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JリーグとDAZN、10年間で2,100億円の放映権契約。'17年からDAZNでJリーグ配信

 Jリーグとスポーツライブストリーミングサービス「DAZN(ダ・ゾーン)」は20日、2017年から10年間、約2,100億円の放映権契約を締結したことを発表。この契約により、2017年シーズンからサッカーJリーグのJ1、J2、J3各リーグの全試合が「DAZN」により生中継されることとなる。あわせてNTTグループも参加し、スタジアムのWi-Fi整備などの「スマートスタジアム」に協力していく。

左から、Perform Investment Japanジェームズ・ラシュトンCEO、Jリーグ 村井満チェアマン、NTT鵜浦博夫社長

 DAZNを運営するPerform Groupは、スポーツ関連のメディアやサービスを展開するデジタル・スポーツコンテンツ&メディア企業。新たにDAZNはそのライブ映像配信サービスとして、2016年夏にスタート。DAZNは、スマートフォンやタブレット、PC、ゲームプラットフォームなどからJリーグを視聴可能にする予定。価格や契約形態については、後日公開予定だが、「お求めやすい価格になる」(Jリーグ 村井満チェアマン)

'17年からDAZNでマルチデバイス配信。映像権利もJリーグが所有

 Jリーグは、Perform Groupの経験とデジタル技術を共有し、自ら試合中継制作に取り組んでいく。JリーグとDAZNは、NTTグループとJ1クラブのホームスタジアムや全国のスタジアムにWi-Fi環境整備や情報サービス提供などのICT化を推進。スタジアムでの視聴環境の質の向上や新たな体験創出など、Jリーグを更に楽しめる環境を整備するという。

 Jリーグが中継制作製作コストを負担することで、ライツ(権利)がJリーグに帰属することになる。そのためJリーグの映像を使ったプロモーション施策やソーシャル誘導なども可能になるという。また、試合日をチームの都合を配慮して調整可能になるのもJリーグやチーム側のメリットという。

新契約の5つの意味合い

スカパーとの関係は? JリーグもUFCも1プランで

 今回の契約は2017~2026シーズンの10年契約。日本国名における、インターネット・モバイル配信、IPTVサービス、有料サテライト放送、CATVなど。地上波と無料BSについては、NHKとTBS系の契約が維持される。

 Jリーグの村井満チェアマンは、「無料地上波と無料BSは(契約の)外側です。日本においては無料放送の視聴者がとても多く、そこから有料に繋げるという循環が重要になる。そこはPerformと共有・理解している。無料放送の視聴機会が従前どおり、あるいは従前以上に提供していきたいと考えている」と言及。

2017年以降のJリーグ放映権契約。無料BSや地上波は今回の契約の対象外
新しい契約では、制作費をJリーグが負担する分、試合開始時間や映像利用が柔軟に行なえる点が特徴

 今回の契約で影響を受けるのは、現在Jリーグを積極的に展開しているスカパーになりそうだ。スカパーとの関係について、Jリーグの村井チェアマンは、「いまのJリーグは、正直スカパーさんが育ててくれた。今後ともサブライセンスの形でお付き合いがあるかは、Performとスカパーの間の話し合いになるが、まだ申し上げられない。ただ、スカパーさんには本当に感謝している」と語った。Performでもテレビ向けの配信を実施予定だが、詳細はまだ明らかにできないという。

DAZNの利用イメージ

 なお、DAZNはJリーグのほか、バレーボールの「Vリーグ」、総合格闘技の「UFC」の独占ライブ配信を行なうことも発表済み。DAZNのJリーグプランやUFCプランといったコンテンツ毎の契約ではなく、「単純な、シングルプライスのサービスになる」という。

 DAZNを展開するPerform Investment Japanのジェームズ・ラシュトンCEOは、「DAZNはシンプルなプライスプランになる。J1リーグ、J2、J3に加え、UFC、Vリーグをワンプライスで提供する」と説明。スマートフォンやタブレット、PC、ゲームプラットフォームなどのマルチデバイス展開もアピールしている。

 なお、複数デバイスへの同時ストリーミングも可能で、例えばJリーグの別の試合を家族で見たり、JリーグとUFCを同時に見るといった使い方も可能という。画質について1080pのHD画質で提供予定で、デバイスにあわせて適した画質で配信する。技術的には4Kなど、より高画質なサービスにも対応可能としている。

6,000以上のライブイベントを配信

 コンテンツについては、Jリーグ、Vリーグ、UFCのほか、DAZNのサービス開始までの数週間でさらに拡充予定。「日本の消費者に受け入れられる人気スポーツを追加していく」という。また、料金プランについて尋ねられたラシュトンCEOは、「PRチームに絶対に言うなと言われているが、ディナーではなく、ブランチ的な価格になる」とコメントした。

スポーツを日本の成長産業に

 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の村井満チェアマンは、「Jリーグのスタートから、来年で25年。大きな転換点を迎えた。ワールドカップの連続出場も果たしてきた一方で、アジア各国の強化も急速で、アジアにおける日本サッカーの優位は相対的に失われつつある。観客動員は昨年に1,000万人を突破し、リーグ収益も過去最高となり、一見好調に見える。しかし、少し伸びて横ばいといった情勢だ。Jリーグは今一度、大きな成長を果たさねばいけない。『スポーツを日本の成長産業に』、Jリーグがその先駆けになる」と今回の契約の意義を強調した。

Jリーグ 村井満チェアマン

 大型契約により、Jリーグの経営課題克服につなげる方針。選手の強化や育成に加え、ソーシャル等を活用したマーケティングの高度化、スタジアム構想、アジア戦略、経営人材の育成などを課題に掲げる。

 このスタジアム構想を後押しするのがNTT。スマートスタジアム事業として、10年契約で、J1クラブのホームスタジアムのWi-Fi化を中心に全国のスタジアムのICT化を行なっていく。具体的には、スマートフォンやタブレットを用いた、ゲームのスタッツやリプレイ視聴などを展開するほか、デジタルサイネージを活かした試合観戦、スタジアム周辺の商業・観光施設間での相互送客などを想定している。

 NTTの鵜浦博夫代表取締役社長は、「『スポーツを成長産業に』というJリーグの目標を、お手伝いする。NTTの顧客だけでなく、オープンにサービス提供し、ビックデータをJリーグやクラブにお返していていく。黒子としてビジネスを行ない、スポーツビジネスの成功事例に取り組んでいく」と語った。

NTT鵜浦博夫社長

 まず、NTTがスポンサーとなっている、大宮アルディージャのさいたま市大宮公園サッカー場から順次スマートスタジアム化に着手。VR活用も予定しており、「VRでプロのPKを体験できるとか、そういうイメージ。サッカーだけでなく、野球やテニスのサービスの体験といったこともできるかもしれない」と語った。

 Perform Investment Japanのジェームズ・ラシュトンCEOは「DAZNはゲームチェンジャー(ルールを変えるプレーヤー)になる」と語り、マルチデバイス対応による幅広い視聴者の獲得や、スタッツと連携した映像の楽しみ方などを提案していくと説明。年間約6,000本のスポーツイベント配信を目指していくという。

Perform Investment Japanのジェームズ・ラシュトンCEO

 Jリーグの村井満チェアマンは、「2,100億円を超える放映権契約ということで、Jリーグがお金持ちになったと思われるかもしれないが、実力以上の期待に対し、借りを抱えているという心境である。投資に見合う価値を返して、Win-Winにしていかなければいけない。日本の様々なスポーツにも及ぶ問題で、ポジティブな意味で身の引き締まる思い」とコメント。また、「Performの収益ラインを超えれば、レベニューシェアにより利益分担する取り決めもしている」と説明した。