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Devialet、小型で超ハイパワーなワイヤレススピーカー「PHANTOM REACTOR」

フランスのDevialet(デビアレ)は22日、ワイヤレススピーカー「PHANTOM」シリーズの新モデルで、コンパクトな筐体を採用した「PHANTOM REACTOR」を発売した。1台の価格は、出力600Wの「PHANTOM REACTOR 600」が159,000円、900Wの「PHANTOM REACTOR 900」が199,000円。直販サイトでの販売に加え、伊勢丹の新宿店本館、二子玉川の蔦屋家電などの一部店舗で先行販売を行なう。

「PHANTOM REACTOR」

SFチックな、豆のような形状のワイヤレススピーカー。既発売の「THE NEW PHANTOM」や「GOLD PHANTOM」など、上位モデルとなる「PHANTOM PREMIER」シリーズの特徴を取り入れながら、「極限まで突き詰めたサイズや性能のもと、どのような音量でもハイファイを体感できる超コンパクトなホームサウンドシステム」として開発された。

「PHANTOM REACTOR」

外形寸法と重量は、PHANTOMが253×343×255mm(幅×奥行き×高さ)で11.4kgのところ、PHANTOM REACTORは219×168×157mm(同)で4.3kgと、約4分の1のサイズに抑えられている。

左が既存のPHANTOMシリーズ、右が「PHANTOM REACTOR」

ユニットは、正面にアルミ製のフルレンジドライバー、筐体の両側面にアルミ製のバスドライバーを各1基、合計2基搭載する。再生周波数帯域は18Hz~21kHz(@-6dB)。出力音圧レベルは95dB SPL@1m(600Wモデル)、98dB SPL@1m(900Wモデル)。

正面にアルミ製のフルレンジドライバー

PHANTOM PREMIERとの違い。使い勝手も進化

上位シリーズPHANTOM PREMIERと比べ、サイズがコンパクトに、重量も軽くなっているのが特徴だが、それ以外にも細かな違いがある。ユニットは、PHANTOM PREMIERシリーズが正面にミッドレンジとツイータの同軸ユニットを配置していたのに対し、PHANTOM REACTORはフルレンジユニットに変更。スペースの制約によるものだという。

コンパクトになった「PHANTOM REACTOR」

また、PHANTOM PREMIERは本体に操作ボタン類を搭載していないが、PHANTOM REACTORは入力切替やボリュームなどのボタンを本体天面に搭載。スマホのアプリを操作しなくても、基本的な操作ができるように進化している。

天面に操作ボタン

接続は、Bluetooth、Wi-Fi、AirPlay、Spotify Connectに対応。スマホからのサウンドを手軽に再生できる。アナログ音声/光デジタル入力も備えており、テレビやレコードプレーヤーとの接続も想定する。BluetoothのコーデックはSBCとAACをサポート。プロファイルはA2DP、AVRCPに対応。光デジタル入力は、96kHzまでサポートする。

PHANTOM PREMIERは光デジタル入力のみだったが、PHANTOM REACTORはアナログ音声入力にも対応。接続機器の幅も広がった。

アナログ音声入力にも対応

専用アプリも用意し、アプリは日本語表示にも対応。2019年前半に、アプリや本体のOSをアップデートする事で、2台の「PHANTOM REACTOR」を連携させたステレオ再生にも対応する。その際に、別途オプションの追加などは不要。

専用アプリ

PHANTOM PREMIERから踏襲する特徴

「ADH」(Analog Digital Hybrid)と呼ばれる技術を使ったアンプを採用。一般的にアナログアンプは、音のクオリティが高い反面、効率が悪い。逆にデジタルアンプは、音のクオリティはアナログに劣るが、効率はアナログアンプより良いとされている。

ADHは、アナログのクオリティとデジタルの効率という、両方のメリットを組み合わせたアンプとして開発された。コンパクトながら高出力で、「PHANTOM REACTOR 600」は600W、「PHANTOM REACTOR 900」は900W。歪みを0.001%、サチュレーション0、バックグラウンドノイズ0 dB SPL@1mを実現している。

コンパクトなPHANTOM REACTORに搭載するため、省スペース化を進めながら、DSP機能も内蔵するなど、さらなる進化を遂げたという。

ADH

「ADH」以外にも、独自の技術を投入。「SAM」は、「絶対的な精度で、音楽のリズムとテンポを正確に再現でき、音源に極めて忠実な形でサウンドを体感できる」という技術。スピーカーの特徴を測定しておき、音声が増幅される前に、そのスピーカーにマッチするような音へと、ソフトウェアで音声信号に処理を加えている。これにより、正確なリズムやテンポを再生できるというもの。

「HBI」は、限られたスペースでも、大きな圧力下で密閉された2基のウーファを搭載し、それぞれのウーファーの背後の推力を活用、コンパクトな筐体とは思えない低音再生が可能という。コンパクトなPHANTOM REACTORでも低音再生を可能にするため、ユニットの振幅ストロークはより深く進化したという。

「ACE」は、球形スピーカーを実現するための技術。前面のユニットに使われているもので、ハリーF.オルソンの「振動する球体」の音響原理が使われており、ラウンドフォルムで回折現象も抑え、高音域において広がりのあるサウンドを実現したとする。

日本での直営店も検討

Devialet本社のGeneral Manager APACジュリアン・ベルジェル氏は、ADH技術を採用したハイエンドオーディオ向けアンプ「Expert Pro」を2012年に投入した事を振り返りながら、「あれから3年、PHANTOMの発売により、ADHで実現した世界最高の音楽体験をよりコンパクトなシステムで届けられるようになった」と説明。

Devialet本社のGeneral Manager APACジュリアン・ベルジェル氏
ハイエンドオーディオ向けアンプ「Expert Pro」

2018年9月から日本で本格展開。二子玉川の蔦屋家電、新宿伊勢丹本店で販売を開始し、六本木と代官山の蔦屋家電にも拡大。「想定以上の売上を記録しており、生産が追いつかない状態。台数は申し上げられないが、月々2桁台売れており、PHANTOM PREMIERシリーズの中でも最上位のGOLD PHANTOM(税込399,000円)が最も売れている」(Devialet Japan事業開発マネージャー ルカ・フェネック氏)という。

Devialet Japan事業開発マネージャー ルカ・フェネック氏

購入者は「50歳以上が中心」とのことだが、売り場ではそれよりも若い年齢の来場者も製品に興味を持ち、「これ(PHANTOM PREMIERシリーズ)よりもさらに小さくて、手頃な価格の製品は無いのか?」と、いつも質問されるという。こうしたニーズも強いため、よりコンパクトかつ価格を抑えたPHANTOM REACTORの登場について、「これらの成功に期待している」(ルカ氏)とのこと。

PHANTOM REACTORの開発期間は3年、「密度が非常に高く、作るのが難しい製品であるため、これまでのPHANTOMシリーズの工場では作れず、その近くに新しい工場を作り、そこで生産している。生産はほぼ自動化されている。従来のPHANTOMシリーズと比べると低価格だが、この価格であっても、メイド・イン・フランスを貫いている。そうしなければ、このサイズとクオリティは実現できない」(ジュリアン氏)。

販売戦略については、香港やシンガポールなどで、直営ストアの出展を加速中。「PHANTOM REACTORは日本の家庭にもフィットする製品。今までのスピード感をキープしながら、日本での直営店展開も検討している。将来的には東京、埼玉、千葉、大阪、神戸、福岡といった都市で、我々の商品を展開していきたい」(ルカ氏)という。

また、ハイエンドオーディオの「Expert Pro」が、秋葉原のダイナミックオーディオ 7階で取り扱いが開始された事も紹介した。

蔦屋家電エンタープライズの武井総司社長

発表会には、蔦屋家電エンタープライズの武井総司社長も登壇。蔦屋家電エンタープライズは、蔦屋家電で扱う商品の調達を担当しているが、蔦屋家電だけに限らず、販路拡大やB to Bも視野に入れ、メーカーとの商品企画開発やコンサルタントも行なう会社として今年の4月に設立した。

武井社長は「商品調達のため、海外を飛び回っている時にヨーロッパでPHANTOMシリーズを体験した。コンパクトなのに、世界最高音質のワイヤレススピーカー。近未来的デザインで、ライブ・コンサート会場にいるかのような迫力、雰囲気を醸し出す。明らかにライフスタイルを変える商品だなと感じた。我々のビジョンとも合致するため、半年ほど前から本格的に協議を重ねて、最終的に取り扱いができるようになった。蔦屋家電店舗での展開を皮切りに、CCCグループ店舗を中心にブランディングをサポートしていく。蔦屋書店、Tサイトなどにも販路をひろげていきたい。一気に広げるというより、“体験すること”が大事な製品。そこに重きを置きながら、お客さまにとって“発見”になるような提案をしていきたい」。

LINEの執行役員で事業戦略室の室山真一郎室長

LINEもDevialetに出資している。LINEと、その親会社のネイバー(NAVER)は、テクノロジースタートアップへの投資を積極的に行なっており、欧州でKorelya capitalに出資。このKorelya capitalの出資先の1つが、Devialetだという。

LINEの執行役員で事業戦略室の室山真一郎室長は、「高い技術力、世界的にチャレンジできる企業である事、オーディオ界のゲームチェンジャーである事」の3点を、Devialetの魅力として挙げる。LINEとしても、LINE MUSICやLINE RECORDS、電子チケットのLINE TICKET、ライブストリーミングのLINE LIVEなど、エンターテイメント事業に力を入れており、「エンタメでも技術革新は重要。引き続き支援しながら、発展を願っていきたい」とした。

キャリングケースなどのアクセサリもラインナップする