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ゲーム機の音も激変! 小さな最強BluetoothレシーバーDACアンプ「AK HB1」を聴く
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2023年12月12日 08:00
最近は完全ワイヤレスイヤフォン(TWS)が定番だが、「音にちょっと不満がある」とか「気に入ってる有線イヤフォンを活用したいなぁ」とか、「落下が心配だからTWSはちょっと……」という人も多いだろう。
その一方で、“家で過ごす時間の充実”にこだわる人も増加。自宅でのパソコン作業やゲームをする時に、それらをもっと良い音で楽しみたい! と考える人も増えている。
そんなニーズを一度に、しかもコンパクトに叶えてしまう注目製品が登場した。Astell&Kernの「AK HB1」だ。
見てわかる通り、非常に小さい。消しゴムより一回り大きいくらいのサイズ感だが、この中に、Bluetoothレシーバー、USB DAC、高出力なヘッドフォンアンプ、さらにイヤフォン出力として3.5mmアンバランスと4.4mmバランス(5極GND結線)までギュッと詰め込んでいる。
「Astell&Kernって、何十万円もするポータブルプレーヤーのブランドだからお高いんでしょう?」と思いきや、AK HB1は39,980円と、DAPと比べて手に届きやすい価格なのも、注目の理由だ。実際にどんなサウンドなのか、使ってみた。
コンパクトかつ驚きの軽さ
詳しい話の前に、まずは実機を見ていこう。
“消しゴムより少し大きい”と書いたが、外形寸法は39.8×16.5×68.4mm(幅×奥行き×高さ)。ジャケットのポケットはもちろん、ワイシャツの胸ポケットにも楽に入るコンパクトさだ。
特筆すべき点はそこだけでなく、軽さにも驚く。重量は約40gで、指先でひょいと持ち上げられる。DAPだと、高級機はやたらと重くて、持ち歩くにも苦労するが、AK HB1はまったく苦にならない。苦にならないどころか、1週間ほど使っているのだが、あまりに軽いので、ジャケットのポケットに入れている事自体を忘れて、「あれ? 俺、どこかに置いてきた?」と一瞬ドキッとして、ポケットに手をやり「あ、入ってた!」と安心する事が2回ほどあった。
確かに、重くて大きい方が“重厚感”とか“存在感”はあるのだが、ポータブル機器としては“気軽に持ち歩けること”が正義だ。「気がついたらポケットに入っていた」くらいの気軽さが、AK HB1の大きな魅力と言えるだろう。
さらにAK HB1の良いところは、小さくて軽いが“カッコいい”ところだ。シンプルな直方体だが、モダンなカラーリングと細部の意匠により、高級感がある。安藤忠雄氏による建築「光の教会」からインスピレーションを得てデザインしたそうだ。右側面に搭載しているボリュームノブが、オーディオ機器である事をしっかり主張しているのも良い。
ボリュームノブを回した時のカリカリという精密な動きも、気持ちが良い。アルミニウムとラバー素材を組み合わせることで、グリップ力を向上させているそうだ。
ボタン類は右側面にまとめられており、横一列に電源ボタン、Bluetoothのペアリングボタン、再生の操作などをするメディアボタンの3つが並ぶ。そのボタンとボタンの間に小さなLEDを搭載しており、その光り方で動作状況などをユーザーに伝えてくれる。
底面にUSB-Cを搭載し、USB経由での充電や、USB DACとしてPCやスマートフォンと接続する時に使用する。
反対側の上面には3.5mmのアンバランス出力、4.4mmのバランス出力を備える。コンパクトな製品では、どちらかの出力しか備えていない事が多いので、このコンパクトさで両方搭載しているのは凄い。
Bluetoothレシーバー機能をチェック
多機能な製品だが、まずはベーシックなBluetoothレシーバーとしての仕様と使い心地を見ていこう。
内部にQualcommのBluetoothチップセット「CSR8675」を搭載しており、スマートフォンなどとワイヤレスで接続し、Bluetoothで送信された音楽を、AK HB1で受信。前述の3.5mmアンバランス、もしくは4.4mmバランスで出力し、イヤフォン/ヘッドフォンで聴くことができる。つまり、手持ちの有線イヤフォン/ヘッドフォンを、ワイヤレス化できる製品というわけだ。
Bluetooth接続で気になるのは音の情報量だが、コーデックはSBC、AACに加え、48kHz/24bitに対応したaptX HDや、96kHz/24bitをサポートするLDACにも対応している。
DACチップは、ESSの新世代チップ「ES9281AC PRO」を搭載。これに、DAPで培ったAstell&Kern(AK)のノイズコントロール技術を組み合わせ、クリアなHi-Fiサウンドを実現したという。
AKらしいこだわりは、ここだけではない。ワイヤレス製品では、DACチップに内蔵したアンプ回路をそのまま使っている製品も少なくないが、AK HB1はあえてこれを使わず、独自のアンプ回路を導入。
これが、3.5mmアンバランスと4.4mmバランスのデュアル出力を実現できた理由だという。
さらにこのアンプ回路はアウトプットレベル(無負荷)もパワフルで、アンバランスで2Vrms、バランスでは4Vrmsの高出力を実現。独自のパワーマネージメント技術で、接続機器に対する消費電流を最小限に抑える工夫も、この出力向上に寄与しているそうだ。
内部には、超小型抵抗やコンデンサーが使われているほか、AKのDAPでも使われている超小型タンタルコンデンサーも投入。電源変動を抑える事で、システムを安定させ、オーディオ性能を高める効果もあるそうだ。
機能面では、Bluetoothマルチポイントもサポートし、最大2台のデバイスと同時接続できる。スマホで通話を受けながら、タブレットからの音楽を流すというような使い方もできる。
600mAhのリチウムポリマーバッテリーを内蔵。再生時間は約6時間(AAC接続時)、充電所要時間は約1.5時間だ。
USB DACとしても充実の機能
ここまではBluetoothレシーバーとしての機能だが、AK HB1はさらにUSB DACとしても動作する。
底面のUSB-Cに、パソコンやスマホなどを接続し、前述のDACチップや高音質回路を活用して、それらの機器の音を高音質で出力できるわけだ。接続相手の対応OSは、Windows 10、11、macOS X 10.7以上、Android、iOS。
USB DAC接続時は、PCM 384kHz/32bit、DSD256(11.2MHz)までのネイティブ再生に対応するなど、コンパクトながらハイスペック。MQA 8Xレンダラー機能を搭載しており、MQA音源の再生もできる。なお、Windowsと接続する場合は、USB-DACドライバーのインストールが必要だ。
パソコンなどと常時接続している時に便利な「スマート充電システム」もある。
AK HB1は、USB接続した機器を自動的に認識し、自動で充電プロセスを効率化する機能を備えているが、ユーザーが充電モードをオン/オフすることもできる。モードをオンにすると、再生機器側のバッテリーを使用してAK HB1のバッテリーを充電する。オフにすると、外部機器からの充電はせず、AK HB1のバッテリーのみで動作する。
何が便利かというと、充電モードをオンにしておくと、USB DACとして音を出しながら、AK HB1を充電できる。つまり、AK HB1のバッテリー残量を気にせず使えるというわけだ。切り替えは、電源がオンの状態で電源ボタンを2回短く押す。もしくは「AK Control」アプリから切替可能だ。
AK HB1が接続できる相手は、他にもある。それがゲーム機だ。
実は、最新のスマホやタブレット、PCはUAC(USB Audio Class)2.0接続をサポートしているが、ゲーム機の多くはUAC 1.0接続しかできないものが多い。
AK HB1は、UAC 2.0とUAC 1.0の切替機能を搭載しているので、UAC 1.0に切り替える事で、PlayStationやNintendo Switchなどとも接続できるのだ。
なお、切り替えはスマホ用アプリ「AK Control」から行なう。切り替えだけでなく、バッテリー残量、接続しているBluetoothコーデックの表示、音量調整、前述した充電モードの切り替え、イコライザー設定、車のイグニッションに応じて電源が自動的にオン/オフになるカーモード設定も可能だ。
パソコンやスマホとの接続には、付属の着脱式USBケーブルを使う。付属のショートケーブルは、接続機器側がUSB-CとLightningの2本だ。
ケーブルにも工夫がある。銅芯線に錫コーティングを施し、腐食防止と引張力の強化で耐久性を高めた。さらに、ケーブル全体をアルミフィルムで包んだ。このようにデュアルでノイズを抑える事で、より鮮明なサウンドになるという。
利便性の面では、USBプラグ&プレイ機能をサポート。Bluetooth接続とUSBケーブル接続の間の移行を簡単にするもので、USBケーブルを接続してUSB DACとして使いつつ、Bluetooth接続したスマホのアプリ設定や機能のコントロールが可能。
さらにBluetoothプライオリティモードを有効にすると、USB-DAC機能を使用中にBluetooth信号を受信した場合、シームレスにBluetoothモードに切り替わる。カフェや職場でノートPCとUSB接続して音楽を楽しみ、席を立つ時にスマホからの音楽に切り替えて……なんて使い方が、スムーズにできるわけだ。
筐体下部にはマイクも内蔵し、KnowlesのMEMSマイクとQualcomm cVc Generation 8.0コールソリューションも採用。クリアな音声通話も可能だ。USB-DAC動作時は、3.5mm 4極インラインマイク入力にも対応しているので、マイクを備えた有線イヤフォンでの通話もできる。ゲームプレイ時に、友達とボイスチャットする時などに便利だろう。
Bluetooth接続で音を聴いてみる
まずはBluetooth接続の音から聴いてみよう。接続相手のスマホは、LDACに対応したGoogle「Pixel 8 Pro」。イヤフォンは、14,300円と手に届きやすい価格ながら、非常にクオリティが高く、ニュートラルなサウンドで最近気に入っているqdcの「SUPERIOR」(スーペリア)をチョイスした。
SUPERIORには、別売でバランス接続用ケーブル「SUPERIOR Cable 4.4」(5,500円)もあるので、バランス出力対応のAK HB1とも相性が良い。ということで、バランスケーブルを使って接続。SUPERIORのフェースプレートは光沢感と奥行きのあるデザインなのだが、モダンなAK HB1と組み合わせると、高級感があってカッコいい。
Amazon Music HDから、「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を再生する。冒頭、ピアノの音が豊かに広がり、音場の広さを感じる。続いてアコースティックベースが入ってくるが、この低域が凄い。「ズーン」と深く沈み、低音にしっかりと重さが感じられる。また、低音の響きも無駄に膨らまず、適度に締まりがある。ベースの弦がブルンブルンと震える細かな音もよく見える。
このような質の高い低音は、実力派のイヤフォンを、駆動力のあるアンプでドライブしないとなかなか聴けない。完全ワイヤレスではなく、有線イヤフォン + AK HB1で聴いてこその醍醐味と言えるだろう。
「米津玄師/KICK BACK」も最高だ。地の底に沈み込むようなベースラインが、深く、迫力があるだけでなく、キレがバツグンに良いので、メチャクチャカッコいい。キレの悪いイヤフォンで聴くと、低音がボンボン膨らむだけでベースラインも何も見えなくなるのだが、SUPERIOR + AK HB1の低音は、重さとキレキレのスピード感が同居しているので、聴いていると体が思わず動いてしまう。地獄の底から低音が吹き出すようなパワー感は、この楽曲の魅力を高めてくれる。
うってかわって、シンプルな女性ボーカルである「手嶌葵/明日への手紙」を聴くと、ピアノとボーカルの描写が繊細で、目を閉じると、口の細やかな動きがまぶたの裏に浮かんでくる。音の響きが、静な空間に波紋のように広がっていく様子もしっかり描写できており、夜の街で深呼吸したような開放感がある。
SUPERIORは、10mm径のフルレンジダイナミック型ドライバーを搭載しており、もともと色付けの少ない、ニュートラルなサウンドが特徴だが、駆動しているAK HB1も、AKらしいニュートラルでワイドレンジなサウンドなので、お互いで魅力を高め合うような関係になっている。
スマホとはLDACで接続しているが、ワイヤレス接続している事による音の劣化などは、ほとんど感じられない。音がナローだったり、音像が薄いという事もなく、ワイドレンジで肉厚なサウンドだ。
音質もさることながら、使っているとボリュームノブの便利さを再認識する。完全ワイヤレスイヤフォンでも、ハウジングをタップしたり、スマホ側のボタンを押せば音量増減は可能だが、やはりボリュームノブを回して増減したほうが、直感的に調整でき、増減幅も細かく、狙ったジャストな音量に合わせやすくて気持ちが良い。ポケットの中にAK HB1を入れていても、手探りでボリュームノブを見つけやすいので、ポケットに入れたまま操作できるのも便利だ。
USB DAC接続してみる。アクティブスピーカーとの接続もアリ
普段使っているノートPCと、USB接続し、Amazon Music HDを聴いてみたが、これも良い。
ノートPC内蔵のイヤフォン出力で聴くと、音場が狭く、音像も薄く、ガチャガチャした音で、あまり音楽を聴く気にならないのだが、AK HB1をUSB DACとして出力した音は、まるで次元が違う。
ワイドレンジかつニュートラルなだけでなく、低域のパワフルさ、音圧の豊かさなどが大幅にアップする。この音なら、喫茶店で少し仕事をする時などに、一緒に音楽を楽しみたいという気分になる。
また、家の中でアクティブスピーカーと組み合わせ、デスクトップオーディオで使うというのもアリだ。USB DACとしての音が良いので、パソコンのイヤフォンジャックとスピーカーを接続するよりも、AK HB1から出力した方が、音の広がり、低域のパワフルさ、分解能など、様々な面でクオリティが大幅にアップする。イヤフォンで聴き比べた時よりも、スピーカーで比較した方が、音の良さはわかりやすいかもしれない。
アクティブスピーカーでは、ボリュームノブが正面に無い製品も存在するのだが、そうした場合、AK HB1側のボリュームで調整しても良いだろう。とっさに手を伸ばして増減できるボリュームノブが机の上にあるのは、やはり便利だ。
Nintendo Switch
もっと違うのがゲーム機の音だ。
前述のようにUAC 1.0に切り替えできるのでNintendo SwitchとUSB接続し、サウンドを出力できるのだが、「スプラトゥーン3」をプレイすると、あまりの音の違いに笑ってしまう。
このゲームでは、地面などにインクを塗って、その中に潜って敵をやりすごし、敵が気がついていないうちに背後から襲う……という“潜伏”というテクニックがある。そのため、自分が敵に襲われないようにするため、インクの中に敵が潜伏している時の「ブクブク……」という音を聞き漏らさない必要がある。つまり、細かな音を聞く事が、勝敗に影響するわけだ。
そのため、いつもはNintendo Switchのイヤフォン端子にSUPERIORを直接接続して聞きながらプレイしていたのだが、SUPERIOR + AK HB1で聞いてみると、衝撃的だ。
まず、バトルが開始する前のロビーで“試し打ち”をしている段階から、音がまったく違う。「バシュバシュ」と自分が発射するインクの音が非常に細かく描写される。自分がインクに潜ったり、インクの上を移動している時の「パシャパシャ」という音も、細かく、生々しく聴こえるので、全体的な“液体感”が鮮烈になる。もう何時間プレイしているのかわからないくらい遊んでいるのに「うわーインクだわ」と、始めてプレイした時のような感想が口から漏れてしまう。
また、このロビーは広大な体育館のような場所で、音が反響するのだが、その反響した音の響きも細かく、クリアに描写されるので、「ロビーってこんなに広かったの!?」という驚きがある。音から得られる情報量の多さを、改めて実感する。
バトルスタート後も、もちろん情報量の多さは武器になる。敵の潜伏ブクブク音がわかりやすいだけでなく、味方がバシャバシャとインクを振りまいている音も聞き取りやすいので「あ、味方が後ろにいてくれるな、ここは強気にバトルできる」なんて判断もしやすい。
また、このゲームはBGMのクオリティが白眉なのだが、その音楽もワイドレンジかつパワフルに描写してくれるので、バトル中の気持ちよさ、テンションの上がり方がまるで違う。これは一度体験すると、本体のイヤフォン端子には戻れなくなる。
オーディオ趣味の入り口としても最適
AK HB1を使っていて感じるのは、“組み合わせの楽しさ”だ。スマホとBluetooth接続して、有線イヤフォンを楽しむだけでもOKなのだが、USB DAC兼ヘッドフォンアンプとして家で使っていると、「これだけの駆動力があるのだから、大きなヘッドフォンと繋いだらもっと良いのでは?」とか「アクティブスピーカーを繋いだら凄いのでは?」、「ゲーム機と接続したら?」と、どんどんやりたい事が増えてきて、いろいろなものと接続してくなってくる。これは、組み合わせによる音の変化を楽しむ、オーディオの醍醐味と言えるだろう。
同時に、「39,980円で、小さなAK HB1でこれだけ面白いのだから、もっとグレードアップしたらどうなるんだろう? という興味も湧いてくる。そこで、スマホとAK HB1をUSB接続したシステムに、AKの“ポータブルなのにA級アンプ”というリッチな仕様のポータブルアンプ「AK PA10」(89,980円)を追加してみた。
USB DACとして動作しているAK HB1のイヤフォン出力を、AK PA10に入力。そしてAK PA10でSUPERIORをドライブするという流れだ。
聴いてみると、AK HB1のサウンドが、さらに強力にグレードアップする。一番凄いのは低域で、「月とてもなく」のアコースティックベースが、さらに深く沈み、地の底から響くような迫力になる。中低域が吹き出す音圧のパワフルさも圧倒的で、非常に気持ちが良い。それでいて、音像の輪郭のキレも良いので、情報量とパワフルさが同居しているのがわかる。「機器を組み合わせると、こんな風にリッチなサウンドになっていくんだ」と体験する事で、オーディオがどんどん面白くなる。趣味の入り口としても、AK HB1は最適だろう。
Bluetoothレシーバーは、“有線イヤフォン資産を有効活用できるデバイス”であり、基本的には屋外で活躍するものだ。しかし、AK HB1はUSB DAC機能も備え、ゲーム機とも接続しやすくなった事で、家の中でも使う機会が多い。1日を通して、フルに良い音を楽しめるデバイスとして、活躍してくれるだろう。