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スマートスピーカーやUSB-Cなど、クアルコム新オーディオ技術が生む“次の進化”
2017年6月20日 19:21
クアルコムは20日、スマートスピーカーやワイヤレスヘッドフォン向けのプラットフォーム、次世代DDFAオーディオアンプ技術などの説明会を開催。同社シニアバイスプレジデント兼Voice & Musicビジネスユニットのジェネラルマネージャーを務めるAnthony Murray氏と、クアルコムCDMAテクノロジーズの大島勉マーケティングマネージャーが、オーディオやオーディオ関連IoTソリューションの市場動向と、同社の新たなプラットフォーム/チップの特徴などについて解説した。
Bluetoothヘッドフォン/スピーカーや、スマートスピーカー、ホームシアターなどの製品/ソリューションを含むVoice & Music事業を統括するAnthony Murray氏は、業界を取り巻くトレンドとして、音楽配信のダウンロードからストリーミングへの移行により、ネット接続などの“コネクティビティ”の重要性が高まっていると強調。
また、「18カ月前は有線だったものが現在はワイヤレスに置き換わるなど、急速に人々のワイヤレス製品への志向が高まっている。音質も有線に匹敵するまで向上している」との認識を示したほか、ステレオミニのヘッドフォン出力を持たないスマートフォンの製品化も、ワイヤレス化の必要性の高まりを後押ししているという。
さらに、最近ではAmazonのEchoやGoogle Homeといったスマートスピーカーにより、音声で様々な機器を制御するという動きが生まれたことに対し、「クアルコムは音声制御を可能にするため、メーカーの製品化に対して技術提供している」とした。
音声コントロールなど、Bluetoothヘッドフォン/スピーカーの処理能力向上
クアルコムでは、各ジャンルにおいて、多機能かつプログラマブルでメーカーが自由に設計できるプレミアム製品と、メーカーによる設計自由度は少ないものの、すぐ製品化できるエントリー製品の2ラインに分けて説明。
ヘッドフォンやスピーカーのプレミアム製品向けSoC(System On a Chip)である「CSRA68100」は、DSPの処理能力を前世代の「CSR8675」から4倍向上。CPUとDSPをそれぞれ2基備え、1つのCPUでBluetoothを、もう1つのCPUはメーカーが自由に設計して使える構成。従来のCPU/DSP各1基という構造から処理能力を大幅に向上させた。
1チップで、高音質なオーディオ再生と、ボイスコントロール、エコーキャンセリング、センサーからのデータの処理、オーディオのポストプロセッシングをカバー。例えば、スピーカーで音楽を聴きながら、音声コントロールでキーワードを検出するといった複雑な処理を可能にするという。
一方、エントリー製品の「QCC3xxx」シリーズでは、より低価格なBluetoothヘッドフォン/スピーカーなどを実現でき、aptXオーディオ、cVcノイズキャンセレーション技術、TrueWireless Stereoなどにも対応する。
有線のソリューションでは、USB Type-C対応のSoCとして、プレミアムの「WHS9420」とエントリーの「WHS9410」を導入。WHS9420はUSB接続で192kHz/24bitのオーディオ出力と、アクティブノイズキャンセリング(ANC)に対応。WHS9410はエントリー製品ながら、高品質なオーディオパフォーマンスを実現するという。
WHS9420の出荷時期については「次の四半期」(Murray氏)と説明。このチップを搭載したUSB Type-Cヘッドフォンがメーカーから製品化される時期の目安としては、来年の中ごろを見込んでいるという。
DDFAは1チップ統合でDSDネイティブ対応、スマートスピーカー展開も
ワイヤレススピーカー、サウンドバー、ネットワークオーディオ、ヘッドフォンアンプなどのオーディオ機器向けオーディオアンプ「DDFA」(Direct Digital Feedback Amplifier)の第2世代の大きな特徴は、DSDのネイティブ対応で、5.6MHz再生までサポート。PCMは384kHzまでの入力に対応する。
さらに、従来は2チップ構成だったが1チップに統合したことで、周辺回路もシンプルとなり、ハイエンド製品だけでなく、モバイルを含む幅広い製品での活用が見込めるという。SN比とダイナミックレンジは最大113dB、全高調波歪率+ノイズは0.002%以下で、「シンプルな構成になっても音質は妥協しない」(Murray氏)としている。
ネットワーク接続対応のスマートスピーカー開発を加速できるという「Smart Audio Platform」は、2017年第3四半期に提供開始予定。Snapdragonのアプリケーションプロセッサとして「APQ8009」と「APQ8017」の2種類のSoCを用意。なお、APQ8009はLINEのスマートスピーカー「WAVE」にも採用されている。
同プラットフォームの製品は、DDFAやノイズキャンセリング、Wi-Fiマルチルーム再生のAllPlayの各技術に対応する。aptX HDもサポートし、Bluetoothで24bitの高精細なワイヤレスオーディオ伝送も実現可能。音楽再生のほか、ボイスコントロールやボイスアシスタント、VoIPなどをサポートし、ソフトウェアの設定により、製品のクラスに合わせた開発を可能としている。
スマートスピーカーだけでなく、サウンドバーやネットワークオーディオ製品開発への活用も想定。サウンドバーを音声コントロールで制御するといったことも可能にするという。サウンドバーには、ドルビーやDTSなどの信号処理に高い処理能力のDSPが求められるが、同プラットフォームを提供することで、メーカーの開発負荷の低減や期間の短縮に貢献するという。
「高品質」と「柔軟性」で需要に応える
ワイヤレス技術では、低遅延技術のaptX Low Latencyがプレミアム製品に搭載される一方で、エントリー製品には搭載されないが、例えばビデオ再生時の音声遅延については、映像を音声に合わせて遅らせることで同期可能な技術をSnapdragonに搭載しているという。こうした同社製品の連携により、製品の価格やクラスに応じた機能をフレキシブルに提供可能としている。
Anthony Murray氏は、今後もオーディオ関連製品でリードしていくための要因として、これまで培ってきた「高品質なオーディオ技術」に加え、「プラットフォームの柔軟性」を挙げ、「ワイヤレス/ワイヤードを含め、それぞれのオーディオ技術へ積極的に開発を続ける」としている。