トピック

映画用と“シミュレーションゴルフ用”プロジェクタ、何が違う?

BenQのシミュレーションゴルフ用プロジェクター「LK936ST」

プロジェクターと聞くと、ホームシアターを連想するAV Watchだが、実は米国では“シミュレーションゴルフ”用にプロジェクターを導入する人が増えているという。コロナ禍で高まったゴルフ人気がインドアゴルフにも派生し、富裕層の間で自宅にゴルフシミュレーターを導入することがトレンドに。シミュレーションゴルフ用に特化したレーザープロジェクターを手掛けるBenQによれば、日本円で実売約70~80万円と高価ながら、直近2年間で合計8,000台、約30億円の売り上げを突破したという。

日本でもインドアゴルフ施設数は右肩上がりに増加。日本人口の1%と言われる富裕層の間では米国と同様に、自宅にゴルフシミュレーターを導入する人が増えつつある事から、8月2日、メディア向けにシミュレーションゴルフ用プロジェクターを紹介するイベントが開催された。

ツアープロであり一般社団法人日本バーチャルゴルフ協会(JVGA)理事長の柏木勝人さんと、ゴルフやVRに造詣の深いお笑い芸人・アメリカザリガニの2人がスペシャルゲストとして登場した。

通常のプロジェクターとシミュレーションゴルフ用プロジェクターは何が違うのか

BenQが4月に発売した、シミュレーションゴルフ用プロジェクターが「LK936ST」だ。4K UHDの短焦点のDLPプロジェクターとなっている。

LK936ST

気になるのは“通常のホームシアタープロジェクターと何が違うのか?”という点。

大きな特徴は“自由度の高さ”だ。プロジェクターとスクリーンの間にゴルファーが立ち、スイングした場合、自分の影がスクリーンに落ちてしまう。LK936STはレンズシフト機能を備え、投写面のサイズに相対して垂直方向に最大60%、水平方向に最大23%のシフトが行なえる。シフト後、垂直軸と水平軸の両方で最大±40度の3D台形補正も可能で、投写面のゆがみを補正。投写面を時計方向、または反時計方向に回転する事もできる。

実際に取材した「golfGT&Relaxsh神田店」では、LK936STをヒッティングエリアの中心からズラした位置の、天井に設置。ユーザーやゴルフクラブの影が落ちないようにした状態で、ヒットスクリーンに全画面表示を実現している。

中央からズラした位置からも投写できる

また、投写比0.8の短焦点と1.1倍のズーム機能を備えているため、限られたスペースでも大画面で投写可能。投写面から4.3~4.7mの距離に設置すれば、高さ約3mのダイナミックな映像を投写できる。

LK936ST

さらに、通常のプロジェクターは横長の映像を表示するが、LK936STでは縦長の表示も可能としており、黒枠が表示されない全画面表示により、臨場感を高めている。

左がLK936ST、右が通常のプロジェクター。LK936STは上下に黒枠が無く、縦長のヒットスクリーン全画面に表示されているのがわかる

レーザー光源を採用し、起動が早く低発熱であり、最大5,100ANSIルーメンの輝度を実現。光学系の部品は密閉された防塵設計で、埃によるカラーホイールセンサーの不具合や映像上の斑点を防ぎ、故障リスクを減少させている。

エコモード使用時には最大で約30,000時間の光源寿命を実現しており、メンテナンスフリーで24時間稼働が可能。個人宅だけでなく、企業のロビーやイベント会場、ホテル、公共ホール、博物館の展示でも活用できるという。

画質としては、Rec.709色域を92%カバーしており、ゴルフコースの緑、鮮やかな空の青を鮮明に表現できるという。

背面

実際にプレイして比較してみると……

アメリカザリガニの柳原哲也さんと平井善之さん。柳原さんはゴルフ好きで、シミュレーションゴルフにも興味津々。ゲーム好きの平井さんは、家でBenQのゲーミングモニターを愛用しているという。

アメリカザリガニの柳原哲也さんと平井善之さん

シミュレーションゴルフを前にして柳原さんは、「先週もゴルフに行ってきましたけど、めちゃめちゃ暑い。エゲつないほど暑い」と語り、そうした日差しを避けてプレイできるシミュレーションゴルフの快適さに感動した様子。

また、都心のシミュレーションゴルフのお店であれば、遠くのゴルフ場まで移動する必要もなく、ゴルフクラブなどもレンタルでき“手ぶら”で楽しめる事から「(芸人仲間などで)ゴルフやったことない人を誘うにも良い!」(柳原さん)という。

米国の富裕層を中心に、自宅にシミュレーションゴルフルームを作る人が増えている事から、2人も導入に興味がある様子だが、一般的にシミュレーションゴルフルームの建設には700万円~1,000万円かかると聞いてちょっとトーンダウン。しかし、平井さんは「(芸人でも)高級車買われるみたいのあるけど、そんなん買うくらいなら僕は(シミュレーションゴルフを買う方に)未来を感じるね」と見方を変え、柳原さんも「その値段聞くと、プロジェクター(LK936STの実売約70万円)も安く感じるね」と笑いを誘った。

元プロゴルファーであり、現在は日本バーチャルゴルフ協会の理事長である柏木さんによれば、シミュレーションゴルフの魅力は「気軽に楽しめること」だという。手ぶらでお店に来てプレイできるという事だけでなく、例えばプレ中に音楽を流したり、仲間内で対戦中に互いにヤジや声援を送ったりと、通常のゴルフではできない楽しみ方も可能だという。

日本バーチャルゴルフ協会の理事長である柏木さん

さらに、インターネットを介して遠方の人と対戦したり、シミュレーションゴルフの大会を開催するなど、気軽かつ新しい楽しみ方を提案。こうした施策を通して、ゴルフ人口の増加へ繋げるのが日本バーチャルゴルフ協会の役目だという。

イベントによっては、選手が入場する時に音楽やライティングを使って派手な演出を施すなどといったパターンもあるとのこと。それを聞いたアメリカザリガニの2人が、「お笑い芸人達のシミュレーションゴルフ対決企画なんか面白そう!」と盛り上がる一幕もあった。

そして、柳原さんと柏木さんが実際にシミュレーションゴルフをプレイ。通常のプロジェクターで投写したヒッティングエリアと、LK936STで投写したヒッティングエリアを比較した。

LK936STの方が、縦長のヒットスクリーンの四隅まで全て映像が投写されているため、「奥行きがわかりやすくて、高低差もリアル」(柳原さん)、「本物のゴルフ場にいるという臨場感が凄い」(柏木さん)と、大きな違いを実感した様子。

その違いがゴルフのパフォーマンスにも発揮されたのか、通常のプロジェクターではダブルボギーだったが、LK936STのヒッティングエリアでは見事にパーを記録した。

山崎健太郎