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衝撃の超短焦点プロジェクタ、AWOL Vision「Aetherion Max」上陸。「生活の質と映像の感動を両立させたい人へ」

Aetherion Max

一昔前は“リビングにテレビ”が当たり前だったが、“使わない時は黒い板”であるテレビよりも、プロジェクタに興味を持っている人が増えている。コンパクトで低価格なモバイルプロジェクタが話題だが、実際に使ってみると、「使う時に設置するのが面倒」「暗くて昼間は映像が見にくい」「プロジェクターの前を横切ると映像が見ない」など、不便な事も多い。

「使わない時に目立たず、邪魔にならない」。「映像を投映すれば、高画質で明るく、昼間でも使える」。「投影中も自由に動ける」そんな理想的な製品が、超短焦点プロジェクター。その決定版と言える製品が米AWOL Vision(エーウォル ビジョン)の「Aetherion Max」だ。

クラウドファンディングのKickstarterで既にプロジェクトがスタートしており、日本からも購入可能。一般販売価格は4,499ドル(約71万円)だが、51% OFFの2,199ドル(約348,000円)で購入できるプランや、スクリーンとのセットプランも用意されている。発送は4月の予定。それなりの価格がする製品なのだが、支援額は3月上旬時点で1,500万ドル(約2.3億円)を超えている。そのクオリティは高く、「未来のリビング、書斎シアターにはコレなのでは!?」と思えるプロジェクターになっている。

Aetherion Max
【価格改定情報とクラウドファンディング後の販売予定】

3月16日(月)より、価格が100ドル値上げされます。価格調整後、Aetherion Maxは48.9%割引で2,299ドル、Aetherion Proは40%割引で2,099ドルとなります。

また、Kickstarter後の日本での販売予定は、Aetherion Maxが4月からAmazonと楽天で予約受付開始予定。Aetherion Proは4月から日本のAmazonと楽天で販売開始予定。

AWOL Visionとは?

AWOL Visionというブランド、日本ではまだ馴染みが薄いかもしれない。一方で、昨年末から日本に登場し、ハイクオリティな映像と斬新な筐体デザインが話題のValerion(ヴァレリオン)ブランドはご存知だろう。何を隠そう、AWOL VisionはあのValerionの親ブランドなのだ。

AWOL Vision/Valerionを率いるCEOのアンディ・チャオ氏

ブランドの発足は、映画好きのアンディ・チャオ氏が、自分のホームシアターを作ろうと思い、市場の人気モデルを10機種ほどテストしたが、満足できるものが無く、「それならば自分で作ろう」と決意。テレビを開発していたエンジニア達を集め、超短焦点プロジェクターを開発するブランドとして、2020年にAWOL Visionを米国で設立した。

このAWOL Visionが、RGBレーザー光源を活用し、高性能な4K超短焦点プロジェクターを次々と開発。海外で大きな成功をおさめ、いよいよ日本に本格上陸したわけだ。

そして、そんな彼らが超短焦点プロジェクターではなく、通常のプロジェクターを手掛けようと新たに立ち上げたのがValerion。つまり、Valerionで話題になったRGBレーザー光源や高画質技術が、AWOL Visionの製品にも投入されているわけだ。

Aetherion Maxの特徴

日本に上陸するAWOL Visionのプロジェクターを見てみよう。

Aetherionというシリーズで、「Aetherion Max」と「Aetherion Pro」という2機種がラインナップされている(Aetherion Proは一般販売価格3,499ドル/約55万円で、42% OFFの1,999ドル/約31万円などのプランを用意)。

方式としてはどちらもDLPプロジェクターで、RGBレーザー光源を採用している。今回試用したのは、上位機のAetherion Max。2機種の主な違いは明るさで、Aetherion Maxは3,300 ISOルーメン、Aetherion Proは2,600 ISOルーメンだ。

Aetherion Max

Aetherionシリーズのコンセプトは、「最大200インチのスクリーンサイズで4Kの鮮明さを実現しつつ、リビングルーム、シアタールーム、次世代ゲーミングに最適化された設計」を実現するというもの。

通常の長焦点プロジェクターの画質で重要となる技術は光源の明るさやレンズ性能などだが、Aetherion Maxのような超短焦点プロジェクターの場合、特にレンズ開発で高い技術が求められる。

超短焦点プロジェクターは、投映する光を、特殊なレンズを通すことで、短い距離で、大きな映像へと拡大する。しかも、スクリーンや壁の真正面からではなく、床など、下方から斜め上に向かって、角度をつけて投映する。

壁やスクリーンに、こんなに近い距離から大画面を投映できる

それでいて、スクリーンや壁に投映する映像は、歪みのないものにしなければならない。投映された映像は、プロジェクターに近いところと、遠いところに距離差が生まれるが、そのどちらにもフォーカスを合わせないと映像がボヤケてしまう。

こうした難題を解決するには、複雑な光学経路のレンズが必要だ。このレンズの設計がダメだと、ピクセルのズレや色の分離が発生し、画質が落ちてしまう。長焦点プロジェクターに対し、超短焦点プロジェクターが画質で劣るとされる理由がここにある。

だが、AWOL Visionはこの定説にメスを入れた。そのために開発したのが、独自のPixelLock技術だ。4K画像の各ピクセルを正確に同期させ、スクリーン上に完璧に配置するというもので、色のにじみ、ズレ、ぼやけを防ぐ効果がある。

Aetherion Maxでフォーカスを調整しているところ
画面中央部分を調整しているところ。中央や下部でフォーカスを合わせると、画面左上や右上といった隅でフォーカスが甘くなるという製品は多いが、Aetherion Maxの場合は……
プロジェクターから一番遠い、右上のフォーカス調整マークをアップで撮影したもの。リモコンを使って調整すると
ビシッとシャープにフォーカスが合焦する。これがAetherion MaxのPixelLock技術の効果だ

よくある、ソフトウェアで絵を滲ませるような処理ではない。レンズ要素の許容誤差、温度による膨張、超短焦点の角度の微小なゆがみ、反射経路の不整合、さらにDLPシーケンシングのアーティファクト補正なども考慮して設計することで、これらの画質低下を防いでいる。デジタル技術に加え、高い光学的技術も備えていなければできない。ここに、AWOL Visionの強みがあるわけだ。

電源OFF時はカバーされているが
投映時にはカバーが自動で開き、レンズが現れる

他にも、様々な工夫がある。レンズには、業界初というDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングを施した。これにより、不要な光の反射を30%削減し、光透過率を99.97%に高め、よりシャープな映像になったそうだ。

この光学レンズはサファイアシリーズと呼ばれるもので、屈折率に優れ、ハードコアな表面を持ち、色収差を抑え、長期間、高精度な鮮明さを維持できるという。さらに、光の分布を均一にしつつ、散乱させない非常に薄いターミナル映像レンズも組み合わせている。レンズ部を保護するために、電動で開閉する防塵カバーも搭載している。

単板式DLPの弱点を克服する独自技術

画質面の、もう1つの大きな特徴が「独自のAnti-RBE技術」。これは、単板式のDLPプロジェクターの宿命とも言えるレインボーノイズ(カラーブレーキング)を低減させるもの。Valerionブランドのプロジェクターでも使われており、その効果が話題になっている。

一般的に、DLPプロジェクターはカラーホイールを回転させることで、色を順番表示する時分割方式を採用しているため、色のチラつきや残像といった、レインボーノイズが発生する。3板式では発生しないものの、プロジェクターが非常に高価になってしまうジレンマが生じる。

AWOL Vision/Valerionが生み出したAnti-RBE技術では、カラーホイールを使わず、RGB三色レーザーを超高速で切り替えることで色の順番表示を実現。目が色のチラつきを認識しにくくなり、自然な色表現を実現。色ズレや残像を抑え、レインボーノイズを99.99%低減したという。クリアな映像になるほか、長時間でも目が疲れにいというメリットもある。

Anti-RBE技術効果のイメージ。右はドラゴンの輪郭などに虹色のレインボーノイズが発生しているが、左は低減されている

ネイティブコントラスト比は6,000:1、EBL(ブラックレベル強化)を使うと60,000:1まで伸長。7段階で調整できるIRISシステムも備えており、視聴シーンごとの輝度を自動調整したり、手動調整も可能だ。

7段階で調整できるIRISシステム

表示モードとしては、Dolby Vision、IMAX Enhanced、HDR10+、Filmmakerモードに対応。リアルタイムでのHDR効果を最適化するダイナミックトーンマッピングも備えている。

AIを活用して、シーンに合わせて最適な映像に調整する機能や、YouTubeの低解像度な映像などを、AI超解像で高精細に表示することもできる

マニアックな機能としては、コントラスト調整、色マッピング、トーンカーブ、ピクセルジオメトリの調整も可能だ。また、入力遅延を1msクラスまで抑えてゲームを快適にプレイしたり、残像感を抑えたゲームやスポーツ映像を表示するVRR(可変リフレッシュレート)、最適なゲーム設定に瞬時に切り替えてくれるALLM、さらにダイナミックメタデータを使用し、HDR体験を高めるDolby Vision Gamingにも世界初対応している。

入力遅延を1msクラスまで抑えるなど、ゲームを快適にプレイする機能も充実している

ハイクオリティな筐体デザイン、メニューやアプリ動作もサクサク

画質だけでなく、内蔵スピーカーや操作性、筐体デザインもレベルが高い。幾何学的な形状をしており、“単なる箱”になりがちなプロジェクターに、都会的な印象を与えていると同時に、ダークガンメタルで仕上げているため、目立たず、部屋に溶け込みやすい。

印象的なのは前面の、青白いLEDインジケーター。起動時、この横長のラインに光が走り、「映画を楽しむ時間が始まるぞ」というワクワク感を高めてくれる。待機時にこのラインを光らせることもできるし、設定でOFFにする事も可能だ。

LEDインジケーターの様子
付属のリモコン
脚部はねじ式。投映する映像が傾かないよう、微調整できる

前面と両側面は格子状になっており、内蔵スピーカーの音を開放的に届けるほか、放熱も兼ねている。筐体が562×323×139.5mm(幅×奥行き×高さ)とある程度のサイズがあるため、サウンドクオリティも本格的で、サラウンド感が十分に得られつつ、センターのセリフも明瞭に聴き取れる。

前面と両側面は格子状

SoCは処理能力の高い「MT9655」を搭載し、8GBメモリと128GBのストレージも搭載。OSは Android TV 14だが、SoCの性能を活かし、動作はサクサク。メニューだけでなく、YouTube検索、Netflixアプリの起動などでも待たされるイライラとは無縁だ。スタンバイからの復帰もほぼ瞬時なので、テレビ的な使い方もできる。

Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4に対応するほか、1,000Mbps対応のLAN端子も搭載。Airplay 2、 Chromacast、Miracastももちろんサポートする。接続端子はHDMI 2.1×2、DP×1、USB 3.0×1、USB 2.0×1と充実しており、例えばUHD BDプレーヤーとゲーム機を接続するなど、拡張性にも優れている。

背面の接続端子部部分

では、「Aetherion Max」の実力は実際その程度なのか。山本浩司先生に、白い壁への投映に加え、超短焦点プロジェクターに対応した電動スクリーンでもチェックしてもらった。使用したスクリーンは、AWOL VISION「100インチ Cinematic+ 電動床置き式 ALR(環境光耐性)プロジェクタースクリーン」。特殊な光学ノコギリ構造で、天井からの光を遮りながら、プロジェクターからの投射光を観客に反射させるタイプだ。

自立式の電動スクリーン、AWOL VISION「100インチ Cinematic+ 電動床置き式 ALR(環境光耐性)プロジェクタースクリーン」を使用した
AWOL VISION「ALR-F210C」に投映しているところ

山本浩司氏がチェック!「生活の質と映像の感動を両立させたいと願う人にとって恰好の存在」

昨年末にValerionの「Vision Master Max」という単板式DLPプロジェクターをテスト、その画質の良さ、製品としての完成度の高さに感心させられ、そのインプレッションをAV Watchに記した。

その後、AV Watchヤマザキ編集長から「Valerionの兄弟ブランドAWOL Visionから超短焦点タイプが登場しました。オプションの100インチ・スクリーンも借りていますので、見に来ませんか」とのお誘いを受け、3月上旬、興味津々で都内某所のシアタールームを訪ねることにした(ヤマザキさんの自宅ですけど...)。

製品名はAetherion Max。オプションのスクリーン直下に置いて、100インチ投写してみたところ、じつにキレがよく濃厚な色合いを示す見事な大画面映像を楽しむことができた。映画鑑賞用としてまずはお勧めしたいが、この画質なら明かりを残した部屋で「超巨大テレビ」感覚で使うことも可能だろう。

基本画質は昨年末にテストしたValerionのVision Master Maxによく似ている。ぼくはVision Master Maxの画質を「これまで見てきたDLPプロジェクターの中で最高画質」と書いたが、短焦点タイプながらAetherion MaxはVision Master Maxとほぼ同等の画質を実現しているのである。

Vision Master Maxの高画質のポイントとして、ぼくは前回の記事で以下の5ポイントを羅列した。

  • 1.動画再生時にレインボーノイズがとても少ない。
  • 2.階調表現に優れる。
  • 3.明るい。
  • 4.コントラスト表現が見事。
  • 5.色域が広く色がとても鮮やか。

Aetherion Maxはまさに同じ魅力を持つが、細かく言うと、動画再生時のレインボーノイズはVision Master Max以上に目立たない印象だ。ともにカラーホイールを使わずに、日亜化学工業製3色レーザーモジュールを用いて高速点滅させて時分割表示でフルカラーを得る方式。調整画面の白黒の静止画だとけっこう目立つので、開発者が言うように「個々の色シークエンスを高速でブレンドすることで動画をシームレスで自然な画像と認識させる」手法がとてもうまくいっているのだろう。

階調とコントラスト、色再現はほぼ同等、明るさについてはVision Master Maxは3,500ルーメン、Aetherion Maxは3,300ルーメンとなる。ちなみに300万円を超える家庭用プロジェクターの最上位機種ビクター「DLA-V900R」の明るさは3,500ルーメンである。

ちなみに今回使用した電動昇降式スクリーンは、上からの光をカットする光学ノコギリ構造を持つレンチキュラー・タイプ。1980~90年代に話題になったリアプロジェクターで使われていたスクリーンだ。幕面は濃いグレーに着色されていて、明かりを残した部屋でも黒の黒らしさを実感させてくれる。

本機はVision Master Max同様、Google TV OSが採用されており、本体のみでNetflixなどの映像ストリーミングサービスが(アカウントを取得していれば)すぐさま自在に楽しめる。もちろんHDMI端子も用意されているので、プレーヤーをつなげばBlu-rayやUltra HD Blu-rayも再生可能だ。

まず完全消灯の状態で、UHD BDの『グレイテスト・ショーマン』を観てみた。映像モードは「ドルビービジョンダーク」。デフォルト映像のぬるぬるした不自然な動きが気持ち悪いので、<なめらか調整>を補間が入らない『シネマ』に設定した。

本機の魅力は原色が鮮やかな力強い色再現にあるが、この作品ではいささか色が濃すぎる印象で、色をデフォルトの50から40に。また、人肌の赤みも強すぎるので、色温度を『ウォーム1』から『標準』に変更した。

この状態で観る『グレイテスト・ショーマン』はとてもすばらしいかった。やや赤みがかったスキントーンは、劇場用3板式DLPプロジェクターを用いた画質の良さで評判の映画館、IMAXやドルビーシネマによく似ている。

そしてもう一つ感心したのは、階調のつながりのよさ。人物のアップなど、首筋から頬のあたりの凸凹が精妙に描かれ、このプロジェクターの実力の高さに驚かされた。

単板式DLPプロジェクターの場合、レインボーノイズの発生を抑えるためにレーザー光を高速点滅させればさせるほど、またはカラーホイールを高速回転させればさせるほど、映像投写間隔が短くなり、階調が物足りなくなるというのがこれまでの常識だったが、本機はVision Master Max同様階調情報がとても豊かなのである。この美点は他社製品を大きく引き離していると思う。

では、明るい部屋でのパフォーマンスはどうか。天井の明かりをつけ、約300ルクスの照度環境下で、折よく放送していたWBCの野球中継をNetflixで観た。チェコ vs オーストラリア戦をやっていたが、APL(Average Picture Level)の高い、こういうスポーツ中継ならば、画質面で不満を抱かせることなく楽しめることがわかった。まさに超大画面テレビ感覚でスポーツ観戦ができるわけである。オーストラリア・チームのグリーンのユニフォームが目に鮮やかだ。

次にスクリーンを外して、表面がエンボス加工されたオフホワイトに壁に映像を投写してみた。安価なプロジェクターのユーザーにはおなじみのスタイルだが、壁の表面に少し凹凸があったため、特に、画面上部の直線がひずんでしまった。とはいえ、100インチを超える壁一面の大画面化が可能なので、細かいことは気にしないという方はチャレンジしてみるのも良いだろう。ただ、本機の画質は先述のようにとても優秀なので、ぜひこのオプションのレンチキュラー・タイプのスクリーンと組み合わせて使ってほしいと思う。

液晶や有機ELなどの直視型テレビにも100インチを超える超大画面が存在するが、価格は跳ね上がるし、何より画面に映像を映し出していないときの「黒い板」の存在はうっとうしいかぎり。使う時だけ電動でスクリーンを立ち上がらせる短焦点プロジェクターこそ、生活の質と映像の感動を両立させたいと願う人にとって恰好の存在ではないかと思う。

KickstarterのAetherion Max/Aetherion Proプロジェクトページ

AV Watch編集部
山本 浩司

1958年生れ。月刊HiVi、季刊ホームシアター(ともにステレオサウンド刊)編集長を務めた後、2006年からフリーランスに。70年代ロックとブラックミュージックが大好物。最近ハマっているのは歌舞伎観劇。