ニュース

有機センサー8Kカメラ、グリーンバック不要の映像合成。放送&配信の最新動向

国際放送機器展「Inter BEE 2018」が14日、千葉県の幕張メッセで開幕した。期間は14~16日で、入場は無料(登録制)。8Kカメラを展示したパナソニックやキヤノンなど、12月1日の新4K8K衛星放送開始に向けた製品などを中心にレポートする。

Inter BEE 2018会場の幕張メッセ

パナソニックが8K有機センサー搭載8Kカメラ

パナソニックブースの注目は、世界初となる8K有機センサーを搭載したカメラシステム。有機薄膜を光電変換部に用いた積層構造により、効率的な光電変換と電荷蓄積を両立。8Kの高解像度で、従来のセンサーに比べて広いダイナミックレンジを実現している。スタジアムで日差しの強いフィールドと日陰になる観客席など、明暗差の大きなシーンも8Kで撮影できるという。PLレンズマウントを搭載し、2019年秋の発売を予定している。

8K有機センサー搭載マルチパーパスカメラ(左)と、イメージプロセッシングユニット(右)
8Kカメラヘッド試作機

業界初という4K/60pに対応した一体型リモートカメラ「AW-UE150」も展示。1型大判MOSセンサーを搭載し、従来は30pまでだった4K映像が60pまでサポート。12G-SDI、3D-SDI、HDMI、IP、光ファイバー出力に対応する。4K映像から3つの異なるHD出力を切り出して活用できるクロッピング機能も備える。

4K/60pリモートカメラ「AW-UE150」

キヤノンはグリーンバック不要の合成システム、8Kカメラなど

キヤノンは、11月下旬発売の業務用4Kビデオカメラ「XF705」を展示。4K/60pで4:2:2 10bit HDR映像をSDカードに記録できる初のモデルとしている。また、放送用の122倍ズーム対応4Kフィールドズームレンズ「UJ122×8.2B ISS」(2019年4月下旬)も出展している。

キヤノンの4Kビデオカメラ「XF705」
4Kフィールドズームレンズ「UJ122×8.2B ISS」

8K対応製品として、35mm相当サイズの8K専用CMOSセンサー搭載カメラと、自然で高品位な描写性能を実現する8Kレンズ、55型8K/HDRディスプレイを展示。8Kカメラで撮影したサッカーJリーグYBCルヴァンカップ決勝のセレッソ大阪vs川崎フロンターレの試合を曲面大型スクリーンで表示する「映像空間ソリューション」も紹介している。

8K対応製品

コンシューマ製品も展示しており、35mmフルサイズのCMOSセンサーと、新たなRFマウントを採用するミラーレスカメラ「EOS R」を披露している。

ミラーレスカメラ「EOS R」

テレビ局などに注目されているという展示は、クロマキーセットを使わずに映像のリアルタイム合成が行なえるというシステム「KeyMaker」。カメラ上部に備えたセンサーからの深度情報で被写体の距離を判別し、特定の人だけを切り抜いて、別の背景映像と合成できる。グリーンバックやブルーバックなどのないスタジオでも合成が行なえ、髪の毛などまで映像処理可能で、手元のコントローラーで対象距離の微調整もできる。映像出力はフルHD対応。

クロマキーセットを使わずリアルタイム合成が行なえる「KeyMaker」

開発はエム・ソフトで、製品化は2019年前半を予定。深度センサー部分を、キヤノン製レンズのズームと連動して切り抜きできるようにするといった機能連携も計画しているという。

4KハイスピードカメラやIP再放送など、4K8K放送向け製品&サービス

12月1日の新4K8K衛星放送の開始が間近となり、A-PAB(放送サービス高度化推進協会)のブースでは、4K衛星放送チューナー内蔵テレビやレコーダー、パソコンなど現在の対応機器が展示されている。また、NHK/JEITAブースでは、NHK BS4K/8Kの注目番組や編成内容などを紹介。4K中継車も展示されている。

4K衛星放送チューナー内蔵テレビ
NHK/JEITAブース
NHK BS4K編成
NHK BS8K編成

朋栄(FOR-A)は、12G-SDI対応4Kハイスピードカメラの新機種「FT-ONE-SS4K」を展示。2/3型イメージサークルに対応し、アダプタ不要で放送用レンズを装着可能。4Kで秒間1,000フレームのハイスピード撮影が行なえる。HDR/広色域にも対応する。

4Kハイスピードカメラの新機種FT-ONE-SS4K
12G-SDI対応ビデオサーバー「MBP-1000VS-12G」は、XAVC対応で、4K収録/再生で安定運用可能としている

同社は12G-SDIなどのベースバンドのワークフローと、IPワークフローが混在する環境でも、「SDIとIPを意識せずに混在運用できる」というシステムを提案。実際にスカパーJSATにおいてSDI/IP混在の統合制御システムを構築。2019年4月より稼働予定としている。

ベースバンド/IPの混在運用

また、複数社が共同出展するInter BEE IP PAVILIONブースでは、IP伝送に必要な圧縮技術を紹介。TICOやJPEG2000、NDIなどのほか、新たに規格化が進められているJPEG-XSを、元の非圧縮映像と比較展示。低ビットレートでも一定の画質が得られることを紹介している。

Inter BEE IP PAVILIONブースの圧縮技術比較デモ

AbemaTVで配信されている麻雀プロリーグ「Mリーグ」のスタジオには、朋栄が輸入しているMo-Sys製のリアルタイムカメラトラッキングシステム「StarTracker」と、バーチャルスタジオ/リアルタイムGGシステム「Brainstorm eStudio」が採用。選手情報や、試合情報のテロップにAR技術を活用。アニメーションを付けたリッチな特典表示なども可能にしている。

「Mリーグ」のスタジオにMo-Sys製のリアルタイムカメラトラッキングシステム「StarTracker」などが採用

池上通信機(Ikegami)は、販売中の8Kカメラシステム「SHK-810」をデモ。3,300万画素CMOSセンサーを備え、8Kフォーカスアシスト機能や、自動レンズ収差補正機能(対応レンズ装着時)を利用可能。

Ikegamiの8Kカメラシステム「SHK-810」
JVCケンウッドが出展した4Kメモリーカードカメラレコーダー「GY-HM175」。120コマのフルHDなどにも対応

アストロデザインは、デルタ電子やデジタル・プロジェクションと共同開発した8K DLPプロジェクター「INSIGHT Laser 8K」や、8K映像制作ワークフローなどを展示。8K IPライブ配信なども紹介している。

8K DLPプロジェクター「INSIGHT Laser 8K」
8K映像制作ワークフロー

東芝は、CATV局やIPTVサービス事業者などを想定した新4K8K衛星放送再放送装置「IPMC-9511」を展示。既存の住友電気工業製ハードウェアを使用し、再放送用のソフトウェアを開発中としている。

新4K8K衛星放送再放送装置「IPMC-9511」

Amazon Web Service(AWS)ブースの展示は、映像関連の技術やサービスも充実。AWSクラウド内でカスタマイズ可能なFPGAを実行することで、CPUによるソフトウェア処理では実現できない超並列/超高速アクサラレーションを可能にするという。その活用例として8K映像などの高速ビデオエンコーディングなどを提案している。

AWSブースで展示しているFPGA高速ビデオエンコーディング
グラスバレーの映像編集ソフトRioは、最新バージョン4.5.3で新たにDolby Visionに対応する
富士通は「次世代型ライブビューイング」を紹介。熊本で行なわれたプロバスケットボールB.LEAGUEオールスター戦の模様を、離れた場所でVR観戦できるシステムや、ドリブルの振動を体感できるスペースなどを紹介している