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ゴーグル不要で“乗れる8K VR”を体験。座席が動くリアルVRが10月一般公開

 NHKエンタープライズ、NHKメディアテクノロジー、レコチョク・ラボ、WONDER VISION TECHNO LABORATORYは、8K映像をドーム型ワイドスクリーンに映し、座席が動くモーションライドと5.1ch音声を組み合わせた「8K:VR Ride featureing “Tokyo Victory”」(8K:VRライド)を、10月27日~29日に開催される「DIGITAL CONTENT EXPO 2017」(DCEXPO 2017)にて一般公開すると発表した。この公開に先駆けて、実際に8K:VRライドを体験できたので、その内容をレポートする。

 「8K:VRライド」は、東京をテーマに、過去から現在、2020年に向かう様子を時空移動しながら、8Kによる実写とCGを組み合わせた映像を、5.2×2.6×3.4m(幅×奥行き×高さ)のドーム型ワイドスクリーンとモーションライドで体験できるもの。視界を覆うような映像で、ヘッドマウントディスプレイを使わずに“TOKYOバーチャル体験”をVRで実現するのが特徴。2人で並んで座って体験できる。

8K:VRライドのシステム
スクリーンの中央が奥まっているドーム型

 映像に合わせて流れる音楽は、サザンオールスターズの楽曲「東京VICTORY」。この8K:VRライドは、3月12日~15日に米テキサス州オースティンで開催された「SXSW 2017」(サウス・バイ・サウスウエスト)で世界初披露されたもので、日本での公開は初となる。

東京の街と空を駆け抜ける感覚。人が行けない場所もVRで

 細かい説明を聞く前に、まずは実際に体験。映像に合わせて座席が動くため、着席後はまずシートベルトを締める。「映像に合わせて揺れる」程度かと思っていたが、体験がスタートすると座席が上昇し、足がつかないブランコのような状態になる。念のため、シートベルトをもう一度しっかり締め直した。

座席

 首都高を、車より少し上の視点から眺めつつ駆け抜けるような映像からスタート。道路に合わせて左右に傾くだけでなく、細かな振動なども伝わり、風を感じながら高速で飛んでいるような感覚が味わえる。

 渋谷スクランブル交差点や東京スカイツリーなど、東京のいくつも街並みを巡り、行き交う多くの人々などを眺めたり、空へ急上昇するなど、次々と風景が変わっていく。面白いのは、座席が激しく揺れるわけではないのに、スピード感のある映像や音楽と組み合わせることで、建物と建物の間をジェットコースターで駆け抜けるような爽快感があること。こうした興奮を味わいながら、東京の見どころを短い時間で凝縮して楽しむような体験ができた。

 体験時間は5分前後だが、上記以外にも様々な内容の映像があり、VRでしか味わえないような、人が実際は行けない場所へ飛び込んでいくシーンも見どころ。事前に情報として知っていたことと、実際に座って体験するのでは大違いだった。座席の後ろから撮影した動画も掲載しているが、実際の体験とは全く異なり、体験してみないとわからない感覚だ。

8K:VRライド体験(オープニング)
8K:VRライド体験(東京の街並みと上空)

8K VR体験を複数人で共有

 今回のコンテンツは、8Kスーパーハイビジョンを推進するNHKグループであるNHKエンタープライズとNHKメディアテクノロジーが、放送以外の8Kコンテンツとして企画。ゴーグルなどを被るコンテンツとは別の楽しみ方として、複数で同時にVRが手軽に体験できることを目指して開発したという。

 映像システムの「Sphere 5.2」を開発するWONDER VISION TECHNO LABORATORYの技術をベースとし、映像はJVCの8Kプロジェクタで投写、ミラーで反射してドーム型スクリーンに表示する仕組みとなっている。

 このプロジェクトに、レコチョクの研究・開発機関であり、ライブVRコンテンツの撮影/制作や、VR次世代技術を駆使した立体的な360度映像制作などを手掛けるレコチョク・ラボも参加。VRコンテンツの可能性について検討していくという。

 サザンオールスターズの「東京VICTORY」については、「東京オリンピック開催決定をきっかけに、過去から現在、そして未来へと移りゆく東京の姿に思いを馳せた楽曲」として起用されたという。

JVCの8Kプロジェクタ
ミラーで反射してスクリーンに表示

 映像をドーム型のスクリーンに合わせた形にする必要はあるが、このSphereの特徴は、通常の16:9映像を、ミラー(凸面鏡)によって湾曲させることで、VRコンテンツとして活用できる点。プロジェクタなどにも特別な変更は必要なく、より簡単にVRコンテンツを制作可能としている。再生はグラフィックカード装着のワークステーションで行ない、DisplayPort 1本でプロジェクタに出力している。

 今回のコンテンツで使われたのは、8K解像度のCGと、タイムラプス撮影した8K静止画。地図などに使われる精細なデータを使ってスカイツリーなどの建物を表現。これまでも、4KやHD解像度で同様のコンテンツを制作してきたが、8Kを採用したことで、近くに寄った映像でもリアルさが損なわれず、より没入感を高められるという。

 ドームスクリーンを裏側から見ると、半球形の金属の塊のような見た目で、まるで深海にでも潜れそうな外観。頑丈そうな見た目だが、組み立ては3~4時間ほどで行なえるとのことだ。

ドームスクリーンの裏側

 今回の内容は、前述のとおり10月27日~29日に開催される「DCEXPO 2017」で体験可能。同時に2人までの体験のため、予約制などのシステムになるかもしれないが、詳細は今後発表するという。

 今後の検討課題としては、2人よりも多くの人数で体験できることや、人によって目線の位置が違うため、Sphereのシステムに合わせた映像制作のノウハウを蓄積していくことなどが挙げられるという。

 この仕組みを活用して、ゲームのように搭乗者が操作して座席や映像が動けば、8Kのリアルさがさらに実感できて面白そうだが、そうしたインタラクティブな動作についても検討しているとのこと。今後の進化も楽しみだが、まずは10月のDCEXPO 2017で、新たなVR体験を味わってみることをおすすめしたい。