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DTCP+で外出先からの「スマート視聴」促進。DLPA発表会

スマホ、NAS、PC。各社がリモートアクセス対応本格化

DLPAの理事長を務めるアイ・オー・データ機器 細野社長と、DLPA理事のデジオン田浦社長

 デジタルライフ推進協会(DLPA)は10日、同協会の活動報告会を「DLPAリモートアクセスDay」と題して開催。DTCP+技術をつかった「スマート視聴」を推進することをアピールした。

 DLPAは、バッファロー(メルコホールディングス)、アイ・オー・データ機器、デジオン、KDDIの4社と賛助会員のエレコムの合計5社が参加。デジタルコンテンツ/デジタル放送番組視聴機器における相互接続性の確保などに取り組んでいる。

 DLPAでは'13年1月に「リモートアクセスガイドライン」を策定。外出先から自宅にあるデジタル放送録画番組を保存したNASにアクセスして視聴可能にする機能についての共通仕様をまとめたもので、サーバー仕様やデバイス管理機能、P2Pセキュアトンネルの構築など、リモート視聴のために用いられるDTCP+技術で未定義な部分を、DLPAでまとめて規定している。

 DTCP+対応のNASとして発売されているアイ・オー・データの「RECBOX + REMOTE」やバッファローのDTCP+対応NAS、デジオンのDTCP+対応サーバー/クライアントなども同ガイドラインに準拠している。

DTCP+で「スマート視聴元年」

アイ・オー・データ 細野社長

 DLPA代表理事を務めるアイ・オー・データ機器の細野昭雄代表取締役社長は、同協会のこれまでの取り組みについて紹介。2012年4月から実施している、録画用HDDにおける「録画データ救済サービス」の実施や、AV用途を中心としたNAS普及にむけた「DLPA NAS」ガイドラインの策定/運用などの実績を紹介した。

 また、バッファローとアイ・オー・データ機器という、パソコンやAV周辺機器で競合となる会社同士が共同でDLPAの運営にあたることについては、「営業上はライバルですが、共通の課題については、機器の普及のために共に解決していく。それがこの協会の大きな意義」と強調した。

録画用HDDにおける「録画データ救済サービス」
「DLPA NAS」ガイドラインを策定
リモートアクセスガイドライン

 DLPAのリモートアクセスガイドラインについては、業界標準ルールを策定することで、相互接続性を向上。対応製品にロゴを付与することで安心して購入できる環境をつくるとともに、リモートアクセスの便利さをアピールするために各社で協力していくという。

 その一例として、「リモートアクセスに対する興味」などのアンケートも実施。20~30代に関心が高く、約半数が興味を持っているという。こうした層に「タイムシフト」と、リモートアクセス/DTCP+による「プレイスシフト」をアピール。その環境が整った2013年を「スマート視聴元年」として訴えた。

DLPA リモートアクセスガイドラインロゴ取得製品
アンケートからリモートアクセスへの興味を確認
スマート視聴元年に
デジオン田浦社長

 DLPA理事で、デジオン代表取締役社長の田浦寿敏氏は、「DLPAの立ちあげ後、約3年ほど経過したが、DLPAとして伝えたいメッセージがある」とし、「グローバルスタンダード」、「マルチプラットフォーム」、「相互接続性」の3点にこだわり運営していく方針をアピールした。

「DTCP+は難しい。受け入れやすいキーワードを」

前田悟氏

 ゲスト講演として、ソニーで「エアボード」や「ロケーションフリー」といった通信技術を応用したテレビ製品を企画し、JVCケンウッドにおいても「RYOMA」などの製品を手がけたエムアイジェイ代表取締役の前田悟氏が登壇。

 前田氏は、10年以上前の「エアボード」や「ロケーションフリー」などの事例を紹介しながら、「タイムシフトからプレイスシフト、という環境がようやく整いつつある。視聴スタイルの多様化に応える環境ができた」と、DTCP+とリモートアクセスガイドラインの取り組みを評価した。

タイムシフトからプレイスシフトへ

 一方で、「“スマホで外でテレビが見れる”が本当にキーワードになるだろうか?」との疑問を呈した。「ヒット商品というのは常に生活必需品になるもの。テレビコンテンツのプレイスシフトの必要性や便利さはわかる。ただ、DLPAやDTCP+とか、キーワードがあまりにもエンジニアっぽい。ロケフリとか、そういうキーワードが必要です。キーワードからライフスタイルをイメージさせてほしい」と提案した。

富士通はスマホ/PC/MyCloudでDLNA/DTCP+に対応

富士通 ユビキタスビジネス戦略本部 モバイルプロダクト統括部長の林田氏

 また、スマートフォンのARROWSシリーズやパソコンのFMVシリーズで、DTCP+やDLNA対応製品を多く発売している富士通から、ユビキタスビジネス戦略本部 モバイルプロダクト統括部長の林田健氏が登壇。スマートフォンとパソコン、クラウドアプリケーション「My Cloud」を軸とした、DLNAやスマートフォンでの動画対応を強化していく方針を説明した。

 林田氏は、「スマートフォンで動画を見る頻度は、週一回以上が7割」という調査データを例に挙げ、「スマートフォンでのテレビ視聴対応は必然」と言及。富士通のスマートフォンでは2011年秋からDLNA対応や、リレー再生対応、スカパー対応などに取り組み、2013年夏に世界初のリモートアクセス対応を実現した。

富士通のスマートフォンのDLNA対応の歴史
スマホとPCでDTCP+対応

 ARROWSでは「スキマミ」として「時間つぶし」のテレビ視聴を提案。さらに、パソコンの夏モデル「ESPRIMO FH78/LD」では、パソコンとして初のリモートアクセス対応サーバーを搭載。同PCで録画した番組を、MyCloudアプリにムーブして、DTCP+サーバーとして、外出先からアクセス可能にする。

 林田氏は「スマートフォンと、パソコン、MyCloudの3位一体でDLNAを活用した提案に取り組む」と意気込みを語った。

ARROWSでのリモートアクセス活用例
FMVにおけるDTCP+対応
ARROWS、FMV+のリモートアクセス対応

富士通は初のDTCP+サーバー搭載パソコン

 会場では、10日発表のバッファローのDTCP+対応NAS「LS410DXシリーズ」や、デジオンのiOS用DTCP-IPクライアント「DiXiM Digital TV for iOS」のリモートアクセス対応版などを展示。アイ・オー・データ機器もDTCP+対応でトランスコーダを搭載した「RECBOX +REMOTE HVL-ATシリーズ」を紹介している。

アイ・オーの「RECBOX +REMOTE HVL-ATシリーズ」
RECBOX HVL-AシリーズもUSBトランスコーダで、新モデルHVL-Aシリーズ相当に

 富士通は、DTCP+クライアントを搭載した「ARROWS」のほか、パソコンの夏モデルでDTCP+に対応。14型ノートPCの「LIFEBOOK UH90/L」は14型/3,200×1,800ドットのIGZO液晶を搭載したUltrabookで、DTCP+クライアントとサーバー機能を搭載。「ESPRIMO FH78/LD」はデジタルチューナとリモートアクセス対応サーバーを搭載し、録画した番組を、DTCP-IP/+対応の「MyCloud」アプリにムーブして外出先からアクセス可能にする。

 ARIB(電波産業会)の規定では、受信機の機能としてDTCP+サーバーを搭載してはいけないとされている。そのためBDレコーダにDTCP+サーバーを内蔵した製品はない。しかし、「ESPRIMO FH78/LD」は録画用アプリとMyCloudが完全に別アプリとして動作しており、2つのアプリ間でのデータ転送はDTCP-IPムーブでのみ行なう仕様とすることで、1台のパソコン上で同規定の制限に準拠したとのこと。今後のアップデートにより、録画した番組を一定間隔でMyCloudに自動でムーブする機能も搭載予定としている。

ESPRIMO FH78/LD
LIFEBOOK UH90/L
ARROWS NX F-06E

(臼田勤哉)