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「ソニーとは感動会社だ」。平井社長、営業利益5,000億円達成に自信

 ソニーは23日、経営方針説明会を開催。平井一夫社長 兼 CEOは、中期経営計画で目標に掲げた、2017年度のグループ連結で株主資本利益率(ROE)10%以上、営業利益5,000億円以上の達成に自信を見せた。「連結営業利益5,000億円は20年ぶりの高い利益水準で大きな挑戦だが、この5年間の取り組みで十分に狙える基盤は築けた。今年度は結果にこだわる重要な年になる(平井社長)」と語った。

平井一夫 社長 兼 CEO
利益創出と成長への投資フェーズ

筋肉質に生まれ変わったテレビ。ゲームが2本柱に

 平井社長は、社長就任から5年経ち、「新しいことに取り組む自信と、元気に満ちたソニーが戻ってきた実感がある。そのもっとも大きな要因は、長年苦戦が続いていたコンシューマエレクトロニクスの再生。『規模を追わず、違いを追う』という方針のもとで、安定的な収益貢献が行なえるようになった」と成果を強調した。

 長年に渡る赤字から、収益事業に変革した代表例として「テレビ」事業を説明。平井氏は、2011年4月に副社長として、テレビ事業を含むコンシューマエレクトロニクス全般を担当したが、「当時は2004年度から連続して多額の営業赤字が続いており、当社の最大の課題事業となっていた。'11年の11月に大きな戦略転換を発表し、『量の拡大』を改めて、『事業規模は半分以下でも、収益を均衡させられる体制に変革する』というものだった。当時は社内外でも疑問視する声が多かった。だが、'04年度から10年間で、8,000億円規模の損失を出していたテレビ事業が、昨年度は営業利益率5%まで回復した。顧客層を絞り込み、販売台数を引き下げて、販売会社を含む固定費を削減、液晶パネルは生産会社への出資を解消し、複数企業からの調達体制に改めた。一方で、音と映像にとことんこだわり、徹底的な作りこみを続けてきた。有機EL、液晶ともに他を凌駕する商品を提供できると自負している。平均単価は'14年度の57,000円から'17年度は67,000円まで上昇する見通し。商品力を強化したうえで、地域や販路を思い切って選択と集中を実施し、本社費用の削減とあわせて収益を改善した。今考えれば、事業運営の基本施策だが、事業トップが強いリーダシップを示したこと、社員一人一人が、ソニーのテレビを復活させることに取り組んだ成果。相当筋肉質な事業に転換できた」と語った。

コンシューマエレクトロニクスの再生

 今後のテレビ事業については、一部地域ではシェア拡大を目指す。「安定してきたので、地域を限って勝負をかける市場もある。ただ、全ての地域でシェアを取るのではなく、伸ばせるところで伸ばす。地域性にあったところで攻める。具体的にはアジア。特にインド市場は支持されているのでラインナップ強化やマーケティング投資を続けていく。テレビのビジネスを伸ばしていきたい」と語った。

テレビ事業の営業損益推移

 テレビ事業の“お手本”としたのが、デジタルイメージング事業。台数ベースでの市場の規模が縮小する中で、レンズ交換型の付加価値強化や高級コンパクトのRX100シリーズなどを強化。RX100シリーズの「デザインや大きさを変えない」は、平井氏の意向によるもので、「こうしたこだわりが商品力を増していく」とした。なお、3年前のPC事業の撤退については、「ソニーとしてテレビは違いで勝負できるが、PCは難しいと考えた。重い決断だったが、それが判断の理由」と説明した。

 またエレクトロニクスの課題に挙げるのが、モバイル・コミュニケーション分野。徹底的な構造改革や販売地域の絞り込みで、2016年度の黒字化を達成した。「商品力、オペレーション力は着実に向上した。スマートフォンは、最もお客様との接点が多い『ラストワンインチ』商品。カメラを中心に、ソニーの最新技術の粋を集めて違いを出せると考えている。一方で、もっとも変化の大きな分野。IoTなどの新規領域の環境とあわせて、急速な変化に迅速に対応できるよう、事業運営していく」とする。

 来年度以降の高収益に向けてのカギとして説明したのは、コンシューマエレクトロニクスの安定的な収益に加え、ゲーム&ネットワークサービス分野の収益拡大や、モバイルイメージセンサー復活、音楽・金融分野の収益貢献を目指す。

第二次中期経営計画の達成に向けて

 最大の成長分野と見込むゲームは、今期のPlayStation 4販売台数が1,800万台で、年度末には累計7,600万台を達成見込み。PlayStation Networkの月間アクティブユーザー数は7,000万人、合計滞在時間は6億時間以上。PlayStation VRについては、「当初は品薄だったが、2月から増産し、解消に努めている。ゲーム数は100本を超えているが、ノンゲームの開発も推進している」と説明。「連結において、これまでは金融が安定して収益貢献してきたが、今年度はゲーム分野も同レベルの収益貢献を期待している。1993年に生まれたゲーム事業が売上2兆円規模で、収益でもグループの柱に成長したことは、ソニーグループの大きなマイルストーン」と語った。

PS4プラットフォームの拡大

 デバイス領域については、強みのある事業にフォーカス。カメラモジュールは、昨年度の構造改革で、熊本の外販向けカメラモジュールの開発・製造中止と、中国広州の生産工場を売却。主力のモバイル向けイメージセンサーは、昨年前半は供給が足りず、後半はハイエンド向けの販売が低迷し、業績が悪化した。この状況を受けて、中国系メーカーとの連携を強化し、業績を改善。さらに、モバイル市場においては、複眼化の加速やフロントカメラの高画質化、動画性能重視などがトレンドとなっており、「これらはまさにソニーが強みを発揮できる製品領域が拡大していることを示している。今期は大幅な収益改善を見込んでいる」とし、熊本地震からの復活をアピールした。

イメージセンサーは、ソニーの“強み”が市場トレンド

 音楽分野においては、アデルやビヨンセらのヒットで、収益貢献。日本においては、アニメやライツビジネスの強化などを図っていく。金融分野も顧客との接点を持つ「ラストワンインチ」の重要事業と位置付ける。

 「喫緊の課題」と語るのが映画分野。昨年度1,121億円の減損を計上し、中期経営計画の上でも未達となっている。「ネットワーク配信時代に、魅力的なコンテンツの需要はかつてないほど高まっている」として、SPEのアンソニー・ヴィンシクエラ新CEOのもと、改革を進める。

「ラストワンインチ」で勝負。ソニーとは何か? 「感動会社だ」

 2018年以降の持続的成長に向けては、(1)コンシューマーに向き合い、お客様に感動をもたらす“ラストワンインチ”の存在「KANDO@ラストワンインチ」であり続ける、(2)リカーリングビジネスモデルの強化、(3)ソニーが持つ多様性と新しい事業への挑戦の3点を強調した。

「KANDO@ラストワンインチ」であり続ける

 KANDO@ラストワンインチについては、Xperiaやα9、有機ELテレビのBRAVIA AE1などを挙げて説明。グループ一体での取り組みとしては、VRを「新たな事業ドメインに育てる」とし、PlayStation VRだけでなく、SPEやSMEの制作事例を紹介した。

グループ一体でVRに取り組む

 また、(顧客基盤から定期的に収益を得ていく)リカーリング型事業の比率も拡大。メディカル事業や、SAPによる新規事業創出などに取り組む。AI・ロボティックスの融合による複数プロジェクトも進行しているが、「商品化まで一定の時間が必要なため、詳しい説明にはもう少し時間の猶予を」と語った。

 2018年以降の新中期経営計画は、ソニーモバイルコミュニケーションズ代表取締役社長で、6月15日にCSO(チーフ・ストラテジー・オフィサー)、中長期経営戦略、新規事業担当に就任予定の十時裕樹氏が中心となり策定する。

 十時氏の起用について、平井氏は、「これまでの改革をリードし、新規事業を含めソニーモバイルと連携できる。エレキの経験があるし、ソニーバンクやSo-netなどエレキ以外のビジネス立ち上げにも携わってきた、多様化するソニーのなかで、いろいろな事業会社やエレキ以外との連携について、一番適任と考えている」とした。

 平井社長は結果にこだわる姿勢を強調、「2017年度は着実に目標を達成する。達成後もソニーは高収益を持続できなければいけない。営業利益5,000億円は20年ぶりの水準だが、複数年にわたって継続できたことは、71年間のソニーグループの歴史で一度もない。ソニーグループ、各事業それぞれが、現状維持ではなく、新しい取り組みが不可欠。執行役9名がそれぞれの担当領域で、明確に経営責任を果たす体制ができ、SONY、ソニーの元で連携、協力する体制が整った。経営陣と全社員がOne Sonyで取り組んでいく」とアピールした。

 質疑応答で、「ソニーは何会社だと思いますか? 」と問われた平井社長は「一言でいえば、ソニーは感動会社。ソニーピクチャーズは映像コンテンツを通して感動を、ソニー生命は生命保険の新たな提供の仕組みで、エレクトロニクスはハードウェアを通じて感動をお届けする。感動をお届けするのが一番の上位概念にある」と答えた。

ソニーのミッション「ユーザーの皆様に感動をもたらし、人々の好奇心を刺激する会社であり続ける」