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これは事件だ。ソニー「True RGB」が新次元のブラビア画質を創り出した!

BRAVIA 9 II(K-65XR90M2)

2024年、圧倒的な物量とスペックで登場し、液晶テレビの画質を新たなステージへと押し上げたBRAVIA 9(XR90)。筆者も審査員を務めた「AV Watchアワード2024」では、他社の液晶テレビを全く寄せ付けないどころか、有機ELテレビも含めた全エントリーの中で総合得点トップに躍り出るという、フラットテレビの歴史の転換点ともなりうる圧勝劇を演じ、見事大賞に輝いた。

その勢いは留まるところを知らず、モデルチェンジを行なわないまま2025年のアワードも連覇。このままライバル不在の状態が続けばアワードが盛り上がらないのではないかと、要らぬ心配をしてしまうほどのモンスターテレビ、それがBRAVIA 9だった。

BRAVIA 9は、その年の最も優れたテレビを選出する「AV Watchアワード」において、2024年および2025年の2年連続で“液晶テレビ大賞”に輝いた

そのBRAVIA 9が今年、待望のモデルチェンジを果たした。その名も「BRAVIA 9 II(XR90M2)」だ。

“マーク2”という響きからはマイナーチェンジの印象を受けるかも知れないが、とんでもない。

昨年ソニーが技術発表を行ない、次期フラッグシップモデルへの搭載が確実視されていた、独自の「RGB Mini LEDバックライト」はもちろん、筆者が予想だにしなかったサプライズも満載な“ブラビア史上最大のマーク2化”、それがBRAVIA 9 IIなのだ。

今回、僥倖にも発売前の本機を、初代BRAVIA 9、ならびにマスターモニター「BVM-HX3110」とじっくり比較することができた。ソニーが掲げる「True RGB」というマーケティングネームの真意はどこにあるのか? 国内最速レビューをお届けしたい。

BRAVIA 9 II(XR90M2)シリーズ ラインアップ

・115型「K-115XR90M2」 約660万円前後※ 9月19日発売
・85型「K-85XR90M2」 約132万円前後※ 6月13日発売
・75型「K-75XR90M2」 約93.5万円前後※ 6月13日発売
・65型「K-65XR90M2」 約66万円前後※ 6月13日発売
※市場想定価格

85型「K-85XR90M2」

なんだ、この液晶パネルは。まるでモノリスの石板ではないか

まず最初のサプライズは、電源を入れる前、BRAVIA 9 IIの画面と向き合った瞬間に訪れる。

なんだ、この液晶パネルは。まるでモノリスの石板ではないか。

明るい部屋に置かれているにも関わらず、自分の姿はもちろん、照明や家具といった周囲の物が全く画面に写り込まない。新開発の低反射パネル「Immersive Black Screen Pro」による強烈な先制パンチだ。

写真左からBRAVIA 9 II(K-65XR90M2)、BVM-HX3110、BRAVIA 9(K-65XR90)

“低反射”と謳ってはいるが、かなり画面に近づくとようやく自分の姿がぼんやりと分かるというレベルであり、実質的には“無反射”と呼びたくなるほど。

フラットディスプレイといえば反射するのが当たり前という感覚だった私は、この画面に吸い込まれるような没入感に、取材開始早々ノックアウトされそうになった。

BRAVIA 9の場合、画面から5cm程度の距離で手がハッキリと映り込む
こちらが新型のBRAVIA 9 II。同じ5cm程度の距離でこれだけ映り込みが抑えられている
画面から30cm程度手を離すと、ほぼ映り込まないレベルだ

その一方で、低反射パネルが画質とのトレードオフの関係にあることも、熱心なオーディオビジュアルファンならご存知だろう。

一般的なノングレアパネルではコントラストが低下し、フォーカスも甘くなる。それが今までの常識だった。私が半信半疑でBRAVIA 9 IIの電源を入れたことは言うまでもない。

ところが、実際に映像を映し出されると、グレアパネルだった初代と較べても、コントラスト感、フォーカス感ともにBRAVIA 9 IIの圧勝なのである。本機の開発陣によれば、この低反射処理はソニー独自の技術であり、画質の劣化は一切無いという。詳細は企業秘密とのことだが、もはやこれは技術というより“魔法”だ。

写真手前がBRAVIA 9 II。明室での視聴にも関わらず、ほとんど何も映り込んでいないことが分かるだろう

これだけでもマイナーチェンジところがゲームチェンジャー級の衝撃なのだが、さらによく視ていくと、解像感、精細感、立体感、奥行き感、S/N感にも明確な違いがあることに気付く。

特に地デジやネット動画ではその差が顕著で、被写体にまとわりつくモスキートノイズが激減。それでいて、ノイズリダクションの弊害を感じさせず、テロップ周りはくっきり&すっきりと表示されて二重像にならない。

元々BRAVIA 9には「XR Clear Image」という定評あるデータベース型の超解像技術が搭載されているが、BRAVIA 9 IIではそれがさらに進化し、AIによる処理が加わったのだという。

“AI”というと疑いの眼差しを向ける人がいるかも知れないが、少なくとも私の眼には誤検出などは感じられなかったし、初代の画が少し古びたものに見えてしまうほどの効果に、AIのスゴさを思い知らされたというのが偽らざる感想だ。

テーブルスタンドになったのも嬉しいサプライズ。設置場所の自由度が格段に上がった(115型を除く)

RGB Mini LEDの効用は、カラーボリュームだけじゃない

さあ、ここからはお待ちかね「RGB Mini LEDバックライト」のファーストインプレッションだが、そのネーミングから、“目にも鮮やかな極彩色”を想像していた私の眼に真っ先に飛び込んできたのは、意外にも色ではなく光だった。

とにかく眩しい! ピーク4,000nit、全白1,000nitに迫る高輝度を実現した初代を隣に置いても、BRAVIA 9 IIの明るさは際立っている。

正直、昨今の液晶テレビの高輝度化は、映画鑑賞時にはその眩しさが不快に感じられることも多かった。

しかし、BRAVIA 9 IIの放つ光にはそれがない。例えるならば、暗い部屋から外に飛び出して太陽を見上げた時のような、爽快感すら覚える眩しさなのだ。実測で5,000nitを超えるピーク輝度(※)も関係しているが、それ以上に光の“質”が違うように感じられる。

※スペクトロメーターを使った簡易測定での数値

BRAVIA 9 IIは、実測で5,000nitを超えるピーク輝度を実現。BRAVIA 9と較べても、BRAVIA 9 IIの明るさは際立っていた

一体なぜなのか? その理由を解き明かすためには、RGB Mini LEDの構造的なメリットを理解しておく必要がある。

初代BRAVIA 9をはじめ、各社の高級液晶テレビに軒並み採用されている青色ミニLED×量子ドット方式のバックライトは、ミニLED化による輝度向上と、量子ドット技術による広色域化を実現した一方で、バックライト自体は依然として白色のままであり、カラーフィルターを通って初めて色が付与されるという点では従来の液晶テレビと変わっていない。

それに対し、RGB Mini LEDには最初からフルカラーのバックライトが焚けるという絶対的なアドバンテージがあり、その恩恵は計り知れない。

BRAVIA 9 IIに採用されているRGB Mini LED

まずは、カラーボリューム(色空間)の拡大だ。

一般的に色空間は、底面に色域、縦軸に輝度を示した立体図で表現されるが、バックライトのフルカラー化によってこの容積が桁違いに増えた。これは、どんな明るさのどんな色でも、純度の高い色表現が可能となったことを意味する。

実際、ソニーではBRAVIA 9 IIのBT.2020色域カバー率を100%(※)と謳っており、80%にも届かなかったBRAVIA 9と較べて色域が大幅に向上している。

※BT.2020色域規格における面積比の代表値

各方式のカラーボリューム比較(イメージ)
RGB LED
ミニLED
QD-OLED
WOLED

加えて、白色バックライトの白色迷光から解放されたことで、液晶テレビの泣き所であったハローや視野角まで改善されるというサプライズ付きだ。

詳しく見ていこう。

液晶ディスプレイのバックライトは、その構造上、高輝度な被写体の周囲にはわずかな光漏れが生じる。これがハローの正体なのだが、従来の白色バックライトの場合、この漏れた光が白色として現れるため、被写体本来の色との差異が生じて余計に目立ってしまう。

しかし、RGB Mini LEDバックライトの場合、光源そのものが被写体と同じ色で発光するため、ハローが生じた場合でも、漏れる光の色が被写体の色と一致し、自然に見える。その結果、ハローが低減したように感じられるのだ。

また、バックライトのRGB化は視野角の拡大にも大きく寄与している。従来の液晶ディスプレイでは、バックライトからの白い光を液晶セルの開閉とカラーフィルターの通過によって色として表現していたため、光の波長(赤や緑など)によって透過時の光学的な広がり方が異なり、斜め方向から視聴した際に色変移(色の変化)が発生しやすいという課題があった。

それに対して、RGB Mini LEDバックライトでは光源側で直接色を生成できるようになったことで、カラーフィルターへの依存度が下がり、各色の光の拡散特性の差分が最小化。その結果、斜めから視聴した際の色変移が大幅に抑制され、優れた広視野角を実現できるのだ。

カラーボリュームの拡大は想像の範疇だったが、まさかハローや視野角にまで効果があるとは! いやはや、RGB Mini LEDバックライトはまさに夢のような技術じゃないか!

BRAVIA 9 IIを斜めから撮影。折り鶴の色が褪せることなく、鮮やかに描写。従来モデルに較べて、視野角が向上している

ソニー独自のバックライト制御技術が、RGB Mini LEDの性能を最大化!

と、諸手を挙げて喜びたいところだが、RGBであろうと白色であろうと、バックライトはバックライトだ。液晶テレビの画質向上の歴史は、バックライトとの戦いの歴史でもある。

自発光デバイスに迫る局所コントラストを実現するためには、バックライトのエリア駆動「ローカルディミング」が必須となっているが、その制御は非常に難しく、各社が苦戦している姿を、私はAV Watchアワードの審査を通じて見てきた。

そんな、じゃじゃ馬の如きローカルディミングを初めて乗りこなしたのがソニーである。

「バックライトマスタードライブ(BMD)」と名付けられたブラビア独自のフルアレイローカルディミング(FALD)技術は、バックライトの濃淡だけで画面に何が映っているのか分かるほど、以前からその精度には定評があったが、それが初代BRAVIA 9の開発時にピーク輝度1.5倍、エリア分割数3倍超(前モデル比)と一気に強化され、冒頭で紹介した有機EL超えの立役者となった。

そのBMDが、バックライトのRGB化に伴い、「RGB Backlight Master Drive Pro」として新たに生まれ変わった。

青色ミニLED×量子ドット方式の場合
パネル構造(イメージ)
表示映像(イメージ)
RGB Mini LED方式の場合
パネル構造(イメージ)
表示映像(イメージ)

ソニーの技術資料によれば、高ビットレートで駆動する専用の制御用プロセッサーが、RGB各色の明るさを個別に制御し、中間色の多いシーンでもその明暗の違いを繊細に描き出すことで、既存の有機ELパネルでは技術的に難しい、明るさや彩度が控えめな色調も表現することが可能になったという。

ここで書かれている「既存の有機ELパネルでは技術的に難しい、明るさや彩度が控えめな色調」というくだり。じつは昨年のアワードで最新の有機ELテレビを審査した際にかなり気になった部分でもある。

そのことが顕著に分かるのが、UHD BD「デューン 砂の惑星PART2」のチャプター7(再生時間1:06:00~)だ。

主人公ポールがラッバーンの前に現れるシーンなのだが、WOLED方式の有機ELテレビで再生すると、真っ暗な砂嵐の中で蠢く人物や物体の色(特に赤成分)がゴッソリ抜けてしまう。しかし、BRAVIA 9 IIでは、最暗部までしっかりと色が乗り、色相が転ぶこともない。この点においては、完全に有機ELテレビを凌駕していると言えるだろう。

BRAVIA 9 II(写真左)と、BRAVIA 9の比較

というか、この正確な色はなんだ!? ブラビアといえば伝統的に赤味が強かったはずだ。それが完全に治っているではないか!

矢継ぎ早に様々なコンテンツを再生してみたが、その印象は、「プロフェッショナル」や「シネマ」といった原画忠実系の画質モードから、「スタンダード」や「ダイナミック」に至るまで一貫している。まさかこんなビッグサプライズまで用意されていたとは!

BRAVIA 9 IIには「My Cinema」モードが新たに搭載された。複数の設定を一括変更できるプリセットとなっており、好みに合わせてプリセット内の詳細設定を変更することができる。写真はプリセット「ディレクターズカット」の詳細設定画面
プリセットは「ディレクターズカット」のほか、「デイタイム」「ダイアログ」を用意している

ついにブラビアは“神”の領域へ足を踏み入れた

以前、初代BRAVIA 9のレビューを担当した際に、私はその画質を「PROFEEL PROを彷彿させる」と評したが、それに倣うのであれば、BRAVIA 9 IIは「BVMに肉薄した」と言わざるを得ない。ついにブラビアは神の領域へ足を踏み入れたのだ。

ここからは筆者の勝手な憶測なのだが、ブラビア開発陣はバックライトのRGB化によって、ようやく自分たちの出したい色と光が出せるようになったのではないか? だからこのタイミングで画作りのベクトルを変えたのではないか? 「True RGB」というキャッチコピーには他社製品との差別化以上に重要なメッセージが込められているのではないか?

「この先なにがあろうとも、ブラビアを超えるのはブラビアだけ」

怪物から神へ。その真実を是非あなたの眼でも体感してほしい。

秋山真

20世紀最後の年にCDマスタリングのエンジニアとしてキャリアをスタートしたはずが、21世紀最初の年にはDVDエンコードのエンジニアになっていた、運命の荒波に揉まれ続ける画質と音質の求道者。2007年、世界一のBDを作りたいと渡米し、パナソニックハリウッド研究所に在籍。ハリウッド大作からジブリ作品に至るまで、名だたるハイクオリティ盤を数多く手がけた。帰国後はオーディオビジュアルに関する豊富な知識と経験を活かし、評論活動も展開中。愛猫の世話と、愛車のローン返済に追われる日々。