シャープ、第3四半期決算はテレビ事業で3%の利益
-GALAPAGOSによる、新たなビジネス構築にも意欲
シャープの野村勝明取締役兼執行役員経理本部長 |
シャープは、2010年度第3四半期の連結決算を発表した。9カ月間累計(2010年4月~12月)の連結売上高は15.1%増の2兆3,294億円、営業利益は194.4%増の665億円、税引前純利益は732.6%増の466億円、当期純利益は85億円の赤字から、218億円に黒字転換した。
シャープの野村勝明取締役兼執行役員経理本部長は、「売上げ、利益とも前年から大幅な改善を遂げた。第3四半期単独でも計画通りに推移している」と総括した。
■ 液晶テレビは黒字基調を維持。第3四半期は3%の営業利益
部門別業績は、エレクトロニクス機器の売上高が11.2%増の1兆5,436億円、営業利益は115.6%増の656億円。そのうち、AV・通信機器の売上高が12.9%増の1兆1,414億円、営業利益は543.8%増の368億円。
「国内エコポイント制度変更前の液晶テレビの駆け込み需要と、Blu-rayレコーダの伸張がみられている。第3四半期の国内液晶テレビの販売台数は、前年同期比2倍の伸び。中国市場を中心に販売台数が伸張した」という。
また、第3四半期における液晶テレビの収益性については、「黒字基調を維持しており、第3四半期は3%の営業利益になっている」とした。
液晶テレビの9カ月累計での販売台数は前年同期比53.5%増の1,142万台。売上高は前年同期比28.7%増の6,513億円となった。そのうち、国内の販売台数は73.7%増の697万4,000台、海外は29.7%増の444万6,000台。海外のうち、北米は15.5%減の111万9,000台、欧州は16.6%増の111万4,000台、中国は110.1%増の156万9,000台、その他地域で60.1%増の64万4,000台。第3四半期における日本国内の販売台数は100.1%増の340万9,000台となった。
「第4四半期も、国内はエコポイント終了前の駆け込み需要が想定され、生産、販売、在庫のコントロールに留意したい。国内では2~3台目需要、新興国では中型サイズの販売強化、北米では60型、70型といった超大型テレビを投入し、新市場の創出によって事業を拡大したい」とし、2010年度計画の1,500万台の達成に意欲をみせたほか、「エコポイント終了後の2011年以降は、中国をはじめとする新興国市場での成長が期待でき、日本国内の落ち込みを十分カバーできるだろう。中国では、第6世代の工場が今年夏以降に稼働し、32型以下のコスト競争力が高まる。これに日本で展開している第8世代、第10世代の強みを生かして、60型や70型も積極展開したい」と語った。
■ 冷蔵庫、エアコンが国内外ともに好調
健康・環境機器の売上高は8.4%増の2,012億円、営業利益が49.2%増の145億円。情報機器の売上高が4.8%増の2,009億円、営業利益は4.5%減の143億円。「健康・環境機器では、冷蔵庫、エアコンが国内外ともに好調。情報機器ではデジタルカラー複合機の販売が伸びた」という。
電子部品の売上高は前年同期比25.0%増の1兆1,918億円、営業利益は44.8%増の201億円。そのうち、液晶の売上高は32.4%増の7,825億円、営業利益は30.8%増の60億円。太陽電池の売上高は41.3%増の2,035億円、営業利益は45.1%増の44億円。その他電子デバイスの売上高は5.8%減の2,057億円、営業利益は54.7%増の97億円となった。
■ 液晶特許侵害には徹底した姿勢で臨む
液晶に関しては、「昨年前半はテレビメーカーの強気な姿勢もあり、供給がタイトな状態だったが、米国市場の伸び悩み、欧州市場の金融不安、中国のローカルメーカーの台頭などにより、需給バランスが変わり、パネル価格が下落した。当社でも堺工場で1~2割の生産調整を行ない、在庫の適正化を図った。設計、デザインの標準化や、円高による調達メリットなどを生かしたい」とした。
さらに、AUOの液晶特許侵害についても言及し、「他社の特許侵害にも対しても徹底した姿勢で臨みたい」とコメントした。中小型液晶パネルについては、スマートフォン、タブレット端末、ゲーム機などの販売増加により、需要は回復基調にあり、「高精細や3Dなどの当社の中小型液晶ならではの高付加価値が生かせる環境になっており、最適な生産体制と、成長分野へのリソースシフトにより、収益の拡大を図る」と語った。
なお、通期の業績見通しについては、「第3四半期は全体としては、計画通りで推移しているが、先行きの不透明感が続くと予想しており、変更はしない」とした。また、「GALAPAGOSによる、新たなビジネス構築に取り組む。売り切り型のビジネスから、ソリューション提供型のビジネスへの事業転換を図る」などと述べた。
(2011年 2月 3日)
[Reported by 大河原克行]