムが、内部的に乖離した造りになってます。これは早いうちに、全自動側で再構築した方がいいと思うんですよね。難しいでしょうけど。今、取り組めるのはパナソニックだけでしょうから、是非取り組んで欲しいところです。

――OPPO Digitalが新たにUHD BDプレーヤーを生産しないと発表して、何が後継になるか? という話がありましたが、パイオニアとパナソニックからそれぞれ高級機が出ました。これらについてはどう見ていますか?

山之内:パイオニアの歴代フラッグシップはBDP-LX91、LX88と使い続けていますが、今回のUDP-LX800も音質面ではたしかに基準機として通用するだけの実力があります。SACDも再生できるし、HDMI出力時にアナログ回路を遮断するトランスポートモードも効果は認められました。ただし、UHD BDやBDなど映像ディスクの画質も含めた総合性能ではパナソニックのリードは揺るがないでしょう。今回の新機種DP-UB9000はテクニクスのノウハウを投入するなど音質面でも相当に踏み込んでいるので、SACD非対応という一点を除けばLX800に肉薄するのではと見ています。

UDP-LX800

DP-UB9000

本田:山之内さんに近いのですが、パイオニアのアプローチは、アナログ時代の伝統的な手法を引きずっている印象ですね。もちろん、シャシーや電源、回路の取り回し、部品選別とチューニングなどで良くなる部分はあり、パナソニックのDP-UB9000 Japan Limitedでも同じようなアプローチが採られているのですが、画質に関してはデジタル処理の精度がとても大切です。

山之内:パイオニアのUHD BDの画は、発売初期のOPPO製UHD BDプレーヤーに近い印象ですね。その後、UDP-205はアップデートで画質を改善していますが、パイオニアはリセットして戻ってしまったような印象です。両者ともメディアテックのシステムLSIを使っていますが、画質面でまだ追い込む余地があるように感じました。人物のクローズアップ画面での肌の質感や立体感、砂漠や木々など遠景での自然描写などでいまひとつ立体感が伝わりにくいんです。

本田:メディアテックはソニーも使っていますが、当初はかなり苦労していましたからね。一方でパナソニックの映像処理は、HDRの扱いを除くと数年前に完成していて、それをレコーダーでもプレーヤーでも引き継いでいます。そのうち他社も追いつくのだろうと思っていましたが、むしろさらに独走してしまった。

山之内:SACDやDVDオーディオをユニバーサル機で再生したい人はいるので、そうした部分ではパイオニアが使われる可能性もありますが、映像再生が基本となるとやはりUB9000がOPPOの後を引き継ぐことになるでしょう。

本田:UB9000にはNetflixやAmazonビデオの高画質再生が可能という、OPPOのUHD BDプレーヤーにはなかった側面もありますからね。音質も非常に高価な旭化成の最高級DACが奢られていて、こちらも素晴らしい。SACDは是非、別の機材ということで映像再生はこちらでしょう。しかし、なんといってもUB9000の良さはHDRコンテンツを多様な機器で適切に、しかも“自動”で調整しながら再生できることですね。とりわけプロジェクターでのHDRコンテンツ再生という、なかなか良い解が見つからなかったテーマに対して素晴らしい機能を搭載してきた。

山之内:4Kテレビとの組み合わせでも有利なケースが多いはずです。多くのHDRのコンテンツでテレビ側のトーンマップよりもUB9000のトーンマップの方が自然なコントラスト感を生むことを確認しているので、テレビでもプロジェクターでもUB9000が威力を発揮するはずです。

本田:UHD BDソフトはほとんどがHDR対応ですが、UB9000ならばプロジェクターで楽しめるようになるだろうと思うと、個人的にも自分のシアターでどう見えるのか今から楽しみですよ。まだ自宅では試していませんが、かなり良い結果が得られそうですし、中価格帯のプロジェクターでも充分にHDRコンテンツを楽しめるようになるでしょうね。

ピックアップ製品(山之内)

【プレーヤー】パナソニック DP-UB9000
多様なテレビ、プロジェクターを想定し、それぞれの組み合わせで最良なコントラスト表現を実現するためにHDRトーンマップの最適化処理を導入して大きな成果を挙げた。高輝度部が飽和したり、画面全体が暗く沈んでしまう現象を抑えてHDR本来の豊かな階調を引き出すことに成功。市販のUHD BDソフトに記録されている信号の特性に基づいてトーンマップ処理を最適化しているため、自動化された信号処理の挙動に不自然さがなく、製作者の狙いに近い表現が得られる。HDR再生時に画面が暗くなりすぎてしまうプロジェクター固有の問題もダイナミックレンジ調整機能によって大きく改善する。
【プレーヤー】パイオニア UDP-LX800
HDMI接続でマルチチャンネル信号を伝送できるユニバーサルプレーヤーはSACDのサラウンド再生愛好家にとって最後の頼みの綱。OPPOの製品開発が途絶えたことでパイオニアへの期待が高まるなか、LX800は重要な役割を担う。他のプレーヤーと比べてオペラやコンサートのライヴ映像の実在感と臨場感で優位に立つことが多く、緩みのない力強いサウンドを楽しめる。
【レコーダー】パナソニック DMR-SUZ2060
4K放送の本格スタートに合わせて4Kチューナーの追加を計画しているなら録画機として発売された本機もぜひマークしておきたい。おうちクラウドなどDIGA一連の便利機能をそのまま利用できるうえに4K番組の録画にも対応。リビングの視聴&録画環境を4K対応まで一気にアップグレードする強力な製品である。

ピックアップ製品(本田)

【プレーヤー】パナソニック DP-UB9000
Japan Limitedの名を冠するが、そもそも(海外モデルと)同じ機種名でいいのか? と疑問に思わざるを得ないような、まったく別もののチューニングがされた製品。価格もOPPO UDP-205より安価でありながら、4層構造のベースシャシーやより強化されたドライブシェル、オーディオ部を独立させた電源構成、10個のレギュレータを挟んで音質系の電源をアイソレートするなど、極めて贅沢な構成を採る。中でも最新・最上位のAK4497採用はなかなか思い切った選択。LINNとエソテリックの上位モデルに採用される最高級DACである。まぁ、音を聴いてみよう。今までのパナソニック製プレーヤーとはレベルが違う音が出てくる。しかし、なんといってもこの製品の価値は、HDRコンテンツを接続する機器と自分の好みに合わせてカスタマイズしつつ、コンテンツの作り方にほとんど依存せずに自動的にダイナミックレンジ調整して出力できること。詳細は省くが、極めて賢く動作するため弊害はほとんど感じず、ディスプレイやプロジェクターの能力を引き出す。
【レコーダー】パナソニック DMR-SUZ2060
“またパナソニックか”と言われそうだが、4Kチューナー+アルファの価格で2TB HDD内蔵のUHD BDレコーダが買えるお得感を考えるなら、4Kチューナー非搭載のテレビとセットで買うなら“コイツしかない”というぐらいにオススメ。内容は最新の「おうちクラウドDIGA」。そろそろライバルが登場して欲しいところだが、今回も独走している。なお、電源やシャシーはノーマル仕様だが、例によってデジタル映像処理に関してはしっかり作り込まれている。ただし、UB9000に搭載されるHDRの自動最適化機能は搭載されていない。レコーダー、プレーヤーともにライバルがいなければ、いつかは進化が止まる。音質に関しても、異なる傾向を好むファンもいることだろう。パナソニックの努力には敬意を払いたいが、パイオニアなどにはデジタル映像処理の領域をパナソニックと比肩するレベルに引き上げた上で、得意の音質勝負に引き込んでもらいたいものだ。

プロジェクター本命と、レンズの重要性

本田:かなり高価なのですが、ソニーの4KプロジェクターVPL-VW855にはちょっと驚きましたね。以前からデジタル処理で光学特性を補償する技術はあって、カメラなどでは当たり前なのですが、それをプロジェクターに応用すると、ここまで画質が上がるのかと。レンズの大切さは解っていたはずですが、ここまで効果的なことを目にすると正直ビックリですよ。

VPL-VW855

山之内:以前からカメラの世界では高画質化技術のひとつとしてとり入れられていましたから、いつかは導入されるだろうとは思っていましたが、実際にスクリーン上で確認できる効果の大きさは想像以上でした。

本田:ただ、VPL-VW745と同等の映像回路+光学回路に新しいレンズを組み合わせて、おおよそ100万円の価格上昇。VW745のレンズはVW555などと同じものですが、それをVW1100ESやVW5000ESと同じ設計のものにすると“+100万円”という衝撃。

搭載するARC-Fレンズ

山之内:画を見ると本当に良くなっているのだけど、これ一本100万円!? はビックリですよね。僕も本田さんもVW1100ESを使っているわけですが、あの170万円のプロジェクターは、価格の半分以上がレンズだったのかと(笑)。デジタル一眼レフの大口径単焦点レンズにも凄い価格のものがあるけど。

本田:それはともかく、この技術はより低価格なレンズに対しても効くでしょう。いずれはVW555の後継機種などに盛り込んで欲しいですね。なにしろVW855。絶対的な明るさを除けば、解像力などはVW5000ESより明らかにいいですから。

山之内:JVCがDLA-V7、DLA-V5で4Kネイティブになったことと、上位のDLA-V9Rでe-shiftを用いた疑似8Kを投影できるようになったことも大きな進化です。コンテンツさえ吟味すれば4Kとは一線を画す精細感と立体感が味わえます。ただ、8Kネイティブの入力に非対応なのは残念かな、いまの時点では仕方ないけど。

DLA-V9R

本田:JVCの4K対応は、それまでのXシリーズがVシリーズに置き換わった形で、価格帯や製品の性格付けも近いので、プロジェクターファンには解りやすいでしょう。ただ8K e-shiftはどうかなぁ。e-shiftは良い側面もありますが、映像処理とコンテンツの相性によっては弊害もありますから。4Kデバイスの解像度を限界まで活かす方向での作り方でも良かった気がします。

山之内:4Kコンテンツで8K e-shiftのアドバンテージをどこまで発揮できるのかが焦点になります。ハイグレード家庭用プロジェクターの市場に一石を投じて欲しいですね。

本田:低価格帯は相変わらずエプソンの独壇場ですが、個人的にはソニーのVPL-VW255を褒めておきたいですね。オートアイリスがないため、黒浮きはやや感じるかも知れませんが、HDRにも対応するネイティブ4Kのプロジェクターが50万円を切ってきたことには大きな意味があると思います。

VPL-VW255

ピックアップ製品(本田)

ソニー VPL-VW855
300万円のプロジェクターを“お気に入り”と紹介するのは悩ましいところだが、レーザー光源ならではの色再現の広さやコントラストに加え、レンズ補正機能による4K SXRDパネルの解像力を生かし切った映像があまりにも強烈。個人ユーザーはほとんどいないだろうが、VW5000ESユーザーが地団駄を踏むような出来だ。レンズユニット単体で100万円の価格上昇とソニーは説明。結果には納得はするが、実に悩ましい。明るさは充分。オーエスのレイロドール、パナソニックのUB9000と組み合わせれば、UHD BDだろうがNetflixだろうが、HDRコンテンツを思う存分楽しめる。
JVC DLA-V7
JVCが一連のシリーズをネイティブ4Kにしたが、僕が選ぶならV7。スクリーン補正やキャリブレーションなど、実にストイックに表現を追求するJVCのプロジェクターだが、この製品がもっとも純度の高い画をだすと思う。e-Shiftでの8Kは様子見としたいが、V7はHDRの自動トーンマッピングが秀逸。別途評価しているパナソニックのDP-UB9000とどちらが優秀かという議論もあるだろうが、プロジェクターの能力に合わせてチューニングされている点で有利。
ソニー VPL-VW255
特にHDRを投影する際には、VW555との差は大きいと感じる部分もあるが、新しいHDR時のトーンマップ(暗部の見通しを改善している)や価格を考えれば納得の製品ではないだろうか。完全遮光ができない、白壁、白天井のままといったリビングシアターでSDRコンテンツを愉しむ上では、VW555との差はあまり大きくはない。映像回路もデグレードされておらず、まさにお買い得なモデルの典型だ。このジャンルはソニー、JVC、エプソンと主だったメーカーが固定化されており、そこにオプトマが絡む展開。それぞれに得意ジャンルが異なるが、今回、ソニーのVW855で解ったのは、4Kという解像度を活かすには光学補償技術が必須ということ。次は8Kか!と急ぐ前に、4Kの良さを引き出すためにもレンズ性能と電子補正技術を磨き込み、中級モデル以下にも反映させるべきだろう。また、プレーヤーではパナソニックのUB9000にも搭載されたように、ディスプレイの能力に合わせてHDRコンテンツのトーンマップを自動的に最適化する技術は、プロジェクターでUHD BDやNetflixなどの4K/HDRを愉しむ上でのキー技術となってくることは間違いない。

ピックアップ製品(山之内)

ソニー VPL-VW555
VW535の後継機として登場した本機は下位モデルのVW255とともにソニーの4Kプロジェクターの中心に位置する重要なモデルだ。レンズはVW535と同等で輝度も1,800ルーメンと変わらないが、暗部階調は前作よりも確実になめらかさを増し、深みのある表現力を獲得している。オートキャリブレーションやアドバンストアイリス3を省略したVW255は価格対性能比が優秀だが、引き締まった黒再現とHDRコンテンツのダイナミックレンジの広さを満喫したい映画ファンには本機をお薦めする。
VPL-VW555
ソニー VPL-VW855
4Kプロジェクターのディテール再現を突き詰めるにはレンズの性能をきわめることが不可欠で、ハイエンドプロジェクターでは明るさや階調表現と並んで重要な指標になる。前作のVW745はレーザー光源という強力なデバイスで4K/HDRの表現力を底上げしつつ、レンズはVW1100から1ランク下がる結果となり、こだわりの強い一部ユーザーから不満の声も上がっていた。本機はそこをクリアしつつレンズ収差のデジタル補正まで援用して画面全体のコントラスト性能を追い込んでおり、文句を言わせない「パーフェクト仕様」に大きく近付いている。価格が一気に上昇してハードルは上がったが、この強力な仕様を待っていたという人には待望の機種と言える。
JVC DLA-V9R
ハイエンドプロジェクターのなかで異彩を放つe-shift 8KプロジェクターがJVCから登場した。8K入力がないのでソース機器からの8Kネイティブ伝送は今後もできないが、4Kコンテンツを8K解像度で表示するメリットがどこまで得られるかが焦点になる。まだ短時間の視聴しかできていないので決定的なことは言えないが、ポテンシャルの高さは十分に伝わってくる。オールガラス製の良質なレンズを搭載していることもあり、解像感には余裕が感じられた。

山之内正

神奈川県横浜市出身。オーディオ専門誌編集を経て1990年以降オーディオ、AV、ホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。大学在学中よりコントラバス演奏を始め、現在も演奏活動を継続。年に数回オペラやコンサート鑑賞のために欧州を訪れ、海外の見本市やオーディオショウの取材も積極的に行っている。近著:「ネットオーディオ入門」(講談社、ブルーバックス)、「目指せ!耳の達人」(音楽之友社、共著)など。

本田 雅一

PCハードウェアのトレンドから企業向けネットワーク製品、アプリケーションソフトウェア、Web関連サービスなど、テクノロジ関連の取材記事・コラムを執筆するほか、デジタルカメラ関連のコラムやインタビュー、経済誌への市場分析記事などを担当している。  AV関係では次世代光ディスク関連の動向や映像圧縮技術、製品評論をインターネット、専門誌で展開。日本で発売されているテレビ、プロジェクタ、AVアンプ、レコーダなどの主要製品は、そのほとんどを試聴している。  仕事がら映像機器やソフトを解析的に見る事が多いが、本人曰く「根っからのオーディオ機器好き」。ディスプレイは映像エンターテイメントは投写型、情報系は直視型と使い分け、SACDやDVD-Audioを愛しつつも、ポピュラー系は携帯型デジタルオーディオで楽しむなど、その場に応じて幅広くAVコンテンツを楽しんでいる。  メルマガ「本田雅一の IT・ネット直球リポート」も配信中。