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Technicsターンテーブルの頂点「SL-1000R/SP-10R」。“測定限界”の安定回転

 パナソニックは、Technics(テクニクス)のリファレンスクラス新製品となるダイレクトドライブのターンテーブルを5月25日に発売する。価格は、ターンテーブルシステムの「SL-1000R」が160万円、旧モデルSP-10MK2またはMK3ユーザー向けに、手持ちのキャビネットに格納できる「SP-10R」が80万円。いずれも受注生産となる。

ターンテーブルシステム「SL-1000R」

 テクニクスのターンテーブル最上位モデルで、約50年の伝統を持つダイレクトドライブ方式を継承しつつ、新開発した高い回転精度のモーターや、安定した回転の重量級ターンテーブルプラッターなどを搭載し、「圧倒的な性能で頂点の音を極める」という。

ターンテーブル単体の「SP-10R」

 新規ユーザー向けのSL-1000Rは、ターンテーブルとコントロールユニット、キャビネット(トーンアーム付き)で構成し、手持ちのアンプなどのシステムと組み合わせて利用できる。SP-10MK2/MK3ユーザー向けのSP-10Rは、SL-1000Rに含まれるコントロールユニットとターンテーブルのみ。いずれも、ヘッドシェルやカートリッジ、フォノケーブル(DIN端子)は別売。

左がSP-10R、右がSL-1000R

高トルクモーター、重量級プラッターなど新開発。ワウフラッターは“測定限界”

 新開発のコアレスダイレクトドライブモーターは、両面にコイルを配置し、12極18コイルで駆動。約7.9kgの重量級プラッターを駆動する高トルクを実現した。また、両面コイルを60度ずらして配置することで微小な振動を抑制。相互干渉を低減した。これらの効果でワウフラッターが測定限界の0.015%という安定回転を実現している。

新開発のコアレスダイレクトドライブモーター
モーターの内部構造

 プラッターは、真鍮とアルミダイキャスト、高減衰ラバーの3層構造。真鍮部分には12個のタングステンのウエイトを外周部に埋め込み、大きな慣性モーメントを獲得。なお、タングステンは希少金属だが、パナソニックは照明器具も手掛けていることから入手できたという。鉄の2倍以上という比重の大きなタングステンを配置したことで、慣性出力は約1tを実現。振動減衰特性も既存モデルのSP-10MK3やSL-1200GAE/Gに比べ改善している。

プラッター部
プラッター部の構造と振動減衰特性

 コントロールユニットは別体で、同梱ケーブルによりターンテーブルと接続。コントロールユニット側のノイズがターンテーブル部に伝わるのを防いでいる。有機ELディスプレイを備え、コンマ2ケタ制度で回転数を表示できる。表示は、回転数だけでなく従来のようにパーセント表示LP盤の33 1/3回転やEP盤(45回転)のほか、SP盤(78回転)も選択できる。別売フォノイコライザとは金メッキのDIN端子で接続。

コントロールユニット
回転数をリアルタイム表示。ターンテーブルの回転を指で押さえると回転数表示も変わる
パーセント表示も可能
コントロールユニット背面

 SL-1000Rに含まれるトーンアームは、高精度ベアリングやマグネシウムパイプを使用。既存モデル1200Gの内部配線は一般銅線だが、1000RはOFCを使用。有効長は254mm、高さ調整は0~15mm、ハウジング部はアルミ削り出しとなっている点も1200Gと異なる(1200Gは有効長230mm、高さ調整0~6mm、樹脂+シールド構造)。サブウエイトは小、中、大の3種類。

トーンアーム部

 トーンアームベースを別売でも用意し、最大3本まで装着可能。他社製を含む様々なトーンアームの使い分けなどができる。テクニクス用のほか、SME、Ortfon、JELCO、IKEDA、そのほかのトーンアーム用(穴なし)のベースを販売し、価格は各10万円。

SL1200Gのトーンアームと比較
トーンアームを最大3本装着可能
トーンアームベース部は着脱可能

 筐体は、切削アルミ板(25mm)とアルミダイキャスト、BMC(バルクモールドコンパウンド)、切削アルミ板(30mm)、BMCの5層構造で剛性を向上。インシュレータ部は、高剛性の一体加工ボルト、シリコンラバー(αGEL)、チューブ、ハウジング、クッションで構成し、外来振動を遮断する。

ダストカバー装着時

 メインユニットの外形寸法/重量は、SL-1000Rが531×399×188mm(幅×奥行き×高さ)/約40.2kg、SP-10Rが外形寸法/重量が365×365×109mm(同)/約18.2kg。コントロールユニットは共通で、外形寸法110×350×84mm(幅×奥行き×高さ)、重量約2.1kg。

テクニクスを象徴するSP-10が最新の技術で再び

 テクニクスブランドのこれまでの取り組みと、新モデルの特徴について、パナソニック アプライアンス社 テクニクス事業推進室 テクニクスCTOの井谷哲也氏が説明。

テクニクスCTOの井谷哲也氏

 1965年に生まれたテクニクスブランドは小型スピーカーから始まり、その存在感を高めたのが1970年の世界初ダイレクトドライブターンテーブルSP-10だった。「業界の常識を覆す性能で、テクニクスの名前を全世界に知らしめた。そのSP-10が(新モデルのSP-10Rとして)復活するのは意義があること」とした。

 1970年のSP-10MK2は、クオーツクロックのPLLクロックにより安定性を高めたのが特徴で、英BBCなどでも認められ、全世界の放送局で使用されたという。また、1981年のSP-10MK3は、超重量級プラッタをカッティングマシン用に設計された超高トルクのモーターで駆動するモデルとして登場した。

これまでのSP-10シリーズ

 '16年にターンテーブルSL-1200シリーズの新機種が登場した時に、要望が高かったのがSP-10の復活。現在でもユーザーは多く、「(SP-10が)新しい技術で復活してほしいという声が上がっていたという。

1970年の試作ダイレクトドライブモーター(左)は現在でも動作
往年のテクニクスターンテーブル
復活後のテクニクス製品

 アナログレコード市場は、2017年に国内で2001年以来の販売枚数100万枚超えとなった(レコード協会調査)ことを挙げ、「アナログ復活は、テクニクスブランドの復活した当初から顕著だった」と説明。

アナログレコード市場(出典:日本レコード協会)

 テクニクスブランドは'14年に復活して以来、最高峰であるリファレンスクラスの製品で「至高へのあくなき挑戦」、ターンテーブルなどのグランドクラス製品で「次世代のHi-Fiを創造」、よりカジュアルなプレミアムクラス製品で「音楽を愛する全ての人へ」といったそれぞれのコンセプトで展開。

 ターンテーブルは、50周年記念モデルとして'16年6月に国内限定300台で発売した「SL-1200GAE」が4月の予約開始から30分で完売。同年9月のSL-1200Gも高評価を受け、'17年5月発売のSL-1200GRも15万円を切る価格で販売は好調だという。

 マーケティング活動としては、パナソニックセンター東京/大阪に試聴ルームを常設しているほか、“サウンドトレーラー”の巡回や、各地の試聴イベント開催などで接点を拡大してきた。

マーケティング活動

 井谷氏はテクニクスブランド製品について「ようやくオーディオメーカーらしいラインナップをそろえた」とし、これまでリファレンスクラスに無かったターンテーブルの導入に至ったという。

 製造は国内拠点である栃木県宇都宮市にある「モノづくり革新センター」で1台ずつ手作りされる。製造や検査などの工程については、別記事でレポートしている

宇都宮市の「モノづくり革新センター」内にあるテクニクスの製造エリア