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FiiO、新世代プレーヤー「M7」、ポタアン「Q5」披露。BTケーブルの価格破壊機も

 エミライは、取り扱いを予定しているFiiOブランドのポータブルハイレゾプレーヤー「M7」、USB DAC/ポータブルアンプ「Q5」、プレーヤーの「X7 Mark II」や「Q5」に装着できる、4.4mmのバランス出力搭載アンプモジュール「AM3B」についての説明会を開催。今後発売を予定している新イヤフォンや、Bluetoothケーブルの情報も明らかにした。

左からUSB DAC/ポータブルアンプ「Q5」、ポータブルハイレゾプレーヤー「M7」

 「M7」、「Q5」、「AM3B」についての概要は、4月24日のニュース記事で報じた通り。いずれも発売時期や価格は未定で、後日案内するとしている。しかし、登場は「それほど遅くならない時期」になるという。いずれのモデルも、4月28日、29日に中野サンプラザで開催される「春のヘッドフォン祭 2018」 で展示する。

ポータブルハイレゾプレーヤー「M7」

 3.2型、480×800ドットのディスプレイを搭載したコンパクトなサイズのプレーヤー。同社は現在、X7 Mark II、X5 3rd、X3 Mark IIIと、「Xシリーズ」をラインナップしているが、それらとは世代が異なる、新しいラインナップとして「M」がつくシリーズが登場。「M7」はその第一弾で、エントリーと位置付けられている。価格は前述の通り未定で、エミライでは「検討中だが、税込みで3万円を切るような、価格競争力のあるものにしたい」とコメントしている。

ポータブルハイレゾプレーヤー「M7」

 Xシリーズとの大きな違いとして、従来はRockchip製のSoCを使っていたが、M7ではSamsung製14nm FinFETプロセスのSoC「Exynos 7270」(Dual Core 1GHz)を採用。高速動作と低消費電力を両立させた。Exynos 7270には2つのARM Cortex A53コアが入っており、電力効率を向上させているほか、ストレージ、電源管理、メモリチップも1つのパッケージにまとめる事で、省スペース化にも貢献している。

左が「M7」、右の2台が「X7 Mark II」。サイズが大きく違う

 さらに、Android 7.0をベースにカスタマイズした新OSを採用し、ユーザビリティを大幅に改良したという新UIを搭載したのもXシリーズと異なるポイント。ただし、自由にユーザーがアプリをインストールはできず、音楽プレーヤーやFMラジオなど、あらかじめ用意されたアプリを使う形となる。また、Bluetoothには対応するが、無線LANは搭載していない。

Android 7.0をベースにカスタマイズした新OSを採用

 FiiO General ManagerのJames Chung氏は、様々な機能を搭載したプレーヤーを求める人がいる一方で、音楽プレーヤーとしてシンプルな製品を求めるユーザーもいると指摘、そうした人に向けた製品がM7だと説明する。

FiiO General ManagerのJames Chung氏

 基板は、最新のスマートフォンで使用されているのと同じ種類の、6層マルチステージHDI(高密度相互接続)PCBを、「おそらくポータブルプレーヤーでは世界で初めて」(James Chung氏)搭載した。DACはESS Technologyの32bit DAC内蔵SoC「ES9018Q2C」を搭載。

 このSoCには2つの独立した電源があり、それぞれデジタル部とアナログ部用に分離した構造になっているほか、ヘッドフォン・アンプ部に、メーカーが選択可能なローパスフィルタを搭載。開発者が柔軟にサウンドを調整できるようになっているという。

 ハイレゾファイルは192kHz/24bitまでのPCM、2.8MHzまでのDSDネイティブ再生に対応。「Exynos 7270」から「ES9018Q2C」に出力されるデジタルオーディオ信号を適切に処理するため、特別に設計されたFPGAを搭載。このFPGA用に、44.1kHz系、48kHz系と、2系統の高精度水晶発振器を搭載し、様々なサンプリングレートの音を、正確に再生できるようにしたという。

出力は3.5mmのアンバランスのみ

 出力は3.5mmのアンバランスのみ。ストレージメモリは2GBの内蔵。512GBまでサポートするSDカードスロットも搭載。USB Type-C端子は、USBオーディオ出力も可能。Bluetooth 4.2にも対応し、コーデックはaptX、aptX HD、LDACをサポート。FMラジオも受信できる。金属筐体を採用しているが、形状を工夫する事で、Bluetoothの電波を飛びやすくし、ワイヤレスイヤフォンなどの接続の不安定さ克服にも取り組んだという。

 連続再生時間は20時間以上、待機時間は最大40日間。豊富なアクセサリも付属予定。

側面
底面

音を聴いてみる

 手にすると、Xシリーズよりもコンパクトかつ薄いという印象。低価格なプレーヤーになるとのことだが、金属の筐体と凝縮感がマッチしており、かなり高級感がある。高品質で小さなものが好きな日本人の心をくすぐるプレーヤーだ。

 音楽も非常にハイクオリティだ。音場も広く、ワイドレンジ。音もクリアで見通しが良い。低域も沈み込みが十分に深く、駆動力があるためキレも感じられる。とてもエントリークラスとは思えないサウンドだ。

 AndroidベースのOSとのことだが、動作もサクサクと軽快。ユーザーによるアプリの追加はできないとのことだが、それゆえ、操作の快適さも最適化されていると感じる。低価格プレーヤー市場に強力な製品の登場を予感させる完成度だ。

USB DAC/ポータブルアンプ「Q5」と「AM3B」

 「Q5」は、DAC内蔵のポータブルアンプ。下部のアンプ部がモジュール構成になっており、ユーザーが付け替えられるのが特徴だ。2.5mmバランス出力対応のモジュールを同梱した「Q5 with AM3A」と、4.4mmバランス出力対応の「Q5 with AM3B」を用意する。

USB DAC/ポータブルアンプ「Q5」

 価格は未定だが、4万円台のイメージで、AM3A付属モデルとAM3B付属を比べると、AM3Bの方が高価にはなるが、そこまで大きな価格差にはならない見込みだという。

 AKM製のDACチップ「AK4490EN」をデュアル・モノ構成で搭載。このDACを活かすため、TI製の高品質オペアンプやVishay製高精度パーツ、Panasonic製フィルムコンデンサを採用するなど、ハイグレードなパーツを投入している。

 USB DACとしては最大384kHz/32bitのPCMデータと、11.2MHzのDSDデータのネイティブ再生に対応。

 またボリュームには電子ボリューム方式を採用。ギャング・エラーを排除しているほか、独立構成のLPF/ボリューム/バッファ段による高性能オーディオ回路部を採用している

 Bluetooth 4.2にも対応し、スマートフォンからのワイヤレス音楽出力に対応。コーデックはaptXにも対応する。Bluetooth経由で受け取ったデータを、BluetoothレシーバのDACには通さず、XMOS経由でQ5のDACへとデジタルのまま伝送する事で、音質も高めている。

「Q5」に「AM3B」を取り付けたところ

 このQ5や、ハイレゾプレーヤーの上位モデル「X7 Mark II」に取り付けられる、モジュールタイプのアンプ新製品として登場するのが「AM3B」だ。

 エミライ技術部の羽賀武紀氏は、アンプがモジュール交換タイプになっている理由として、市場には高インピーダンス/低能率や、低インピーダンス/効能率なイヤフォン・ヘッドフォンがあり、これらに幅広く対応するためだと説明。

エミライ技術部の羽賀武紀氏

 ラインナップの立ち位置として、高感度なイヤフォン向けに「AM1」、「AM3A」、高インピーダンスで低能率なモデル向けの「AM5」、より幅広い用途に使える「AM2」、「AM3B」があると説明。「低ノイズタイプは同時に低消費電力の特徴があるため、バッテリの持ちを考慮し、各モデルの標準採用になっている」という。

 新製品のAM3Bは、4.4mmのバランスジャックを採用。日本ディックス製のPentaconnを使っている。アンプ部の電源電圧をアップさせ、最大出力も約100mWアップしたという。

 さらに、基板設計も最適化。AM3Aは1枚基板に全ての回路を集積・実装していたが、AM3Bでは基板を2枚構成とし、電源/通信(USBジャック)とオーディオ回路に分離。オーディオ回路のレイアウトの流れも最適化したという。

AM3Bの内部
左から「Q5 with AM3A」、4.4mmバランス出力対応の「Q5 with AM3B」

Bluetoothケーブルやイヤフォンの新製品も

 今後予定している製品として、MMCX端子を採用したBluetoothケーブル「RC-BT」を発売予定。コーデックはSBC、AAC、aptXに対応。Qualcommの「CSR8645」を採用し、10時間前後のロングバッテリ仕様が特徴。低価格も特徴となる見込みで、「他社の半額以下を予定している」(エミライ)という。

Bluetoothケーブル「RC-BT」
使用イメージ

 「FH5」は、ユニバーサルタイプのイヤモニターと位置付けられるイヤフォン。Knowles製のバランスドアーマチュア3基と、10mmのダイナミック型ドライバを組み合わせたハイブリッドタイプとなる。BAの構成は、中域に「Knowles 30262」、高域に2ドライバ構成の「TWFK-31082-B82」を採用する。

ユニバーサルタイプのイヤモニター「FH5」

 ノズル部分は3つにわかれており、各帯域ごとに、個別のノズルを音が通るようにしている。これにより、帯域の音がむやみに混ざらないようにした。低域用には長い音道を設け、低域の再現性を高めた。

ノズル部分は帯域に合わせ、3つにわかれている
「FH5」

 この「FH5」も短時間試聴したが、低域から高域までバランスは良好で、高域の質感や分解能も高く、まだ量産品ではないとのことだが、かなりクオリティの高いイヤフォンと感じた。価格は未定だが、エミライでは「4万円以下にはしたい」という。

低域用に長い音道を設けている事を説明するJames Chung氏

 なお、OCCを導体に使ったケーブルも、これまでのイヤフォンに付属していたものとは異なり、より音質にこだわったものだという。3.5mmのアンバランスタイプが付属し、同じ導体を使った、2.5mmや4.4mmのバランスケーブルも発売予定。

2.5mmや4.4mmのバランスケーブルも発売予定