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“動画撮影用カメラ”VLOGCAM、α、Cinema Line沢山あるけどどれ買えばいいの?ソニーに聞いてみた
2024年12月24日 08:00
「動画撮影のために、スマホからステップアップしてミラーレス一眼を買おう」と考えた時、何を買えば良いのかわからないと思ったことはないだろうか。画素数が多ければ良いのか? 連写性能は動画と関係無いし……動画性能スペックを見比べても、どの機種も同じことが書いてある!! と頭を抱えた経験が筆者にもある。
そこで、今回はVLOGCAM、α、Cinema Lineと、動画向けだけでも数多くの機種を展開しているソニーに伺い、各シリーズの特徴や、最適な機種の選び方を、ソニーマーケティングでデジタルイメージング製品を担当している永井幸輝氏と齋藤直哉氏に聞いた。自分に合った機種を見つけたり、選択肢をある程度絞ったりするために役立てば幸いだ。
今回取材の場に用意されたカメラは以下の通り。全て動画撮影に使いやすいとされている機種だ。
- ZV-E10 II パワーズームレンズキット実売163,900円
- ZV-E1 ボディのみ 実売328,900円
【VLOGCAM】
- α7C II ボディのみ実売328,900円
- α7 IV ボディのみ実売383,900円
- α7S III ボディのみ実売526,900円
【α】
- FX30 ボディのみ実売297,000円
- FX3 ボディのみ実売581,900円
【Cinema Line】
- PXW-Z200 649,000円
【XDCAM】
動画を始めたい!! でもどの機種を選べば良いの? という人はVLOGCAM「ZV-E10 II」
ズバリ、右も左もわからない、けれどもカメラを使い始めたいという人にオススメなのが、VLOGCAM「ZV-E10 II」(パワーズームレンズキット実売163,900円)だという。その理由を説明してもらった。
永井氏(以下敬称略):何よりも始めやすい、全ての機能が一通り小さなボディに収まっているのがVLOGCAMです。とくに今一番オススメなのは「ZV-E10 II」だと思っています。音声で動画の質は大分変わるのですが、ZV-E10には指向性が変えられる本格的なマイクもオールインワンで備わっている。
手ブレ補正も非常に強力なものが入っていますので、ジンバルなども使わずに映像が撮れる点。色味についてもシネマティックVlog設定という機能で、そのまま一発で綺麗な映像が出てきます。
静止画も撮りたいという場合でも、オートフォーカスがソニーのカメラのコアな部分にありますので、被写体と向き合って、会話しながらでも撮影できてしまうところが撮影の幅、表現の幅を広げている要素になっていると思います。
従来のカメラですと、ファインダーを覗いて少し仰々しい感じになってしまう側面があったのですが、自然な流れでバッチリ撮れるところがこのカメラの良いところですので、(動画静止画問わず)撮影を始めるポイントではすごくオススメな1台です。
齋藤氏(以下敬称略):入門機というには十分過ぎるくらいに(機能を)備えた機種ですので、ここから始めていただいて、物足りなさを感じるところが出てきたら、そのポイントを軸に、次のステップに繋げることができると思います。
永井:ここ(ZV-E10 II)から初めていただいて、もっと背景ボケが欲しいと感じたら(フルサイズ機の)「ZV-E1」や「α7C II」といったところに行っても良いですし、「自分の撮影にはファインダーが必要だ」と感じていただいたら、「α7 IV」や「α7S III」のような所謂ハイブリッドカメラに。
自分の戦う場はポストプロダクションも大事だと感じていただいたら、(Cinema Lineの)「FX3」「FX30」に移っていっていただくのも良いと思います。
そういった意味で、始まりはこの「ZV-E10 II」が今はすごく良い機種になっていると思います。一通りカメラの楽しみ方は全てできるようなオールラウンダー性を備えていますので。
そんな両氏からイチオシのZV-E10 II。しかし、これまで前機種のZV-E10を使用していたり、フルサイズ機で悩んでいるという人や、そもそもどういった基準で動画撮影用のカメラを選べば良いかと思っている人も少なくないだろう。
ここから先は、動画機を選ぶ際に確認するポイントや、シリーズによる違い、似かよったスペックの機種を比べるときのポイントなどについて取り上げている。目次なども活用しつつ、気になるポイントを確認していただきたい。
解像度が高い「高画素機」は動画に向いていないの?
動画用にカメラを購入しようと考えたときに気になる要素の1つ「解像度」。4K撮影は当たり前となったが、8Kでの撮影や、4K撮影でも6K、7Kで撮影して4Kにダウンサイジングする「オーバーサンプリング」といった機能を見ると、ついつい「画素数が多ければ、綺麗に撮れて良いんだよね!?」と思って「6,000万画素」「5,000万画素」の機種に注目してしまうかもしれない。なんなら筆者も最初の一眼レフを買うときにそう思っていた。
一方で、動画向けの機種を検索してみると、YouTubeや記事で紹介されている機種は大体画素数が低いものが多い。ソニー製品で言えば、VLOGCAM最上位の「ZV-E1」(ボディのみ実売328,900円)や、動画機としてよく名前が挙がる「α7S III」(ボディのみ526,900円)、もっとプロ寄りのCinema Line「FX3」(ボディのみ実売581,900円)も約1,210万画素。
動画向けや静止画/動画がともに撮りやすいとされている「ZV-E10 II」は約2,600万画素。ベーシック機という位置づけの「α7C II」(ボディのみ実売328,900円)と「α7 IV」(ボディのみ実売383,900円)はこの中では少し多めの約3,300万画素だ。
「YouTubeで実際に動画撮影している人が良いって言ってるんだから、画素数低い方が向いてるんじゃないか?」「では高画素機は何なの!?」「どの機種もほとんど同じような撮影機能が使えるのに『動画向け』という機種が出てくる理由は何!?」と様々な疑問が浮かぶので、まずは率直にこの解像度と動画の関係について聞いてみた。
永井:高画素機が動画撮影に向いていないか、という話ですとそういう訳ではありません。例えば4K動画の場合、高画素からのオーバーサンプリングによる撮影の方が高精細に撮影ができますので、「高解像度・高精細な撮影を行ないたい」という方には高画素機が必要になります。5,000万画素を超える超高画素機では、8K動画を撮影できる機種もあります。
では、低画素機が動画向けとされる理由ですが、これは幅広いシチュエーションで撮影できる点にあります。スペックの「ISO感度」に注目してほしいのですが、高画素機の「α7R V」が常用最大32000となっている一方で、α7S IIIやZV-E1は常用最大102400と数字が大きくなっています。ISO感度は数値を上げるほど明るく撮影できるのですが、数値を挙げるほどノイズが出てきてしまいます。
高画素機は映像を構成するドット数が多い分、そのノイズも目立ってしまうという弱点があります。一方で低画素機はこのISO感度の数値をある程度挙げてもノイズが目立ちにくいため、暗い場所でも安定して撮影が行なえるんですね。とくに、プロの現場では色にもこだわることが多く、編集時に色を調整するために、明るい場所から暗い場所までダイナミックレンジを広く撮影するLog撮影という方法を取るのですが、この撮影にもISO感度を高く設定して暗い場所も黒つぶれせずに撮影できる低画素機の方が有利になってきます。
動画ではとくに、本来明るさを調整する要素であるシャッター速度、絞りは映像の統一感のために固定で撮影されます。そうなると、明るさのコントロールは必然的にISO感度の調整で行なうことになります。ですので、ISO感度を幅広く設定できる低画素機が「幅広い条件下で便利に撮影できる」という点で有利になってくるため、よくオススメの動画機として取り上げられるわけですね。
Cinema Lineシリーズもほぼ全て高感度機ですね。この場にあるFX3とFX30の場合は、FX30の方が感度としては落ちるものの、画素数はFX3の倍以上あるので、6Kで撮影してからの4Kダウンサンプリングで撮影できるので、FX3のサブ機として持って、高精細な絵を撮りたいタイミングなどで使い分けることができます。
- 幅広い条件で便利に撮影できる低画素/高感度機が一般的に「動画向けの機種」と呼ばれている
- 8K動画など高精細な動画を撮りたい:α7Rシリーズなどの高画素機
- 様々な環境で動画撮影に特化したい:ZV-E1やFX3、α7S IIIなどの低画素/高感度機
- 4K動画を少し高精細に、静止画も撮りたい:α7シリーズ、ZV-E10 IIなど画素数/感度のバランスが良い機種
【画素数と動画撮影の関係】
実は明確な区分けがあった「VLOGCAM」「α」「Cinema Line」
デジタルカメラでは、VLOGCAMシリーズ、αシリーズ、Cinema Lineシリーズの一部をコンシューマー向けとして展開しているソニー。シリーズを跨いでいる機種も存在していて、「結局このカメラはどういった立ち位置なの?」「これはライト層向け? プロ向け? 自分にも扱える?」と困惑してしまうこともあるだろう。このシリーズ分けがどういった意図で行なわれているのかについて確認してみた。
齋藤:実は、今回この場に用意した製品は全てαシリーズです。「ZV-E1」と「ZV-E10 II」はαシリーズの中のVLOGCAM、「FX3」と「FX30」はCinema Lineの製品ですが、αシリーズでもあるという立ち位置です。
「α」というのが、「高いカメラの技術とイノベーションを通じて、世の中に新たなイメージング体験や、価値を提供し続けるレンズ交換式カメラ」というコンセプトのブランドになっています。このコンセプトに当てはまる機種はαシリーズとなっています。
VLOGCAMの中では、レンズ交換式の「ZV-E10」「ZV-E10 II」「ZV-E1」がαシリーズで、「ZV-1 II」などのコンパクトデジカメタイプはαシリーズではないそうだ。
Cinema Lineでは、シリーズの中では比較的コンパクトな形状の「FX6」とミラーレスカメラの形状に近い「FX3」「FX30」がαシリーズに該当する。明確な理由もあるそうだ。
齋藤:αシリーズには5つの基準を元にした設計思想もありまして、その1つが高画質。画質には妥協せずに良い物を作りましょうということで、センサーや画像処理エンジンに関わる部分です。
次にスピード。これはオートフォーカスの性能の部分で、かなり気合いを入れて制作しているところです。3つ目が機動性。軽くて持ち出しやすいところですね。軽いからこそ、撮影の楽しみを広げられる。
4つ目がスタミナです。バッテリー持ちについても意識して作られています。そして最後に専用設計レンズです。Cinema Lineで映画を撮りたい人も、VLOGCAMで手軽に撮りたい人も、静止画をゴリゴリ撮っていきたい人も同じマウントのレンズが使えるというところ。この5つを兼ね備えているのがαシリーズの共通点ですね。
この思想の話を聴くと、コンデジタイプは専用設計の交換レンズを使わない、大きなCinema Lineの機種は、撮影スタイルが異なることもあり、機動性の部分がαシリーズとは別の設計思想となっているのが伺える。
そんなαシリーズのなかでVLOGCAMとCinema Lineの位置づけはこのようになっているそうだ。
齋藤:VLOGCAMの特徴としては、まず手軽さが挙げられると思います。静止画も動画もこれ1台で完結できるような身軽さを備えています。動画についてはマイク性能にもこだわっていて、映像と音で総合的に動画の質を高めて、ユーザーの皆様に楽しんでいただけるようなコンセプトになっています。
人を問わない設計にもなっていますので、買ってすぐに良い画が撮れるオールインワンのモデルにもなっています。αシリーズから外れてしまいますが、コンパクトデジカメタイプのVLOGCAMもこのコンセプトは同じです。
Cinema Lineは映像制作を軸としたクリエイターの創造力を最大限に引き出す商品というコンセプトで、ルック、オペラビリティ、ワークフローという3つの軸を元にしたシリーズになっています。ルックの部分はシリーズ最上位で映画制作の現場でも使われいる「VENICE」と一環した色味作りをしています。
オペラビリティは、現場のオペレーションに応じた商品展開を意味していて、ミラーレスカメラサイズのFX3/30のほかに、FX6やFX9などミラーレスカメラと比べてボディが大きい代わりに側面のパネルやインターフェイスを使って直感的にセットアップが行なえるといった、使用環境に応じて撮影を止めない工夫が盛り込まれています。
ワークフローは、ルックの部分で取り上げた共通の色味に関わってくるのですが、Cinema Lineの別の機種を組み合わせて撮影しても、共通の色味を持っているため編集の際に手軽に色合わせを行なうことができます。最近はアプリも強化されて、複数台の運用もストレスなく使える環境になってきました。このあたりがCinema Lineの特徴になっています。
手軽なオールインワン機種のVLOGCAMに対して、Cinema Lineは後々の編集まで考えている人や、プロと同じ色で撮影したいといった目標が明確な人に向けたモデルになっている。まとめると、
- 初めて動画のためにミラーレスカメラを購入する人:「VLOGCAM」シリーズ
- 動画だけでなく静止画もガッツリ撮影したい人:α7シリーズなどの機種
- 動画特化かつ撮影したい画やのちの編集のことまで考えている人:「Cinema Line」シリーズ
といった形になりそうだ。コンデジタイプのZV-1からフルサイズミラーレスのZV-E1まで幅広いラインナップを展開しているが、シリーズとしては入り口として入りやすく作られている「VLOGCAM」、これまでの一眼レフユーザーが使いやすい「α」、動画の世界へ一歩踏み込んだ人に向けた「Cinema Line」シリーズという認識で良さそうだ。
スペックよりも「どのように撮影するか」が重要
次は少し踏み込んで、具体的な機種を挙げつつ、カメラ選びで着目するポイントを整理してみる。筆者がカメラ選びでよく「悩ましい」と耳にするのが、「α7C II」と「ZV-E1」の2機種。価格帯も近く、コンパクトなボディ、スペックの面でもよく似ている。
永井:α7C IIとZV-E1は、見た目としても結構似通っている部分があるのですが、これらのαシリーズは「表現を広げていくためのカメラ」という設計思想があります。α7C IIであれば、この小さいボディでファインダーも備えていて、様々なことができる機能性の広さが最大の魅力だと思います。オールインワンのZV-E1と機能性の広がりを持っているα7C IIといったところですかね。
齋藤:分かりやすいスペック面で言うと、α7C IIの方がファインダーを備えて画素数が多く、ZV-E1の方がISO感度と手ブレ補正機能に強みがあるので、α7C IIの方が静止画寄り、ZV-E1の方が動画寄り、といったところが、この2機種を横並びで見たときの違いだと思います。
実際に筆者もα7C IIを愛用しているが、その理由はこの仕事にはまだ静止画を確実に撮影することの優先度が高いからだ。屋内撮影では会場が薄暗いことが多いので、ZV-E1のISO感度が羨ましいのだが、屋外撮影ではファインダーがほぼ必須になり、両者のバランスを見てα7C IIを選んでいる。
だが、ISO感度に強みを持ち、ファインダーも備えているαシリーズの中では唯一無二となっている機種がある。発売から大分期間が経ってしまっている「α7S III」だ。
動画撮影をしたいという人の中には「ZV-E1とα7S IIIで悩んでいる」という声も耳にすることもある。一方でα7S IIIに近い価格帯で見てみると、Cinema LineのFX3も選択肢に入ってくる。このα7S IIIとZV-E1、FX3の3機種の関係性と、現在のラインナップでα7S IIIを選択肢に入れるべきかも突っ込んで聞いてみた。
齋藤:インターフェイス面で言うと、α7S IIIにはファインダーが搭載されて従来の一眼レフ機のインターフェイスになっていますが、ZV-E1とFX3はファインダー非搭載で非常にコンパクトなボディになっています。とくにFX3は冷却ファンの搭載や、アクセサリーの拡張性など、より動画に特化したような作りになっていますが、VLOGCAMで動画撮影を始めた人がステップアップした際にはわかりやすいインターフェイスになっています。
永井:スペック面ではかなり近しい3機種ですが、ZV-E1のコンセプトが「小さい中に良い画を」に対して、FX3は「こだわりの画を」と映像制作に寄り添ったものになっています。そしてこの2機種がある中で「今α7S IIIも選択肢に入るか」という質問に対しての私の回答は「非常にあり」だと思っています。
その理由がやはりこのセンターにあるファインダースタイルです。似たような事例で、α7C IIの発売後にもα7 IVを選んでいただいている方が多くいらっしゃる理由にもなっていると思います。α7S IIIは動画性能も安定しているISO感度に強みを持ちながら、静止画でもおろそかにできない現場であったりとか、撮影シーンにきちんと対応できます。そこはやはり、同じ画素数、ISO感度のセンサーでもボディの形が違うところの最大のメリットだと思っています。
ですので「撮影スタイルに合わせて選んでいただく」ということが、我々としてはお伝えしたいところになりますね。
スペック面よりも、撮影スタイルに合わせた使いやすさというポイントが第1と考えた場合、α7S IIIという選択肢はまだ十分にありそうだ。センターファインダーが付いた形状で、低画素/高感度のセンサーを搭載したαシリーズの中では唯一無二の機種なので、筆者にとっても後継機を待ち望んでいる機種だ。
撮影時間も重要だけど、問題は熱停止。Cinema Lineは冷却ファン搭載
撮影のスタイルで言うと、実際に撮影できる時間も重要だ。今回取り上げている機種は全て「NP-FZ100」所謂Zバッテリーを使用しており、スペック上の実動画撮影時間は以下の通り。
- ZV-E10 II:約130分
- ZV-E1:約95分
- α7C II:ファインダー使用時約100分、液晶モニター使用時約105分
- α7 IV:ファインダー使用時約100分、液晶モニター使用時約110分
- α7S III:ファインダー使用時約80分、液晶モニター使用時約95分
- FX3:約95分
- FX30:約115分
【実動画撮影時間 ※バッテリー使用時】
だが、4Kで長時間動画を撮影しているとよく問題になるのが熱によるカメラの動作停止。メニューにある「自動電源OFF温度」を「高」にするなどある程度設定することもできるのだが、Cinema LineのFX3とFX30の場合、ボディに冷却ファンが搭載されていて、より安定して長時間撮影できるようになっている。
以前、旅行先でZV-E1とα7C IIで設定を同じ条件にして、2カメラ体制に4K撮影を行なっていたところ、ZV-E1が途中発熱で停止してしまい、その後の全てをα7C II1台で撮影することになった、という出来事があった。意外だったのは、これが冬の出来事だったことだ。
筆者はそれよりも前に、真夏の炎天下でα7 IVの本体がもの凄く熱い状態になったままでも4K撮影が行なえていたし、α7C IIでも熱による停止が起きたことがなかったので、体験ベースでの話にはなるが、VLOGCAMよりかはα7シリーズの方が熱に強そうだ。
とはいえ、おそらく何も考えずに長時間回しっぱなしにしてしまえば、α7シリーズも止まってしまうとは思うので、本当に長時間撮影を頻繁に行なうのであればCinema Lineがオススメだ。
50万円からの業務用カムコーダーは動画機の選択肢に入る?
ここまでコンシューマー向けとされているカメラを話題に挙げてきたが、その中でもステップアップとしてα7S IIIやFX3を選択肢として考えている人の場合、その価格帯に近いプロ向けの機種が9月に登場した。
ハンディカムコーダーのXDCAM「PXW-Z200」(実売649,000円)とNXCAM「HXR-NX800」(実売506,000円)だ。
この2機種、業務用ながら家電量販店でも取り扱いがあり、FX3やFX30のようなCinema Lineと同じように実は動画機として使いやすかったり、外ロケするYouTuberなどには合っていたりするのでは? と思い、この2機種の特徴や、αシリーズとの使い勝手の違いについても聞いてみた。
齋藤:まず簡単に特徴をまとめると、レンズ交換式ではない20倍ズームのカメラになっています。インターフェイス面でも(ミラーレスとは)かなり大きな違いがあって、設定の深い階層まで潜らないと設定できない項目が、ボディの側面に配置されたボタンやダイヤルで直感的に操作できます。例えば、食レポや街ブラロケのようなときに室内と屋外を行ったり来たりするような場面で素早く明るさを調整できます。オートND機能でカメラに任せてしまえるのも強みですね。
(YouTuberであれば)旅動画を撮るような方で、常にカメラマンがいらっしゃるという場面ですと、大きなバッテリーも用意していますので、もしかするとこちらが向いている可能性はあるかもしれないです。
画としては、1型センサーになっていますので、被写界深度の深い、全体がパキッとした画が得意です。背景をぼかしたり、エモーショナルな作品寄りの画作りはレンズ交換式のカメラがオススメですね。
テレビ局のカメラマンではなく、ディレクターの方が直接撮らなければという場面で、あまりカメラを普段触っていない方でも直感的に操作できるような設計ですので、個人の方に「買わないでください」という気は全くないですし、用途に合う人には広く使っていただきたいです。
結論は「テレビ番組のような外ロケをしたい人にはひょっとしたら使いやすい機種かも」というところだ。筆者もバッテリーを交換しながら1日中カメラを回しっぱなしにして歩き回った経験があるのだが、同じことをするのであれば、ハンディカムコーダーを使いたいと思った。
ちなみに2機種の違いは、上位に当たるPXW-Z200のみ、SDI端子とTC端子を搭載しており、今後のアップデートでMXFファイルにも対応することで、それ以外のスペックは共通。SDI端子もバリバリ使っているといった「それはもう業務系の領域なのでは?」というゴリゴリのYouTuberでなければオススメはHXR-NX800だ。