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4K8Kを観る準備はOK? 12月1日開始の新衛星放送、基本と疑問をまとめた
2018年11月9日 07:00
12月1日から始まる「新4K8K衛星放送」。スタートまで1カ月を切り、対応するテレビやチューナーなどの機器、各チャンネルの番組内容などが少しずつ明らかになってきた。そこで、改めてこの放送が現在のBS/CSと違うポイントや、視聴&録画などの準備、注目の番組などについてまとめた。
4K8K放送がもっと身近に。従来のアンテナも使える?
新4K8K衛星放送と、現在のBS/110度CS放送の最大の違いは何といっても“画質の良さ”。4Kなら現在のHD放送に比べ約4倍の解像度、8Kであれば約16倍という、きめ細かい映像で観られることがメリットだ。“きれい”というレベルを超え、人や物、風景が実際に目の前に存在するような臨場感が得られる。自然であれば遠くの木々や、動物の毛並みまで、スポーツなら選手の表情までリアルに表現。映像のジャンルによっても見どころは様々だ。
4K画質の実用放送は、124/128度CS放送を使った有料放送「スカパー! 4K」が'15年3月から展開中だが、これとの大きな違いは、“BS/110度CS衛星”を使った放送であり、NHKや民放キー局も参加する点。さらに、4Kを超える「8K」の放送も同時にスタート。チャンネルは「NHK SHV 8K」の1チャンネルのみだが、放送では世界初の8Kが実現する。
4K/8K放送は高精細なだけでなく、表現できる色数が増える「広色域」、映像が持っている明るさやコントラストなどを表現できる「HDR」などの高品位な規格、つまり映像を収める“器”の部分も大きくなるため、様々な画質向上が期待される。
音声は、4K放送では5.1ch、8K放送では22.2chというサラウンドに対応。リアルな映像と合わせて、音の臨場感も高まるのもポイントといえる。
受信に必要な機器について、具体的なモデルは後述するが、基本は「4Kチューナー内蔵テレビ」または「4K解像度のテレビ+外付け4Kチューナー」を利用。「BS/110度CSデジタルアンテナ」と組み合わせて視聴できる。最近では4Kチューナーを内蔵したレコーダーも登場している。
4Kチューナー非搭載のテレビとチューナーを接続する場合は、テレビ側のHDMI入力端子がHDCP 2.2(著作権保護技術)と4K/60Hz入力に対応している必要がある。2016年以降の大手メーカー製4Kテレビであれば、ほとんどの製品が対応しているはずだ。
なお、アンテナが不要なケーブルテレビ(CATV)や光回線(フレッツ・テレビなど)を使った視聴方法もあるので、それについてはこの記事の後半で説明する。
現在の受信設備(アンテナや分配器など)をそのまま使った場合は、NHK BS4Kと、民放キー局4社(BS朝日4K、BS-TBS4K、BSテレ東4K、BSフジ4K)のチャンネルを視聴できる。これらのチャンネルは、リモコンボタン番号が地デジや従来のBSと共通なので分かりやすい。
一部で誤解もあるのは「建物の設備を全て入れ替えないと4K8K放送は観られない」という説明。正確にいえば“何も観られないわけではなく、少なくとも5つのBSチャンネルは観られる”ことは理解しておきたい。
細かく説明すると、4K8K放送のうち、現在の放送波(右旋円偏波の電波)は、従来のアンテナ設備でも視聴できる。加えて、新しく使われる放送波(左旋円偏波)も含めて全てのチャンネルを観る場合は、アンテナや混合器、ブースター、分配器などの機器、ケーブルなども新4K8K衛星放送の周波数(3,224MHz)に対応している必要がある。
「右旋」、「左旋」という用語はあまりなじみがないが、チャンネル別で説明すると、NHK BS4K、BS朝日4K、BS-TBS4K、BSテレ東4K、BSフジ4Kと、BS日テレ4K('19年12月1日開始)は従来のBSアンテナなどをそのまま使えると考えれば分かりやすい。
一方、NHK BS8Kと、ザ・シネマ4K、ショップチャンネル4K、4K QVC、WOWOW(2020年12月1日開始予定)のほか、110度CS4KのJ SPORTS 1/2/3/4やスター・チャンネル、日本映画+時代劇4K、スカチャン1/2には、アンテナなど受信設備の切り替えが必要になる。
つまり、もしテレビやアンテナなど全てを一度に入れ替えるのが、予算や建物の事情などで難しい場合、まず4Kテレビ(チューナー内蔵または外付け)があれば、多くのチャンネルが12月1日から楽しめるわけだ。その後で段階的にアンテナなどを入れ替えていくという手段もとれる。
【従来のアンテナでも観られるチャンネル】
BS右旋(カッコ内はリモコン番号)
・NHK BS4K(1)
・BS朝日4K(5)
・BS-TBS 4K(6)
・BSテレ東4K(7)
・BSフジ4K(8)
・BS日テレ4K(4)2019年12月1日開始予定
【新たなアンテナ(3,224MHz対応)などが必要】
BS左旋
・NHK BS8K(2)
・ザ・シネマ4K(10)
・ショップチャンネル4K(11)
・4K QVC(12)
・WOWOW(9)2020年12月1日開始予定
110度CS(カッコ内はチャンネル番号)
・J SPORTS 1(821)
・J SPORTS 2(822)
・J SPORTS 3(823)
・J SPORTS 4(824)
・日本映画+時代劇4K(880)
・スター・チャンネル(881)
・スカチャン1(882)
・スカチャン2(883)
なお、3,224MHzに対応するアンテナは2016年ごろから既に販売されており、現在市販されているBS/110度CS放送向け製品はほぼ対応済みと考えてよさそうだ。新放送を機にBS/110度CSの視聴を始めたい人も、3,224MHz対応などを示す「SH(スーパーハイビジョン)マーク」が付いている製品を目安に選ぶと確実だ。
4K8Kで始まる番組と見どころ。気になる料金は?
既に12月からの番組表を公開しているのはNHK。BS4Kは、午前6時から夜0時までの一日18時間にわたり、原則として、全て4K画質で制作した番組を放送。月曜日から金曜日までの平日は、地上波やBS1、BSプレミアムから選りすぐった番組を、4Kで制作。曜日ごとにジャンルを決めて、そのジャンルの番組をまとめて放送する「ジャンル編成」を実施。
ゴールデンタイムには、「ダーウィンが来た!」、「BS時代劇」、「日曜美術館」、「小さな旅」など、人気番組の4K版を放送。週末はBS4K独自の特集番組などを編成。土曜の夜の「4Kスペシャル」では、開局の日となる12月1日に、世界初となる南極からの4K生中継を実施する。日曜日は、'19年1月から朝9時に「大河ドラマ いだてん」を放送。大河ドラマ初の4K制作であり、最速で観られるのがBS4Kとなる。
BS8Kは、午前10時から午後10時10分まで毎日放送。定時枠を基本とした編成ではなく、番組の内容に応じて臨機応変に編成していくという。毎週日曜日の夜7時から、集中的に多彩なジャンルの新作番組を用意。平日などそれ以外の時間は、日曜に番組を見られなかった人や、もう一度見たいという要望に応えるため、「セレクション」としてそれらの番組を再放送する予定。
BS民放は、開局の12月1日10時から、BS朝日、BS-TBS、BSテレ東、BSフジが、BS4Kと従来のBS2Kの両チャンネルで放送する特番(2K放送は9時45分から)。番組名は「BS4K開始“初”生特番~日本で最高に美しい映像お見せします~」。史上初となる民放4局による同時2K/4K連動生番組で、各局の注目番組などが紹介される。司会は滝川クリステル。
さらに、新たな試みとして、BS4Kの民放4社が連携したリレー形式による紀行番組「大いなる鉄路16,000km走破 東京発パリ行き」を12月1日~2日に渡って放送。BSフジ4K(1日19時~)、BS朝日4K(同21時~)、BS-TBS4K(2日19時)、BSテレ東4K(同21時)の順でオンエアされる。東京からモスクワ、ブダペスト、ジュネーブ、パリまで、ユーラシア大陸を横断する片道切符列車の旅を紹介し、ナレーションは三浦春馬と倍賞千恵子。
実際に観るにあたって、料金が増えるのかどうかも気になるところ。現在のBS放送視聴に必要な料金は、NHK BS受信料の衛星契約(地デジ契約含めて2カ月払いで4,460円~)だが、12月1日から新たなBS4K/8Kを視聴する場合も、この料金は値上がりしないとのこと。
一方で、新4K8K衛星放送では新たな有料放送もスタートする。BS4K「ザ・シネマ4K」やWOWOW(2020年12月開始)のほか、「J SPORTS」や「スターチャンネル」など110度CS4Kは全て有料の予定。現時点で料金は発表されていないが、判明次第レポートしたい。
有料放送のうち、東北新社による映画チャンネル「ザ・シネマ4K」は、12月番組ラインナップを発表。名優アラン・ドロンやジャン・ギャバンの特集や、人気の洋画、オリジナル番組などを4K画質で放送する。
Q&A「録画はできる?」「今までのBS/CSは見られる?」
Q1.4K画質で録画やBlu-ray書き出しはできる?
A1.4K8K放送は録画も可能。テレビに接続したUSB HDDや、チューナー内蔵のレコーダやパソコンで行なえる(対応機種の詳細は後述)。著作権保護は、多くの局ではダビング10など、現行BS放送相当のコピー制御での運用が見込まれる。
ソニーは、他社に先駆けて、4K放送録画向けメディアとして大容量128GB BD-Rを11月10日に発売。なお、既存のBD-R/REメディアへもダビングはできる。BS/110度CS4K映像のビットレートは33Mbpsで、50GBディスクの場合約180分録画可能。同じディスクで、地デジ(17Mbps)の約半分の時間録画できると考えると分かりやすい。
Q2.HDMIケーブルも変える必要がある?
A2.4Kチューナーを搭載していないテレビに、外付け4Kチューナ―などを接続して視聴する場合、一般的なHDMIケーブル(ハイスピード対応)を利用する。HDR対応テレビと接続する場合は「18Gbps対応HDMIケーブル」(プレミアムハイスピードHDMIケーブル推奨)を使用すると、HDR画質で観られる。
Q3.新たに電波漏洩対策が必要になるって本当?
A3.古いブースターや分配器、壁面端子などが使用していると、電波が外部に漏れ、法令(電波法)違反になる恐れがあるほか、Wi-Fiなど家の無線システムに妨害を与えたり、周囲の電波が入り込んで、新4K8K衛星放送の受信に影響する可能性がある。電波漏洩対策のための助成金制度も用意されている。なお、左旋4K対応アンテナに交換しなければ、電波が外部に漏れることはない。
Q4.今のBS/110度CS放送は続く?
A4.現在の2K画質のBS/110度CS放送は12月1日以降も継続され、今までと同じテレビとアンテナ/受信設備で引き続き観られる。
対応テレビ&チューナー増加。レコーダーやパソコンも
記事掲載の11月9日時点で、各メーカーから発表されている4K/8Kチューナー内蔵テレビやレコーダーなどは下記の通り。パソコンでの視聴も可能になるなど、対応機器は徐々に拡大している。
4Kチューナー内蔵テレビ
8Kチューナー内蔵テレビ
4Kチューナー内蔵レコーダー
4Kチューナー
8Kチューナー
8K録画対応USB HDD
4Kチューナー内蔵パソコン
アンテナを立てられなくてもケーブルや光で観られる
建物などによっては、衛星アンテナを取り付けられないケースもあるが、そうした場合に有用なのがCATVや光回線の「フレッツ・テレビ」などのサービス。CATVや配信事業者に料金を支払う形になるが、アンテナ設置や調整などが不要な点で、導入のハードルは低い方法といえる。
CATV最大手のJ:COMでは、新4K8K衛星放送のうちBS4Kの再送信サービスを12月1日より開始。放送に加え、オンデマンド視聴やYouTubeの4Kコンテンツも観られる。再送信はHUMAX製の新STB「SR-4300」を利用する「トランスモジュレーション方式」で視聴可能。STBにはBS4Kと従来の地デジ/BSチューナーを各3基備え、別売USB HDDに録画もできる。
一方で、手持ちの4Kチューナー内蔵テレビなどを使って視聴する「パススルー方式」に対応しているCATV局や配信事業者もある。
NTT東日本、NTT西日本の光回線を使ったテレビサービス「フレッツ・テレビ」や、コラボレーション事業者が提供するテレビサービス(ドコモ光、ソフトバンク光テレビなど)、スカパーJSATによるマンション向けの再送信テレビサービスでは、12月1日から、4K8K放送をパススルーで視聴可能なサービスを開始。NHK BS4K、BS朝日4K、BS-TBS4K、BSテレ東4K、BSフジ4Kが観られる。BS日テレ4Kの開始は放送と同じ2019年12月1日。
NHK BS8Kや、J SPORTS、スター・チャンネル、スカチャンなどは2019年夏以降に開始予定。WOWOWも、放送開始と同じ2020年12月1日から提供される。
ケイ・オプティコムの光回線を利用したテレビサービス「eo光テレビ」でも、12月1日からパススルー方式で対応予定。BS右旋4K放送のNHK BS4K、BS朝日 4K、BS-TBS 4K、BSジャパン 4K、BSフジ 4Kと、BS日テレ 4K(2019年12月1日スタート/対応予定)が観られる予定だ。NHK BS8Kを含む左旋放送のチャンネルも検討しているという。
イッツ・コミュニケーションズは、光回線を使った「イッツコムひかり」において、BS4Kの5チャンネル、NHK BS8Kの提供をパススルー方式で配信する。
自分の環境に合った準備で、12月に備えよう
新4K8K衛星放送は、かつての“アナログ放送のデジタル化”とは異なり、変更しなければ衛星放送が観られなくなるわけではない。それでも、大画面の4K対応テレビがだんだん手頃な価格になっていく中で、多くの4Kコンテンツが無料で楽しめるようになる、一つの大きな転機といえる。
前半の説明で4K/8K放送のメリットとして“映像を収める器が大きくなる”と説明したが、器に入れる中身(番組)についても、徐々に明らかになってきた。A-PABによれば、ピュア4K比率は局ごとに違いはあるものの「12月1日のスタート時点で2ケタ%越えを目指し、年末年始の特番などで比率を上げていく」とのこと。2020年に向けて順次チャンネルも増え、様々なジャンルのリアルな映像が観られる時代もそう遠くはなさそうだ。自分の好きなアーティストのライブや、応援するスポーツ選手の試合などが、臨場感ある映像で楽しめるようになれば、より身近に感じられるだろう。
対応するテレビやチューナーについても各社から出そろいつつあり、4K解像度のテレビを既に持っている人、そうでない人も、それぞれの方法で視聴したり録画できる環境が用意できるようになってきた。12月1日の開始に向けて、自分に合った視聴方法や観たいチャンネル、番組を探しながら、まずはできるところから準備してみてはいかがだろうか。