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THETA Vプラグインストア開設。単体でライブ配信/顔ぼかし、ドコモやソニーも参加
2018年7月23日 10:15
リコーは23日、360度全天球4Kカメラ「THETA V」にさまざまな機能を追加できる「RICOH THETA プラグインストア」をオープンした。360度ライブ配信用などリコーが開発した3種類のプラグインのほか、ドコモやソニーなど国内外のパートナー5社が開発したプラグインを順次無償提供する。
THETA VはAndroidベースのOSを採用したことで、カメラ本体の機能をプラグインによって追加でき、自由度の高い拡張性を実現。現在はプリインストール・プラグインとして、撮影したカメラ本体内の映像データをテレビなどに360度映像として表示する「リモート再生」機能と、撮影した画像・動画をUSB OTGケーブル経由でUSBストレージに転送する「USBデータ転送」機能を備えている。
リコーは、オープンアーキテクチャによるサードパーティのプラグイン開発を支援する「RICOH THETA プラグイン パートナープログラム」の登録受付を6月28日に開始。同プログラムを通じて開発されたプラグインをストアを通じて提供する。THETAユーザーであれば誰でもダウンロードできる。
プラグインのインストールにはパソコンが必要。ブラウザからストアにアクセスし、必要なプラグインを選んでダウンロードすると、THETAのPC用基本アプリが自動で立ち上がる。以降は表示に従ってTHETA本体にインストールする。
リコーが23日にリリースしたプラグインは以下の3種類で、いずれも無料。ソースコードをGitHubで公開予定で、パートナープログラムに登録した開発者であれば、プラグインのカスタマイズもできる。
- 無線ライブストリーミング「Wireless Live Streaming」
- 自動顔ぼかし撮影「Automatic Face Blur」(β版)
- クラウドアップロード「File Cloud Upload」
「Wireless Live Streaming」は、イベント会場などに設置したTHETA Vの4K/360度映像を、PCを介さずに直接YouTubeにアップロードしてストリーミング配信できるようにする。YouTuberやVRジャーナリストなどの利用を想定している。
「Automatic Face Blur」は、360度撮影した静止画の被写体の顔を自動認識し、THETA Vでぼかし(モザイク)を入れる。不特定多数の人がいる場所で360度撮影した後、ぼかしをかける前と後の2枚の写真を自動保存。SNS共有や報道目的などで360度写真を利用したい時に、個別に顔ぼかしを入れる手間を省く。同プラグインのみ、β版として提供する。
Android OSの顔検出APIを用いており、プラグイン開発者が認識範囲や認識精度を調整可能。ぼかしではなく別の画像に置き換えるといったカスタマイズもできるという。
「File Cloud Upload」は、THETA Vで撮影した静止画を、ネットワーク経由でGoogleフォトに元のサイズのまま自動アップロード。自宅などの無線LANのある環境で、写真をクラウド保存できる。アップロード後も写真は本体に残るが、開発者がカスタマイズすることで、クラウド保存後に本体内画像を消去するといったことも可能。
さらに、パートナープログラムに参加した日米欧5社のプラグインをストアで公開する。
- ドコモ「デバイスWebAPIプラグイン」
- ソニー「MESH plugin dor Ricoh THETA」(近日公開予定)
- EVRYPLACE Sync
- HoloBuilder 360 SiteStream
- Fita
ドコモが開発したデバイスWebAPIプラグインは、THETA V上で仮想サーバ動作し、THETA Vを操作するためのWeb APIを提供する。PCやスマートフォン、IoTデバイスなど、Webブラウザが機能する(HTTPアクセスが利用できる)デバイスと、THETA Vをワイヤレス接続し、Web技術を使ったさまざまな連携が可能となる。
同プラグインをインストールしたTHETA Vは、写真/動画撮影やライブプレビューなど基本的なカメラ機能を、ブラウザ上から操作可能。さらに加速度センサーの情報や、ストレージ情報・バッテリ残量などのステータスも取得して画面表示できる。
これらを応用することで、THETA Vの360度VRライブ映像をブラウザに二眼表示してスマホVRゴーグルで楽しんだり、PCで特定の視点の映像を切り出してRTMP(Real Time Messaging Protocol)によるライブ配信も行なえる。
ソニーは、さまざまな機能を持つブロック型デバイス「MESH」とTHETAシリーズを連携させるプラグインを開発。近日中に提供予定としている。THETA Vだけでなく、THETA S/SCも利用できる。
7種類のMESH製品のうち、「ボタン」(税込5,980円)と「人感センサー」(同6,980円)の2つが対応し、THETAと組み合わせてリモート撮影ボタンにしたり、人感センサーによるモニタリングや自動撮影が行なえる。MESHと連携するタブレットアプリを使い、細かいプログラミングを行なえる。
このほか、海外デベロッパーが開発したB2B用途のプラグインとして、VRプレゼンテーションサービス「EVRYPLACE」や、建築進捗モニターサービス「HoloBuilder」、ジャーナリスト向けサービス「Fita」と連携する各種アプリを用意する。
リコーによるプラグインの開発ロードマップも公開。’18年10〜12月に「シングルレンズ撮影」や「タイムラプス動画撮影」機能、クラウド経由でAmazon Echoなどのスマートデバイスと連携する機能を提供。’19年1〜3月には「レンズ別時間差撮影」や「ViewLaps」の提供を予定している。
THETAのパートナープログラムに登録するには、カメラ本体のシリアル番号の写真と申請書が必要で、リコーの審査・認定を受ける必要がある。登録すると、リコーが公開している複数のAPI/SDKを利用してプラグインを開発できる。Androidプログラムの開発経験者であれば、基本的な要素は共通で利用可能。オンラインサポートによる開発支援も行なう。なお、THETAを開発用カメラとして登録すると、サポートの対象外となる。
プラグインのファイル形式はAPK、サイズは1つあたり256MBまで。THETA Vには計2GBまでインストール可能。
THETA Vユーザーは、ストアで審査を受けてダウンロード可能なプラグインのみ利用可能。APKファイルの直接インストールは不可。ストアオープン時に用意するプラグインはいずれも無料だが、今後は有料プラグインの提供も検討している。
リコー Smart Vision 事業本部 THETA事業部の藤木仁 部長は、「リコーからはコンシューマーのエンドユーザー向けのプラグインを用意し、(THETA Vの)機能アップを図る。一方、海外のデベロッパーによるプラグインのように、既存のWebサービスに360度カメラ機能を付加価値として追加するものも提供でき、これらはサービスとハードウェアを繋ぐブリッジのような形で使っていただく。将来はプラグインのデベロッパーと、その技術力を必要としているWebサービスを繋ぐ役割も視野に入れたい」と話した。