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パナソニック、日本特別仕様の最上位UHD BDプレーヤー「UB9000」約21万円
2018年11月13日 13:15
パナソニックは、HDR10+とDolby Visionに対応し、独自の高画質・高音質設計を施した最上位UHD BDプレーヤー「DP-UB9000」を12月7日に発売する。既発の欧州機と同じ型名だが、更なる品質向上のために仕様強化を行なった“Japan Limited”モデル。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は210,000円前後。
同社4K Ultra HD Blu-ray(UHD BD)プレーヤーのフラッグシップモデル。「DMR-UBZ1の再生クオリティを大きく超え、UHD BD時代を代表するプレーヤーを世に問う」をコンセプトに、レコーダー/プレーヤー開発で培った画質・音質技術に加え、Technicsの技術を投入。加えて日本限定仕様として、筐体や電源、各回路を大幅に変更。“パナソニックビデオプレーヤー史上、最高グレードの高画質・高音質設計”に仕上げたという。
センターメカ構造で10kgオーバーの“パナソニック製重量級ビデオプレーヤー”は、2000年発売のDVDプレーヤー「DVD-H2000」(受注生産モデル)以来、約18年振りの登場。
新開発のLSIを搭載。最大32bit演算で高精度なHDR処理を実現
画質処理エンジンを搭載したLSIを3年振りに一新。DMR-UBZ1やDMP-UB900などでは、UniPhierと4K処理用のSoCを組み合わせた2チップ構成だったが、UB9000では1チップに統合した新しいLSIを搭載。クロマ処理やMGVCなど、パナソニック独自の映像処理資産を継承しながら、映像信号の処理性能が大きく進化した。
新LSIの採用は、4K衛星放送チューナー搭載ディーガ「DMR-SUZ2060」に続いて2モデル目。「SUZ2060では4K放送録画などの様々な処理に使われるが、UB9000ではエンジン用途をHDR処理を含む高画質再生に集中させている」という。
HDR規格「HDR10(PQ)」に加え、「HDR10+」と「Dolby Vision」の2種類のHDR規格に対応した。HDR10+とDolby VisionをサポートするUHD BDプレーヤーは国内初。
HDR10は、1つの作品に対して固定のメタデータ(スタティックメタデータ)を用いるが、HDR10+とDolby Visionではシーンごとに変動するメタデータ(ダイナミックメタデータ)を用いる。各シーンの明るさを最適に表示できるため、映像制作者の意図に、より忠実なHDR映像を再現するとされている。
HDR10+とDolby Visionを楽しむには、対応コンテンツはもちろん、接続するディスプレイ側の対応も必要。対応コンテンツを用意しても、ディスプレイ側がHDR10しか対応していない場合は、HDR10+/Dolby VisionともにプレーヤーからはHDR10信号が出力される。現在発売されている4Kビエラは、HDR10/HDR10+をサポートするが、Dolby Visionには対応していない。
UB9000では、HDR10+やDolby Visionなどのダイナミックメタデータを使うHDR規格への対応だけでなく、新エンジンの高速演算性能を活かし、「HDR10」コンテンツの変換処理精度も向上させている。
その1つがUB9000から導入された「自動HDRトーンマップ」と呼ばれる新機能。通常はHDR信号を受け取るディスプレイ側で行なわれるトーンマップ処理を、HDR信号を送り出すプレーヤー側で自動で行なってしまう試みだ。
トーンマップとは、HDR映像の明部が飽和しないようにディスプレイ側で表示性能内に輝度レンジを圧縮する処理のこと。HDRコンテンツは作品によって輝度がバラバラで、また実際に使われるHDRディスプレイの輝度とも大きな差がある。このためHDRディスプレイは、一定輝度以上を単純にクリップしたり、カーブの調整、輝度を下げるなど、幾つかの方法で輝度レンジを圧縮するのだが、映像が白飛びしたり、色の歪み、画が暗くなるなど、それらの方法には課題もあった。
UB9000の画質チームは、互換性のあるHDR規格「HDR10」のトーンマップ最適化が重要と考え、HDR10のメタデータを用いた処理方法を検討。市販されている数十タイトルのUHD BD作品を使って、メタデータと実映像の輝度ピークに大きな差異が無いかを比較・検証した上で、メタデータを用いたタイトル毎の自動トーンマップ処理アルゴリズムを開発した。
中低輝度部分はそのままに、高輝度部分の飽和と色歪みを抑制した処理技術で、同社ではこれを“色補償型トーンマップ方式”と呼んでいる。RGB各色で振幅が異なる点に着目。トーンマップ処理を行なった場合でも、RGB各色で振幅が等しくなるよう連携処理させることで、高輝度部の色も忠実に再現できるとしている。
具体的には、UHD BDなどのHDR10(PQ)信号が入力された際、新エンジンがEOTF演算(電気信号を光に変えるガンマ処理)。変換後のリニアRGB信号で、メタデータに応じたトーンマップ処理を施した後、処理前の逆演算(OETF)とメタの書き換えをリアルタイムで行ない、HDR信号を出力する。「RGBの独立演算は、新エンジンの賜物。各色で最大32bitの高精度演算により、中低輝度部の画質に影響を与えること無く、高輝度部を正確に再現できる」という。
詳細設定内の「HDRディスプレイタイプ」から、本機と接続するディスプレイのタイプを選択。HDR調整メニューの「HDRトーンマップ」を入にすることで、タイトル毎のメタデータに応じて、UB9000が自動的にHDR映像の高輝度部をトーンマップするという。
HDRディスプレイタイプは、有機EL(1,000nit)/高輝度のプロジェクター(500nit)/ベーシックな輝度のプロジェクター(350nit)/超高輝度の液晶(1,500nit)/中・高輝度の液晶(1,000nit)/ベーシックな輝度の液晶(500nit)の全6タイプを用意する。
「システムガンマ調整」もUB9000から新しく搭載されたHDR調整機能の1つ。液晶や有機EL、プロジェクターなど、ディスプレイの方式で異なる、HDR映像の見た目のコントラスト感を好みで調整できる。
HDR映像の明るさ調整機能「ダイナミックレンジ調整」と「ダイナミックレンジ変換調整」(HDR→SDR変換)も引き続き搭載。新エンジンにより、従来モデルよりも変換精度向上による高画質化を実現したという。
開発者によると、これら調整機能の使いこなし例として「例えばプロジェクターの場合、“HDRディスプレイタイプ”設定で該当するタイプを選択し、映像が暗い場合は“ダイナミックレンジ調整”で明るさを上げる。暗部の浮きが気になる場合は、システムガンマ調整で補正する。HDR映像の基本的な調整は、UB9000で済む」と話す。
BT.2020色域はそのままに、HDRをSDRに変換する「SDR/BT.2020」出力にも対応する。プロジェクターユーザーから「HDRにすると画が暗くなってしまうためSDR変換して観ているが、SDR変換時に色域はBT.2020のままにしてほしい」との要望を反映したものだという。なお自動HDRトーンマップは、HDR→SDR変換時にも使用できる。
パナソニックハリウッド研究所(PHL)で培った技術を応用した、パナソニック独自のクロマ処理技術「4Kリアルクロマプロセッサplus」も引き続き搭載。UHD BDや配信の4K映像(4:2:0)を、高精度マルチタップ処理により4K映像(4:4:4)に補間することで、鮮度が高く、自然な質感と立体感にあふれた4K映像を実現する。
UB9000では、Netflix、Amazonプライム・ビデオ、dTV、ベルリン・フィル「デジタル・コンサート・ホール」、YouTubeの4K/HDR動画配信サービスに対応。NetflixのDolby Vision/Dolby Atmos、AmazonビデオのDolby Visionには、今回が初対応。DAZN、Huluなどの2K動画配信もサポートする。
この他、4K/60p/36bit出力のほか、4Kダイレクトクロマアップコンバートplus、4K超解像/W超解像などの高画質化機能を引き続き搭載する。
再生可能な映像ディスクは、UHD BD、BDビデオ(3D/MGVC対応)、DVDビデオのほか、録画BD(BDXL対応)、DVD-RAM/-R/-RW/+R/+RWなど。新4K衛星放送の番組をダビングした“4K録画BD”の再生には対応しない。
バランス出力を搭載し、筐体・電源・回路を強化。Technics技術も注入
画質のみならず、ビデオプレーヤー史上最高グレードの音質も目指したUB9000では“Tuned by Technics”と題し、様々な高音質化技術と独自チューニングを投入。パナソニックのUHD BDプレーヤーとして初めて、XLRバランス出力端子を搭載したり、筐体や電源、回路などにも振動・ノイズ対策を施すことで、サウンドクオリティの大幅強化を図っている。
UB9000用に設計された高剛性、低重心筐体を採用。1.2mm厚鋼板のインナーシャーシに、1.6mm厚鋼板3枚を積層。計4層/6mm厚、約5.6kgもの重量級ベースシャーシを組み上げ、アルミ押し出し材の7mm厚フロント・3mm厚サイドパネルを固定。さらにドライブベースと一体構成した2本のフレームが、フロントパネルとリアパネルを締結。これに板厚の異なる鋼板を組み合わせた2層構造のトップパネルを組み合わせることで、制振性の向上と剛性の強化を実現している。
ディスクドライブを中央に配置した、センターメカ構造。UHD BDなど高速回転するディスクの振動を低減するため、新設計のドライブベースを導入。ベース部分には3層/5.2mm厚の鋼板を使用し、ドライブ全体を深絞り鋼板の高剛性シェルターで覆うことで、ディスク回転時の不要な振動と騒音を低減している。
筐体内部は、Technicsでも採用するブロック独立構成。筐体内部を、デジタル基板、電源基板、ディスクドライブ、オーディオ基板の4ブロックに分割することで、オーディオ基板へのノイズ混入を大幅に低減した。
10kgを超える重量級筐体のインシュレーターには、TAOC製ハイカーボン製鋳鉄を採用。鋳鉄内に含まれる鉄とカーボンの摩擦が振動エネルギーを熱に変換することにより、オーディオラックを通して伝わる外部振動を効果的に減衰させる。
電源回路は、オーディオ専用のアナログ/デジタル独立電源方式を採用。スイッチング電源回路用トランスをアナログ回路用とデジタル回路用にそれぞれ独立して搭載することで、アナログオーディオ回路へのデジタルノイズ混入を低減する。またトランスにはOFD巻線を使用。大容量電解コンデンサーを用いた整流回路、低ノイズレギュレーターを用いた安定化電源と組み合わせた低ノイズ設計を行なった。
オーディオ用DAコンバーターは、10個のローカルレギュレーターを用いた独立電源回路を搭載。2ch出力用と7.1ch出力用2つのDAコンバーターのデジタル電源、アナログ電源、アナログリファレンス電源をそれぞれ独立させて、相互干渉を低減したという。
デジタル回路やドライブからのノイズ混入を防ぐため、アナログオーディオ用の専用基板を採用した。基板は、L/Rチャンネルを左右対称にレイアウト。同距離、最短距離で信号伝送し、チャンネル間の干渉を抑制している。またXLRバランス出力は、L/Rチャンネル独立の完全バランス伝送回路を採用し、L/Rチャンネルでの同相ノイズを効果的に低減。フィルムコンデンサーや電解コンデンサー、非磁性炭素皮膜抵抗など、Technics共通の高音質パーツも使用している。
DACチップは旭化成エレクトロニクス製。2ch出力(XLR/RCA)には、768kHz/32bit入力に対応した最上位DAC「AK4497EQ」、7.1ch出力用にはマルチチャンネルDACの「AK4458VN」を採用。このほか、電源やアナログ回路に使用する各種パーツも、それぞれ個別に試聴を重ねて音質的に優れたものを厳選したという。
動作に応じて、不要な回路ブロックを停止させてノイズの発生を最小に抑える「新クラリティサウンド」機能を搭載。Technicsなどのオーディオ機器の動作状態に近づけるべく、アナログマルチチャンネル出力をオフに設定している時は、マルチチャンネル出力回路の電源も停止させる。
音楽ファイルの再生に対応し、ハイレゾ音源はDSD(最大11.2MHz)、WAV/AIFF(最大384kHz/32bit)、ALAC、FLACをサポート。MP3/AAC/WMAにも対応し、ネットワーク経由によるPC/NAS、同社のおうちクラウドディーガなどに保存した音楽ファイルが再生できる。USBメモリーによる音楽ファイル再生の場合は、ギャップレス再生にも対応する。
音楽ディスクの再生は音楽CDのみで、SACDやDVDオーディオの再生には対応しない。
映像・音声出力対応のHDMI出力と、音声専用のHDMI出力をそれぞれ1系統搭載。デジタル音声出力は、同軸・光がそれぞれ1系統。Neutrik製コネクタを採用した2chのXLRバランス出力、7.1chのRCAアンバランス出力(金メッキ加工)を用意する。
消費電力は約32Wで、スタンバイ時最小は約0.3W。外形寸法は430×300×87mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約12.5kg。