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銅製で4.4mmバランス、DSDネイティブ再生で30万円の「WM1Z」など、最上位ウォークマン

 ソニーはハイエンドウォークマン2機種を10月29日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は、アルミニウム筐体で内蔵メモリ128GBの「NW-WM1A」が12万円前後、無酸素銅で256GBの「NW-WM1Z」が30万円前後。DSDのネイティブ再生や新たな4.4mmの5極バランス接続端子を採用するなど、強化点の多いモデルになっている。

無酸素銅シャーシで256GBメモリ搭載「NW-WM1Z」

 ソニーでは、ウォークマン「NW-WM1A」と「NW-WM1Z」、ヘッドホンの「MDR-Z1R」、ヘッドフォンアンプ「TA-ZH1ES」の4機種を「ヘッドフォンによる音楽体験を“聴く”から“感じる”領域へ革新する、“Signature Series”」として訴求。ハイレゾ対応ウォークマンのラインナップは、「A」シリーズの上に「ZX100」と「ZX2」が存在するが、ZX2は終了。今後はZX100の上に、新モデルの「NW-WM1A」、ハイエンド「NW-WM1Z」がラインナップされる。

 WM1AはZX2と比べ、情報量やパワー感の向上をテーマに開発。WM1Zは、厳選したパーツを投入する事で、ナチュラルでアコースティックな領域の再現までこだわったモデルと棲み分けされている。2機種の違いは、内部パーツや筐体の素材で、プレーヤーとしての機能面はほぼ同じ。内蔵メモリはWM1Aが128GB、WM1Zが256GB。microSDカードスロットも備えている。

アルミニウム筐体で内蔵メモリ128GBの「NW-WM1A」
「NW-WM1Z」
「NW-WM1A」

高出力でDSDネイティブ再生対応

 ZX2はAndroid OSを採用していたが、WM1AとWM1ZはオリジナルのOSを採用する。ディスプレイは4型で、解像度は854×480ドットでタッチパネルタイプ。どちらのモデルも、ZX2などと同様に、ソニー独自のフルデジタルアンプ「S-Master HX」を搭載しているが、このアンプを新設計の新しいものに刷新した。

UIも新しくなった

 従来はPCMに変換していたDSD再生を、DSDのままネイティブ再生できるようになった。ただし、内部回路の制限で、ネイティブ再生ができるのはバランス接続時のみ。アンバランスイヤフォンを接続し、内部のアンバランス回路を使っている場合はPCM変換再生となる。バランス出力については後述する。

 再生対応ファイルはMP3/WMA/ATRAC/ATRAC AdvancedLossless/WAV/AAC/HE-AAC/FLAC/Apple Lossless/AIFF/DSD(DSF/DSDIFF)。PCMは384kHz/32bit、DSDは11.2MHzまで再生できる。

「NW-WM1Z」の内部基板

 新たなS-Master HXは出力も強化。従来のZX1/ZX2/ZX100は15mW×2ch(16Ω)だったが、これが60mW×2ch(16Ω)になった。この数値はアンバランス接続時で、バランス接続はさらに強力な250mW×2chとなる。これにより、鳴らしにくいヘッドフォンも、ポータブルヘッドフォンアンプを使わずに、ウォークマンだけでドライブできるようになったとしている。

中央の、四角いものが新しいS-Master HXのチップ

 非ハイレゾのデータも、ハイレゾ相当の音質に補正して再生する「DSEE HX」も引き続き搭載。新たに、曲の種類に合わせて補正をより最適に行なう機能を追加。スタンダード、女性ボーカル、男性ボーカル、パーカッション、ストリングスの楽曲種類に合わせて処理を行なう。

 イコライザも刷新。10バンドタイプとなり、「音質にこだわるユーザーも常時使用して抵抗感がない、高品質な信号処理を実現した」という。

 さらに、新機能「DCフェイズリニアライザー」を装備。アナログ方式のパワーアンプと同じ位相特性を、独自の音響処理で再現するというもので、デジタルアンプのS-Master HXでも、アナログアンプに近い、十分な低音感が得られるとする。効果は6パターンから選択可能。

新機能「DCフェイズリニアライザー」を装備

バランス出力に対応

 ステレオミニの出力に加え、バランス出力として4.4mmの端子を搭載。これは、JEITAが今年の3月に規格化したもので、サイズは4.4mm。プラグの長さは19.5mm。5極で、アサインは先端からL+/L-/R+/R-/グランドという並びになっている。

 規格としては「高耐久、高品位なプラグを設計しやすく、適度な力で抜き差しができる」のが特徴という。

NW-WM1Z。右が4.4mmのバランス出力
WM1Aに端子も同様だ

 今回のウォークマンで採用した4.4mmのジャックについてソニーの開発陣は、「(4.4mm 5極に対応した)日本ディックスさんのペンタゴンという端子を採用した。これは、接点が“コの字”のようにプラグと2点で接触するようになっている。通常の端子は1点で、プラグは先端から根本にいくにつれてインピーダンスが下がるものだが、2接点にする事で全ての部分でインピーダンスが揃っている。4.4mm 5極の規格に適応したプラグの中でも高音質なものだと考え、採用した」という。

操作性も改善。Bluetoothもサポート。

 操作面では、ディスプレイが新たにタッチパネル対応となった。OSを刷新し、UIも音楽再生に特化したものになっている。

 プレイ画面が中心で、上下左右のフリックで、再生リストやライブラリ、お気に入り楽曲のブックマーク、音質設定画面へと移動できる。また、どの画面からも再生画面とライブラリにジャンプできるショートカットボタンを配置した。

 再生画面はジャケット写真を中心とした標準的なものに加え、スペクトラムアナライザーを表示するもの、アナログメーター画面も表示できる。

 筐体の右側面に、ハードウェアのサイドキーも搭載。画面を見ずに、操作がしやすくなった。

「NW-WM1Z」の側面。ハードウェアボタンも備えている
「NW-WM1Z」の背面

 Bluetoothにも引き続き対応。対応機器と連携し、ハイレゾ相当の音質で伝送するLDACコーデックにも対応している。プロファイルはA2DP、AVRCP対応。

 底部にはWM-PORTを搭載。ここからのデジタル出力機能も強化され、DSDをデジタル出力可能になった。11.2MHzまでのDSD-RAW出力と、5.6MHzまでのDoP出力が可能。

 別売の出力用アダプタケーブル「WMC-NWH10」やクレードル「BCR-NWH10」を使い、ソニー製のUSB DAC搭載アンプに接続すると、DSDもデジタル伝送で再生できる。ポータブルアンプの「PHA-1A/2A」と、据え置き型アンプ「TA-ZH1ES」とは、専用ケーブルで接続可能。

WM1Zの底部。microSDカードスロットと、WM-PORTを載している

WM1AとWM1Zの違い

 WM1AとWM1Zの大きな違いは筐体の素材。WM1Aはアルミニウム筐体、WM1Zはシャーシの低インピーダンスを追求し、無酸素銅に金メッキを施したシャーシを採用。その上に無酸素銅版を設置、その上に基板、電池パック、リアパネルと重なる。

 無酸素銅は純度99.96%以上。切削加工が困難で、アルミの約1.5倍の加工時間がかかるが、音質を重視してあえて採用。「ZX2の開発が終了してから、様々な素材を試したが、無酸素銅をテストしたところ結果が良かった。しかし、無酸素銅そのままだと接触抵抗も高いので、純度約99.7%の金メッキを施した。磁気による音質への影響を防ぐため、メッキの下地には非磁性体の三元合金メッキを使っている」という。音質効果は「伸びのある澄んだ高音、クリアでより力強い低音域」を実現するという。

 WM1Aのアルミニウムシャーシも総削り出しで、音質効果と高剛性を両立。抵抗値を低減し、クリアで力強い低音を再生できるとする。

上の列がWM1Aの加工工程、下がWM1Zの行程だ
WM1A

 2機種共通の強化ポイントとして、電源を刷新。バッテリから電源を供給する大元の電源部に、大容量かつ低ESRの電機二重層キャパシタを採用。瞬間的に大電力を供給でき、急激な電圧降下を防ぐ事で、正確な信号が出力できるという。さらに、ヘッドフォン出力アップに対応するため、ZX2の約1.4倍の容量となる500mFと、約1/2のESR(35mΩ)を実現した。

 電源ラインはZX2の際に、線を太くして抵抗値を下げていたが、これを進化させ、ケーブルを増やして5本とした。保護回路基板のスルーホールも2倍にして、抵抗値を1/2にしている。

 WM1Zのアンプ部電源には、従来OS-CONではなく、新開発の高分子コンデンサ「FT CAP」を採用。開発に3年をかけたというもので、ウォークマンのために開発したと言ってもいいパーツだという。ボーカルや楽器の伸びの透明感向上、締りのある力強い低域を実現するとしている。

 WM1Zは信号経路もブラッシュアップ。アンプからヘッドフォンジャックの線材には、ソニーが高級交換ケーブルとして発売しているキンバーケーブルのケーブルを使用。アンプからジャック、そしてジャックからヘッドフォンまでを同じキンバーケーブルで揃える事もできる。ケーブルは4芯のBraid編みで、表現力豊かで上質な音質を実現するという。

WM1Zの端子部パーツ。内部配線もキンバーケーブルになっている

 WM1Aはヘッドフォン出力のLCフィルタに、大型高音質抵抗を採用。非磁性体銅メッキを使い、磁性歪も排除。高品質なメルフ抵抗も導入。熱雑音を抑え、ノイズレベルも低減させている。信号経路には、アンプからヘッドフォンジャックの線材に無酸素銅ケーブルを採用した。

 どちらのモデルとも、内部のレイアウトを工夫。アンプブロックと電源/デジタルブロックを分離し、穴ログイン/アウトを廃止。外部への出力はデジタルのみとした。音質のための最善の配置を追求した結果だという。

 クロックを最適化するため、新開発の、100MHz対応低位相ノイズ水晶発振器を、44.1kHz系と、48kHz系の2個搭載。サイズをZX2に使っていた3225サイズから、5032へと拡大。ノイズを受けにくいレイアウトが可能になったという。

 内蔵のリチウムイオンバッテリで動作。約7時間の充電で満充電となり、FLACの96kHz/24bit再生時は約30時間、DSDの5.6MHzでは約13時間の再生が可能。MP3 128kbpsでは約33時間。

 外形寸法は124.2×72.9×19.9mm(縦×横×厚さ)で、重量はWM1Aが約267g、WM1Zが約455g。

本体を仕舞ったまま操作できるリモコンやケースも

 オプションとして、WM1シリーズを操作できる小型リモコン「RMT-NWS20」も10月29日に発売される。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は5,000円前後。詳細は別記事で紹介しているが、ポケットやバックにウォークマン本体を収納したり、別売クレードルに装着した状態でも、手元でウォークマンを操作できる。

小型リモコン「RMT-NWS20」

 他にもオプションとして、ウォークマンを保護した状態でボタンや端子類にアクセスできるレザーケース「CKL-NWWM1」(10月29日発売/オープンプライス/実売10,000円前後)や、前面を保護するシート「PRF-NWH40A」(10月29日発売/オープンプライス/実売1,200円前後)なども用意する。

レザーケース「CKL-NWWM1」
ケースに入れたまま利用できる

先行展示や体験イベントも

 ヘッドフォン「MDR-Z1R」とウォークマンWM1シリーズ、ヘッドフォンアンプ「TA-ZH1ES」は、ソニーストア 名古屋/大阪/福岡天神にて、9月9日より展示。ソニーショールーム/ソニーストア 銀座では9月24日より展示する。

 さらに、発売に先駆け、10月1日にソニーストア 大阪、10月8日にソニーショールーム/ソニーストア 銀座、10月9日にソニーストア 福岡天神、10月16日にソニーストア 名古屋にて、MDR-Z1R/NW-WM1Z/NW-WM1Aの体験イベントも開催。アーティストがゲストとして登場、開発者とのトークイベントも予定されている。詳細は専用ページを参照のこと。