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アンテナ不要で新4K8K衛星放送、光回線「フレッツ・テレビ」で12月開始

 スカパーJSATとNTT東日本、NTT西日本は、12月1日から始まる新4K8K衛星放送を、光回線のテレビサービス「フレッツ・テレビ」などで再送信するサービスを2018年12月以降に順次開始する。これにより、アンテナ不要でNHKのBS 8Kを含む10チャンネル以上が視聴可能になる。料金は、「テレビ視聴サービス」が月額300円で、それ以外にフレッツ・テレビなどの利用料のほか、2019年夏以降に提供する左旋4K8K放送向けサービスを視聴する場合は「専用アダプター」のレンタル料金が必要。

8K試験放送を使ったフレッツ回線の視聴デモ

 NTT東西のフレッツ・テレビ以外にも、他社の「光コラボモデル」サービスでも提供。提供エリアは26都道府県で約221万世帯。フレッツ・テレビ提供可能エリアにおける世帯数規模は約3,000万世帯で、全世帯の60%に相当する。既存の221万世帯のフレッツ・テレビユーザーは、RF端子の入出力を持つ専用アダプターの追加で、宅内設備の改修なく新4K8K衛星放送を視聴できるようになる。なお、8K放送の受信には、別途8Kチューナが必要。

4K8K放送の再送信サービス概要
提供エリア

 フレッツ・テレビは、NTT東/西日本のフレッツ・テレビ伝送サービスと、スカパーJSATの施設利用サービスを連携し、光回線経由で地上/BSデジタル放送などを受信できるもの。アンテナを立てずにBSなどが視聴可能になるが、フレッツ光などの契約や料金が別途必要となる。既報の通りBS右旋4K対応については対応予定とアナウンスしていたが、新たに専用アダプターを介して、NHK BS8Kを含む左旋の4K8K放送にも対応することが決まった。対象は、フレッツ・テレビのほか、コラボレーション事業者が提供するテレビサービス(ドコモ光、ソフトバンク光テレビなど)、スカパーJSATによるマンション向けの再送信テレビサービス。

フレッツ・テレビの概要

 12月からの新4K8K衛星放送を光回線の再送信で視聴するには、既存の右旋円偏波で送られるチャンネルについては、受信側の機器交換や環境整備が不要(対応チューナなどは必要)だが、左旋放送では現在より高い周波数帯域を使用するため、アンテナや増幅器、テレビ端子などの宅内設備の大幅な回収が必要となるのが課題とされていた。

 今回発表された2019年夏以降のBS/110度CS左旋4K8K(NHK BS8Kなど)の再送信サービスは、周波数変換パススルーによって提供。スカパーJSATなどの設備で衛星から受信した映像信号を、周波数変換により放送とは異なる770MHz以下まで下げて伝送し、視聴者の宅内で専用アダプターを利用して元の周波数に戻すことで視聴できるようになる。

左旋4K8K受信に利用する「専用アダプター」
光ONU(右)と接続

 テレビのすぐ手前に専用アダプターを取り付けることで、直前の同軸配線までは現状のフレッツ・テレビなどと同じ周波数帯域を利用でき、戸建て住宅や集合住宅を問わず、屋内設備を大幅に変える必要なく導入できるのをメリットとしている。なお、専用アダプターを介した場合、右左旋の受信で機器側の切り替えは不要なため、利用者は右旋と左旋を意識しなくても、チャンネル切り替えで観たい放送を選べる。

周波数変換のイメージ
8K試験放送を光回線で再送信するデモ(左から8Kテレビ、左旋用のアダプター、光ONU)
背面の接続
8Kチューナ
デモの構成

 なお、今回の光回線利用サービスではなく、放送波で受信して視聴する場合は、アンテナやブースター、分配器、テレビ端子などの宅内設備が3.2GHzに対応している必要がある。また、CATVを利用する場合はパススルーではなくトランスモジュレーション方式で伝送するため、宅内設備の改修は不要だが、専用STBを介して視聴する形となる。

4K8K放送視聴方式の比較(宅内共聴の場合)

 NTT東西のフレッツ・テレビで視聴する場合の月額料金は、テレビ視聴サービスが300円、フレッツ・テレビ伝送サービスが450円の合計750円。左旋受信専用アダプターのレンタル料金は検討中。

 なお、フレッツ光などのユーザーに提供されている光ONUの中に、将来的に専用アダプターを内蔵する可能性については「技術的には可能」としながらも、フレッツ・テレビを利用しない光回線ユーザーもいるため、現時点でその予定はないという。

 提供開始時期は、現在のBS放送で利用されている右旋4K放送のチャンネルであるNHK BS4K、BS朝日 4K、BS-TBS 4K、BSジャパン 4K、BSフジ 4Kは12月1日からフレッツ・テレビでも提供開始。BS日テレ 4Kは放送開始と同じ2019年12月1日。

 一方、新たに使用される左旋4K8KのチャンネルであるNHK BS8Kや、J SPORTS、スター・チャンネル、スカチャンなどは2019年夏以降に開始。WOWOWは、放送開始と同じ2020年12月1日からフレッツ・テレビなどでも提供される。

視聴可能になる予定のチャンネル。これらに加え、スカパー! プレミアムサービス光のチャンネルも視聴可能

【BS/110度CS左旋4K8K放送の再送信開始時期】
・2019年夏以降
映画エンタテインメントチャンネル
ショップチャンネル 4K
4K QVC
NHK BS8K
J SPORTS 1(4K)
J SPORTS 2(4K)
J SPORTS 3(4K)
J SPORTS 4(4K)
日本映画+時代劇 4K
スターチャンネル
スカチャン 1 4K
スカチャン 2 4K

・2020年12月1日以降
WOWOW(2020年チャンネル名発表予定)

【BS右旋4K放送の再送信開始時期】
・2018年12月1日
NHK BS4K
BS朝日 4K
BS-TBS 4K
BSジャパン 4K
BSフジ 4K

・2019年12月1日
BS日テレ 4K

放送波以外の選択肢も提供、4K8K視聴拡大へ

 3社の役割は、スカパーJSATが放送サービス「テレビ視聴サービス」の提供、NTT東日本とNTT西日本は、テレビ視聴サービスの伝送に必要となる「フレッツ光」や「フレッツ・テレビ伝送サービス」の提供(光コラボレーションモデルにおける提供を含む)。12日に会見を行ない、サービスの詳細や今後の計画などを説明した。

左からスカパーJSATの仁藤雅夫副社長、NTT東日本 ビジネス開発本部の遠藤玉樹氏、NTT西日本 アライアンス営業本部の岩崎滋氏

 フレッツ・テレビは2008年よりを提供開始、2015年2月には光コラボレーション事業者が提供するテレビサービスを含め2018年6月末時点で約163万契約(NTT東:約100万契約、NTT西:約63万契約)となった。スカパーJSATが提供するマンションタイプは約58万世帯あるため、これらを合わせた約221万世帯は、前述した左旋用アダプターの追加で視聴可能になる。

 12月からの新4K8K衛星放送開始に合わせ、より多くの世帯で視聴可能とするため、受信アンテナを不要とする光回線での再送信サービスが提供されることになる。

 NTT東日本のビジネス開発本部 第一部門長 遠藤玉樹氏は、アンテナ無しで視聴できるフレッツ・テレビで現在地上/BS/110度CSデジタル放送を視聴でき、複数台のテレビで同時視聴できることを改めて説明。「東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向けた4K8Kテレビへの買い替え需要を見据え、フレッツ・テレビも現在の約163万契約から、拡大を見込んでいる。今後も3社が連携して普及に努める」とした。

NTT東日本の遠藤玉樹氏
フレッツ・テレビ契約数の伸び

 スカパーJSATの仁藤雅夫副社長は、新4K8K衛星放送について「衛星放送の新時代を切り開くものとして期待しているが、今まで使っていなかった電波を使うことで課題もある」として、光回線を使った再送信の意義を説明。12月の放送開始から、左旋のみ再送信の開始が2019年夏開始と期間を要することについては「スカパーJSATの送信センターで周波数を変換するための投資」と理由を説明した。今後のサービス拡大の目標について「2020年には、8Kも話題になってくると思う。具体的な数字は設定していないが、今までとは違う(急速な)普及になる」とした。

スカパーJSATの仁藤雅夫副社長