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国内初「ドルビーシネマ」は迫りくる圧巻の映像&音響。博多で先行体験した

11月23日より、福岡県のT・ジョイ博多に日本で初めて導入される「ドルビーシネマ」。その新たなスクリーンが、オープン前に報道陣に先行公開された。この劇場では、どんな映画の楽しみ方ができるのか。一足先にその映像と音響を体験してきた。

T・ジョイ博多に23日オープンする、日本初のドルビーシネマ

ドルビーシネマは、明暗差の大きな映像も忠実に表現できるHDRのDolby Visionと、立体音響技術のDolby Atmosを採用し、さらにシネマ体験に最適化されたインテリアカラー、空間デザイン、座席アレンジメントのシアターデザインも採用するのが特徴。これらが一体となって、「アクションやストーリーをより豊かにお届けし、まるでスクリーン上の世界にいるような感覚を味わえる」という。北米からヨーロッパ、中国などで既に採用されている。

ドルビーシネマの特徴

国内初の導入劇場となるT・ジョイ博多は、同館で最大規模の「シアター9」にドルビーシネマを採用し、座席は348席(346席+車椅子2席)。海外で導入されているものと同じ仕様で、制作者の意図に沿った映像と音響で楽しめるという点が大きな特徴。

シアター9の概要

オープニング作品は11月23日公開の「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」。以降も12月21日公開の「アリー/スター誕生」や、「メリー・ポピンズ リターンズ」(2019年2月1日)などを順次上映していく予定。

第1弾「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」(左)と、それに続く「アリー/スター誕生」

ドルビーシネマ作品の鑑賞料金(税込)は、各種料金または各作品前売鑑賞券に一律追加+500円。ドルビーシネマ3D作品は+900円。Dolby Atmos作品は+200円。なお、同スクリーンでは、制作段階からDolby Vision/Atmos向けに作られたものではない作品も上映されるが、Dolby Vision/Atmos作品の方が、よりストーリーに入り込めるという。

11月23日のオープンに先駆け、11月21日、22日には、ドルビーシネマオープン記念上映企画も実施。11月21日13時から「レディ・プレイヤー1」、16時から「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」、21時から「レディ・プレイヤー1」を上映。22日にも両作を上映する。鑑賞料金は一律1,500円。チケットは11月14日0時から、オンラインチケット予約システムの「キネゾー」で販売。11月14日劇場窓口オープン時からカウンターでも販売する。詳細は劇場のWebページで案内されている。

なお、ドルビーシネマの「鑑賞ポイント」を貯めると、ドルビーシネマ年間無料パスポートや「ドルビー賞」というプレゼントが当たるキャンペーンも実施。詳しくはT・ジョイのWebサイトで案内している。

エントランスから、今までと違う体験。本当に沈む黒

T・ジョイ博多は、福岡の博多駅があるJR博多シティ9階(福岡市博多区 博多駅中央街1-1)という立地。駅や街中にも、所々に23日ドルビーシネマがオープンする告知が行なわれている。

JR博多シティ
9階のT・ジョイ博多
博多駅の中や周辺にも、ドルビーシネマ上陸の告知

劇場には11のスクリーンがあり、ドルビーシネマであるシアター9は奥の方にある。他のスクリーンと比べても雰囲気は大きく異なっており、明るさを抑えて落ち着いた空間に、イメージカラーであるブルーの明かりとロゴで、新たな体験ができる空間ということを印象付ける。

ドルビーシネマが採用されたシアター9の入口

他のスクリーンとのもう一つの違いは、エントランス部に見える10m前後はありそうな長いスクリーンのある通路「AVP(オーディオビジュアルパス)」。これから始まる特別な体験に足を踏み入れる期待感を深めるようにデザインされているという。この映像はプロジェクターから投写され、作品の雰囲気に合った映像が流れている。上映作品によっては、AVP用にコンテンツを用意する場合もあるとのことで、より作品の世界に入り込める心配りがある。

映像が流れるエントランスの「AVP」

それぞれの座席にもこだわりがあり、どの席で聴いてもDolby Atmosの音響が最適に楽しめるように設計。席数で言えば以前よりやや減っているものの、その分、どこに座っても臨場感のある立体音響が楽しめるようにしたという。

シアター9のシート

席に座ると、目の前には巨大なスクリーンが広がる。サイズは非公開だが、この劇場内では最大規模となる。

映像を投写するのは、専用のレーザー光源プロジェクタ2台。従来のプロジェクターでは、明るさを示す値が14フィートランバート/48nitsに対し、Dolby Visionシステムのレーザープロジェクターは、2倍以上という31フィートランバーツ108nitsを実現している。3D映像も、2台で右目用と左目用の映像をそれぞれ投写する。3Dでも、明るさは従来プロジェクターの約2倍という14フィートランバートを実現。

2台のレーザープロジェクタ―

上映が始まると、目を見張るのは、圧倒的なコントラスト比。従来フォーマットのコントラスト比1,800:1や、それよりもコントラスト比が高い最近の“プレミアムシネマ”と呼ばれる高品位フォーマットと比べても明らかに異なる、100万:1という高コントラスト比を実現。これにより、単なる“白い丸”でもより鮮明になり、解像感も向上。映像の臨場感を高めるのに大きく貢献している。従来の映像が、黒ではなく濃い灰色に感じられるほど、Dolby Visionの黒が深く沈んでいる。

ドルビーシネマの魅力やこだわりについて説明してくれた、ドルビージャパンのシネマ&コンテンツソリューション部 尾崎卓也氏

実際に「ブラックパンサー」や「ファンタスティック・ビースト」、「リメンバー・ミー」などの作品を体験。ブラックパンサーでは夜の街に光るネオンや車のテールランプの明るさが際立ち、車の光沢感などで質の高さが良く分かる。

ファンタスティック・ビーストでは、2本脚で翼があり、胴体は蛇という巨大生物「オカミー」のウロコの質感も生々しく表現。間近に恐ろしい生き物がいるような実感が増す。リメンバー・ミーでは、オレンジ色の“マリーゴールドの橋”が、目の覚めるような鮮やかさで目の前に広がる。広色域表現が可能なことで、見た瞬間にストーリーへ引き込む力を高めているのを感じた。

3Dのデモ映像も体験。高コントラストな映像の効果により、白と黒など輪郭部分の境界がより明確で、輪郭などの部がぼやけずにはっきりした立体映像が楽しめる。その後に、同じ映像の2D版も体験したところ、明暗差とコントラスト、色再現の高さなどにより、3Dではないにも関わらず立体感があり、2D作品でも制作次第で奥行き表現の幅が広がることを実感した。“立体”にこだわらなくても、例えば夜空に浮かび上がる星々は、空気の澄んだ山の中で見上げた時のように、一つ一つの小さな光の点が力強く輝いているのが印象的だ。

コントラストが高く、鮮やかな映像を楽しめた

前述したシート配置などのほかにも、細かな部分にまで映像体験を高めるこだわりがあり、「究極の体験のため、可能な限り無駄を排した」としている通り、座席や通路などには、余分な光の反射により映像へ影響しないような素材を使用。席の脇にある階段のライトなども含めて、鑑賞を邪魔しないという配慮が込められている。

座席横の階段

スピーカーの数は非公開だが、シアター9は以前はDolby Atmos対応ではなかったため、今回のドルビーシネマ導入に際してスピーカーの数は増えたことになる。ただ、左右の壁や天井を見ても、各スピーカーの存在は分からないように一体化。最近の劇場では、各スピーカーに照明を配置するなど“スピーカーがたくさんある”演出も見られるが、ドルビーシネマはそうした外見よりも、作品に没頭してスクリーンやスピーカーなどの存在を意識させないことを優先しているのもポイント。

壁面の照明も過度に明るくない

今後もドルビーシネマは増加予定で、既報の通り、松竹マルチプレックスシアターズが運営する「MOVIXさいたま」も、2018年内のドルビーシネマ導入に向けて準備を進めている。

T・ジョイ博多は、福岡空港から地下鉄で10分弱で行ける博多駅内にあるため、地元の人だけでなく、福岡や九州旅行の1つの行き先として加えても十分楽しめるだろう。映像と音にとことんこだわりたい人、好きな監督や俳優の作品にどっぷり浸りたい人などは、まだ多くの人が知らない新たな映画館での体験を味わうために、福岡へ足を伸ばしてみるのも、魅力的な旅のプランだと思える。

T・ジョイ博多には、列車の車窓から風景を眺めるような気分が味わえる展望スペースも用意
飲食の販売スペース

【ドルビーシネマでの上映予定作品】
11月23日 ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生(2D字幕/3D字幕)
12月21日 アリー/スター誕生
2019年2月1日 メリー・ポピンズ リターンズ
2019年2月8日 アクアマン
2019年2月8日 ファースト・マン
2019年2月22日 アリータ:バトル・エンジェル
2019年3月 移動都市/モータル・エンジン
2019年3月 キャプテン・マーベル