BRAVIAのTwitter連動機能でサッカー観戦してみる
-可能性と不満点。夏以降にはニコニコ実況も
ソニーは、発売中の液晶テレビ「BRAVIA」新シリーズにおいて、SkypeやTwitter、Facebookなど、ネットワークサービスへの対応を強化している。これらのサービスに共通する点は、テレビを見ながら利用でき、他者とコミュニケーションができる事。実際に使うとテレビの楽しみ方はどう変化するのか? 6月7日に行なわれた、サッカー・キリンカップの日本 VS チェコ戦をメインに体験してみた。
既報の通り、BRAVIAの新シリーズは4月のアップデートにより、SkypeとTwitter、Facebookに対応。さらに、スマートフォンのアプリをテレビリモコンとして使える「Media Remote」、PCのキーボードをテレビのキーボードとして使えるようにする「VAIO Remote Keyboard」、さらに、接続したAVアンプなどをテレビから制御する「オーディオ機器コントロール」にも対応している。
KDL-46NX720 |
今回はこの中から、46型の「46NX720」を用意した。
■Twitterでつぶやきながらサッカーを楽しむ
BRAVIAのネットワークサービスには、大きく分けて2つの種類がある。1つは「ネットチャンネル」と呼ばれるもので、インターネットを使った映像配信などが楽しめるもの。メインメニューからネットチャンネルを選ぶと「“キュリオシティ”ビデオオンデマンド」や、YouTube、DMM.TV、ベルリンフィル・ハーモニー管弦楽団のコンサートが配信される「デジタル・コンサートホール」などが選べる。その名のとおり、ネットの動画配信を、テレビのチャンネルの1つとしてとらえた機能だ。
もう1つが、今回紹介する「アプリキャスト」という機能。「アプリ」という言葉でわかるとおり、スマートフォンのように、様々なアプリをユーザーがインストールし、テレビを使いやすくカスタマイズできる機能だ。そして、その中の1つのアプリとして、TwitterやFacebookが登場したというわけだ。
「アプリキャスト」はメインメニューから選択する。メニューの動きは高速で、アイコンのスクロールが引っかかるような事はなく、ストレスの少ない操作が可能だ。アプリキャストメニューに移動すると、既にインストールされているアプリが上下にズラっと並ぶ。このうち、どれかを選択すると、アプリキャスト表示画面に移動。左側にテレビ画面、右にアプリが並ぶレイアウトとなる。PCのウィジェットと似た配置だ。
新しいアプリのインストールは、「アプリカタログ」から行なう。「おすすめ」、「ニュース」、「天気/占い」、「トレンド」、「ショッピング」といったジャンル分けがなされており、TwitterとFacebookもこの中にある。「投稿アプリ」を選べば、他のユーザーなどが作ったアプリも表示され、インストールできる。東京電力の電力使用量を表示するアプリも登録されていた。
新しいアプリのインストールは、「アプリカタログ」から行なう | ジャンル別にアプリが登録されている | ユーザーが作ったアプリもダウンロードできる |
インストールは簡単で、アプリを選択して説明画面を表示させ、「このアプリを表示」ボタンを押すだけ。瞬時にインストールされ、右側に表示されるようになる。
TwitterやFacebookのアプリが用意されている | アプリの説明画面 | すぐにアプリが表示される |
Twitterの場合、通常の表示モードは小さな画面にタイムラインのツイートを1つずつ表示するだけだが、Twitterアプリをリモコンで選択し、決定ボタンを押すと、右側いっぱいに表示させる事もできる。タイムラインの表示だけでなく、キーワード検索や自分宛のツイートのみを表示させる事も可能だ。
これで自分用のタイムラインを確認しながらテレビが楽しめるわけだが、テレビで表示しているので、どうせならば同じ番組を見ている人とコミュニケーションしたい。そういう時はTwitter側の機能であるハッシュタグを使うと便利だ。番組や放送局などには、多くの場合ハッシュタグが用意されており、ツイートの中に例えば「#nhk」や「#tbs」といった文字を含めておくことで、そのタグを検索すれば、放送局や番組に関するツイートだけを抽出して一覧表示できる。
サッカー・キリンカップの日本 VS チェコ戦を観戦してみる | タイムラインを表示しているところ | ハッシュタグでサッカー放送に関するツイートのみを表示 |
番組やイベントごとにハッシュタグが用意されている事もある。例えば日本代表戦なら「#JPN」、BRAVIAを使ってサッカーを楽しんでいる人向けには「#bravia_football」といった具合だ。これを検索窓に入力・検索すれば、同じ番組・試合を観ている人のつぶやきを読めたり、コミュニケーションができる。
ハッシュタグの検索をしているところ |
実際にサッカーの日本代表戦を見ながら、ハッシュタグの検索結果を表示させていたが、これがなかなか面白い。普通のテレビならば試合の画面と、解説者のコメントを聞きながら観戦するだけだが、それにTwitterが加わり、「もっと前に出てプレッシャーかけないと」とか「○○を◯◯に交代した方が良い」など、サッカーに詳しい視聴者の意見や反応も楽しめる。そういった意見や感想に対して、自分もコメントを書き込めば、テレビの前に一人でいても、隣に誰かいるような気分で楽しめるのが最大の魅力と言えるだろう。
また、今回のキリンカップでは、ソニー側の企画として、解説者のセルジオ越後さんがハッシュタグを付けてつぶやいてくれる試みも行なわれた。選手のコンディションを見抜いてのコメントや、「本田がボールに触るプレーはしてるけど、背中を向けたプレーが多くて相手を脅かすプレーにはなってない」など、流石に濃い解説ツイートが連続。声での解説は一過性で聞き逃したらそれまでだが、文章の解説を横目で見ながら観戦するというのは新鮮で、独特の面白さがある。サッカーは特に展開が早いので、サッカーに詳しくない人にも嬉しい機能と言えるだろう。
将来的にTwitterがもっと広がっていけば、例えば試合が終わった後で選手がTwitter上に登場し、ユーザーが直接「おめでとう」と賞賛を送れる……なんて事も珍しくなくなるかもしれない。
■気になる点も
テレビの楽しみ方の幅を広げる面白い機能だが、使っていると不満点も出てくる。1つはタイムラインの更新頻度。約1分でリロードするようになっているのだが、この間隔が変更できないのだ。サッカーのように秒単位で状況が変化するスポーツだと、例えばゴール前のクロスプレーなどで「危ない!!」、「もう少しでゴールだったのに」と盛り上がる瞬間があったとして、それらのコメントが表示されるのが1分後になってしまうのだ。
1分後ではたいてい、キーパーが中央にボールを蹴り戻して「さー次はどうやって攻めようか」とクールダウンしている頃なので、その時に盛り上がっているコメントが表示されるとタイミングのズレを感じてしまう。頻繁なリロードはTwitterのサーバー側に負担をかけてしまうと思われるが、番組ごとにユーザーが設定できる幅は持たせて欲しい。
また、更新されたタイムラインの表示方法にも工夫が欲しい。現在は新しいコメントが上から順に表示されているのだが、1分間隔の更新では、1画面に収まる以上のツイートが読み込まれるので、読み込んだツイートを全部読むためにはリモコンでタイムラインを下にスクロールさせなければならない。操作的に面倒だし、操作することで意識がTwitterにとられて、肝心のサッカーが目に入らなくなってしまう。
読み込む頻度は1分に1回にしても、取得したコメントを、古い方から順番に1つずつ表示し、下に流していく“見せ方”をして欲しい。そうすれば、テレビ画面の右にちょっと視線を動かせば、最新のコメントが確認でき、リモコンも触らなくて済む。更新頻度の遅さも、それほど気にならなくなるだろう。
また、前述のハッシュタグの入力もより便利になって欲しい。例えば、表示しているテレビ局をBRAVIA側が判断し、その放送局や番組のハッシュタグの候補をいくつか自動で提示し、ユーザーによる入力の手間を省いてほしい。今現在では、ハッシュタグをユーザー側が予備知識として持っていたり、PCなど、別のデバイスで検索してから入力するという手間がかかってしまう。
ツイートが多く、盛り上がっているハッシュタグを提示するような機能も欲しいところ。このあたりの作り込みは、PlayStation用地デジチューナ「torne」の方が数歩先に進んでいると感じる。アプリであればバージョンアップは行なえるため、今後の強化に期待したい。なお、既報の通り、DM機能が13日の15時で提供終了となっているが、その他の機能は引き続き利用できる。
■コミュニケーションに便利なMedia Remote
テレビのリモコンからでは、ハッシュタグの入力だけでも面倒だ |
ところで、ハッシュタグやツイートの入力を、テレビのリモコンで行なうのはかなり面倒くさい。そこで便利なのが「Media Remote」機能だ。これはiPhone/iPod touch/iPad用アプリとしてソニーが無償提供しているもので、スマートフォンをリモコン化し、無線LAN経由でBRAVIAやソニーのBDレコーダを操作できるようにするもの。再生、停止、早送りなどの基本操作に加え、タッチパネルを活かし、カーソルキー操作もできる。そして、文字入力もスマートフォンから行なえる。
テレビ側でハッシュタグ入力、ツイート入力など、文字入力画面になると、Media Remote側でソフトウェアキーボードを呼び出せるようになる。これで、iPhoneの使い慣れたキーボードで文字入力ができる。他のリモコン機能も備えているため、iPhoneやiPadだけを手にテレビを楽しむ事も可能だ。「スマートフォンやiPadでそのままTwitterを見れば良いのでは?」という意見もあると思うが、テレビ画面と同じ視線のまま、コメントを確認できるのが最大の強みとなるだろう。
スマートフォンが無い場合や、PCに慣れているという人には、PC VAIOのキーボードを入力に使える「VAIO Remote Keyboard」も用意されている。
アプリ「Media Remote」を使い、同じLAN内にあるBRAVIAにiPhoneを登録。アプリからBRAVIAを操作できるようになる | 文字入力もiPhoneから可能 |
■ほかにもあるネットワーク機能
Facebookも使い方はTwitterと同様。自分のIDとパスワードを入力するえば、自分のニュースフィードなどがテレビ画面上で確認できる。Twitterのように右画面いっぱいに表示する事も可能だ。
また、別売のカメラ・マイクユニット「CMU-BR100」を接続する事で、Skypeにも対応する。IDとパスワードを入力すれば、専用画面が表示され、PCと同様のコンタクトリストなどが表示される。ここからユーザーを選び、通話できる。相手はテレビだけでなく、もちろんPCやスマートフォンからSkypeにログインしているユーザーとも会話可能。また、IDとパスを登録しておけば、テレビの電源をONにすると自動的にSkypeにログインする事もできる。
Facebookアプリも用意されている | 別売のカメラ・マイクユニット「CMU-BR100」 | Skypeのコンタクトリストを画面右に表示したところ |
テレビ視聴中に着信があると、画面右下からポップアップウインドウが表示され、ビデオ通話か音声通話を選んで会話できる。「CMU-BR100」にはカメラも内蔵されているので、自分の姿を相手に届ける事も可能。相手もカメラを使っていれば、顔を見ながらのビデオ通話ができる。この場合は画面に相手の顔と、自分の顔が両方表示されるため、テレビ番組を見る事はできない。相手の顔を全画面表示する事も可能だ。
相手の顔を見ながらの通話も可能だ | YouTubeも閲覧できる |
YouTubeも快適に操作・表示できる。ネットチャンネルから「YouTube」を選ぶとアクセスでき、IDでのログインもできるほか、キーワード検索や、人気のあるビデオのランキングなども確認できる。操作のレスポンス、検索結果の表示も高速で、サクサクと動画が閲覧できる。ストリーミング再生なので、早送りや巻き戻しなどは流石にワンテンポ遅れるが、通信回線が高速ならば、それを活かした快適な視聴ができるだろう。
残念なのは、720pや1080pのコンテンツであっても、BRAVIAから再生するとSD解像度の映像が表示されてしまう事。サイズの小さなテレビであればSD解像度の動画でもさほど気にならないだろうが、46インチなどの大型画面で引き伸ばして再生すると、ブロックノイズが目立ってしまう。こちらの機能強化にも期待したい。
また、今後の展開として、2011年夏以降に「アプリキャスト」において、ニコニコ実況用アプリの追加も予定されている。テレビ番組と実況中継コメントを1つの大画面で、リアルタイムに共有できるもので、さらにテレビの楽しみ方が広がりそうだ。
(2011年 6月 17日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]