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アンプもケーブルも不要! KEF「LSX II LT」で“ワイヤレス・レコード生活”してみた

アナログレコードの人気再燃ぶりがすさまじい。リアルタイム世代の復帰だけでなく、若い世代も“所有している実感を持てる新しいメディア”として、レコードに惹かれている。だが、「レコードのある暮らしをしてみたい」と思う一方で、「いろんなコンポを買わなきゃいけないのでは?」「部屋をケーブルが這い回るのは嫌だ」と尻込みしている人も多いだろう。

そんな折、編集部から「Bluetoothで手軽にレコード楽しんでみませんか?」と提案が。なんでも、Bluetooth受信ができるアクティブスピーカーと、Bluetooth送信ができるレコードプレーヤーさえあれば、アンプなどを買い足す必要もなく、しかもワイヤレスでレコードが楽しめるというのだ。

「Bluetoothスピーカーでレコードを聴く」と聞くと、「ちゃんとレコードの音は楽しめるの?」と不安になるが、結論から言うと、ワイヤレスでもガチな音でレコードが楽しめた。その中心となるのが、編集部から送られてきたKEFのスピーカー「LSX II LT」(ペア137,500円)。2024年1月に発売されて以来、巷では「デスクトップスピーカーの究極モデル」とも評されている旬の製品だ。

しかもKEFといえば、ピュアオーディオ界隈では有名な伝統のあるブランド。ということで今回は、LSX II LTを自宅にお借りして、手軽なワイヤレスレコード生活を楽しんでみた!

KEF「LSX II LT」

KEFとは?

先ほどから“Bluetoothスピーカー”と書いていたが、このLSX II LT、それどころではない多機能なスピーカーで、コンパクトな筐体にPCと接続するためのUSB入力や、テレビと連携できるHDMI ARC端子を備え、スピーカー単体でAmazon MusicやSpotifyなどの音楽配信サービスも再生できる。そのスペック、トレンドすぎる。こうした機能の1つとして、Bluetooth接続もできるわけだ。

LSX II LTの背面端子部。USB入力やHDMI ARCなども備えている

開発したKEFは、1961年に英国で創業したブランド。「伝統と革新」という言葉で表されることが多く、創業者は、英国の公共放送BBCで電気技師をしていたレイモンド・クック氏。当時の新しい素材や技術を駆使して、オリジナル演奏と同じくらい自然な音を再現できるスピーカーを目指して制作を開始した。

レイモンド・クック氏

瞬く間にKEFはモニタースピーカーで高評価を獲得し、コンシューマー向けにもスピーカーも手掛けるように。1988年には、オーディオファンに大きなインパクトを与えた同軸ドライバー「Uni-Q」を生み出し、このLSX II LTにもUni-Qドライバーが搭載されている。現在ではペアで2,310万円もする超弩級スピーカーまでラインナップしている。平たく言うと、ガチなピュアオーディオメーカーが作った“手に届くスピーカー”が、今回取り上げるLSX II LTなのだ。

ペアで2,310万円の超弩級スピーカー「MUON」

トレンド感と手軽さを両立するスピーカー「LSX II LT」

外観を見ていこう。240×155×180mmのコンパクトなボディにアンプも内蔵。背面には前述のように豊富な入力端子を用意し、サブウーファー出力まで搭載している。

前面のスピーカーユニットは、トレードマークのUni-Qドライバー(第11世代)。1個のユニットに見えるが、19mmアルミニウムドームツイーターと、115mmマグネシウム/アルミニウム合金製ウーファーの2つが、同軸上に配置されている。同軸2ウェイユニットだ。

同軸ドライバー「Uni-Q」

このユニットは、先行して発売された上位モデル「LSX II」(ペア198,000円)からそのまま受け継いだものだ。上位機のLSX IIも、KEFの製品としては幅広いユーザー層に向けたモデルだが、それをさらに身近にするモデルとしてLSX II LTが誕生したわけだ。

では、さっそく使ってみよう。

レコードプレーヤーとBluetooth接続する場合、LSX II LTに繋げるケーブルの数は基本的に2本だけで良い。左右のスピーカー同士を繋ぐUSBケーブルと、電源ケーブルだけ。上位モデルのLSX IIと異なり、LSX II LTはプライマリ側ユニットのみに電源ケーブルを接続すれば良いので、ケーブルの少ない、スッキリとした設置が可能だ。

正直、ジャケットがオシャレなレコードや、デザインがカッコいいアナログプレーヤーはオシャレに配置したいが、大きなアンプやスピーカーは置きたくないもの。LSX II LTであれば、アンプは不要だし、ケーブルも少なくて済む。主張を抑えたシンプルなデザインなのでインテリアとも馴染みやすい。オシャレにレコードを楽しみたい人に、ドンピシャだ。

スッキリと設置できる
ワイヤレスなので、レコードプレーヤーを別の場所に置いてもOK!

“アナログのBluetoothサウンド”を満喫

ではいよいよ、自宅での使用感をレポートしていこう。今回は、Bluetooth出力に対応しフォノイコライザーも内蔵するレコードプレーヤーとして、ティアック「TN-400BT-X」を用意。天然木目のウォルナット突板オイル仕上げの筐体はカッコいいプレーヤーなのだが、約5.3万円と、本格派プレーヤーとしては手が届きやすい価格を実現しているのも本企画にぴったりだ。

天然木目のウォルナット突板オイル仕上げの筐体
筆者宅ではTN-400BT-Xを、小物を収納している棚の上に設置した。スピーカーの間に置かなくても良いというのが、自由度が高くて新鮮
カートリッジが付属したままの状態でヘッドシェルごと取替可能なユニバーサル式ヘッドシェルなので、カートリッジ交換で音の違いも楽しめる。

自宅でリアルに使って思った結論を先に言ってしまうと、レコードをBluetooth再生する最大のメリットは、“プレーヤーとスピーカーを同じ室内で離して設置できる”こと。これにより、設置性の自由度が格段に広がるので、オーディオ再生を念頭に置いていなかった部屋でもレイアウトしやすい。まさに“レコードの新しい体験”と言える。

最初に再生するレコードは、大滝詠一『A LONG VACATION』と松田聖子『風立ちぬ』。前者は、大滝詠一が1981年3月21日に発表したアルバム『A LONG VACATION』の発売40周年を記念して、2021年3月21日にリリースされた限定ボックス『A LONG VACATION 40th Anniversary Edition』に収録されていた復刻版レコードだ。

ぷちナイアガラーな自分は、当時ちゃんとしたレコード再生環境を持っていないにも関わらず、勢いいさんで「ロンバケ」を購入。ならば『風立ちぬ』のレコードも隣にないとダメだろう……ということで聖子ちゃんも中古で購入したのだった(両盤の関係はぜひググってください)。こういうレコードの買い方をする人が増えているから、レコードブームが来ているのだろうと、我が身を振り返って実感する。

英国の先進的なスピーカーをレビューするのにいきなり日本の昭和感丸出しだが、J-POPとその歴史を愛するオタクがようやく手持ちのレコードに日の目を見せられて喜んだということで、暖かい目で見守っていただけたら嬉しい。

LSX II LTはコンパクトなサイズに反して、締まりがありつつ低域が豊かなのが印象的。大滝詠一「FUN×4」は、冒頭のドラムとベースのリズムから早速キック感が強い。こういう低域の表現には今どき感があって、その中に丸みというか、ベースの弦っぽい“しなり”のようなものもちゃんと感じられる。これがレコードの醍醐味なのか。

そして、層の厚いナイアガラサウンドが目の前に大きく広がるのが気持ち良い。スピーカー再生の大きな魅力だ。

対の関係にある楽曲が松田聖子「いちご畑でつかまえて」だが、こちらも冒頭のリズムとそこに絡まるギターがガッと来てインパクト強め。そこに、フワフワした謎の主旋律を辿るボーカルがふんわりと目の前に現れてきて、めちゃくちゃ良い。本曲で聖子ちゃんの声がまとう不思議な浮遊感までそこにある。たぶん、女性の声と相性が良いスピーカーなのだと思う。

色々聴いた中で特に聴き惚れた楽曲は、そんな聖子ちゃんの「風立ちぬ」だ。もはやアイドルソングの枠を越えていると言って良いクオリティの同曲が放つ、“一種の浮世離れしたオーラのような何か”まで深く味わえた。いやはや改めて、『ロンバケ』と『風立ちぬ』はJ-POP界における最高のシンメだ。

Bluetooth再生なので、厳密にはレコードの音を最大限に味わえるわけではないのだろう。そして、ここで生きてくるのがLSX II LTの地力、つまりKEFが培ってきた高音質設計だ。“アナログのBluetoothサウンド”という絶妙に今どきな音を、厚みのある中低域と、広いサウンドステージにふんわりと浮かぶボーカルという、存分に満喫できるサウンドとして表現する。

モニターにルーツのあるブランドの製品ながら、モニターライクになりすぎず、ノリ良く音楽を楽しめる。この音の傾向は、カジュアルなレコードのワイヤレス再生にぴったり。この音ならば、レコードに興味を持った若者がその魅力を楽しみつつ、利便性も高い、現実的なスタイルとしてアリだと思う。

日常的にWi-Fiスピーカーとして使えるのが最高

しばらくワイヤレスレコード再生を満喫していたが、前述の通り、LSX II LTには他にもいろいろ機能がある。その中でも、Wi-FiスピーカーとしてAmazon Music、Deezer、Spotifyなどの配信サービスに対応しているのが、日常生活において非常に嬉しかった。

朝起きて、寝室からスマートフォンのアプリ「KEF Connect」で操作して、リビングに置いてあるLSX II LTを鳴らすところから1日がスタート。ちなみにこのアプリからEQ調整なんかもできるのが便利だ。外出予定がある日は、そのまま鳴っている音楽を聴きながらメイクする(何となくいつもより捗る気がする)。正直に言うと、この試用中、Wi-FiスピーカーとしてAmazon Musicを再生している時間が最も長かった。

外出予定の無い日は、家事を片付けていざ執筆をする段になったら、Bluetooth入力に切り替えてレコードを再生(筆者はリビングで仕事をしている)。仕事中にレコード再生すると、ちょうど片面の再生が終わってひっくり返すタイミングで立ち上がることでブレイクタイムが生まれ、作業にメリハリが付くのが良い。

小型のスピーカーだが、パワーは十分で、我が家のリビング(17畳LDK)を音で満たすには充分な駆動力だ。筆者宅ではテレビの横スペースに余裕がないため、今回は試していないが、HDMI ARC経由でテレビの音も再生できるし、PCスピーカーとして使用できる。とにかく活躍シーンが多いスピーカーだ。

なお、今回はBluetooth再生によるお手軽なスタイルをメインにレポートしたが、音質優先のレコード環境を望むのであれば、上位モデルであるLSX IIを選ぶのも良い。

LSX II

LSX IIは、LSX II LTで省略されたAUX入力(3.5mm)を備えているので、写真のようなRCA-ステレオミニ(3.5mm)の変換ケーブルを用意すれば、レコードプレーヤーと有線で接続し、さらに音質を追求できる。

また、LSX IIは左右の筐体それぞれに電源ケーブルを接続するタイプで、左右のスピーカー間もワイヤレス接続できるため、例えば大画面テレビの横に設置したい時は、LSX IIの方が魅力と感じる人もいるかも。

ちなみに、音の方向性は似ているLSX II、LSX II LTだが、聴き比べるとLSX IIの方がさらに低域にドッシリ迫力があり、LSX II LTの方が低域はタイトでモニター寄りなサウンドだった。

LSX IIの背面。AUX入力がある
RCA-ステレオミニの変換ケーブル

我が家にLSX II LTがやって来たことで、気軽かつ省スペースでレコードを楽しめるオーディオ環境が実現できた。繰り返しになるが、レコード再生だけでなく、Wi-Fiスピーカーとしても活躍するトレンド感が最高。音楽配信サービスで好きな曲と出会い、そのレコードを買うなんていう新たな楽しみ方のスタイルも生まれそうだ。

LSX II LTやLSX IIをじっくり試聴したい時は

東京・青山にある直営店KEF Music Gallery、及び埼玉・浦和にある伊勢丹浦和店5階のKEFショップでは、今回使ったLSX II LTやLSX IIを実際に見たり、試聴もできるとのこと。試聴予約をすれば、じっくり試聴が可能なので購入を検討している方にはおすすめです。

KEF Music Gallery
https://x.gd/6gww3
伊勢丹浦和KEFショップ
https://x.gd/gp58r

杉浦みな子

オーディオビジュアルや家電にまつわる情報サイトの編集・記者・ライター職を経て、現在はフリーランスで活動中。音楽&映画鑑賞と読書が好きで、自称:事件ルポ評論家、日課は麻雀……と、なかなか趣味が定まらないオタク系ミーハーです。