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Chord「Mojo 2」に待望の4.4mm搭載モデル登場! 据え置き機レベルのサウンドをポケットに
- 提供:
- エミライ
2025年12月12日 10:00
市場にはポータブルDAC兼ヘッドフォンアンプや、USB DACとしても使えるDAPが多数存在し、移り変わりも激しい。だが、その市場で唯一無二の存在感を発揮し続けているのがChordの「Mojo」だ。初代Mojoが日本に上陸したのが2015年、2022年にはサイズ感は同じで音質や機能を高めた「Mojo 2」が登場。それから3年以上経過しているが、そのサウンドと存在感はまだ鮮烈だ。
個人的に、理由は2点あると考えている。1つは、プログラムで制御された高性能FPGAと、同ブランドでデジタル回路設計を担当するロバート・ワッツ氏が考案したWTA(Watts Transient Aligned)フィルターを用いてD/A変換をしていること。つまり、Chordは昨今のトレンドである“ディスクリートDAC”の先駆者と言え、汎用のDACチップを使わないので、DACチップの新旧にされず、製品自体に古さを感じにくいのだ。
2つ目は、据え置きのハイエンドDACやアンプも手掛けるChordの超ワイドレンジで色付けのないサウンドが、手のひらサイズのMojo 2にも貫かれている事。ポリシーが一貫しているという意味だけでなく、据え置き機レベルのサウンドを、手のひらサイズで実現している技術力の高さがあってこそだ。
そんなMojo 2に、マニアには驚きの新バージョン「Mojo 2(4.4mm端子搭載モデル)」が12月19日に登場する。価格はオープンで、市場想定価格は82,500円前後。その名の通り、従来は3.5mmステレオミニ出力×2系統を搭載していたMojo 2に対し、1系統を4.4mm端子に変更したモデルで、実売もほぼ同じになる見込みだ。
普通に考えると、「ああ、ポータブルオーディオではもう4.4mm端子が一般的になったから、そのトレンドに合わせた新バージョンを作ったんだな」で済む話なのだが、私のようなMojoシリーズユーザーからすると「え、マジでChordから4.4mm端子搭載の製品が出るの!?」という驚きのほうが先に来る。
そのくらいインパクトのある新バージョンであり、これを機に「なんだ、3.5mm出力しかないのか」とMojo 2を検討してこなかった人には、Mojo 2に再び注目してほしい。
Mojo 2とMojo 2(4.4mm端子搭載モデル)の違い
Chordから4.4mm端子搭載の製品が出る事に驚いたのは、以前からChordが「我々の製品にバランス出力は必要ない」と語っていたからだ。
筆者は2回ほど、ロバート・ワッツ氏自身に「なぜトレンドのバランス出力を搭載しないのか?」と質問した事がある。彼は、ヘッドフォン出力で、低ノイズ、低歪、低出力インピーダンス、高出力を達成することが重要で、バランス駆動はその1つのアプローチだとした上で、Mojo 2はじめChordのポータブルオーディオ製品は、シングルエンドで他社のバランス駆動回路搭載製品を凌駕するスペックを持っているので、無理にバランス出力にする必要がない。むしろ、バランス駆動の回路構成のためにオペアンプを追加したりすると、音質的にマイナスになる……という趣旨の返答だった。
単純明快な返答で、「なるほどそうか」と思う一方で、一消費者としては「利便性の面からも4.4mm出力が欲しいな」「DAPとの接続で普段使っている4.4mmプラグのケーブルをMojo 2でも使いたいんだけど」というモヤモヤがあったのは事実だ。
そんな経緯もあって、「Mojoシリーズに4.4mm出力が搭載される事はないだろうな」と思っていたのだが、今回Mojo 2(4.4mm端子搭載モデル)が登場したので、驚いたわけだ。
実現の道のりは険しいものだったそうで、日本での代理店のエミライが、市場のトレンドやユーザーからの要望を伝え、根強く交渉。Mojo 2の回路設計的に、4.4mmでも、バランスアンプである必要はないため、「4線シングルエンド方式でいいので4.4mm出力を搭載して欲しい」と根強く要望を打診。そして2年以上をかけて実現したのが、Mojo 2(4.4mm端子搭載モデル)というわけだ。
内部的には、4.4mmヘッドフォン出力端子を搭載するために、基板上で最小限のパターン変更を行なったという。外観的には、筐体側面のアナログ出力が、3.5mmと4.4mmの2系統となっている。なお、前述の通り、4.4mm出力ではあるが、左右チャンネル個別アンプのバランス駆動ではなく、4線のシングルエンド駆動となっている。
それ以外は利便性の進化で、USB-C入力が、以前はデータ転送のみだったが、Mojo 2(4.4mm端子搭載モデル)はデータ転送に加え、充電にも使えるようになっている。入力端子としてこれ以外にも、Micro USB、光デジタル、同軸デジタルを備えている。
新機能として、3.5mmと4.4mmヘッドフォン出力端子それぞれに、独立した音量メモリー機能も追加した。要するに、3.5mm接続でイヤフォンを聴いていたボリューム値と、4.4mm接続時のボリューム値が記憶されていて、各端子に接続すると、自動的に前回使ったボリューム値に戻るわけだ。
実際に「外出時には4.4mm出力にイヤフォンを接続して聴く」、「帰宅したらUSB DACとしてPCとUSB接続、Mojo 2(4.4mm端子搭載モデル)の3.5mm出力と、アクティブスピーカーに接続」という生活をしてみたが、スピーカ接続時に、いちいちボリューム調整をしなくて済むので楽だった。
Mojo 2(4.4mm端子搭載モデル)の特徴
従来モデルからの変更点はここまでとして、Mojo 2の特徴を学んで行こう。
前述の通り、Mojo 2は、旭化成エレクトロニクスの◯◯だとか、ESSの◯◯といった、DACチップを使っていない。その代わりに、FPGAという、自由にプログラミングできるLSIを使っているのがキモだ。
これには、回路設計者のロバート・ワッツ氏の考えが色濃く反映されている。詳細は、以前掲載した三浦孝仁氏のHugo 2レポート記事でワッツ氏自らが語っているが、ワッツ氏は、人間の脳が音をどのように捉えるのかに注目した結果、時間軸での精度、特にトランジェント(音の立ち上がり)とタイミングの精度を重視。その精度が高ければ、音の分離や、音色も良くなるという。
一般的なDACチップの場合、デジタルデータから、フィルタをかけてアナログ信号に戻す際に、単純なフィルタではタイミング誤差が100μSec以上あり、時間軸の精度が低く、密度の低いサンプルしか作れず、正確な波形に戻らないという問題点があるという。
その対策として編み出されたのが、シンプルだが力技とも言える「無限に処理ができるフィルタを使って補完すれば、オリジナルの波形を復元できる」という考え方。もちろん現実的ではないので、その代わりに、トランジェントエラーを減少させるために、新たなフィルターを開発したり、タップ数(オーバーサンプリングフィルターの演算処理の細かさを表したもの)を増やしていくという手法が開発された。
これを実現するためには、非常に高い処理能力が必要になる。そこでChordでは、強力なFPGAに目をつけ、Mojo 2ではXilinxの「ARTX-7」というFPGAを搭載している。
この考え方に基づいて生まれたのが、開発者ワッツ氏の名前がついた高次オーバーサンプリングの「WTAフィルタ」。デジタルデータから、元のアナログの波形を類推して補間し、デジタル化される前のアナログの波形を高い精度で再現するもの。
Mojo 2では、40,960タップの16FS WTAフィルターを搭載。それを、40個の208MHz DSPコアを使用して演算。この初段目のWTAフィルターだけでなく、2段目のリニアー・インターポレーション・フィルターで、256FSまでオーバーサンプリングを行ない、時間軸情報の再構築の精度を向上させている。また、WTAフィルターではノイズフロア変調が測定できないレベルまで抑えられるという。
WTAフィルタの処理で得られたデータを、アナログ信号に変換するアナログ出力段においては、ノイズシェイパーの性能にこだわり、独自のパルスアレイDACを用いている。これは、フリップフロップと抵抗で作られたもので、これらが協調して高速にオン/オフすることでアナログ波形を形成。Mojo 2では4基のパルスアレイエレメントを活用。9次でノイズシェイパーを動作させることで、ディテールの解像度とサウンドステージの奥行きの知覚を大幅に向上させている。
これらの工夫により、極めてノイズが少なく、そして小信号でも分解能の高いサウンドが実現できるとワッツ氏は語っている。
これ以外にも、ジッター低減のためにデジタル方式のフェーズ・ロック・ループ(DPLL)を搭載したり、アンプ部のクオリティも追求。デジタルDCサーボによるDCカップリング構成とすることで、カップリングコンデンサーを排除。より色付けの無いサウンドを実現した。
駆動力も非常に高く、負荷インピーダンス800Ωに対応できる。ヘッドホン出力段の出力インピーダンスは0.06Ωと極めて低い。出力は300Ωで90mW(5.2Vrms)、30Ωで600mW(4.2Vrms)と、据え置き機にも迫るパワフルさだ。
音を聴いてみる
音を聴いてみよう。試聴には、PCとのUSB接続や、AndroidスマートフォンとUSBホストケーブルを使った接続を試した。イヤフォンは、qdcの「WHITE TIGER」、qdcのカスタムIEM「Hybrid Folk-S」、final「S3000」、ヘッドフォンはフォステクス「RPKIT50」を使った。
まず、Mojo 2(4.4mm端子搭載モデル)の3.5mm出力を使い「藤井風/Prema」を聴いた。
冒頭から、サビが一気に広がる楽曲だが、音楽が広がる空間が広大であり、奥行きも深い。その立体的な空間に、ベースやドラム低域がズシンと深く沈む。「こんな小さな製品から、どうやってこんなスケールの大きなサウンドが出せるのか」と、改めて感心する。イヤフォンはもちろんだが、鳴らしにくいRPKIT50を繋いでも、しっかりと沈む低音を聴かせてくれるのは驚きだ。
解像度は非常に高く、ボーカルとコーラスの分離や、ドラムがバシャンと細かく弾ける様子など、微細な音まで聴き取れる。それでいて感心するのは、線が細くて神経質なサウンドではなく、1つ1つの音にしっかりとパワーがあり、躍動感があること。
この、“見通しのいい広大な空間に、情報量とパワフルさが共存した音が舞い踊る”サウンドは、Chordの据え置きの単体DACやアンプを聴いた印象に非常に近い。その世界が、手のひらサイズのDAC兼アンプで楽しめるのがMojo 2の大きな特徴だ。
次に、従来モデルMojo 2の3.5mm出力と、Mojo 2(4.4mm端子搭載モデル)の3.5mm出力を聴き比べてみたが、こちらはほぼ同じサウンドで、わずかにMojo 2(4.4mm端子搭載モデル)の方がメリハリが強く感じられたが、ほとんど違いはなかった。
続いて、WHITE TIGERのように、入力プラグを交換できるイヤフォンを使い、従来のMojo 2の3.5mm出力と、Mojo 2(4.4mm端子搭載モデル)の4.4mm出力を聴き比べてみたが、こちらには明確な違いがある。
Mojo 2(4.4mm端子搭載モデル)の4.4mm出力の方が、1つ1つの音の輪郭がよりクッキリとして、SN感もより良くなる。また、低域の沈み込みの深さも、より深くなる印象。前述の通り、ワイドレンジなサウンドがMojo 2の魅力だが、4.4mm出力では、その魅力がより強化される印象だ。
4.4mm出力自体の音の良さに加え、個人的に嬉しいのは、“気に入っている4.4mm入力のケーブルが使えること”だ。
最近、finalの「S3000」という、フルレンジBAドライバー×1基のシンプルなイヤフォンの精密なサウンドが気に入っており、このS3000に、Brise Worksの「MIKAGE」という4.4mm入力のリケーブルを組み合わせると、よりレンジ感が広がり、広大かつ精密なサウンドが楽しめるのだが、この組み合わせが、Mojo 2(4.4mm端子搭載モデル)で使えるのがありがたい。
接続する前から、「Mojo 2のサウンドはS3000 + MIKAGEと相性が良さそうだな」と思っていたのだが、聴いてみるとドンピシャ。
「ジャネール・モネイ/Make Me Feel」冒頭のビートが、キレッキレで最高に気持ちが良い。トランジェントが良いだけでなく、中低域の押し出しもパワフルで音に厚みがしっかりとある。それでいて、音は大味にならず、コーラスのささやき声はゾクゾクするほど繊細だ。
「米津玄師/KICK BACK」も凄い。この曲は、レンジの狭い機器で聞くと、小さな空間に音が詰め込まれて、ゴチャゴチャした曲に聴こえてしまうのだが、Mojo 2(4.4mm端子搭載モデル)では、広い音場に、SEやコーラスが飛び交い、エレキベースが地表をゴリゴリと削る。パワフルな音が前に飛び出してきているのに、その背後にある空間の奥行きまで聴き取れる。情報量の多さと、駆動力の高さが両立しているからこそ、実現できるサウンドだ。
良い意味で、オーディオっぽい“音作り”はあまり感じず、ひたすら情報量とパワーの洪水を真正面から浴びるような体験。好みを超えて、誰もが「この音は凄い」と感じるのではないか。
アコースティックな楽曲もしっかり聴かせる。「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を聴くと、アコースティックベースの中低域が豊かに張り出し、音の沈み込みも深く、音楽をしっかりと下支えする。その上に展開するピアノの響き、ボーカルはどこまでもクリアで美しい。
これだけ再生能力が高いので、イヤフォンでクラシックもしっかり楽しめる。モントリオール交響楽団による「死の舞踏~魔物たちの真夜中のパーティ」から「サン=サーンス:死の舞踏 作品40」を聴いたが、広大なホールいっぱいに音楽が広がるスケール感と、ストリングスの細やかな弦の動きが見える微細さが同居している。
アクティブスピーカーとの組み合わせも凄い
ここまではイヤフォン、ヘッドフォンを使ったが、実はMojo 2の真価をより発揮できるのは、アクティブスピーカーとの組み合わせだ。
PCやタブレットなどとMojo 2を接続し、そのアナログ出力を、小型アクティブスピーカーと接続。Mojo 2のサウンドを、デスクトップ環境で楽しむわけだ。
これはメーカーも想定した活用方法であり、Mojo 2にはインテリジェントデスクトップモードを搭載している。一定時間充電を継続すると、自動的に充電モードを切り替えて、内蔵バッテリーにあまり負荷をかけない充電動作になるというものだ。
実際に、クリプトンのアクティブスピーカー「KS-11」とMojo 2を接続。PCでQobuzの配信楽曲を聴いたり、YouTubeやNetflixの動画を見たりしたが、Mojo 2の音場の広さ、低域の深さ、中高域のクリアさといった、ワイドレンジでスケールの大きなサウンドは、スピーカーとの相性がバツグン。
デスクトップ上でも、自分の真横まで体を包みこまれるような音場や、ズンと胸を圧迫するような中低域の張り出しが感じられる。Netflixで話題の「イクサガミ」を鑑賞したが、合戦シーンでは、重厚なBGMがズォーンを背後に広がる中で、そこかしこで切り合う刀の鋭い金属音、走る侍の荒い息遣いなど、細かな音もしっかり聴き取れる。映画やドラマは、映像だけでなく、音でもスケールの大きさを描写しているというのが、Mojo 2で改めて実感できた。
なお、今回は3.5mmのステレオミニケーブルでアクティブスピーカーと接続したが、4.4mm出力を活用するという手もある。おそらくその方が音質的にはさらに良いだろう。その場合は4.4mmからアナログRCAへの変換ケーブルも必要になる。あまり市場に無いタイプのケーブルかと思うが、ケーブルの自作ができる人はDIYしてみるのも楽しいかもしれない。このように、「こうしたらもっと良くなるかな」と考え、いろいろやってみたくなるのも、オーディオ趣味の醍醐味だ。
据え置き機のようなサウンドをポケットに
かつてはポータブルDAC兼ヘッドフォンアンプの高級機という印象があったMojo 2だが、最近では、他社から10万円近い製品が幾つも登場しており、いつのまにか価格としてはMojo 2もミドルハイくらいの印象になっている。
ただ、今回あらためてそのサウンドを聴くと、価格はもとより、サイズからは想像できないワイドレンジでスケールの大きなサウンド、分解能の高さ、音のクリアさ、色付けの少なさ、ヘッドフォンアンプとしての駆動力の高さといった部分で、他社の最新高級機にまったく負けていない。
むしろ、市場では“ポータブル”としつつも、サイズが大きなアンプが増えているので、市販のMagSafeアダプターなどを取り付けて、スマホの背面に固定して手軽に持ち運べるMojo 2のコンパクトさは改めて評価したい。
Chordは、ディスクリートDACにこだわり、ポータブル機器でも、据え置き機のようなスケール感と低重心なサウンドを奏でる製品の先駆者であり、それが現在の市場トレンドを生み出したとも言える。
ポケットに簡単に入るサイズと、持ち運びも苦にならない重量で、屋外でも、家の中でも据え置き機のようなサウンドが楽しめる。4.4mm端子搭載モデルの登場をキッカケに、Mojo 2が再び注目を集めるだろう。



















