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ソニー平井社長退任。新社長 兼 CEOに吉田憲一郎氏

 ソニーは、4月1日付で平井一夫 社長 兼 CEOが退任し、新CEOに現副社長 兼 CFOの吉田憲一郎氏が就任する人事を発表した。平井CEOは、4月以降は取締役 会長となる。また、現執行役 EVP CSOの十時裕樹氏が、代表執行役 EVP CFOに就任する。

ソニー 平井一夫 社長 兼 CEO(左)と新社長 兼 CEOに就任予定の吉田憲一郎CFO
ソニー 平井一夫 CEO(1月のCESで撮影)

平井CEOのコメント

2012年4月より、社長 兼 CEOとして「ユーザーの皆様に感動をもたらし、人々の好奇心を刺激する会社であり続ける」ことをミッションに掲げ、ソニーの変革と収益力強化に邁進してまいりました。第2次中期経営計画の最終年度となる今年度において、目標として掲げた経営数値を上回る業績を見通せるまでになったこと、そして多くの方に元気なソニーが戻ってきたという感触を抱いて頂けるようになったことを大変嬉しく感じています。新しい中期経営計画がはじまるこのタイミングで、新しい経営体制にバトンタッチすることが今後のソニーにとって、また私自身の人生においても、適切であると考え、社長 兼 CEOからの退任を決断しました。後任の吉田憲一郎は、2013年12月にソニーに復職して以来、CFO としての役割に留まらず、私の経営パートナーとして、ソニーの変革を一緒に先導してくれました。吉田は戦略的な思考と目標達成に向けた強い意志、そしてグローバルな視座を持った経営者です。多様な事業領域に及ぶ幅広い知見、経験、そして強固なリーダーシップは、これからのソニーを牽引するのに最もふさわしい人物と考えています。私も、吉田を中心とする経営体制が着実に軌道にのり、成功するよう、今後は会長という立場でサポートしてまいります

新CEOに就任予定の吉田憲一郎 副社長 兼 CFO(2017年5月撮影)

吉田憲一郎 新CEOのコメント

社長 兼 CEOを拝命するにあたり、平井及び取締役会からの信頼に感謝すると同時に、大きな責任を感じています。平井が主導して築き上げた経営基盤を引継ぎ、ソニーがグローバル企業としての競争力を高め、長期的な収益成長を実現する企業となるよう、ソニーグループの経営陣と社員と共に、更なる改革に取り組んでまいります。まずは、4月から始まる新たな中期経営計画、そして2018年度の事業計画をしっかりと固め、着実に実行していくことに注力します。ソニーの「これから」を、経営陣と一緒に考え抜き、様々なステークホルダーの皆様のご期待に添うことができるよう、そして『より良いソニー』を創っていくために全力で取り組んでまいります。

 取締役会議長で、指名委員会 議長の永山治氏は、「平井さんから、今期を以て社長 兼 CEOを退任したいという申し出を受けたときは複雑な思いでしたが、何度かお話をさせて頂き、取締役会としても本人の決断を尊重することにしました」と、平井氏から退任の申出があったことを紹介している。

 また、現モバイル・コミュニケーション事業担当 十時氏の代表執行役 EVP CFO就任に伴い、イメージング・プロダクツ&ソリューション事業担当の石塚茂樹執行役 EVPが、モバイル・コミュニケーション事業を担当。ストレージメディア事業も石塚氏が担当する。

ソニーがソニーであるために。「短い時間軸では私」と吉田新社長

平井一夫 社長 兼 CEO

 平井社長は、「2012年の就任以来、どこで退くかは常に考えてきたが、中期経営計画(2015-2017年)の最終年度となる段階で引き継ぐことが、ソニーの経営にとっても、私の人生にとっても最適であると決断した。昨年末に指名委員会 議長の永山さんに切り出し、指名委員会で議論していただき、私の意志を尊重していただいて感謝している。'12年のCEO就任以降は、コンシューマエレクトロニクスの再生を目指し、また、『ユーザーの皆様に感動をもたらし、人々の好奇心を刺激する会社であり続ける』というミッションを掲げて、中期経営計画に取り組んできた。全速力で走ってきたが、その中では社員や株主、ユーザーなどのステークホルダーにとって、厳しい判断を下さねばいけないこともあったが、ソニーの将来につながると信じて変革を実行してきた。ソニーがソニーであり続けるために、新しいことにチャレンジし、お客様に感動をもたらす製品、サービス、コンテンツとはなにか、に取り組んできた。その結果として、今年度には目標の経営数値の達成を見通せるようになった。社内外に『元気なソニーが戻ってきた』といっていただけることをうれしく思う。お客様、全社員のおかげ。吉田は、戦略的な思考と目標達成に向けた強い意志、強固なリーダーシップを持った経営者。私が推薦し、全会一致で取締役会で承認された。吉田の元、新たな経営体制が成功するようサポートしていく」とした。

 新社長に就任する吉田CFOは、「ソニーの社長 兼 CEOを拝命し、責任を痛感している。2013年にSo-netから復職。平井から『経営改革を手伝ってほしい。問題を先送りしない』と言われ共感した。以来、自分のキャリアで様々な経験をさせてくれたソニーに恩返しをしたいという思いで取り組み、中期経営計画を達成できることはうれしく思う。今年度の数字が目標を上回り、20年振りの最高業績を見通せるようになった。逆に言えば『ソニーは過去20年間自分自身を超えられなかった会社である』ともいえる。グローバルで事業環境は変わっており、20年前と世界市場の位置づけは大きく異なる。ソニーの強みを生かして、グローバルな企業として成長していく」と意気込みを語った。

吉田憲一郎 副社長 兼 CFO

 平井社長が、自ら退任を申し出て、後継に吉田CFOを任命した形だが、その理由について、「なぜ今なのか。好業績の時に新しいCEOにバトンを渡すべき。また自分のライフステージの中でも、新たなことに取り組むべき、と考えた。吉田とは、何をすべきかという考え方がよく似ており、強固なリーダーシップがある。様々なビジネスモデルを勉強し、幅広い知見がある。だから最適と考えた」という。

 なお、平井体制を長期間にわたり支えた吉田CFOは、平井社長より一歳年長。若返りにはならないが、吉田氏は「(指名委員会で)短い時間軸では私、となったとは聞いている」とコメントした。

「九州(熊本)出身者として、どういう性質と自己分析しているか」という、予想外の質問に答える吉田CFOと見守る平井社長

 平井社長の会長 兼 取締役就任は、吉田氏と取締役会の要請で、「エンタメ、ゲーム、ネットワークサービスをお手伝いする。あるいは現地のエンタメ法人などの事業について吉田さんにアドバイス、補佐するという位置づけ。あとは、ダボス会議などのイベントに、吉田の要請があればソニーを代表していく。私のポジションは吉田さんのサポート。ソニーグループの経営トツプは4月1日からは吉田さん。吉田さんと吉田さんのチームで経営していただく」と、今後の活動について説明した。

 ソニーグループの今後の課題について、平井社長は、「競合にもいろいろな戦略、製品、サービスがある。ただ、20年ぶりの好業績で、社員の気持ちが緩んでしまう。危機感がなくなるのが課題だと認識している」と説明。吉田CFOも「ほぼ同じ。また、バランスシートの改善は緒についたばかりで、グローバルな競争力も必要。時価総額がすべて、ではないですが、世の中を見るとまだ足りない。グローバルなトップ企業はすべてテック企業で、ソニーはテックの会社(だがトップ企業には至っていない)。そこに対する危機感がある」とした。

 吉田CFOは、経営で重視することについて、「方向性を決めること、決めたことの責任を取ること。逆に言えば、決めなくていいことは部下に任せる。最後に大事なのは人事」とコメント。お気に入りのソニー製品については「いまはaibo」と語り、今後の展開については、「お客様に感動をお届けする、というミッションは変わらないが。ただ、より、クリエーターに近づく必要があるという意味では、BtoCだけでなくBtoBも強化する」とした。

 また、「平井ほどのカメラオタクではないので、同じように細かく指摘していくことはできないが、製品は好きでゲームも好き。(顧客との接点が多い商品)『ラストワンインチ』という考えは共有しており、そこにコミットしていく」と語った。