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パナソニックの有機EL VRグラスを体験。“本物と間違う”高画質VR提供へ
2020年1月8日 15:25
パナソニックが「CES 2020」で参考出展した“有機EL搭載VRグラス”。その試作機を早速体験した。
VRグラスの大手メーカーであるKopinと共同で開発したマイクロOLEDパネルを採用。「ハリウッドも画質を絶賛した」(パナソニック)という。今回体験した試作機は4K相当の解像度だが、新たに開発が発表された1.3型/2,560×2,560ドット(5K相当、画素密度2,245ppi)を今後搭載予定だという。10bit/HDR/120Hz表示に対応。発売時期や価格などは未定。
高解像度なパネルにより、画素構造/網目が見えてしまうスクリーンドア効果を防ぐほか、超薄型パンケーキレンズを共同開発したことで、クリアで歪みのないHDR映像を実現するという。
音質にもこだわり、Technicsブランドのイヤフォンでも採用されている磁性流体や、Technicsのデジタルアンプも採用する。
パナソニック小塚氏「現状のVR端末は十分とは言えない」
パナソニック アプライアンス社技術本部 デジタルトランスフォーメーション戦略室の小塚雅之室長は、開発の狙いについて「AVメーカーから見た場合、既存のVR端末はTVに例えればSDやHD(FHDではないレベル)。4K/HDRの大型OLED TVのお客様からみれば、十分とは言えないレベル」と画質の問題を指摘。「特にハイエンドのデザイン等のビジネス用途に使うことを考えると、現実に近い画質で表現できることが重要。“本物と間違うようなVR体験”の提供が重要」としている。
一方で、「現状のVRヘッドマウントディスプレイ(HMD)は1kg~500g程度あり、重い。特に髪形を気にする女性には受け入れがたい」との理由で、メガネ型の軽量なモデルの開発に着手したという。試作機の重さは150g以下。
現状では、パソコンなどを使わないスタンドアロン型と、パソコン接続型の両方を想定。8K映像を伝送するために今回の試作機はパソコンと有線接続する方法を採っており、映像はUSB Type-Cケーブル1本で伝送する形を目指す。音声については現在有線接続だが、ワイヤレスも含めて検討する。
メガネのように掛けて手軽に高画質VR
試作機は、メガネのレンズ部を厚くしたようなデザインで、VRゴーグルのように“かぶる”のではなく、一般的なメガネと同じ“掛ける”装着スタイル。重量バランスがレンズ側(前方)寄りだったため、手で支えるような形にはなってしまったが、ゴーグルのように外した後に髪が乱れる心配はない点はうれしい。
また、矯正用のレンズも内部に追加できるため、メガネを二重に掛ける必要はない。あくまで試作機のため、装着感の改善など製品化に向けた調整は今後も続けるという。
表示される映像は高解像度で、動画も滑らかに再生。ジャイロセンサー搭載で、空撮の映像では顔の向きを変えると空や地上の様子も高精細に表示していた。デモの映像は小型8Kカメラで撮ったもので、青空の階調表現が不足してバンド(縞模様)ができるシーンもあったが、これはディスプレイの問題ではなく、映像の色不足によるもの。高階調でデータ量が多い映像を表示する場合は、レイテンシーの問題が起きるため、今回の試作機ではより軽量な映像を使ったという。
まだ開発段階ではあるものの、これまでDVDやBlu-rayなどの立ち上げに深くかかわってきた小塚氏がこの事業を手掛けていることからも、画質に妥協せず、エンターテインメントとして十分楽しめる製品の開発を目指すパナソニックの姿勢がうかがえる。
前述の通り発売時期は未定だが、製品版の登場について尋ねると小塚氏は「'21年のCESに出すことができれば」との意向を示した。デザインや画質ともに、今回のCESにおいて注目の動向の一つといえそうだ。